演劇知

劇的考察譚

「Witch trial tale」連載とは3

2012-03-21 10:11:55 | Weblog
前回に続きこちらも「lab~亀井戸~」の台詞との関連台詞を。

まずは熊谷師匠の「私は死なないんだ!」。前回の役、幹部若洲で見せたその声のでかさ、台詞に秘められた狂気を今回も見せてもらう。前回は「神は死なないんだ!」と言う台詞に対して今回は「私」。ニーチェの如き思考の進化。茨姫がいきなりでかい声出すものだから、会場もさぞかし驚いたのだろう。全体がどよめいていた。

そして青木師匠の「ノー…能!」。前回で「YES…イエース!」という信仰上ギリギリのギャグをやってのけてくれた青木師匠へ再度要請。こちらも雪の女王が突然能を舞うものだから会場はとてもどよめいていた。このシーン、きっと他の子がやっても師匠以上の効果は生まれないのではないかと思う。

今回掲載文では1対1のシーンが出てきます。公演準備の関係で1対1の脚本をこの子達にして頂くことが出来なかった為、今回配置。対決は作品テイスト、キャラクター性、役者の性質でわたしが選考。結果

○魔法掛ける・掛けられる対決
○親コンプレックス対決
○小人出てくる対決
○ビューティー対決
○攻撃キャラ対決
○客観性質対決

となる。他のパターンはないのではと思うくらいしっくりきた。たまにこういうことがある。

1対1は稽古を重ねるとどんどん良くなっていった。ツーマンセルは役者個人の力量も確かに必要である。しかしそれ以上に、他者と向き合うことで呼吸や間、己の声の出し加減を理解することが必要である。つまりはバランスの一言に尽きる。掛け合いの際に相手の役者がいなかった時はわたしが代役として台詞を読んでいたが、わたしのクソ芝居ではいけないのである。この場合はわたしのクソ芝居にも問題はあるのだが。

やはり芝居は他者があってのもの。そしてこの日常も他者があってのもの。



※以下転載禁止

ハーメ  宜しいかな。では早速カードを見せて…
 女王  お待ちなさい。
 冠者  どうしたのですか?
 女王  カード見せる必要はありません。
グレー  何で?
 ホレ  そっちの方が手っ取り早いでしょ。
 冠者  考えても見てください。
赤頭巾  考える…(銃を取り出し)あんたが魔女であんたが奴隷。
マッチ  物騒女、良く考えなさいよ。魔女がいたとして、私達を襲うつも
     りならとっくに襲っている。そして死んでいる。
ラプン  ネガティブ。
赤い靴  つまり、私達が今こうして集まっているから手出しをしないわけ。
     これが自分が魔女だとばれて御覧なさいよ。突如ピンチになって襲
     い掛かるしかなくなるわけ。うおーって。
 家鴨  うおー!

   赤頭巾、醜い家鴨の子を撃つ。醜い家鴨の子、ギリギリで避ける。

 家鴨  冗談!冗談!
赤頭巾  家鴨狩り失敗。
ラプン  つまりこのまま何もしなければいいってこと?
 女王  男共が戦から帰ってくるまで、何もせずただ待っている方が得策なの
     だ。いらぬことをしたな。
 モモ  いや、だって危険な人物が…
白雪姫  いやいや女王様、よく考えて下さいよ。さっきの杯に毒を仕掛けられ
     たんですよ。そんな誰が敵か分からない環境で落ち着いていられるわ
     けないでしょ。
グレー  賛成。問題があるならばさっさと解決すればいいでしょ。
 茨姫  やりたいことはやればいい。さぁ、カードを見せて。
人魚姫  聞いてなかったんですか?それじゃあ余計危険なんです。
かぐや  ではどうでしょう、多数決というのは。
 モモ  良いじゃないですか。
ハーメ  流石は和を尊ぶかぐや姫、名案ですね。
かぐや  さあ、皆さん。カードを見せる派の方はこちらへ。カードを見せない
     派の方はこちらへ。

   一同動く。グリム民族、アンデルセン民族で固まる。六対六となる。

ハーメ  六対六。同点ですね。
グレー  あなたはどっちなの?
 モモ  え、わたし。
ラプン  そう。どっちなの?
 モモ  えっと…私は、そもそも魔女を探しに来たので…

   モモ、グリム側に行く。

マッチ  ねえ、あなたは?
かぐや  私?
人魚姫  かぐや姫があちらに付くかこちらに付くかで話が変わってくるよ。
かぐや  私は…こっちかな。

   かぐや姫、アンデルセン側に行く。

 ホレ  七対七。決まらずね。
赤頭巾  ねえ姫君、本当にそれは姫君の意見なの?
かぐや  え?
赤い靴  どういうことよ。
 茨姫  自己主張せず、ただ波風立てないように、どちらにも良い顔になる
     ような行動をしたんじゃないの?
マッチ  何、言い掛かり?
 冠者  醜いですね。
 家鴨  そうだ、醜いぞ!言ってやれ、醜いぞ!
 茨姫  醜い家鴨に言われたくないわ。
 家鴨  え!
 茨姫  少なくとも、あなたよりは…フフフ…
 家鴨  何!
グレー  不細工二人は黙ってて。
ラプン  身内もバッサリ。
マッチ  笑顔で毒づくわね。
ラプン  かぐや姫の考えはどうであれ、結果として七対七、これじゃ決まら
     ないね。
赤い靴  というかさ、やっぱり魔女っていうくらいだから。魔法使いだと思
     うんだ。
 ホレ  何、私が神の御子の手先と言いたいの?
赤い靴  そうとは…言ってないけどさ…
 ホレ  嘘仰い。ほれ、自分の意見で浮き足立ってるじゃない。
赤い靴  これは赤い靴の呪いです。
 ホレ  呪い!そんな呪いを受けているあなたの方がよっぽど怪しいじゃない。
赤い靴  どういうことよ!
 ホレ  あなたは赤い靴を盗んで、お婆様のお葬式にも出ずに踊り狂っていた
     から、そんな哀れなダンスを踊る羽目になったんでしょ?
赤い靴  哀れって言うな!
 ホレ  ほれ、図星。そんな悪行をしているあなたの方がよっぽど魔女じゃな
     い。
赤い靴  キー、悔しい!
 ホレ  地団駄踏んで、図星なの?
赤い靴  だからこれは呪い!
 ホレ  どうせ、その足を切ってもバタバタ動くんでしょ。あー気味悪い!
マッチ  ねえ、そんな年増の言うこと聞く必要ないよ。
 ホレ  なんですって、許せない!ほれ、コールタールの雨を降らせてやる…
マッチ  火をつけるよ。そしたら燃えて皆死んじゃうね。
グレー  あー降らせちゃ駄目!
マッチ  私からしたら…魔女を蹴り殺すあなたの方がよっぽど魔女っぽいけど。
グレー  え、私?
マッチ  ひょっとしたらあのお婆ちゃんは魔女じゃなかったんじゃない?
グレー  魔女よ!お兄ちゃんをブクブク太らせて食べようとしていたんだから!
マッチ  それだって、ただたんに親切心でご馳走していたんじゃない?貧相に
     見えるあなた達が不憫で…
グレー  あのね、貧相で愚かで大馬鹿なクソガキはあなたのほうでしょ。
マッチ  そんなに言ってないでしょ!
グレー  素晴らしい空想をありがとう。お嬢ちゃま。流石はマッチの火の中にツ
     リーやスープやお母さんが見えちゃう誇大妄想の女ね。
マッチ  見えてもいいじゃない!親に捨てられたあなたとは違うの。
グレー  捨てられてない!
マッチ  いえ、捨てられたわ!
グレー  妄想はそれくらいにしなさいよ!
 冠者  相手にする必要はないですよ、マッチ売りの少女。
白雪姫  あんたさ、姫でも何でもないでしょ。
 冠者  え、あ、はい。私はあくまでも冠者ですから。
白雪姫  怪しい。
 冠者  何がですか?
白雪姫  私達とは違って部外者でしょ。私達が妬ましくなって、それで…
 冠者  それで、神の御子の配下になったと、そう言いたいのですか?
白雪姫  さぁ、どうだか。
 冠者  馬鹿な。
白雪姫  というかさ、姫って本当にいるの?
 冠者  私のことなら未だしも…姫への、姫への、姫への無礼は許しませんぞ!
白雪姫  あれ、図星。髪の毛の中とかって別に何にもないんでしょう。

   白雪姫、親指姫の冠者の頭を触ろうとする。

 冠者  やめろ!
白雪姫  何よ、こうなったら、行きなさい、七人の小人達!

   白雪姫、小人達を投げつける。

 冠者  あ、姫!姫様!
白雪姫  あーいい気味!
 冠者  頑張って姫様!負けないで!あ、あ、あ、一対七は多勢に無勢!
白雪姫  アハハハハ!
 家鴨  何だよ、鏡はなんであいつが一番美しいって言うんだか…全く理解出
     来ないよ。
 茨姫  醜い家鴨が何を言ってるんだか…あ。
 家鴨  何?
 茨姫  魔女って醜いでしょ。
 家鴨  美人の魔女なんて聞いたことが無い。
 茨姫  じゃあ、あなたが魔女。
 家鴨  なんでそうなるの?
 茨姫  じゃあ、下僕ね。あなたの顔、下僕っぽいわ。良く見せて!

   茨姫、醜い家鴨の子の顔を掴む。

 家鴨  やめてー
 茨姫  いいわ、いいわ、そのMな顔。私をゾクゾクさせるわ!もっと良く
     見せてよ!
 家鴨  あんた怖いよ!…あ、確か茨姫って二人の魔女の魔法を同時に喰ら
     った人だよね。
 茨姫  死ぬか眠るか、スリリングね。ドキドキだわ。ただね…私は死なな
     いんだ!
 家鴨  声でかっ!…そんなに一杯の魔力が掛かっているあんたが魔女だ!
     うん、間違いない!
 茨姫  私が魔女…確かに、女は皆魔女なの。あなたも魔女の素質を秘めてい
     るのよ!
 家鴨  魔女違い!
 女王  その薄汚い手を話すのじゃ、売女。寝言は寝てから言え。
赤頭巾  茨姫は寝ているの。
 女王  ん?
赤頭巾  あれは立ったまま寝ているの。話しているのは全部寝言。だから寝言
     は寝て言えは正解よ。
 女王  なんと奇怪な。
赤頭巾  ねえ、どうしてあなたはそんなに偉そうなの?
 女王  それは私が女王だからじゃ。
赤頭巾  ねえ、どうしてあなたはそんなに冷たいの?
 女王  それは私が雪の女王だからだ。
赤頭巾  どうしてあなたは「じゃ」とか「じゅ」とか「じょ」とか言うの?
 女王  言っておらん!
赤頭巾  ねえ、どうして…
 女王  五月蠅いの何故何故娘!その口を閉じるがよい。

   雪の女王、魔法を掛けようとすると、赤頭巾銃を構える。

赤頭巾  その手を降ろしな。どてっぱらにあんたの汚い臍よりどでかい穴が開く
     ぞ、クソババア。
 女王  その変貌振り。誠に奇怪な。ヤーコプカール・グリムには変人しかおら
     んようじゃな。

赤頭巾、銃を撃つ。雪の女王、弾を凍らせる。雪の女王も応戦しようとするも赤頭
    巾、連射。

女王  うぅ…ノー…能―!

   雪の女王、能を舞う。

赤頭巾  は?何あれ?
かぐや  あれは能。古き良き伝統文化。怒りの頂点に達した雪の女王は忘我の境
     地で舞を舞ってしまったのね。その姿、幽玄なり!
人魚姫  流石は女王。奥ゆかしい。
 女王  その凶悪さ、お主が魔女確定じゃ。
赤頭巾  あんたのその訳の分からない力の方がよっぽど魔女じゃねえ?
人魚姫  皆、ちょっと落ち着いて。
ラプン  賛成、雪の女王、とりあえず自分の頭を冷やそうか。
人魚姫  もし、魔女と奴隷が私達を仲違いをさせようと思っていたら、私達は見
     事にその策にはまっているよ。
ラプン  確かに。思う壺だね。
人魚姫  一旦気持ちを落ち着かせよう。私の歌でも聴いて…

   人魚姫、歌おうと発声練習。

ラプン  あ、そうやって呪いをかけようって作戦か!怖い怖い!
人魚姫  は?
ラプン  あんたも魔女と交渉して足を手に入れたんでしょ。あ、つまりもともと
     あんたは魔女の奴隷か!
人魚姫  いやいやあんただってね、髪の毛が伸びるって、何その特殊能力。凄く
     魔女っぽいじゃない。
ラプン  何言ってんだか。
人魚姫  は!?何、人が昇っても大丈夫って、どんな剛毛よ。呪いの市松人形
     かってーの。
ラプン  人形じゃないし人間だし。ま、あんたは人間じゃなくて魚人だけど。
人魚姫  魚で何が悪いの!?
かぐや  皆さん、落ち着いて下さい。
 モモ  そうですよ、いがみあっている場合じゃないでしょ。
かぐや  後半は完全に悪口の言い合いですよ。市松人形を悪く言われ、私、ちょ
     っとショックでした。
 ホレ  完全に客観視しているけど、あんたたちだってさ、魔女候補なんだよ。
赤い靴  そうだよ、月からやって来たって、それがもう魔女っぽい。
かぐや  そんな。
マッチ  魔女も空を飛ぶし。
グレー  そうそう、あんたも空から来たんでしょ。
かぐや  竹からです。あと飛ぶのは牛車…
白雪姫  竹から、じゃあ、竹星人だ!
 冠者  親指姫様も凄く怪しいと言っております。
 モモ  竹星人って、馬鹿なこと言ってないで…
 茨姫  あら、あなたも他人事じゃないわよ。
 家鴨  そうですよ、何安心しきっちゃってるんですか。
 モモ  情報を持ってきたのは私ですよ。私がなんで魔女なんですか!?
赤頭巾  そういう作戦だったら怖いよね。
 女王  我らを油断させて寝首をかこうということか!ふざけおって!
 茨姫  寝首…この首は渡さない。
 モモ  無茶苦茶ですよ。
 女王  黙れ!皆のもの、こやつを取り押さえろ!
かぐや  止めて下さい!
 女王  邪魔をするならお前もだ。ひっとらえろ!

   モモとかぐや姫に襲い掛かる一同。と、ハーメルン、笛を吹く。一同、
   笛の音に操られ動きが取れない。

白雪姫  何これ、動けない。
 冠者  姫様も動けないと言ってます!
赤い靴  見て、私の足が、止まった!止まったわ!

   笛の音が止む。一同自由になる。

赤い靴  あーまた足が…
ハーメ  馬鹿なことは止めなさい。黙って見ていましたが、皆様、本当に醜
     いですよ。意見の相違、民族間の違いでいがみ合い、別に敵を作れ
     ば今度は手を取り合って実力行使に出る…何を考えているのですか、
     皆さん。
 モモ  野蛮ですね。
ハーメ  そうでしょう。
かぐや  何を考えているか分からない。
ハーメ  全く。
 茨姫  これじゃあ…戦争と変わらないね。

   暫時の沈黙。

ハーメ  いいですか皆さん。今、戦争が起きているのです。内輪で揉めるのは
     やめましょう。
人魚姫  内輪…私達のこと。
ラプン  あ、凄いこと気付いちゃった。
かぐや  何ですか?
ラプン  神の御子って人間でしょ。
 モモ  多分。
ラプン  じゃあさ、この戦争も内輪揉めっぽいよね。
ハーメ  …どうでしょう。
ラプン  戦争ってさ…本当にあるのかな?

   暫時の沈黙。

ハーメ  私には分かりません。ただ分かることもあります。皆さんは今とても
     疲れています。それでは満足のいく話し合いも出来るわけがありませ
     ん。本日はゆっくりとお休み下さい。

   ハーメルン、笛を吹く。一同笛の音に操られ動き出す。それはダンスの
   ようでもあり、ミュージカルのようでもある。

ハーメ  宵闇の中、目を瞑り、闇の中の闇へと誘われる。

   一同眠りにつく。茨姫、起きる。

ハーメ  流石は茨姫。既に寝ているというのは本当か。それならばレムからノ
     ンレムへ。より深い闇へと落ちるがよい。

   ハーメルン、笛を吹く。茨姫。完全に眠る。

(続く)

「Witch trial tale」連載とは2

2012-03-20 09:40:36 | Weblog
今回の芝居ではact orch「lab~亀井戸~」にメインパートで出てくれた子が何人かいまして、ちょっとした関連台詞を入れています。勿論観ていない方も楽しめるようなものとなっております。今回掲載文ではモモの「TIME」と赤頭巾の「馬鹿、くさっ」。モモに関しては竹下師匠の普段からは想像もつかないキレキレの動きを前回、今回と見せてくれました。赤頭巾に関しては前回の役、牡丹の「馬鹿くさ」を文字っての台詞でしたが、果たして芦澤師匠本人も気付ていたかどうか。いっそ超能力でも使ってやればよかったか。


後半にもこの遊びを配置しています。強烈なものを二つほど。


前回の続きから。


※無断転載禁止

   茨姫、赤頭巾、ホレ、グレーテル、ラプンツェル、白雪姫、赤い靴
   の女、マッチ売り、雪の女王、人魚姫、親指姫の冠者、醜い家鴨の
   子登場。

白雪姫  あ、おっさん。ハーメルン様はどこに?
赤頭巾  初めまして。ハーメルン様。お城を守ってくれて本当にありが
     とうございます。
白雪姫  え?
 茨姫  彼がハーメルン。
白雪姫  マジか!…クソジジイか…テンション下がるわ…
 茨姫  …ハーメルン様なんだか、私、眠たくなって…早速ベッドへ…
     そして熱いヴェーゼを…
グレー  止めなさい。

   グレーテル、茨姫を蹴る。

 茨姫  あー悪くない!
 冠者  流石はグリム民族。即行ではしたない。
 ホレ  あら、何か仰いましたか?
 冠者  これはこれはマダム・ホレ。親指姫様がつぶやいた言葉を私がつ
     い拾ってしまい…
 ホレ  あら、親指姫様。宜しければ私の魔法で今すぐ巨大化させてあげ
     ますけど?
 女王  何事ですか騒々しい。黙りなさいそこの年増。
ハーメ  女王の仰る通りです。
 ホレ  は?
ハーメ  そうではなく、皆さん、ご静粛に。

   暫時の沈黙。かぐや姫、団子を持って登場。

かぐや  皆さん。遠路はるばるようこそ。どうぞ、ウェルカムお月見団子
     です。
ハーメ  ウェルカムお月見団子を食べながら、皆さん、どうか私の話に耳
     を傾けて…
人魚姫  その前に…水を…
かぐや  あ、お団子にはお茶の方が…
人魚姫  どちらかというと魚的事情です。
ハーメ  魚的事情、分かりました。では、早々に挨拶を終わらせますか。
     皆さん、今は戦時です。我らの勝利を願い、どうか協力してこの
     青髭城でお過ごし下さい…それと、私から二つ程お願いが…
ラプン  なんでしょうか?
ハーメ  一つはグリム、アンデルセンの民族間の争いを起こさないこと。
     もう一つは…あの扉は絶対開けないように…フフフハハハハハ!
マッチ  ちなみ開けたら何があるの…
ハーメ  …フフフハハハハハ!
グレー  ムカつくぐらい怖いですよ。
ハーメ  これからここで暮らすもの同士、名を名乗り挨拶でもしましょう。
赤い靴  赤い靴の女です。
マッチ  マッチ売り…です。
 茨姫  茨~姫。
 女王  雪の女王じゃ、愚民共。
赤頭巾  赤頭巾です。あの、宜しくお願いします。
人魚姫  人魚姫です。
 ホレ  ホレです。魔法使いよ、ホレ!
 冠者  私は親指姫様の冠者です。姫はここに…宜しくと仰っております。
グレー  グレーテルです。兄のヘンデルはちょっと変だけど戦争に行って
     います!
ラプン  ラプンツェルです。
 家鴨  醜い家鴨の子です。一人だけ人間0%だけど宜しく!
白雪姫  あ~白雪姫~
かぐや  かぐや姫です。皆さんの大陸から離れた万葉国から参りました。使
     節の最中に神の御子の襲撃に遭い帝は…うううう…
ハーメ  どうか泣き声を上げずに。さぁ、これから同じ食事をし、同じ床に
     就く、行動を共にするもの同士、乾杯といきましょう。

  ハーメルン、杯を用意し一同に配る。

ハーメ  では…かんぱ…

  時間が止まる。暫時の沈黙。と、モモ登場。

モモ  危ねえ、間に合った。よし、上手く時間は止まっているな…

  モモ、各自の杯を叩き落す。合図、時間が動き出す。

ハーメ  ぱー…いってー
 家鴨  何々?
 茨姫  あれ…寝ぼけた?
 モモ  皆さん…えっと…

  赤頭巾、グレーテル、雪の女王、マッチ売り、モモを押さえる。

 モモ  ストップ、ストーップ。
白雪姫  あんた何者?
 モモ  私は…
 女王  喋るでない、この愚民が!
 モモ  喋らないと説明出来ないんですけど。
 冠者  姫様も何者か気になっております。
 モモ  私はモモ。ミヒャエル・エンデから来た使者です。
ラプン  異国から?異国の人が何の用?
 モモ  はい、実は非常に重大な事実をお伝えに参りました。
 ホレ  あなたが突然出現したことの方がよっぽど大変な事実なんですけ
     ど。
赤い靴  確かに。あなた、どうやって来たの?
 モモ  私達ミヒャエル・エンデの人間は時を越える能力があるのです。
ラプン  だからどうやって来たの?
 モモ  え、だからこう時を越えてピューンと。
 ホレ  嘘おっしゃい。
赤い靴  胡散臭い。
ラプン  というか臭い。
 モモ  嘘でも胡散臭いでも臭くもありません…なんですか臭いって!
赤頭巾  馬鹿、くさっ。
 モモ  おい、馬鹿って…
人魚姫  そうじゃなくて、確かに臭いです。
 家鴨  皆、床を見て!
白雪姫  えー床が溶けてるし。
グレー  さっきの飲み物の中に…毒が…
 モモ  入っていたんでしょうね。危なかったです。間一髪です。
赤頭巾  お前がやったんじゃないか?
 モモ  まさか!
 ホレ  確かに。いきなり出てきて、怪しい。
 モモ  私じゃないです。それにこれはそういう能力ですから!
人魚姫  そうは言っても、皆さんの言うことも一理あるように思えます。
 モモ  しょうがありませんね。じゃあ、見せてあげましょう…ちょっと
     どいて…T・I・M・E…TIME!

   モモ合図。時が止まる。モモは十四人を動かす。合図。時が動き出す。
   一同悲鳴。

 モモ  さぁどうでしょう。これで私の能力が…
白雪姫  何すんの!
 茨姫  ん、悪くないわ。
グレー  で、モモさん。あなたは何故青髭城へ?
ハーメ  重大な事実というのは?
 モモ  はい、実は…ミヒャエルエンデで捕らえた神の御子を拷問に掛けた
     ところ…
マッチ  拷問!?どんな?
グレー  口挟まない…でも確かに気になるな…ねえ、どんな風に?蹴った?
     蹴った?
 茨姫  蹴って、蹴って。
 モモ  この城の中に、神の御子側の人間が潜伏していることが分かりまし
     た。
 家鴨  何それ、やばいじゃん、嫌だよ、怖いよ…
赤頭巾  やだ、怖い…
 家鴨  やばいよ、やばいよ。
赤頭巾  (銃を取り出し)黙って聞きな。
 家鴨  …はい。
 モモ  正確に言うとwitch一人とslaveが二人です。
 女王  カタカナは嫌いじゃ。
かぐや  つまり、witch…魔女が一人と、slave…その魔女の奴隷の二人がこ
     の城の中に隠れているってこと?
 茨姫  あら、スリリング。
人魚姫  そんな悠長な。
赤頭巾  出てきたら殺れば…
ハーメ  馬鹿な。この城に魔女がいるはずがない…

   一同、ホレを見る。

 ホレ  私は、良い魔法使いのおばさんなの!魔女とは違うの!
白雪姫  城に私達しかいないっていうのは本当ですか?
ハーメ  間違いない。
 冠者  その扉の中とか…
ハーメ  いない!いないぞ!
ラプン  凄い怪しいんですけど。
かぐや  いないとなると…この城の中には私達しかいませんよね…つまり…
     それって…
赤い靴  どういうこと?
かぐや  私達の中に魔女と奴隷がいるってこと?

   暫時の沈黙。

十五人  …まさかー
 モモ  確認する方法があります。
マッチ  なんでもったいぶったの。早く言いなさいよ。
 冠者  何なのでしょうか?
 モモ  ここに、ルイス・キャロル国から借りてきたアリスのトランプがあ
     ります。

   モモ、トランプを取り出す。

 モモ  今から皆さんに配ります。このトランプには不思議な力があり、魔女
     の手元にはジョーカーが、奴隷の手元にはジャックが必ず来ます。そ
     してもう一つ。魔女の力を見破れる資質を持つowlの力を持つ人間が皆
     さんの中にいるかも知れません。
白雪姫  オール?…漕ぐやつ?
人魚姫  owl、梟ね。
 家鴨  鳥だから私じゃない?
 女王  黙れ鴨。
 家鴨  せめて家鴨って言って。
 モモ  その梟の力を持つ人間にはエースのカードが来ます。恐らくこの中に
     一人はいるはずです。このトランプと梟の資質の力で魔女を見つけ出
     しましょう。さぁ、引いて下さい。
ハーメ  待った。
赤頭巾  どうしたの公爵?何か名案?
ハーメ  いや…あなたも、女だろう。
 モモ  はい。
ハーメ  あなたも魔女の可能性がある。なんと言っても魔、女というくらいな
     んだから。
 モモ  え?
 茨姫  確かにそのトランプ、なんかマジックっぽい。マジック、魔法、魔女。
 モモ  いやいや、それとこれとは。
ハーメ  あなたも引きなさい。
 モモ  え、別にいいですけど…
ハーメ  私はね、どうも女という者が信じられないんだ。フハハハハハ…
白雪姫  最悪…
ハーメ  何か?
白雪姫  いえ何でも…

   ハーメルン、モモからカードを取り上げ一同に構える。一同カードを引く
   。「魔女」「奴隷」「梟」の役割は特定の人間に決められておらず、公演
   毎に決定される。以後其々のカードを引いた人間は、「魔女」「奴隷」
   「梟」の役割を演技に反映させる。

(続く)

「Witch trial tale」連載とは1

2012-03-19 10:43:03 | Weblog


「Witch trial tale」の台本が見たいという声があり、今回掲載します。己の戯曲を掲載するのは初めてで、なんとも気恥ずかしい。そもそも戯曲は芝居における設計図であり、完成品はあくまで舞台上の一瞬という考えを持っています。故に戯曲は「過程」であり未完成なものを晒すことへの恥ずかしさ。しかし、この作品は見せたい。

※無断転載禁止

Witch trial tale
劇作・渡辺裕之

○時…現在と同時列
○所…童話世界 ハオスメルヒェヴン 青髭城
○人…赤い靴の女   ♀ 永遠に踊る靴を履く女
   マッチ売り   ♀ マッチ売りの悲惨なる少女
   茨姫      ♀ 眠りし淫欲なる姫君
   雪の女王    ♀ 心凍らす雪の女王
   赤頭巾     ♀ 狼を惨殺する善悪の女
   モモ      ♀ 時空を越える女
   人魚姫     ♀ 魔女の呪いを受ける魚人の姫君
   ホレ      ♀ 心優しき魔法使いの女
   親指姫の冠者  ♀ 親指姫の意志を伝える冠者
   ハーメルン   ♂ 笛吹き男
   グレーテル   ♀ 笑顔で老婆を殺す少女
   かぐや姫    ♀ 月より来し姫君
   ラプンツェル  ♀ 塔から髪を垂らす女
   醜い家鴨の子  ♀ 疎外されるメスのアヒル
   白雪姫     ♀ 鏡に選ばれし姫君

○設定…

ヤーコプカール・グリム民族
   茨姫 赤頭巾 ホレ グレーテル ラプンツェル
   白雪姫

クリスチャン・アンデルセン民族
   赤い靴の女 マッチ売り 雪の女王 人魚姫 親指姫の冠者
   醜い家鴨の子

その他
   ハーメルン(グリム民族から追放) モモ(ミヒャエル・エンデ) 
   かぐや姫(万葉国)

ハオスメルヒェヴンは現在戦争中。「神の御子」がハオスメルヒェヴンへ攻撃を始める。ハオスメルヒェヴンの姫達は青髭城へ避難している。

女性達の中に
  魔女(witch ウィッチ)×1 奴隷(slave スレイヴ)×2 
梟(owl オウル)×1
                        が存在する。
○イメージ…
舞台上には何もなく、音と光で表現する。衣装は各自のイメージ、または属性Tシャツを使用。演出はキャラ芝居とリアル芝居のミックス。戯曲はマルチシナリオにより進行。物語の行方は役者に委ねられる。なお、小道具としてハーメルンの「笛」、赤頭巾の「銃」、白雪姫の「鏡」を用意。

「声」は録音。

可能であればミュージカル、ダンスの要素も取り入れたいが、各役者の任意とする。




  幕前、声が聞こえる。

声  我々の世界と平行して存在するもう一つの世界、ハオスメルヒェヴン。
   ハオスメルヒェヴンは今、戦火の最中にある。地獄の門より進軍する
   「神の御子」と名乗る謎の一族が侵略行為を開始する。己の世界を守る
   為、男達は皆戦場へと赴き凄惨なる闘いを繰り広げる。大陸に存在する
   民族、ヤーコプカール・グリム民族、クリスチャン・アンデルセン民族
   の垣根を越え女達は集い、ハーメルンが警護する青髭城へと避難する。
   場には一人の男と十四人の女。

  幕開く。OPダンス。それはミュージカルのようでもある。一同による
  壮大なシーンが繰り広げられる。と、そこはハオスメルヒェヴン内、青髭
  城。場には、茨姫、赤頭巾、ホレ、グレーテル、ラプンツェル、白雪姫が
  歩いている。

白雪姫  ねえ、本当に一緒じゃなきゃいけないの?
ラプン  そうなの。嫌だわ。大勢って嫌い。
 茨姫  あんたは只でさえ塔の上でぼっちだから。
ラプン  そういう問題じゃないでしょ。
グレー  仲良くやっていけるかな?
赤頭巾  あのさ、その必要あるの?
グレー  どういうこと?
赤頭巾  分かり合えないならさ…(銃を取り出し)殺っちゃえばいいし。

   赤頭巾、銃を取り出し発砲。再び弾を込めようとする。

白雪姫  物騒、物騒!しまって!
赤頭巾  (銃を離し)え、やだ、大きい音、怖い!
ラプン  クレイジーだわ。身内にも不安の種有りか。
グレー  身内も何も関係ないでしょ。ハオスメルヒェヴンの一大事でしょ。
     私はもう本当にもの凄く嫌だけど、皆で協力して…
赤頭巾  神の御子って良く分からないけど…(銃を取り出し)殺っちゃえば…
白雪姫  赤頭巾、とりあえず引き金に手を掛けるのはやめよう。
 茨姫  いいでしょ、白雪姫。やりたい奴にはやらせておけばいいのよ。
グレー  …でも、まあ、いざとなったら私も殺っちゃうから。
白雪姫  茨姫もグレーテルも目が怖い。
 ホレ  ほら、ヤーコプカール・グリム民族は欲求に素直なことで、ほら、有
     名だから。
白雪姫  民族のせいにしちゃ駄目。ね。
ラプン  でも今回の戦争もさ、言っちゃえばさ私達と神の御子との民族間の争
     いだからね。
赤頭巾  そういうことになるのかな?
ラプン  でも神の御子ってなんか良いネーミングだよね。
 ホレ  分からないわよ。ほら、神は神でもサタンや破壊神かも知れないし。
ラプン  怖いね。あーなんだか良く分からないけど嫌な世の中。面倒くさいこ
     とばっかり。
白雪姫  いい、皆。ネガティブに考えちゃ駄目。私達はきっと、分かり合える。
     民族の垣根を越えて。それには愛よ、愛。
グレー  愛。
白雪姫  そう、愛。そして希望、そして夢、そして…王子。この城にはどんな
     王子が、そしてどんなキッスが…ウフフフ、楽しみだわ…

   白雪姫、鏡を取り出す。

白雪姫  鏡よ鏡。この世で一番美しいのは…そう、私よ、私!

   白雪姫退場。

 茨姫  何にも分かってないのね。ここは青髭城なのに。
グレー  なんだか危険な雰囲気。
 茨姫  あら、危険な男って…私、嫌いじゃないわ…白雪姫、熱いヴェーゼ、
     渡さない。
グレー  ちょっと、止めなさいって。

   グレーテル、茨姫を蹴り、踏みつける。

 茨姫  あぁ、この足、流石はグレーテル…悪くないわ。

   グレーテル、茨姫退場。

 ホレ  あんたも充分危険よ。
赤頭巾  私思うの、女なんて皆、危険な生き物。ほら、女は魔女って言うで
     しょ?
 ホレ  私は本当に魔女ですけどね。

   他三人も後を追い退場。赤い靴の女、マッチ売り、雪の女王、人魚姫、親指
   姫の冠者、醜い家鴨の子登場。彼女達は歩いている。

 家鴨  あー怖いよ。嫌だよ、不気味だよ。
赤い靴  黙ってよ。うるさいわね。
 人魚  あんたもバタバタするの止めなさいよ、赤い靴。
赤い靴  しょうがないでしょ、こういう呪いなんだから。
 家鴨  あーホラーだよ、フィアーだよ…
マッチ  暗くて、寒くて、辛いの、いいじゃない。フフフ…
 家鴨  あーここにも怖いのがいたよー
 女王  五月蠅い。

   雪の女王、醜い家鴨の子を凍らす。

 冠者  あ、凍った。
 女王  氷の彫刻なら五月蠅い家鴨も恐怖を感じないでしょう。
 人魚  五月蠅い家鴨じゃなくて、醜い家鴨ね。
 女王  何か?
 人魚  いえ、何も。
マッチ  大変。温めてあげないと…

   マッチ売り、マッチを擦り、醜い家鴨の子に火をつける。

 家鴨  あちちちち!
 冠者  家鴨の丸焼き。ジューシーな香り…
赤い靴  酷くない?
 冠者  …と、親指姫様が仰っております。
赤い靴  あんたの意見じゃないの。
 冠者  私は親指姫様に使える冠者ですから。姫の言葉を皆様に伝えるのが
     私の仕事なのです。
赤い靴  で、その姫は?
 冠者  髪の中にいるよ、馬鹿女。
赤い靴  は?
 冠者  と、親指姫様が仰っています。
 人魚  あー、なんでこの民族はこんなのばっかりなんだろう。
 女王  我らクリスチャン・アンデルセン民族は個性を重んじる高貴な民。
     相容れない感性にこそ、美しさを見出すのじゃ。
 人魚  これ、絶対グリムさんたちと仲良く出来ないよね。
赤い靴  他民族とこんな恐ろしい城で…本当に最悪。
 冠者  あなたの顔の方が怖い…
赤い靴  は?
 冠者  姫、こら、お口がすぎますぞ。
人魚姫  青髭城はハオスメルヒェヴン一の頑丈な城です。それに、ハーメルン
     様はその笛の音で人を操る能力を持つ。ここ以上に安全な場所は他に
     ありませんよ。
 女王  我らだけ生き残れればいいのじゃ。
マッチ  うわ、よがった意見。嫌いじゃないわ。
 女王  下等なヤーコプカール・グリムの奴らはこの戦で息絶えるがよい。
人魚姫  駄目ですよ。分かり合えるはずです。魚も人も分かり合えるんですから。
マッチ  何、自分だけ出来るような気になってるの、人魚姫。あなたも充分…
     フフフ…
 家鴨  続き何?気になるよ!
 冠者  早く行きましょう。疲れています。
 人魚  そうだね、親指姫も…
 冠者  いえ、これは私の意見です。

   親指姫の冠者退場。

赤い靴  疲れてるっていうならどう見たって私が一番でしょう!

   赤い靴の女退場。

 女王  止まればいいのに。
 家鴨  あの、呪いで靴が勝手に…
 女王  愉快な奴じゃ。グリムの愚民共にもせめて愉快な輩がいればいいの
     だけれど。
マッチ  本当にそうね。
 人魚  …ですね…ははは。

   他五人も退場。かぐや姫登場。

かぐや  あー、どういたしましょう…んー…

   ハーメルン登場。

ハーメ  どうされましたか、かぐや姫。
かぐや  あら、ハーメルン様。本日はお出掛けにならないのですね。
ハーメ  今日は、この大陸の女性達が集う日ですからね。しっかりとお守りし
     なければなりません。
かぐや  そうですね…
ハーメ  どうされました?
かぐや  いえ、ヤーコプカール・グリム民族とクリスチャン・アンデルセン民
     族が一同に介するわけですよね。
ハーメ  そうなりますね。
かぐや  いくら戦時とはいえ、上手くいくかと不安で…
ハーメ  かぐや姫は和を重んじる万葉国の出身。そのお気持ち、お察し致し
     ます。
かぐや  私に出来ることはないかしら…あ、そうだ…

   かぐや姫退場。

ハーメ  全く…この城も騒がしくなるな…フフフ…

(続く)

カラ・ファイ配役とは

2012-03-18 16:19:35 | Weblog
カラ・ファイ
劇作・演出:渡辺裕之

有志劇。カラオケ・ファイト。子どもたちの個性で、舞台上で楽しんで欲しいと思い創作。何よりもわたしがかつて経験したことのある「奇跡」をこの子たちにも味わって欲しかった。選曲、歌い手は人の見た目とこれまで交わしてきた言葉からわたしが勝手に指名。

○春姫・ハルヒ…「ハレ晴れユカイ」
わたしが「はればれ」と呼んだら一斉に「はれはれ!」と訂正が飛んだ、わたしがギャップを感じたのが印象的。普段から歌っていそうだなと思ったら、案の定キーチェンジの要望が。

○四十八・シソヤ…「涙サプライズ」
普段の彼女のキャイキャイ感を買って。

○蓑・ミノ…「霊霊霊霊霊魔魔魔魔魔」
実はこの物語の産みの親。かつてタンバリンモンスターと見せたその歌と、後日彼が有志でやりたいことをわたしが組み合わせてこの物語は産まれた。そのシャウトは予定通り観客の笑いをとる。

○秋・アキ…「手紙~拝啓十五の君へ~」
歌の方向に進みたいということを知っていたので、実力とわれるバラードを当てる。

○小室・コムロ…「EZ DO DANCE」
かつての打ち上げ、act orchのニッシーさんのその「小室マジック」を目の前にし、この盛り上げる重要な役どころを、Ms.frogに引き続きお願いする。キーに苦労していたが、ちゃんと歌えていたよ。

○手平・テヒラ…「手の平を太陽に」
そのほのぼのとした見た目から当てる。凄く癒されたが、合間にhiphopの足技を入れてもらう。実は熱い子。

○金発・かねはつ…「もうバンドマンに恋なんてしない」
目力、その格好よさからV系を当てる。「歌うのいや」との要望を受け、エチュードをしてもらう。バンドマン役のそのギタープレイもやっぱり格好良い。

○広・ヒロ…「train train」
普段からドラムを叩いている。これはきっとロックな奴だ!と思いロックな役を当てるも、後日いったカラオケで完璧な「桜井翔ラップ」を見て、当てところを失敗したか?と思わせる。小道具もちゃっかり用意してくるが、お客様にちゃんと見せないところがいやはやなんとも。

○小林・コバヤシ…「もしかして」
演歌好き。故に演歌を当てる。こぶしのまわしが尋常ではない。

○窓名・マドナ…「ダイアナザデイ」
見た目からそのまま洋楽をお願いする。直前まで本格派にならないと言っていたが、本番ではちゃんと本格派。

○悟空・サトリソラ…「チャラヘッチャラ」
こちらも見た目で、「なんかドラゴンボールに出てきそうだな」と思い、当てる。素晴らしいキーの高さで元気玉を発声。

○桶谷・オケタニ…「歌以外全般」
働け蟻で出ないため、歌以外に掛かる全ての役どころをお願いする。特命として歌いたくない人がいたらその全ての歌を回収するという激務があったが、遂行することなく無事に終わる。良かったのか良くなかったのか。



こうして振り返り改めて、なんとものびのびと作ったものだなぁと思う。

Ms.Frog配役とは

2012-03-17 15:53:18 | Weblog
Ms.Frog

わたしの作品。まずは頑張った役者から解説。こちらもやりたいことをまず聞き、それにより役を作ったが、1との違いは、そこに「わたしがやって欲しいこと」という劇作演出の意図もプラスしたこと。故に役者の表現と劇作演出の表現の2つが混在することとなる。それをどう整理するかがポイントとなる。


○アマちゃん
やりたいこと…腹黒
act orchに出てくれたが、その時はアンサンブルメンバーであった。考えてみるとこの期はアンサンブルばかりだ。腹黒ということで、芝居の要所要所に皮肉や確信を突く台詞をちりばめた。合いの手役割。滑舌に苦労していた。本人は恐らく良い子で怒りや謀略といった内容の台詞を自身に落とすのに時間がかかったのであろう。

○家雨
やりたいこと…お婆ちゃん
修了公演では基本等身大の役をやってもらっているが、まさかのお婆ちゃん。act orchで器用なことは分かっていたのでお婆ちゃんの気質を持った学生というとんでもなくやりずらい役をお願いする。苦労していたが、稽古を重ねるにつれ、そして本番の舞台上で彼女は覚醒したと思う。この物語が成功するか否かは彼女が愛されるかどうか。

○ウッシー
やりたいこと…厨二病
厨二病と聞いて言葉はぎりぎり知っていたがその本質は良く分かっていなかったわたし。世代のギャップを感じる。しかし、その根底は変わらないであろうと、厨二の要素に往年のパワーマイムをドッキングする。余談ではあるが、厨二を理解するために子どもたちから色々な漫画を借りて読む。少しは分かった気がする。

○小森
やりたいこと…ドS
当初はゆるっとした子であったがこの2年間で非常に成長したと思う。余談ではあるが彼女には二年間に渡って「ハゲの渡辺」と台詞を当てる。つまり終始わたしに対してドSであったわけだ。そして基本的な気質がSッ気であることを打ち上げの時に知る。

○多胡
やりたいこと…女帝
「ドSと女帝とどう違うのか」と聞かれる。その演じ分けも期待し役を当てる。歩き方がピョコピョコして可愛らしかった為指摘すると、影で練習したのであろう、優雅になっていたことが印象的。エチュードは非常に器用なのだが、「役」になると一定になりがちなのが今後の課題か。

○殿様
やりたいこと…オバカ
この作品は一見すると家雨が涙を誘っているが、実は彼女がその起爆剤。非常に重要なポジションをお願いする。普段のエチュードが「一定」なので、それを克服して欲しかった。本番上の涙は紛れも無く本物であり、観客にも伝わったはずだ。この子は公演後、素晴らしい思い出をプレゼントしてくれた軍師でもある。

○ヌマヌマ
やりたこと…下僕
ドS、女帝の対照が欲しいなと思っていたら見事に「下僕」を立候補。「攻め」の台詞の多いメンバーの中で「受け」を担ってもらう。劇中に小演劇界に伝わる奥義「エビシステム」のローリングを習得してもらうべく頑張ってもらう。結果、エビシステムよりも、その後のバウンドの完成度が高い。良いバウンドでした。

○ヒッキー
やりたいこと…普通
この子は基本大きく発する演技をする。本人も自覚しており、今後様々な芝居をして欲しいと思い、あえて味のない役を書く。しかし、第一話目の「蟻」に引きずられたか、豪快さが加わってしまう。己のコントロールが課題だ。物語の最後、「蛙と鳥」のくだりは、シンプルに台詞を発することが出来たと思う。





働け蟻とは

2012-03-16 15:43:16 | Weblog
「働け蟻」

片桐さんの作品。

…蟻の14番隊は個性派揃い。隊長は1~6番隊員の扱いに手を焼く。その日、サボってもいい蟻を決めるべく其々の意見を言い合い、また罵り合いを始める。その最中人間の子どもの流水により、蟻の巣は窮地に陥る。女王を助けるべく14番隊の1番隊員は巣の中に入る。救出すべく危険を顧みない隊長。その姿に隊員は彼をリーダーと認める…


という作品。

はじめこの設定と持ってきた台本をみて、「面白い。わたしのはやらずにこれだけにしてきっちり作っていった方がいいんじゃないかな」と思ったのは正直な話。言葉のセンスがいいのだ。本人は作り方、演出に苦戦していたが、出来たものを見て、やはり立派な作品となっていると感じる。

劇作演出としてはゆったり明るい気持ちで見て欲しい意図があったが、役者達の熱のある芝居、そして真っ二つになる1番隊員という設定により、観客がどっちの感情の方向に進んでいいのか迷った感がある。この経験を糧に更なる劇作演出をして欲しいと密かに思っている。




本番直前に出来上がった1番隊員の下半身は相当なパワーを持っていた。足を軽く曲げるとちゃんと膝が立つ。


修了公演終了とは

2012-03-15 15:36:57 | Weblog


今年も無事に終了しました。バーンアウト状態が続いております。年を経たことと、私情が絡んだことで大分酷い状態ですが、少しずつ振り返っていきたいと思います。

重ねて15期の作品を見たいという子がいたので、後日3パターンの台本をアップしたいと思います。

「Witch trial tale」配役とは2

2012-03-14 15:23:58 | Weblog
後半戦。前半も個性派揃いだが後半もまた然り。

○ホレ
本人のやりたいことが「魔法使い」
見た目、エチュードから可愛いおばあさんがやりたいのかなと思っていたところ、いざ本人の演技を見ていると迫力ある魔女。貴女が魔女でしょ?と思わず言いたくなっちゃう程。稽古段階で台本を持っていたので覚えられているかなと不安だったが、ゲネで見せたそのキレッぷりの良い台詞は思わず「良いよ!」と声を掛けてしまう程。ダンスのロッキンを教えてもらう。わたしの回転多い手回しをみて苦笑していたのが印象深い。

○親指姫の冠者
本人のやりたいことが「主役の横でうるさい奴」
恐らくバイプレイヤーとしての己を試してみたかったのだろう。しかし、この公演は全員が主人公。というわけで親指姫に仕える召使いというキャラクターが生まれる。本人はおそらく器用なのだろう、演技もダンスもそつなくこなす。しかし、だからこそ演出の要望に応えられる芝居をして欲しいと思う。微細な調整はまだまだこれから。フライヤー貼りを凄い仕方なさそうな顔で引き受けてくれた。

○ハーメルン
本人のやりたいことが「怪しい役」
唯一の男子。姫君たちが活躍する芝居で重要な役割を任せる。幼い印象の芝居をしていたが、後半の自主稽古での成長振りが素晴らしい。なお、彼はゲームには参加しない、超越した立場にいる存在であった。皆がゲームをしている時の羨ましそうな目が忘れられない。ゲネでゲームをいまひとつ理解していなかった白雪姫に何故か殴られる。きっと本人は心底驚いていたことだろう。わたしは大爆笑したが。最後の最後で参加出来てよかったね。

○グレーテル
本人のやりたいことが「蹴る役」
後日聞いたらば勝手にハメられたとのことだが、茨姫役の子を蹴りたい役というオーダーを受け取った。このどうすればいいか悩んでいたところ、魔女を蹴り釜戸に落とすというグレーテルを見つけ当てる。凄くストレートな演技をする子であり、笑顔の中に見える狂気という複層性で苦労したことだろう。なお稽古帰り、彼女が持っていた弓道の弓が偶然にもわたしの目に当たりかけ、ビビッたわたしへの「あ、ごめんなさい」の素っ気無さタップリの言い方がまさにグレーテル。それだよ、それ。

○かぐや姫
本人のやりたいことが「団子屋の娘」
凄いオーダーを貰ったものだ。これまではなんとか性格の分かり易いオーダーであったが、団子屋の娘。笑顔で「いらっしゃい」くらいしか思いつかない。そこへ今回の童話系の内容。団子屋→月見団子→お月見→月とプロセスを踏み、和のテイストもぶっこんでかぐや姫に。しかしこの要素があったからこそ「国」へとその単位が広がり、結果「神の御子」の第三勢力を思いつく。ありがたいことだ。声の小ささも本番はちゃんと出来ていたよ。ダンス成長率最大。怪我した足とは思えない。

○ラプンツェル
本人のやりたいことが「後半に目立つ役」
act orchではアンサンブル参加であった為具体的な役を作るのは今回が初。オーダーもオーダーだったので、後半に閃く謎解きの役割を。稽古段階では本当に閃いたかのように台詞を思い出す為、土日稽古でもヒヤヒヤしていた。本番は無事ラプンツェルが目立つ展開になり、存分に閃いてもらった。役を書いた当時、長い髪をしていたが本番直前に演出に許可も取らずにバッサリと切ったつわもの。

○醜い家鴨の子
本人のやりたいことが「うるさい役」
普段の彼女の可愛がられよう、言動からぴったりの役であったが本人が意外としっとりとしたお姉さん演技をしていたため、陽気な可哀想が本気の可哀想に見えるシーンもあった。今度はそっちの方向で役を書いてみたい。機敏な動作で場を見事にかき乱してくれた。余談であるが代役で醜い家鴨の子をやっているうちにわたしこそ醜い家鴨の子かと思い、本人と対決しようとさえした。衣装の黄色タイツはどこで手に入れたのだろう。

○白雪姫
本人のやりたいことが「童話の主役」
かつてここまで言い切った子はいない、とその強気を買いエンディングを託す配役に。ところがどういうわけか稽古最終段階で台詞のあやふやさを見せる。しかし、そこを強気で乗り切るつわもの。周りがしっかりしていたのでそのあやふやさでも充分に闘える、周りも強いが本人のハートが一番強い。衣装をつけると見事な白雪姫。託してよかった。しかしゲネも本番もバンバン鏡を落とす。まさかの魔女役割の際にも鏡を落とす事態に。しかし、何故かめがねを落としたとモモにその疑いを向けることに成功


凄い個性派ばかりだ。

「Witch trial tale」配役とは1

2012-03-13 23:39:27 | Weblog
役、役の出来た理由と個々人の感想を。人数が多いので2回に分けて。

今回は物語からではなく役をまず設定し、そこから出来ることを考えた。役者にやりたいことを聞いて、それを活かす役を創造する。つまり役者に寄り添った物語なのだ。1においてはまずは演劇を楽しむことという考えから、そのようにした。結果としてわたしも新しい書き方が出来るようになった。


○赤い靴の女
本人のやりたことが「踊るティディベア職人」
上記になんだか格好良いことを書いたが「ティディベア」という超限定される設定を活かす技が私には見つからなかった。「踊る」を抜粋させて頂き、踊り続ける女にする。実際に足をバタバタさせ続けるというのは凄く大変で、本人も頭を固定しながら動くという動作を一生懸命頑張っていた。オープニングで笑いが取れたことにより、その後の皆の自信へと繋がった見事なばたつかせ。本人はキャラクター演技が得意なのであろう。

○マッチ売り
本人のやりたいことが「本人と正反対の性格の役」
普段もエチュードもとてもハッピーな子。ブーたれることも多いがきっちり成果を出すナイスな子でもある。故に、ネガティブで卑屈なキャラを演じて貰った。「私達を襲うつもりならとっくに襲っている。そして死んでいる。」はお気に入りの台詞。稽古中、動作の基点となるジャンプや自主練でのダンスもブーたれてはいたものの一生懸命頑張っていたことはわたしはちゃんと見ていた。打ち上げのもんじゃの食べ方は江戸っ子

○茨姫
本人のやりたいことが「セクシー」
act orchにも出てくれた子。亀井戸の時には結果つかみづらい役になってしまった(それでも彼女の味付けによって生み出された「若洲」は本当に素晴らしかった。)為、今回は分かり易くおフザケ要素の強い役を。物語の鍵となる「民族・国」は、この子のやりたいストーリー「戦争・悼む」発言を聞いて採用、今回の作品の重要なエッセンスとなった。実はこの物語の影の産みの親。台詞「これじゃぁ…戦争と変わらないね」にその思いの全てを託した。あとナイスヅラ

○雪の女王
本人のやりたいことが「偉そう・胡椒のような役」
act orchにも出てくれた子。亀井戸の時は彼女の本質を掴み切れていなかったが、今回はその特性を充分に理解…したつもりだったが、「偉そう」を元にしたパワー系の役になってしまったため、結果本人は凄いやりづらかったのではと反省。そうでなければ良いのだが。彼女の発する不意の一言がわたしは本当に好きで、アドリブシーンでも率先しての発言をこっそりとお願いしていた。彼女に能を舞わせたのは完全にわたしの趣味。すまん。でも最高だった。

○赤頭巾
本人のやりたいことが「イケメンか萌え」
act orchにも出てくれた子。亀井戸の時は静かな役であり、その時の「もっと暴れたかった」というボヤキを受け、萌えもカッコいいもある「普段は可愛らしいが銃を構えると凶暴になる」という二重人格の役を当てる。前回気になった声量も克服したその凶暴台詞は、「もっと凶暴に」というとグレードが更に上がる。演技の幅も広がった。きっちり作ってきた衣装で観客として来た演劇ユニットアテマチガイパーマネントのしょうもない男どもの心を完全に掴む。

○モモ
本人のやりたいことが「物語のキーとなる塩のような役」
act orchにも出てくれた子。亀井戸の時は適当で軽い役。その軽さは目を見張るものがあったので、そのいいところを残しつつ、中盤の物語の進行をお願いする。ダンスの進化っぷりが尋常でない。そしてアドリブシーンの本番強さ、観客の反応を見てやることを変える空気の読みっぷりは見事。自主稽古中、演出のわたしの発言に対する的確すぎるツッコミ、実は密かに感心していた。モモの能力「時を止める」を上手く使えば、物語はもっと楽に展開していたことは言わない約束。

○人魚姫
本人にやりたいことが「大人の役」
見た目と声質によって子どもに見えてしまう。エチュードも基本的に幼い子を自らやってしまう傾向にあった。本人の要望を聞き、個性派しかいない15人の中でただ1人の理性溢れる知的な大人の役を当てる。稽古中、不意に子どもの一面が出ることもあったが、衣装をつけいざ本番になると見事に大人感が出ていた。わたしのオーダー仲間由紀恵をちゃんと見てくれていたのだろうか。発声練習シーンで笑いが取れたのはお見事。


後半8人は後日。

「Witch trial tale」とは

2012-03-12 23:02:58 | Weblog

「Witch trial tale」無事終演致しました。ご来場誠にありがとうございました。

後日ゆっくり振り返りたいと思います。

今データチェックで2月末に行われた通し稽古の映像を見ていますが、成長具合が尋常ではありません。
そして今日当日のアドリブシーンの竹下さんのノリ具合が尋常ではありません。