弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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精神疾患を発症して欠勤や休職を繰り返す。

2012-11-18 | 日記
Q12 精神疾患を発症して欠勤や休職を繰り返す。


 精神疾患を発症して欠勤や休職を繰り返す社員については,まず,業務により精神障害が悪化することがないよう配慮する必要があります。
 精神疾患を発症していることを知りながらそのまま勤務を継続させ,その結果,業務に起因して症状を悪化させた場合は,労災となり,会社が安全配慮義務違反を問われて損害賠償義務を負うことになりかねません。
 社員が精神疾患の罹患していることが分かったら,それに応じた対応が必要であり,本人が就労を希望していたとしても,漫然と放置してはいけません。

 所定労働時間内の通常業務であれば問題なく行える程度の症状である場合は,時間外労働や出張等,負担の重い業務を免除する等して対処すれば足りるでしょう。
 しかし,長期間にわたって所定労働時間の勤務さえできない場合は,原則として,私傷病に関する休職制度がある場合は休職を検討し,私傷病に関する休職制度がない場合は普通解雇を検討せざるを得ません。

 精神疾患を発症した労働者が出社してきた場合であっても,労働契約の債務の本旨に従った労務提供ができない場合は,就労を拒絶して帰宅させ,欠勤扱いにすれば足ります。
 労働契約の債務の本旨に従った労務提供ができるかどうかは,職種や業務内容を特定して労働契約が締結された場合は当該職種等についてのみ検討すれば足りるケースが多いですが,職種や業務内容を特定せずに労働契約が締結されている場合は,現に就業を命じた業務について労務の提供が十分にできないとしても,当該社員が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供ができ,かつ,本人がその労務の提供を申し出ているのであれば,債務の本旨に従った履行の提供があると評価されるため(片山組事件最高裁第一小法廷平成10年4月9日判決),他の業務についても検討する必要があります。
 労働契約の債務の本旨に従った労務提供があるかどうかを判断するにあたっては,専門医の助言を参考にする必要があります。
 本人が提出した主治医の診断書の内容に疑問があるような場合であっても,専門医の診断を軽視することはできません。
 主治医への面談を求めて診断内容の信用性をチェックしたり,精神疾患に関し専門的知識経験を有する産業医等への診断を求めたりして,病状を確認する必要があります。
 主治医の診断に疑問がある場合に,会社が医師を指定して受診を命じたところ,本人が指定医への受診を拒絶した場合は,労働契約の債務の本旨に従った労務提供がないものとして労務の提供を拒絶し,欠勤扱いとすることができる可能性がありますが,慎重な検討が必要となります。

 私傷病に関する休職制度は,普通解雇を猶予する趣旨の制度であり,必ずしも休職制度を設けて就業規則に規定しなければならないわけではありません。
 休職制度を設けずに,私傷病に罹患して働けなくなった社員にはいったん退職してもらい,私傷病が治癒したら再就職を認めるといった運用も考えられます。

 明らかに精神疾患を発症しているにもかかわらず,本人が精神疾患の発症や休職事由の存在を否定し,専門医による診断を拒絶することがありますが,精神疾患等の私傷病を発症しておらず健康であるにもかかわらず,労働契約の債務の本旨に従った労務を提供することができていないとすれば,通常は普通解雇事由に該当することになります。
 本人の言っていることが事実だとすれば,普通解雇を検討せざるを得ない旨伝えた上で,専門医による診断を促すのが適切なケースもあるかもしれません。

 精神障害を発症した社員が出社と欠勤を繰り返したような場合であっても,休職させることができるようにしておくべきでしょう。
 例えば,一定期間の欠勤を休職の要件としつつ,「欠勤の中断期間が30日未満の場合は,前後の欠勤期間を通算し,連続しているものとみなす。」等の通算規定を置くか,「精神の疾患により,労務の提供が困難なとき。」等を休職事由として,一定期間の欠勤を休職の要件から外すこと等が考えられます。
 再度,長期間の欠勤がなければ,休職命令を出せないような規定を置くべきではありません。

 私傷病に関する休職制度があるにもかかわらず,精神疾患を発症したため労働契約の債務の本旨に従った労務提供ができないことを理由としていきなり解雇するのは,解雇権を濫用(労契法16条)したものとして解雇が無効と判断されるリスクが高いので,お勧めできません。
 解雇が有効と認められるのは,休職させても回復の見込みが客観的に乏しい場合に限られます。
 医学的根拠もなく,主観的に休職させても回復しないだろうと思い込み,精神疾患に罹患した社員を休職させずに解雇した場合,解雇が無効と判断されるリスクが高くなります。

 本人が休職を希望している場合は,休職申請書を提出させてから,休職命令を出すことになります。
 休職申請書を提出させることにより,休職命令の有効性が争われるリスクが低くなります。

 「合意」により休職させる場合は,休職期間(どれだけの期間が経過すれば退職扱いになるのか。)についても合意しておく必要があります。
 通常,就業規則に規定されている休職期間は,休職「命令」による休職に関する規定であり,合意休職に関する規定ではありません。
 原則どおり,本人から休職申請書を提出させた上で,休職「命令」を出すのが,簡明なのではないでしょうか。

 精神疾患が治癒しないまま休職期間が満了すると退職という重大な法的効果が発生することになりますので,休職命令発令時に,何年の何月何日までに精神疾患が治癒せず,労務提供ができなければ退職扱いとなるのか通知するとともに,休職期間満了前の時期にも,再度,休職期間満了日や精神疾患が治癒しないまま休職期間が満了すれば退職扱いとなる旨通知すべきでしょう。

 休職を繰り返されても,真面目に働いている社員が不公平感を抱いたり,会社の負担が重くなったりしないようにするために最も重要なことは,休職期間は無給とすることです。
 休職期間中も有給とした場合,会社の活力が失われてしまいかねません。
 傷病手当金の支給申請には協力するようにして下さい。

 復職後間もない時期(復職後6か月以内等)に休職した場合には,休職期間を通算する(休職期間を残存期間とする)等の規定を置くべきでしょう。
 そのような規定がない場合は,普通解雇を検討せざるを得ませんが,有効性が争われるリスクが高くなります。

 復職の可否は,休職期間満了時までに治癒したか(休職事由が消滅したか)否かにより判断されるのが原則です。
 ただし,職種や業務内容を特定せずに労働契約が締結されている場合は,現に就業を命じた業務について労務の提供が十分にできないとしても,当該社員が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供ができ,かつ,本人がその労務の提供を申し出ているのであれば,債務の本旨に従った履行の提供があると評価されるため(片山組事件最高裁第一小法廷平成10年4月9日判決),他の業務についても労働契約の債務の本旨に従った労務提供ができるかどうかについても検討する必要があります。
 また,休職期間満了時までに精神疾患が治癒せず,休職期間満了時には不完全な労務提供しかできなかったとしても,直ちに退職扱いにすることができないとする裁判例も存在します。
 例えば,エール・フランス事件東京地裁昭和59年1月27日判決は,「傷病が治癒していないことをもって復職を容認しえない旨を主張する場合にあっては,単に傷病が完治していないこと,あるいは従前の職務を従前どおりに行えないことを主張立証すれば足りるのではなく,治癒の程度が不完全なために労務の提供が不完全であり,かつ,その程度が,今後の完治の見込みや,復職が予定される職場の諸般の事情等を考慮して,解雇を正当視しうるほどのものであることまでをも主張立証することを要するものと思料する。」と判示しています。
 休職期間満了時までに精神疾患が治癒せず,休職期間満了時には不完全な労務提供しかできなかったとしても,直ちに退職扱いにすることができないとしたのでは,休職期間を明確に定めた意味がなくなってしまい,使用者の予測可能性・法的安定性が害され妥当ではないと考えられますが,反対の立場を取るにせよ,このような裁判例が存在することを理解した上で対応を検討していく必要があります。

 復職の可否を判断するにあたっては,専門医の助言を参考にする必要があります。
 本人が提出した主治医の診断書の内容に疑問があるような場合であっても,専門医の診断を軽視することはできません。
 主治医への面談を求めて診断内容の信用性をチェックしたり,精神疾患に関し専門的知識経験を有する産業医等への診断を求めたりして,病状を確認する必要があります。
 主治医の診断に疑問がある場合に,会社が医師を指定して受診を命じたところ,本人が指定医への受診を拒絶した場合は,休職期間満了時までに治癒していない(休職事由が消滅していない)ものとして取り扱って復職を認めず,退職扱いとすることができる可能性がありますが,慎重な検討が必要となります。

 休職制度の運用は,公平・平等に行うことが重要です。
 勤続年数等により異なる扱いをする場合は,予め就業規則に規定しておく必要があります。
 休職命令の発令,休職期間の延長等に関し,同じような立場にある社員の扱いを異にした場合,紛争になりやすく,敗訴リスクも高まる傾向にあります。

 精神疾患の発症の原因が,長時間労働,セクハラ,パワハラによるものだから労災だとの主張がなされることがある。精神疾患の発症が労災か私傷病かは,『心理的負荷による精神障害の認定基準』(基発1226第1号平成23年12月26日)を参考にして判断することになりますが,その判断は必ずしも容易ではありません。
 実務的には,労災申請を促して労基署の判断を仰ぎ,審査の結果,労災として認められれば労災として扱い,労災として認められなければ私傷病として扱うこととすれば足りることが多いものと思われます。

 精神疾患の発症が労災の場合,療養するため休業する期間及びその後30日間は原則として解雇することができません(労基法19条1項)。
 欠勤が続いている社員を解雇しようとしたり,休職期間満了で退職扱いにしたりしようとした際,精神疾患の発症は労災なのだから解雇等は無効だと主張されることがあります。
 また,精神疾患の発症が労災として認められた場合,業務と精神疾患の発症との間に相当因果関係が認められたことになるため,労災保険給付でカバーできない損害(慰謝料等)について損害賠償請求を受けるリスクも高くなります。

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勤務態度が悪い

2012-11-18 | 日記
Q3 勤務態度が悪い。


 勤務態度の悪さは,基本的には注意,指導,教育して改善させるべき問題です。
 口頭で注意,指導,教育しても改善しない場合は,書面で注意,指導,教育することになります。
 書面を交付するのは大げさでやりにくいというのであれば,まずは電子メール等を利用することから始めてもよいでしょう。
 書面で注意,指導,教育しても改善しない場合は,懲戒処分を検討することになります。
 懲戒処分を行っても改善しない場合は,退職勧奨,解雇等を検討せざるを得ませんが,最後の手段です。

 十分な注意,指導,教育をしないままいきなり解雇した場合は,無効とされるリスクが高くなります。
 解雇が有効とされるためには,解雇予告手続(労基法20条)を取るだけでなく,就業規則の普通解雇事由又は懲戒解雇事由に該当し,解雇権濫用(労契法16条)や懲戒権の濫用(労契法15条)とされないこと等が必要となります。
 解雇予告手続を取ったとしても解雇事由に該当しなければ解雇は無効となりますし,解雇事由に該当したとしても,解雇権又は懲戒権を濫用したものとして解雇が無効とされるリスクがあることに注意して下さい。
 「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」(労契法16条),「使用者が労働者を懲戒することができる場合において,当該懲戒が,当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」(労契法15条)とされています。
 普通解雇の場合は,当該労働契約を終了させなければならないほど勤務態度が悪くて職務を行う能力や適格性を欠いているかが,懲戒解雇の場合は,職場から排除しなければならないほど勤務態度が悪いことにより職場秩序を阻害したのかが問題となります。

 注意,指導,教育して,勤務態度の悪さを改善させることができるのであれば,注意,指導,教育して改善させればいいのですから,解雇の有効性を判断する際にも,改善が期待できないくらい勤務態度が悪いと評価できるかが問題となります。
 注意,指導,教育して改善の機会を与えることもせずに,勝手に,改善の見込みがないと思い込んで解雇するのは危険です。
 まずは,実際に,注意,指導,教育して改善の機会を与え,改善の見込みがないかどうかを確かめたことの証拠を残しておく必要があります。
 口頭で注意,指導,教育しても改まらない場合には,書面で注意,指導,教育し,記録に残しておくべきです。
 書面等の客観的証拠がないと,訴訟になった場合は,「注意,指導,教育されたことはありません。」と主張されるのが通常です。
 また,書面で注意,指導,教育することにより,口頭での注意,指導,教育よりもより強く改善を促しているというメッセージにもなります。

 書面で注意,指導,教育しても改善しない場合は,懲戒処分を検討します。
 懲戒処分が有効というためには,就業規則の定める懲戒事由に該当し,懲戒権の濫用(労契法15条)にあたらず,就業規則の手続に従っていることが必要となります。
 労契法15条では「使用者が労働者を懲戒することができる場合において,当該懲戒が,当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」と定められており,懲戒事由に該当する場合であっても,懲戒処分が有効となるとは限らないことに注意が必要です。
 もっとも,軽度の懲戒処分であれば使用者の裁量の幅が広く,有効と判断されるケースが多いですし,訴訟等で争われるリスクも比較的低いところです。

 懲戒処分や事前の警告が解雇の前提要件というわけではありませんが,解雇は,余程悪質な事案を除き,戒告,減給,降格処分等の懲戒処分をし,改善しなければ解雇する可能性がある旨の警告をしてからにすることが望ましいところです。
 問題社員に対して最初に行う処分が懲戒解雇,諭旨解雇といった退職の効果を伴う処分である場合は,訴訟等で使用者側か苦戦するケースが多いというのが実情です。

 十分に注意,指導,教育し,繰り返し懲戒処分を行っているようなケースの場合,解雇をするまでもなく,合意退職が成立することが多いです。
 解雇の有効性を見通すことが困難なケースが多いこともあり,どうしても辞めてもらいたい問題社員については,まずは退職勧奨により退職届を提出してもらうことに全力を尽くすのがセオリーです。

 転職が容易ではない社員については,退職の合意を取り付ける難易度が高く,解雇した場合も訴訟等のトラブルになるリスクが高いです。
 例えば,(賃金水準はそれ程高くなくても)居心地のいい職場に長年勤務している能力が低い社員に対し,退職勧奨したり解雇したりすると,訴訟等のトラブルに発展することが多いという印象です。

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遅刻や無断欠勤が多い。

2012-11-18 | 日記
Q2 遅刻や無断欠勤が多い。


 基本的には注意,指導,教育して改善させるべき問題です。
 口頭で注意,指導,教育しても改善しない場合は,書面で注意,指導,教育すべきでしょう。
 書面を交付するのは大げさでやりにくいというのであれば,まずは電子メール等を利用することから始めてもいいと思います。
 書面で注意,指導,教育しても改善しない場合は,懲戒処分を検討することになります。
 最終的には解雇も検討せざるを得ませんが,最後の手段です。

 十分な注意,指導,教育をしないままいきなり解雇した場合は,無効とされるリスクが高くなります。
 従来,ルーズな勤怠管理をしていた職場で,従来であれば容認されていた程度の遅刻や無断欠勤をしたからといって,直ちに重い処分をすることは困難です。
 解雇が有効とされるためには,解雇予告手続(労基法20条)を取るだけでなく,就業規則の普通解雇事由又は懲戒解雇事由に該当し,解雇権濫用(労契法16条)や懲戒権の濫用(労契法15条)とされないこと等が必要となります。
 解雇予告手続を取ったとしても解雇事由に該当しなければ解雇は無効となりますし,解雇事由に該当したとしても,解雇権又は懲戒権を濫用したものとして解雇が無効とされるリスクがあることに注意して下さい。
 「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」(労契法16条),「使用者が労働者を懲戒することができる場合において,当該懲戒が,当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」(労契法15条)とされています。
 普通解雇の場合は,当該労働契約を終了させなければならないほど遅刻や無断欠勤が多く職務を行う能力や適格性を欠いているかが,懲戒解雇の場合は,遅刻や無断欠勤が多いことにより職場から排除しなければならないほど職場秩序を阻害したのかが問題となります。
 解雇の有効性を判断するにあたっては,遅刻や欠勤が業務に与える悪影響の程度,態様,頻度,過失によるものか悪意・故意によるものか,遅刻や欠勤の理由,謝罪・反省の有無,遅刻欠勤を防止するために会社が講じていた措置の有無・内容,平素の勤務成績,他の社員に対する処分内容・過去の事例との均衡等が考慮されることになります。

 注意,指導,教育して,遅刻,無断欠勤の多さが改善されるのであれば,注意,指導,教育して改善させればいいのですから,解雇の有効性を判断する際にも,改善が期待できないと評価できるかが問題となります。
 実際に注意,指導,教育して改善の機会を与えることもせずに,勝手に,改善の見込みがないと思い込んで解雇するのは危険です。
 まずは,実際に,注意,指導,教育して改善の機会を与え,改善の見込みがないかどうかを確かめたことの証拠を残しておく必要があります。
 口頭で注意,指導,教育しても改まらない場合には,書面で注意,指導,教育し,記録に残しておくべきと考えます。
 書面等の客観的証拠がないと,訴訟になった場合は,「注意,指導,教育されたことはありません。」と主張されるのが通常です。
 また,書面で注意,指導,教育することにより,口頭での注意,指導,教育よりもより強く改善を促しているというメッセージにもなります。
 懲戒処分や事前の警告が解雇の前提要件というわけではありませんが,解雇は,原則として,戒告,譴責,減給,降格処分等の懲戒処分をし,改善しなければ解雇する可能性がある旨の警告をしてからにすることが望ましいところです。

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勤務態度が悪い。

2012-11-18 | 日記
Q3 勤務態度が悪い。


 勤務態度の悪さは,基本的には注意,指導,教育して改善させるべき問題です。
 口頭で注意,指導,教育しても改善しない場合は,書面で注意,指導,教育することになります。
 書面を交付するのは大げさでやりにくいというのであれば,まずは電子メール等を利用することから始めてもよいでしょう。
 書面で注意,指導,教育しても改善しない場合は,懲戒処分を検討することになります。
 懲戒処分を行っても改善しない場合は,退職勧奨,解雇等を検討せざるを得ませんが,最後の手段です。

 十分な注意,指導,教育をしないままいきなり解雇した場合は,無効とされるリスクが高くなります。
 解雇が有効とされるためには,解雇予告手続(労基法20条)を取るだけでなく,就業規則の普通解雇事由又は懲戒解雇事由に該当し,解雇権濫用(労契法16条)や懲戒権の濫用(労契法15条)とされないこと等が必要となります。
 解雇予告手続を取ったとしても解雇事由に該当しなければ解雇は無効となりますし,解雇事由に該当したとしても,解雇権又は懲戒権を濫用したものとして解雇が無効とされるリスクがあることに注意して下さい。
 「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」(労契法16条),「使用者が労働者を懲戒することができる場合において,当該懲戒が,当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」(労契法15条)とされています。
 普通解雇の場合は,当該労働契約を終了させなければならないほど勤務成績,勤務態度等が不良で職務を行う能力や適格性を欠いているかが,懲戒解雇の場合は,規律違反行為により職場から排除しなければならないほど職場秩序を阻害したのかが問題となります。

 注意,指導,教育して,勤務態度の悪さを改善させることができるのであれば,注意,指導,教育して改善させればいいのですから,解雇の有効性を判断する際にも,改善が期待できないくらい勤務態度が悪いと評価できるかが問題となります。
 注意,指導,教育して改善の機会を与えることもせずに,勝手に,改善の見込みがないと思い込んで解雇するのは危険です。
 まずは,実際に,注意,指導,教育して改善の機会を与え,改善の見込みがないかどうかを確かめたことの証拠を残しておく必要があります。
 口頭で注意,指導,教育しても改まらない場合には,書面で注意,指導,教育し,記録に残しておくべきです。
 書面等の客観的証拠がないと,訴訟になった場合は,「注意,指導,教育されたことはありません。」と主張されるのが通常です。
 また,書面で注意,指導,教育することにより,口頭での注意,指導,教育よりもより強く改善を促しているというメッセージにもなります。

 書面で注意,指導,教育しても改善しない場合は,懲戒処分を検討します。
 懲戒処分が有効というためには,就業規則の定める懲戒事由に該当し,懲戒権の濫用(労契法15条)にあたらず,就業規則の手続に従っていることが必要となります。
 労契法15条では「使用者が労働者を懲戒することができる場合において,当該懲戒が,当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」と定められており,懲戒事由に該当する場合であっても,懲戒処分が有効となるとは限らないことに注意が必要です。
 もっとも,軽度の懲戒処分であれば使用者の裁量の幅が広く,有効と判断されるケースが多いですし,訴訟等で争われるリスクも比較的低いところです。

 懲戒処分や事前の警告が解雇の前提要件というわけではありませんが,解雇は,余程悪質な事案を除き,戒告,減給,降格処分等の懲戒処分をし,改善しなければ解雇する可能性がある旨の警告をしてからにすることが望ましいところです。
 問題社員に対して最初に行う処分が懲戒解雇,諭旨解雇といった退職の効果を伴う処分である場合は,訴訟等で使用者側か苦戦するケースが多いというのが実情です。

 十分に注意,指導,教育し,繰り返し懲戒処分を行っているようなケースの場合,解雇をするまでもなく,合意退職が成立することが多いです。
 解雇の有効性を見通すことが困難なケースが多いこともあり,どうしても辞めてもらいたい問題社員については,まずは退職勧奨により退職届を提出してもらうことに全力を尽くすのがセオリーです。

 転職が容易ではない社員については,退職の合意を取り付ける難易度が高く,解雇した場合も訴訟等のトラブルになるリスクが高いです。
 例えば,(賃金水準はそれ程高くなくても)居心地のいい職場に長年勤務している能力が低い社員に対し,退職勧奨したり解雇したりすると,訴訟等のトラブルに発展することが多いという印象です。

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遅刻や無断欠勤が多い。

2012-11-18 | 日記
Q2 遅刻や無断欠勤が多い。


 基本的には注意,指導,教育して改善させるべき問題です。
 口頭で注意,指導,教育しても改善しない場合は,書面で注意,指導,教育すべきでしょう。
 書面を交付するのは大げさでやりにくいというのであれば,まずは電子メール等を利用することから始めてもいいと思います。
 書面で注意,指導,教育しても改善しない場合は,懲戒処分を検討することになります。
 最終的には解雇も検討せざるを得ませんが,最後の手段です。

 十分な注意,指導,教育をしないままいきなり解雇した場合は,無効とされるリスクが高くなります。
 従来,ルーズな勤怠管理をしていた職場で,従来であれば容認されていた程度の遅刻や無断欠勤をしたからといって,直ちに重い処分をすることは困難です。
 解雇が有効とされるためには,解雇予告手続(労基法20条)を取るだけでなく,就業規則の普通解雇事由又は懲戒解雇事由に該当し,解雇権濫用(労契法16条)や懲戒権の濫用(労契法15条)とされないこと等が必要となります。
 解雇予告手続を取ったとしても解雇事由に該当しなければ解雇は無効となりますし,解雇事由に該当したとしても,解雇権又は懲戒権を濫用したものとして解雇が無効とされるリスクがあることに注意して下さい。
 「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」(労契法16条),「使用者が労働者を懲戒することができる場合において,当該懲戒が,当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」(労契法15条)とされています。
 普通解雇の場合は,当該労働契約を終了させなければならないほど遅刻や無断欠勤の程度が甚だしく,職務を行う能力や適格性を欠いているかが,懲戒解雇の場合は,遅刻や無断欠勤により,職場から排除しなければならないほど職場秩序を阻害したのかが問題となります。
 解雇の有効性を判断するにあたっては,遅刻や欠勤が業務に与える悪影響の程度,態様,頻度,過失によるものか悪意・故意によるものか,遅刻や欠勤の理由,謝罪・反省の有無,遅刻欠勤を防止するために会社が講じていた措置の有無・内容,平素の勤務成績,他の社員に対する処分内容・過去の事例との均衡等が考慮されることになります。

 注意,指導,教育して,遅刻,欠勤の多さが改善されるのであれば,注意,指導,教育して改善させればいいのですから,解雇の有効性を判断する際にも,改善が期待できないと評価できるかが問題となります。
 実際に注意,指導,教育して改善の機会を与えることもせずに,勝手に,改善の見込みがないと思い込んで解雇するのは危険です。
 まずは,実際に,注意,指導,教育して改善の機会を与え,改善の見込みがないかどうかを確かめたことの証拠を残しておく必要があります。
 口頭で注意,指導,教育しても改まらない場合には,書面で注意,指導,教育し,記録に残しておくべきと考えます。
 書面等の客観的証拠がないと,訴訟になった場合は,「注意,指導,教育されたことはありません。」と主張されるのが通常です。
 また,書面で注意,指導,教育することにより,口頭での注意,指導,教育よりもより強く改善を促しているというメッセージにもなります。
 懲戒処分や事前の警告が解雇の前提要件というわけではありませんが,解雇は,原則として,戒告,譴責,減給,降格処分等の懲戒処分をし,改善しなければ解雇する可能性がある旨の警告をしてからにすることが望ましいところです。

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協調性がない。

2012-11-18 | 日記
Q1 協調性がない。


 協調性がないといっても程度問題であり,通常許される個性の範囲内に収まっている程度の問題なのか,それとも,企業秩序を阻害し又は社員としての適格性が問われるものなのか見極める必要があります。
 よく検討しないまま,主観的に協調性がないと決めつけてしまうのは危険です。
 周囲の社員に問題があることもありますので,客観的に判断するためにも,本人の言い分もよく聴取して事実確認をする必要があります。

 協調性がないという問題は,基本的には注意,指導,教育して改善させるべき問題です。
 口頭で注意,指導,教育しても改善しない場合は,書面で注意,指導,教育します。
 書面を交付するのは大げさでやりにくいというのであれば,まずは電子メール等を利用することから始めてもいいでしょう。
 書面で注意,指導,教育しても改善しない場合は,懲戒処分を検討することになります。
 配転の余地があるのであれば,協調性のないとされている社員を別の部署に配転させ,配転先でもやはり協調性がないのか確かめてみた方が無難です。
 周囲の社員が問題なのであれば,配転先では協調性がないとは評価されない可能性があります。
 最終的には,解雇も検討せざるを得ませんが,最後の手段です。

 十分な注意,指導,教育をしないままいきなり解雇した場合は,無効とされるリスクが高くなります。
 解雇が有効とされるためには,解雇予告手続(労基法20条)を取るだけでなく,就業規則の普通解雇事由又は懲戒解雇事由に該当し,解雇権濫用(労契法16条)や懲戒権の濫用(労契法15条)とされないこと等が必要となります。
 解雇予告手続を取ったとしても解雇事由に該当しなければ解雇は無効となりますし,解雇事由に該当したとしても,解雇権又は懲戒権を濫用したものとして解雇が無効とされるリスクがあることに注意して下さい。
 「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」(労契法16条),「使用者が労働者を懲戒することができる場合において,当該懲戒が,当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」(労契法15条)とされています。
 普通解雇の場合は,当該労働契約を終了させなければならないほど勤務成績,勤務態度等が不良で職務を行う能力や適格性を欠いているかが,懲戒解雇の場合は,規律違反行為により職場から排除しなければならないほど職場秩序を阻害したのかが問題となります。

 解雇の有効性を判断するにあたっては,協調性が特に必要とされる業務内容,職場環境かどうかという点も重視されます。
 チームワークが重視される共同作業が多い業務内容なのか,少人数の職場なのか等。
 注意,指導,教育して,協調性のなさが改善されるのであれば,注意,指導,教育して改善させればいいのですから,解雇の有効性を判断する際にも,改善が期待できないと評価できるかが問題となります。
 実際に注意,指導,教育して改善の機会を与えることもせずに,勝手に,改善の見込みがないと思い込んで解雇するのは危険です。
 まずは,実際に,注意,指導,教育して改善の機会を与え,改善の余地があるかどうかを確かめる必要があります。
 口頭で注意,指導,教育しても改まらない場合には,書面で注意,指導,教育し,記録に残しておくべきと考えます。
 書面等の客観的証拠がないと,訴訟になった場合は,「注意,指導,教育されたことはありません。」と主張されるのが通常です。
 また,書面で注意,指導,教育することにより,口頭での注意,指導,教育よりもより強く改善を促しているというメッセージにもなります。
 懲戒処分や事前の警告が解雇の前提要件というわけではありませんが,解雇は,原則として,戒告,譴責,減給,降格処分等の懲戒処分をし,改善しなければ解雇する可能性がある旨の警告をしてからにすることが望ましいところです。

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懲戒解雇において,懲戒権濫用の有無を判断する具体的事情として実務上争われるのは,どのような点ですか?

2012-11-18 | 日記
Q5 懲戒解雇において,懲戒権濫用の有無を判断する具体的事情として実務上争われるのは,どのような点ですか?


 懲戒解雇では,規律違反行為により職場から排除しなければならないほど職場秩序を阻害したのかが問題となり,
① 規律違反行為の態様(業務命令違反,職務専念義務違反,信用保持義務違反等)
② 程度,回数
③ 改善の余地の有無
等を総合検討することになります。

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普通解雇において,解雇権濫用の有無を判断する具体的事情として実務上争われるのは,どのような点ですか?

2012-11-18 | 日記
Q4 普通解雇において,解雇権濫用の有無を判断する具体的事情として実務上争われるのは,どのような点ですか?


 普通解雇では,当該労働契約を終了させなければならないほど勤務成績,勤務態度等が不良で職務を行う能力や適格性を欠いているかが問題となり,
① 当該企業の種類,規模
② 職務内容,労働者の採用理由(職務に要求される能力,勤務態度がどの程度か)
③ 勤務成績,勤務態度の不良の程度(企業の業務遂行に支障を生じ,解雇しなければならないほどに高いかどうか)
④ その回数(1回の過誤か,繰り返すものか),改善の余地があるか
⑤ 会社の指導があったか(注意・警告をしたり,反省の機会を与えたりしたか)
⑥ 他の労働者との取扱いに不均衡はないか
などを総合検討することになります。

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就業規則に懲戒解雇事由を定めていない会社の懲戒解雇

2012-11-18 | 日記
Q17 当社では,就業規則を作成しておらず,懲戒解雇事由を定めていませんが,問題を起こした社員であれば,懲戒解雇してもいいですよね?


 フジ興産事件最高裁平成15年10月10日判決が「使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種類及び事由を定めておくことを要する」と判示していますので,懲戒解雇を行おうとする場合には,その前提として,就業規則に懲戒解雇事由を明確に規定した上で,就業規則を周知(従業員が就業規則の存在や内容を知ろうと思えばいつでも知ることができるようにしておくこと。)させておく必要があります。
 就業規則に懲戒解雇事由が定められていない場合には,労働者が重大な企業秩序違反行為を行った場合であっても,懲戒解雇することはできません。

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①人員削減の必要性については,どのようなことを検討する必要がありますか?

2012-11-18 | 日記
Q12 ①人員削減の必要性については,どのようなことを検討する必要がありますか?


 ①人員削減の必要性は,整理解雇が有効とされる上で必要不可欠の要素であり,他の要素の要求水準を設定する役割も有しています。
 裁判所は,人員削減の必要性の有無について詳細に検討しますが,使用者の経営判断を尊重する傾向にあり,明白に人員削減の必要性がない場合を除けば,人員削減の必要性自体は肯定されるのが通常です。
 ただし,人員削減の必要性がそれ程高くないにもかかわらず実施された整理解雇は,②解雇回避努力が尽くされていないなどの理由から解雇権の濫用と判断されることが多いため,人員削減の必要性の程度についても慎重に検討した上で,整理解雇に踏み切るかどうかを判断する必要があります。
 ①人員削減の必要性では,整理解雇の前後で新規採用を行っている事実が問題とされることが多く,整理解雇の有効性を判断する上で不利に斟酌されることがありますので,注意が必要です。

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30日前に予告すれば,社員を自由に解雇することができるのですよね?

2012-11-18 | 日記
Q1 30日前に予告すれば,社員を自由に解雇することができるのですよね?


 30日前の予告というのは,使用者が労働者を解雇しようとする場合には,原則として,30日以上前に解雇の予告をするか,30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないこと(労基法20条)を念頭に置いている質問と思われます。
 現実の紛争では,むしろ,就業規則の解雇事由の有無,解雇権濫用該当性が中心的な争点となることが多く,就業規則に定める解雇事由に該当しないとか,解雇権濫用で無効(労働契約法16条)という理由で解雇が無効とされることが多くなっています。
 実際に有効な解雇を行うことが難しいにもかかわらず,それなりの割合の経営者が,解雇予告又は解雇予告手当の支払をしさえすれば解雇できると誤解していますので,注意が必要です。
 その他,労働者が業務上負傷し,又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間の解雇,女性労働者の妊娠,出産,産前産後休業等を理由とする解雇,労働基準法違反の申告を監督機関にしたことを理由とする解雇,性別を理由とする解雇,不当労働行為の不利益取扱いとなる解雇,公益通報をしたことを理由とする解雇等,一定の場合については,法律上解雇が禁止されており,これらに反する解雇は無効となります。

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懲戒解雇事由に該当する事実が存在する場合であっても普通解雇できますか?

2012-11-18 | 日記
Q19 懲戒解雇事由に該当する事実が存在する場合であっても普通解雇できますか?


 高知放送事件最高裁昭和52年1月31日判決は,「就業規則所定の懲戒事由にあたる事実がある場合において,本人の再就職など将来を考慮して懲戒解雇に処することなく,普通解雇に処することは,それがたとえ懲戒の目的を有するとしても,必ずしも許されないわけではない。」と判断しており,懲戒解雇事由がある場合であっても,普通解雇することができます。

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懲戒解雇後に判明した懲戒解雇事由追加主張の可否

2012-11-18 | 日記
Q18 問題社員を懲戒解雇したところ,問題社員から訴訟を提起されました。訴訟提起後,詳しく調査してみたところ,別の懲戒解雇事由が新たに判明しました。最初の懲戒解雇の理由として,後から判明した事実を追加することはできますか?


 山口観光事件最高裁平成8年9月26日判決が,具体的な懲戒の適否は,その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものであり,懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は,特段の事情ない限り,当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから,その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないと判示していますので,懲戒事由は,特段の事情がない限り,後日,追加することはできず,懲戒解雇する場合に懲戒事由を労働者に告知する場合は,懲戒事由をもれなく告知しておく必要があります。
 ただし,新たな懲戒事由判明後に,別途,予備的解雇をする場合の懲戒解雇理由とすることはできます。

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懲戒解雇において,懲戒権濫用の有無を判断する具体的事情として実務上争われるのは,どのような点ですか?

2012-11-18 | 日記
Q5 懲戒解雇において,懲戒権濫用の有無を判断する具体的事情として実務上争われるのは,どのような点ですか?


 懲戒解雇では,「規律違反行為があるか」が問題となり,
① 規律違反行為の態様(業務命令違反,職務専念義務違反,信用保持義務違反等)
② 程度,回数
③ 改善の余地の有無
等を総合検討することになります。
 懲戒解雇の場合は,普通解雇の場合よりも大きな不利益を労働者に与えるものですら,規律違反の程度は,「制裁として労働関係から排除することを正当化するほどの程度」に達していることが必要となります(『労働事件審理ノート』)。

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④手続の相当性については,どのようなことを検討する必要がありますか?

2012-11-18 | 日記
Q15 ④手続の相当性については,どのようなことを検討する必要がありますか?


 ④手続の相当性についてですが,裁判所は,使用者は労働者に対して整理解雇の必要性と時期・規模・方法について説明を行った上で,誠意を持って協議すべき信義則上の義務を負うと考える傾向にあります。
 要するに,使用者が労働者の理解を得るための努力をどれだけしたのかが問題となるわけですが,説明に十分な時間をかけず,資料の提示を行わず,抽象的な説明に終始したような場合には,この要素を満たさないと判断されることになります。
 会社の財務状況が極めて悪く,整理解雇自体は不可避であったとしても,労働者に対して人員削減が必要な理由の説明をすることはできるはずです。
 失業するということは,労働者本人及びその家族にとって極めて重大な問題ですから,労働者の納得を得られる見込みであるかどうかにかかわらず,よく説明を行うべきと考えます。

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