弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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他の社員が大勢いる前で叱責したり,他の社員も大勢宛先に加えた電子メールで叱責する指導教育方法

2013-10-05 | 日記
他の社員が大勢いる前で叱責したり,他の社員も大勢宛先に加えた電子メールで叱責する指導教育方法についての意見を聞かせて下さい。

 他の社員が大勢いる前で叱責することや,他の社員も大勢宛先に加えた電子メールで叱責することは,「見せしめ」の効果はあっても,教育効果は低いことが多く,他の考慮要素が同じであれば違法と評価されやすいやり方ですので,お勧めできません。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
弁護士 藤田 進太郎

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部下に問題がある場合のパワハラ

2013-10-05 | 日記
部下に問題があるのであれば,指導教育目的の言動が違法なパワハラと評価される余地はないのではないですか?

 部下に問題がある場合であっても,やり過ぎると指導教育目的の言動が違法なパワハラと判断されることがありますし,違法なパワハラとまでは評価されなくても教育効果が低くなりがちです。
 目指すべきところは,適法か違法かという話ではなく,適法であることを前提として,指導教育効果が高い適切な指導教育方法はどのようなものかといった話のはずです。
 指導教育目的を達成するために合理的な指導教育方法となるよう,研鑽を積んでいくべきと考えます。

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弁護士 藤田 進太郎

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違法なパワハラに該当するかどうかの判断基準

2013-10-05 | 日記
違法なパワハラに該当するかどうかの判断基準を教えて下さい。

 「この点,世上一般にいわれるパワーハラスメントは極めて抽象的な概念で,内包外延とも明確ではない。そうだとするとパワーハラスメントといわれるものが不法行為を構成するためには,質的にも量的にも一定の違法性を具備していることが必要である。したがって,パワーハラスメントを行った者とされた者の人間関係,当該行為の動機・目的,時間・場所,態様等を総合考慮の上,『企業組織もしくは職務上の指揮命令関係にある上司等が,職務を遂行する過程において,部下に対して,職務上の地位・権限を逸脱・濫用し,社会通念に照らし客観的な見地からみて,通常人が許容し得る範囲を著しく超えるような有形・無形の圧力を加える行為』をしたと評価される場合に限り,被害者の人格権を侵害するものとして民法709条所定の不法行為を構成するものと解するのが相当である。」(ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル(自然退職)事件東京地裁平成24年3月9日判決(労判1050号68頁))との判断基準が実務感覚に近いと思います。

 その他,「一般に,人に疲労や心理的負荷等が過度に蓄積した場合には,心身の健康を損なう危険があると考えられるから,他人に心理的負荷を過度に蓄積させるような行為は,原則として違法であるというべきであり,国家公務員が,職務上,そのような行為を行った場合には,原則として国家賠償法上違法であり,例外的に,その行為が合理的理由に基づいて,一般的に妥当な方法と程度で行われた場合には,正当な職務行為として,違法性が阻却される場合があるものというべきである。」(海上自衛隊事件福岡高裁平成20年8月25日判決(労経速2017号3頁))といった裁判例も存することは頭に入れておくべきでしょう。


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弁護士 藤田 進太郎

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退職勧奨したところ解雇してくれと言い出す。

2013-10-05 | 日記
退職勧奨したところ解雇してくれと言い出す。

(1) 対処方法
 最近では,経営者を挑発して解雇させ,多額の金銭を獲得してから転職しようと考える社員が増えています。
 退職勧奨した社員から解雇してくれと言われたからといって,安易に解雇すべきではありません。
 後日,解雇が無効であることを前提として,多額の賃金請求を受けるリスクがあります。
 解雇するようしきりに催促し,解雇理由証明書を交付するよう要求してきたら要注意です。
 当該社員が退職することに同意しているのであれば,解雇するのではなく,退職届を提出させるか,合意退職書に署名押印させて下さい。

(2) 退職勧奨と失業手当
 「事業主から退職するよう勧奨を受けたこと。」(雇用保険法施行規則36条9号)は,「特定受給資格者」(雇用保険法23条1項)に該当するため(雇用保険法23条2項2号),退職勧奨による退職は会社都合の解雇等の場合と同様の扱いとなり,失業手当の待機期間や給付制限に関し労働者が不利益を受けることにはなりません。
 つまり,失業手当の受給条件を良くするために解雇する必要はないのです。
 退職届を出してしまうと,失業手当の受給条件が不利になると誤解されている場合には,丁寧に説明し,誤解を解くよう努力して下さい。
 助成金との関係でも,会社都合の解雇をしたのと同様の取り扱いとなることには注意が必要です。

(3) 解雇予告手当の請求
 即時解雇した場合,解雇予告手当の請求を受けることがありますが,解雇予告手当は平均賃金の30日分を支払えば足りるので(労基法20条1項),その金額はたかが知れています。
 また,解雇予告手当の請求は,解雇の効力を争わないことを前提とした請求なので,解雇予告手当の請求を受けた場合は,むしろ運がよかったと考えられます。

(4) 解雇無効を前提とした賃金請求
 解雇の無効を前提として,解雇日以降の賃金請求がなされた場合に会社が負担する可能性がある金額は,高額になることがあります。
 単純化して説明すると,月給30万の社員を解雇したところ,解雇の効力が争われ,2年後に判決で解雇が無効と判断された場合は,既発生の未払賃金元本だけで,30万円×24か月=720万円の支払義務を負うことになります。
 解雇が無効と判断された場合,実際には全く仕事をしていない社員に対し,毎月の賃金を支払わなければならないことを理解しておく必要があります。

(5) 無断録音
 退職勧奨,解雇のやり取りは,無断録音されていることが多く,録音記録が訴訟で証拠として提出された場合は,証拠として認められてしまいます。
 退職勧奨,解雇を行う場合は,感情的にならないよう普段以上に心掛け,無断録音されていても不都合がないようにして下さい。
 退職勧奨は,やり過ぎると不法行為になることがありますが,自分の発言が無断録音されて上司や社長や裁判官や弁護士に聞かれても差し支えないと考えられる言動であれば,不法行為が成立するようなことは滅多にありません。

(6) 解雇してくれと言われて解雇したところ解雇の効力が争われ,解雇が無効と判断されるリスクが高い場合の対処
 解雇してくれと言われて解雇したところ解雇の効力が争われ,解雇が無効と判断されるリスクが高いような場合は,解雇を撤回し,就労を命じる必要がある場合もあります。
 この場合,解雇日の翌日から解雇撤回後に就労を命じた初日の前日までの解雇期間に対する賃金の支払義務を負うことになりますが,出社を命じた初日以降については出社しない限り賃金支払義務を負わないのが原則です。
 解雇を撤回して就労を命じた場合,実際に戻ってくるのは4人~5人に1人程度という印象です。
 解雇期間中の賃金請求をする目的で形式的に復職を求める体裁を取り繕う社員が多いですが,要望どおり解雇を撤回して就労命令を出してみると,いろいろ理由を付けて,実際には復職して来ないことが多いというのが実情です。
 労働組合の支援があるような場合でない限り,復職は難しいケースが多いのではないかと思います。

(7) ありのままの解雇理由を伝えることの重要性
 勤務態度が悪い社員,能力が著しく低い社員を退職勧奨したところ,解雇して欲しいと言われ,本当の理由を告げて解雇すると本人が傷つくからといった理由で,解雇理由を「事業の縮小その他やむを得ない事由」等による会社都合の解雇(整理解雇)とする事案が散見されます。
 このような事案で解雇の効力が争われた場合,整理解雇の有効要件を満たさないのが通常であり,ほぼ間違いなく整理解雇は無効と判断されることになります。
 解雇が避けられないような場合は,ありのままの解雇理由を伝えるようにして下さい。
 無用の気遣いをして,ありのままの解雇理由を伝えられないと,裏目の結果となることが多くなります。

(8) 解雇が無効と判断された場合に,解雇期間中の賃金として使用者が負担しなければならない金額
 解雇が無効と判断された場合に,解雇期間中の賃金として使用者が負担しなければならない金額は,当該社員が解雇されなかったならば労働契約上確実に支給されたであろう賃金の合計額です。
 解雇当時の基本給等を基礎に算定されますが,各種手当,賞与を含めるか,解雇期間中の中間収入を控除するか,所得税等を控除するか等が問題となります。
 通勤手当が実費保障的な性質を有する場合は,通勤手当について負担する必要はありません。
 残業代は,時間外・休日・深夜に勤務して初めて発生するものであることから,通常は負担する必要がありません。
 ただし,一定の残業代が確実に支給されたと考えられる場合には,残業代についても支払を命じられる可能性があります。
 賞与の支給金額が確定できない場合は,解雇が無効と判断されても,支払を命じられませんが,支給金額が確定できる場合は,賞与についても支払が命じられることがあります。
 解雇された社員に解雇期間中の中間収入(他の事業上で働いて得た収入)がある場合は,その収入があったのと同時期の解雇期間中の賃金のうち,同時期の平均賃金の6割(労基法26条)を超える部分についてのみ控除の対象となります(米軍山田部隊事件最高裁第二小法廷昭和37年7月20日判決,あけぼのタクシー事件最高裁第一小法廷昭和62年4月2日判決)。
 中間収入の額が平均賃金額の4割を超える場合には、更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(賞与等)の全額を対象として利益額を控除することが許されます(あけぼのタクシー事件最高裁第一小法廷昭和62年4月2日判決,いずみ福祉会事件最高裁第三小法廷平成18年3月28日判決)。
 賃金から源泉徴収すべき所得税,控除すべき社会保険料については,これらを控除する前の賃金額の支払が命じられ,実際の賃金支払の際,所得税等を控除することになります。
 仮処分で賃金相当額の仮払が命じられ,仮払をしていたとしても,判決では仮払金を差し引いてもらえません。
 賃金の支払を命じる判決が確定した場合は,労働者代理人と連絡を取って,既払の仮払金の充当について調整する必要があります。
 他方,賃金請求が認められなかった場合は,仮払金の返還を求めることになりますが,労働者が無資力となっていて,回収が困難なケースもあります。

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弁護士 藤田 進太郎

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