弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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社員が行方不明の場合に解雇することはできますか。

2015-01-22 | 日記

社員が行方不明の場合に解雇することはできますか。

 

 長期間の無断欠勤は,普通解雇 事由及び懲戒解雇 事由に該当するのが通常ですので,行方不明のため長期の欠勤が続いている場合には,解雇を通知することができれば,解雇は有効と判断される可能性が高いところです。
 しかし,いくら捜しても社員が行方不明の場合は,どこ宛に解雇通知書を発送すればいいのかといった解雇 を通知する方法が問題となります。
 解雇の意思表示は,解雇通知が相手方に到達して初めてその効力を生じるため(民法97条1項),有効無効以前の問題として,解雇通知が行方不明の社員に到達しなければ解雇の効力を生じる余地はありません。
 社員が自宅で生活しており,単に出社を拒否しているに過ぎないような事案であれば,社員の自宅に解雇通知が届けば社員の支配権内に置かれたことになりますから,実際に社員が解雇通知を読んでいなくても,解雇の意思表示が到達したことになります。
 しかし,会社が把握している自宅が引き払われているなど本当の意味での行方不明でどこに住んでいるのか皆目見当がつかない場合は解雇通知を発送すべき宛先が分かりません。
 会社が把握している社員の自宅が引き払われてはいなくても,長期間にわたり社員が自宅に戻っている形跡が全くないような場合は,社員の自宅に解雇通知が到達したとしても社員の支配権内に置かれたと評価することはできませんので,解雇の意思表示が社員に到達したことにはならず,解雇の意思表示は効力を生じません。
 電子メールによる解雇通知は,行方不明の社員からの返信があれば,通常は解雇の意思表示が当該社員に到達し,解雇の効力が生じていると考えることができるでしょう。
 ただし,電子メールに返信があるような事案の場合,そもそも行方不明と言えるのか問題となる余地がありますので,解雇権を濫用したものとして無効(労契法16条)とされないよう,解雇に先立ち,行方不明の社員と連絡を取る努力を尽くす必要があります。
 他方,行方不明の社員からメール返信がない場合は,解雇の意思表示が到達したと考えることにはリスクが伴いますが,連絡を取る努力を尽くした上で,リスク覚悟で退職処理してしまうということも考えられます。
 行方不明の社員の家族や身元保証人に対し,行方不明の社員を解雇する旨の解雇通知を送付しても,解雇の意思表示が到達したとは評価することができず,解雇の効力は生じないのが原則です。
 兵庫県社土木事務所事件最高裁第一小法廷平成11年7月15日判決では,行方不明の職員と同居していた家族に対し人事発令通知書を交付するとともにその内容を兵庫県公報に掲載するという方法でなされた懲戒免職処分の効力の発生を認めていますが,特殊な事案であり,射程を広く考えることはできません。
 通常,家族に解雇通知書を交付し社内報に掲載したといった程度で,解雇の意思表示が到達したと考えるのは困難です。
 完全に行方不明の社員に対し,解雇を通知する場合は,簡易裁判所において公示による意思表示(民法98条)の手続を取る必要があります。
 公示による意思表示の要件を満たせば,解雇の意思表示が行方不明の社員に到達したものとみなしてもらうことができます。


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解雇日から復職日までの不就労日などは,労基法39条の出勤日数・全労働日に含まれますか?

2015-01-22 | 日記

裁判所で解雇が無効と判断された場合の解雇日から復職日までの不就労日などは,労基法39条の出勤日数・全労働日に含まれますか?

 

 裁判所で解雇 が無効と判断された場合の解雇日から復職日までの不就労日などが労基法39条の出勤日数・全労働日に含まれるかについては,行政通達(平成25年7月10日付け基発0710第3号)が存在します。
 同通達は,八千代交通(年休権)事件最高裁第一小法廷平成25年6月6日判決(労判1075号21頁)を踏まえて出されたものということもあり,今後の裁判実務においても概ね同通達の解釈に沿った判断がなされるものと思われます。
 同通達の概要は以下のとおりです。
1 年次有給休暇算定の基礎となる全労働日の日数は就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいい,各労働者の職種が異なること等により異なることもあり得る。
 したがって,所定の休日に労働させた場合には,その日は,全労働日に含まれないものである。
2 労働者の責に帰すべき事由によるとはいえない不就労日は,3に該当する場合を除き,出勤率の算定に当たっては,出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものとする。
 例えば,裁判所の判決により解雇が無効と確定した場合や,労働委員会による救済命令を受けて会社が解雇の取消しを行った場合の解雇日から復職日までの不就労日のように,労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日が考えられる。
3 労働者の責に帰すべき事由によるとはいえない不就労日であっても,次に掲げる日のように,当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でないものは,全労働日に含まれないものとする。
(一) 不可抗力による休業日
(二) 使用者側に起因する経営,管理上の障害による休業日
(三) 正当な同盟罷業その他正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日


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出勤率の算定に当たり,就労を拒んでいた所定労働日を出勤日数に算入する必要がありますか?

2015-01-22 | 日記

能力不足を理由とした解雇が認められるかどうかは,どのように判断すればよろしいでしょうか?


 能力不足を理由とした解雇 が認められるかどうかは,基本的には労働契約で求められている能力が欠如しているかどうかによります。
 単に思ったほど能力がなく,見込み違いであったというだけでは,解雇は認められません。
 長期雇用を予定した新卒採用者については,社内教育等により社員の能力を向上させていくことが予定されているのですから,能力不足を理由とした解雇は,例外的な場合でない限り,認められません。
 一般的には,勤続年数が長い社員,賃金が低い社員は,能力不足を理由とした解雇が認められにくい傾向にあります。
 採用募集広告に「経験不問」と記載して採用した場合は,一定の経験がなければ有していないような能力を採用当初から有していることを要求することはできません。
 特定の能力を有することが労働契約の条件とされて高給で採用された社員,地位を特定して高給で採用された社員に労働契約で予定された能力がなかった場合には,解雇が認められやすい傾向にあります。
 ただし,解雇が比較的緩やかに認められる前提として,当該契約で求められている能力の内容,地位を特定して採用された事実を主張立証する必要がありますので,労働契約書等の書面に明示しておくべきです。
 労働契約書等に明示されていないと,当該契約で求められている能力の内容,地位を特定して採用された事実の主張立証が困難となることがあります。
 能力不足を理由とした解雇が有効と判断されるようにするためには,能力不足を示す「具体的事実」を立証できるようにしておく必要があります。
 抽象的に「能力不足」と言ってみても,あまり意味はありません。
 何月何日に能力不足を示すどのような具体的事実があったのか,記録に残しておく必要があります。
 「彼(女)の能力が低いことは,周りの社員も,取引先もみんな知っている。」というだけでは足りません。
 会社関係者の陳述書や法廷での証言は,証拠価値があまり高くないため,紛争が表面化する前の書面等の客観的証拠がないと,解雇の有効性を基礎付ける事実を主張立証するのには困難を伴うことが多いというのが実情です。


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能力不足を理由とした解雇が認められるかどうかは,どのように判断すればよろしいでしょうか?

2015-01-22 | 日記

能力不足を理由とした解雇が認められるかどうかは,どのように判断すればよろしいでしょうか?


 能力不足を理由とした解雇 が認められるかどうかは,基本的には労働契約で求められている能力が欠如しているかどうかによります。
 単に思ったほど能力がなく,見込み違いであったというだけでは,解雇は認められません。
 長期雇用を予定した新卒採用者については,社内教育等により社員の能力を向上させていくことが予定されているのですから,能力不足を理由とした解雇は,例外的な場合でない限り,認められません。
 一般的には,勤続年数が長い社員,賃金が低い社員は,能力不足を理由とした解雇が認められにくい傾向にあります。
 採用募集広告に「経験不問」と記載して採用した場合は,一定の経験がなければ有していないような能力を採用当初から有していることを要求することはできません。
 特定の能力を有することが労働契約の条件とされて高給で採用された社員,地位を特定して高給で採用された社員に労働契約で予定された能力がなかった場合には,解雇が認められやすい傾向にあります。
 ただし,解雇が比較的緩やかに認められる前提として,当該契約で求められている能力の内容,地位を特定して採用された事実を主張立証する必要がありますので,労働契約書等の書面に明示しておくべきです。
 労働契約書等に明示されていないと,当該契約で求められている能力の内容,地位を特定して採用された事実の主張立証が困難となることがあります。
 能力不足を理由とした解雇が有効と判断されるようにするためには,能力不足を示す「具体的事実」を立証できるようにしておく必要があります。
 抽象的に「能力不足」と言ってみても,あまり意味はありません。
 何月何日に能力不足を示すどのような具体的事実があったのか,記録に残しておく必要があります。
 「彼(女)の能力が低いことは,周りの社員も,取引先もみんな知っている。」というだけでは足りません。
 会社関係者の陳述書や法廷での証言は,証拠価値があまり高くないため,紛争が表面化する前の書面等の客観的証拠がないと,解雇の有効性を基礎付ける事実を主張立証するのには困難を伴うことが多いというのが実情です。


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勝手に何日も休んで周りに迷惑をかけている問題社員を解雇する際の注意点を教えて下さい。

2015-01-22 | 日記

問題社員の解雇で苦労しないようにするためのポイントを教えて下さい。


 私の印象では,問題社員 解雇 で苦労することになった原因のかなりの部分は,会社経営者が多忙であることなどから,採用活動にかける手間や費用を惜しんだり,人手不足の解消を優先させたりして,問題社員であるかもしれないと感じていながら,採用してしまったことにあります。
 確かに,問題を起こすような応募者だとは全く思わなかったのに,採用してみたら問題ばかり起こして困っているという事案もないわけではありません。
 事業を始めたばかりで経験が足りず,人を見る目がないといった特別の事情があるのであれば,問題社員とは夢にも思わなかったという話にも一定のリアリティがあります。
 しかし,弁護士に相談しなければならないほどの事案は,採用時にあまりいい印象を持たなかった応募者を採用してみたところ,やはり問題社員だったという事案が,かなりの割合を占めています。
 応募者からだまされて採用してしまったというより,問題があることには気づいていたものの,採用の手間や費用を惜しんだり,人手不足の解消を優先させたりして自分を偽り,問題がある人物を採用することを自分で正当化して採用してしまったという表現の方が適切な事案が多いのです。
 あまり深く考えていないと,「実際に使ってみなければ良い社員かどうか分からない。」といった一般論に説得力があるように聞こえるかもしれませんが,実際には「良くない社員だということは採用の時点から分かっていた。」ということが多いのです。
 経験豊富な会社経営者の目をごまかすことは,容易ではありません。
 会社経営者が,会社にとって魅力的な人物だと判断できれば採用する,魅力的だと思わなければ不採用にするといった,当たり前の方針を貫いていただければ,採用で失敗するリスクは相当下がるはずです。
 採用に値する積極的な理由がない場合には,不採用とすることをお勧めします。
 採用することに積極的な理由が必要なのであって,不採用とすることに積極的な理由が必要なわけではないのです。
 「類は友を呼ぶ。」ということわざのとおり,部下に採用を任せた場合,その部下は,仕事に関し,自分と似た価値観,ものの考え方を持った人物を採用する傾向にあります。
 会社経営者を中心とした結束が生命線の中小企業の場合は,会社経営者自らが採用活動に深く係わるべきと考えますが,仮に,部下の誰かに採用を任せることになった場合は,会社経営者の会社経営に協力的で人間性も優れている人物に採用を担当させるべきと考えます。


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問題社員の解雇で苦労しないようにするためのポイントを教えて下さい。

2015-01-22 | 日記

社員の態度が悪いため改善するよう指導したところ口論になり,当該社員は会社を辞めると言い残して退職届も提出せずに出て行ってしまいました。どのように対応すればいいでしょうか?


 まずは,本人と連絡を取って,会社を辞めるのであれば退職届を提出するよう促して下さい。
 退職届等の客観的証拠がないと,口頭での合意退職が成立したと会社が主張しても認められず,解雇 したと認定されたり,解雇もなく合意退職も成立していないからまだ在職中であると認定されたりすることがあります。
 退職届を提出するよう促しても提出しない場合は,電子メールか書面で,会社を辞めるのであれば退職届を提出するよう促すとともに,退職する意思がないのであれば出社するよう促し,解雇していない事実を明確にして下さい。
 最近では,使用者や上司を挑発して解雇の方向に話を誘導して会話を無断録音し,後になってから不当解雇だと主張して多額の解決金を獲得しようとする問題社員 が増加しています。
 自ら進んで退職届を提出したのでは会社からお金を取れませんが,解雇されたことにして争えばある程度の解決金は取れると考える問題社員も中にはいるということです。


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労基署に相談してから解雇すれば,裁判にも勝てますよね?

2015-01-22 | 日記

労基署に相談してから解雇すれば,裁判にも勝てますよね?


 労基署は労基法違反を取り締まっていますので,労基法20条の解雇予告等をしてから解雇 するよう指導する等,労基法違反にならないようにするためのアドバイスはしてくれるかもしれません。
 労基官によっては,解雇には客観的に合理的な理由が必要であり,社会通念上相当なものである必要もあること(労契法16条)についても教えてくれるかもしれません。
 しかし,解雇の有効性を判断する最終的な権限があるのは裁判所(司法機関)であり,労基署(行政機関)には解雇が民事上有効かどうかを最終的に判断する権限がありませんし,裁判の見通しまで考えて指導してもらえるわけではありません。
 したがって,労基署に相談してから解雇を行ったとしても,直ちに裁判にも勝てることにはなりません。


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注意指導や懲戒処分なんてせずに直ちに解雇した方がいいのではないですか?

2015-01-22 | 日記

問題社員に注意指導や懲戒処分をしたら,気分を害して職場の雰囲気が悪くなりますから,注意指導や懲戒処分なんてせずに直ちに解雇した方がいいのではないですか?


 確かに,問題社員 に注意指導や懲戒処分をした場合,一定の軋轢が生じることは予想されるところです。
 しかし,注意指導や懲戒処分もせずに問題社員の好き勝手にさせていることの方が,職場の雰囲気にとって大きな問題です。
 当然行うべきであった注意指導や懲戒処分をしなかった結果,上司に対する態度もますます悪化したり,新入社員に仕事を教えなかったりいじめたりして何人も辞めさせたりする等の問題行動がエスカレートしてしまうのです。
 問題社員に注意指導や懲戒処分をすることは,会社の秩序や真面目に働いている他の労働者を守るために必要不可欠なことですから,逃げずに注意指導し,それでも改善されない場合には懲戒処分に処するようにして下さい。


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問題社員の解雇に臨むに当たってのあるべきスタンスを教えて下さい。

2015-01-22 | 日記

問題社員の解雇に臨むに当たってのあるべきスタンスを教えて下さい。


 最初に解雇 を決定してからどうやって辞めさせるかを検討するのではなく,解雇せずに正常な労使関係を回復する方法がないか検討したものの正常な労使関係を回復する現実的方法がないため,やむなく解雇に踏み切るというスタンスが重要です。
 余程ひどい事案でない限り,まずは十分に注意指導し,懲戒処分を積み重ね,それでも改善されない場合に初めて解雇に踏み切るべきことになります。


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