除外賃金としての性質を有する「家族手当」とはどのような手当のことをいうのですか。
除外賃金としての性質を有する「家族手当」とは,扶養家族数又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算出する手当のことをいいます。
したがって,独身社員についてまで支払われていたり,扶養家族数に関係なく一律に支給されていたりする場合は,除外賃金としての性質を有する「家族手当」とは認められず,残業代 (割増賃金)算定の基礎賃金に入れるべきこととなります(昭和22年11月5日基発231号)。
除外賃金としての性質を有する「家族手当」とはどのような手当のことをいうのですか。
除外賃金としての性質を有する「家族手当」とは,扶養家族数又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算出する手当のことをいいます。
したがって,独身社員についてまで支払われていたり,扶養家族数に関係なく一律に支給されていたりする場合は,除外賃金としての性質を有する「家族手当」とは認められず,残業代 (割増賃金)算定の基礎賃金に入れるべきこととなります(昭和22年11月5日基発231号)。
「家族手当」「通勤手当」「住宅手当」といった名目で支払えば,残業代(割増賃金)支払の基礎から除外することができるのですか。
除外賃金に該当するかどうかは,名称にかかわらず実質によって判断されますので(昭和22年9月13日発基17号),名称が「家族手当」「通勤手当」「住宅手当」といった名目で支給されていたとしても,除外賃金に当たるとは限りxません。
扶養家族数に応じて支給される家族手当,通勤に必要な実費に対応して支給される通勤手当等であれば,除外賃金に該当しますが,扶養家族数とは関係なく一律に支給される家族手当,通勤距離や通勤に要する実費等とは関係なく一律に支給される通勤手当等は,除外賃金には該当せず,残業代 (割増賃金)の基礎となる賃金に算入することになります。
除外賃金とは,家族手当,通勤手当,別居手当,子女教育手当,住宅手当,臨時に支払われた賃金,1か月を超える期間ごとに支払われる賃金など,労働の内容や量と無関係な労働者の個人的事情で変わってくる賃金手当のことをいいます(労基法37条5項,労基則21条)。
残業代(割増賃金)算定の基礎賃金をどのように考えればいいのか教えて下さい。
労基法は,原則として全ての賃金を残業代 (割増賃金)算定の基礎となる賃金とした上で,労基法37条5項及び労基則21条において,残業代(割増賃金)の基礎に算入しない賃金(除外賃金)を制限列挙するという態度を取っており,「(月給額-除外賃金)」が残業代(割増賃金)算定の基礎となる賃金となります。
通常の労働時間・労働日の賃金(時間単価)は,どのように計算すればいいのですか。
時給制のアルバイトの場合は,通常の労働時間・労働日の賃金(時間単価)=時給です。
時給1000円であれば,通常の労働時間・労働日の賃金(時間単価)=1000円/時となります。
月給制の正社員の場合は,労基法上,月給制の正社員の通常の労働時間・労働日の賃金は,「(月給額-除外賃金)÷一年間における一月平均所定労働時間数」で算定されることになるのが通常です(労基則19条1項4号)。
例えば,月給24万円で除外賃金がなく,一年間における一月平均所定労働時間数が160時間であれば,24万円÷160時間=1500円/時が通常の労働時間・労働日の賃金となります。
時給制のアルバイトの残業代 (割増賃金)
=時給単価×所定の割増率×時間外・休日・深夜労働時間数
月給制の正社員の残業代(割増賃金)の計算式
=通常の労働時間・労働日の賃金(時間単価)×所定の割増率×時間外・休日・深夜労働時間数
月給制の正社員等についても,まずは賃金の時間単価を算定し,それに所定の割増率及び時間外・休日・深夜労働時間数を乗じて,残業代(割増賃金)を計算することになります。
労基法上の残業代 (割増賃金)には,以下の3種類があります。
① 時間外割増賃金
② 休日割増賃金
③ 深夜割増賃金
①時間外割増賃金は,1週間につき40時間(特例措置対象事業場では週44時間),1日につき8時間を超えて労働をさせた場合に支払を義務付けられる残業代(割増賃金)です。
②休日割増賃金は,週1回の法定休日(労基法35条)に労働をさせた場合に支払を義務付けられる残業代(割増賃金)です。
③深夜割増賃金は,深夜(22時~5時)に労働をさせた場合に支払を義務付けられる残業代(割増賃金)です。
残業代(割増賃金)請求を受けるリスクが特に高い業種を教えて下さい。
残業代 (割増賃金)請求を受けるリスクが特に高い業種としては,運送業,飲食業などが挙げられます。もっとも,その他の業種においても満遍なく残業代請求がなされていますので,どの業種においても,残業代を支払っていない場合は,常に残業代請求のリスクにさらされていると考えるべきでしょう
以前は,残業するよう指示しても残業してもらえなくて困っているといった紛争が多かったようですが,最近ではそういった相談はほとんどありません。最近多いのは,(不必要に)残業をして残業代 を請求してきたり,長時間の残業によりうつ病になったから損害を賠償して欲しいと請求してきたりする(退職した)社員の対応などです。
つまり,最近の経営者は,社員にどうやって残業してもらうかで悩んでいるのではなく,残業した(と主張する)社員からの残業代請求や,うつ病になった(と主張する)社員の対応で悩んでいるというのが実情です。社員が,所定労働時間外に長時間,仕事をするスペースに残っている状態は,使用者にとって「リスク」であるということをよく理解する必要があります。
高年齢者の雇用確保と賃金制度の将来について,どのように考えていますか。
少子高齢化が進む日本の人口構成を考えると,将来的には65歳を超える年齢(例えば,67歳や70歳)までの雇用確保措置や,定年を65歳以上とすること等を義務付けられること等が予想されます。
将来の法改正を見据えて,今のうちから賃金制度を見直すなどして,さらなる法改正があっても支障が生じないよう予め備えておくべきと考えます。
能力の高い定年退職者に重要な職務に従事してもらうため,通常の高年齢者よりも高い給料で仕事をしてもらいたい場合はどうすればいいでしょうか。
能力が高く,定年退職後も通常の高年齢者よりも高い給料を支払ってでも重要な職務に従事して欲しい高年齢者については,
① 定年退職者全員に適用される継続雇用制度(高年法9条)とは別枠の嘱託社員として雇用するか,
② 取締役に選任して経営に参加してもらう
ことをお勧めします。
①に関しては,通常の継続雇用制度で再雇用し,賃金額を調整することでも対応できなくはありませんが,少なくとも労働条件が大幅に異なる再雇用者については,別枠の制度を設けてそれを適用するのが望ましいと考えます。
定年退職者を再雇用した場合の雇用期間を1年とすることはできますか。
再雇用後の雇用期間については,特段の規制がありませんので,雇用期間を1年とすることができます。
ただし,高年法9条は,65歳までの継続雇用制度等の高年齢者雇用確保措置を講じることを要求していますので,1年契約とは言っても,65歳までは契約が更新されることについて,合理的期待があると考えざるを得ません。
したがって,65歳になる前に契約期間満了で雇止めをする場合は,労働契約法19条が適用されますので,雇止めに客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当なものとなっているかどうかをチェックする必要があります。
定年退職者から定年退職後も従来と同じ労働条件で継続雇用するよう要求されているのですが,応じる必要はあるでしょうか。
定年退職者を継続雇用した場合の労働条件について,特別の規制はなされていません。
したがって,労働契約,就業規則等で定年退職後も従来と同じ労働条件で継続雇用する旨が定められている場合でない限り,要求に応じる必要はありません。
定年退職者に提示した賃金水準での再雇用を高年齢者が拒絶したため,定年退職者を再雇用しませんでした。高年法違反にはなりませんか。
高年法が事業主に要求しているのは,継続雇用制度等の高年齢者雇用確保措置の導入であって,事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではありません。事業主の合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば,定年退職者と事業主との間で労働条件等についての合意が得られず,結果的に定年退職者が再雇用されなかったとしても,高年法違反となるものではありません。
企業が定年退職者に提示した賃金水準での再雇用を高年齢者が拒絶した場合は,再雇用されなかったとしてもやむを得ないところです。企業ができることは,自社の体力,定年退職者の能力,再雇用後の業務の内容,当該業務に伴う責任の程度,当該職務の内容及び配置の変更の範囲等に見合った適正水準の賃金等の労働条件を提示するところまでであり,当該労働条件での再雇用を希望するかどうかは,定年退職者の選択に委ねられることになります。
再雇用後の業務の内容,当該業務に伴う責任の程度,当該職務の内容及び配置の変更の範囲等が定年退職前と変わらないにもかかわらず,再雇用後の賃金が定年退職前よりも大幅に下がったのでは高年齢者の不満が大きくなります。
再雇用後の賃金額が定年退職時よりも低い場合は,再雇用後の勤務日数や勤務時間数を減らすとか(例えば週3日勤務にするとか1日4時間勤務にするといったことも考えられます。),業務の内容を正社員でなくてもできるような難易度の低いものにするとか,責任の軽い仕事を担当させるとか,職種や勤務地を限定するとかすべきと考えます。