高年齢者の継続雇用を拒絶した場合に紛争になりやすいのは,どのような事案ですか。
労働組合活動をしていた組合員の再雇用等を拒絶して紛争になることが多いようです。
組合関係者の継続雇用拒絶は,不当労働行為と評価されるかどうかが問題となることがその原因と思われます。
高年齢者の継続雇用を拒絶した場合に紛争になりやすいのは,どのような事案ですか。
労働組合活動をしていた組合員の再雇用等を拒絶して紛争になることが多いようです。
組合関係者の継続雇用拒絶は,不当労働行為と評価されるかどうかが問題となることがその原因と思われます。
継続雇用制度の対象者となる高年齢者に係る基準を定めた労使協定を労働基準監督署に届け出る必要がありますか。
継続雇用制度の対象者となる高年齢者に係る基準を定めた労使協定を労働基準監督署に届け出ることを義務付ける規定はありませんので,届け出る必要はありません。
ただし,基準が私法上の効力を生じるためには,就業規則に規定して周知させる等して労働契約の内容としておく必要がありますし,継続雇用制度の対象者に係る基準は「退職に関する事項」(労基法89条3号)に該当し,届出が義務付けられていますから,基準を設けた場合は,就業規則に規定して,就業規則の変更を労働基準監督署に届ける必要があります。
高年齢者を再雇用するかどうかは,どのような基準で決めればいいでしょうか。
「継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準」(高年法9条2項)を設けるのであれば,まずは高年齢者の健康状態,次に懲戒歴等の客観的な事情を重視すべきです。
ただ,「雇用と年金の接続」という高年法9条の立法趣旨,「継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準」に基づく制度が段階的に廃止されていく見込みであること等からすれば,健康に問題がなく,指定された事業場に自分で出勤して通常の業務に従事できるのであれば,普通に定年を迎えた再雇用希望者全員が再雇用されるような基準であることが望ましいと考えます。
継続雇用制度の対象となる高年齢者の基準により再雇用等がされなかった高年齢者の割合はどれくらいですか。
継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準制度により離職した者が定年到達者全体に占める割合は約2.0%という調査結果が出ています。
わずか50人に1人という割合ですから,基準を設けている会社であっても,健康に問題があるとか,よほど問題のある人物であるといった事情がない限り,ほぼ希望者全員の再雇用等がなされているといえると思います。
「継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準」に基づく制度の利用については,どのように考えていますか。
現在,「継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準」に基づく制度は原則として廃止されており,平成25年4月1日の改正法施行の際,既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準については,平成37年3月31日までの間は,段階的に基準の対象となる年齢が以下のとおり引き上げられるものの,なお効力を有するとされていますが,猶予期間が与えられているというに過ぎません。
① 平成25年4月1日~平成28年3月31日 61歳以上が対象
② 平成28年4月1日~平成31年3月31日 62歳以上が対象
③ 平成31年4月1日~平成34年3月31日 63歳以上が対象
④ 平成34年4月1日~平成37年3月31日 64歳以上が対象
今後は,既にこの基準に基づく制度を設けている会社についても,段階的に,「継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準」によって継続雇用する高年齢者を選別することができなくなります。
平成25(2013)年度に老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢の65歳への引上げが完了し,老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢が61歳に引き上げられ,平成37(2025)年度までに65歳へ段階的に引き上げられることとなっていること(女性は5年遅れ)との関係で,現在,継続雇用されない高年齢者が年金も支給されないという事態を防止する必要性が高くなっています(「雇用と年金の接続」)。
このような流れからすれば,「継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準」に基づく制度の利用については抑制的であるべきと考えています。
高年齢者雇用確保措置(高年法9条1項)としては,どれがお勧めですか。
継続雇用制度(高年法9条1項2号)としての再雇用がお勧めです。
再雇用であれば,新たな労働契約の締結となりますので,賃金水準等の労働条件を柔軟に設定することができるというメリットがあります。
高年齢者雇用確保措置を取らないことは,高年法9条に違反しますから,厚生労働大臣から,公共職業安定所を通じて,必要な指導及び助言を受けたり,高年齢者雇用確保措置を講ずべきことを勧告されたりする可能性があるだけでなく,勧告を受けた者がこれに従わなかった場合はその旨を公表される可能性があります(高年法10条)。
また,合同労組などの労働組合から団体交渉を申し入れられ,高年齢者雇用確保措置を講じるよう要求される可能性もあります。
さらに言えば,高年齢者雇用確保措置を取らない会社は,コンプライアンスの意識が低い会社であると公言しているようなものですから,どうしても社会一般からの評価が低くなりがちです。結果として,優秀な人材が集まりにくくなるかもしれません。
もっとも,高年齢者雇用確保措置について定めている高年法9条には,これに違反した場合に定年の定めを無効としたり再雇用等を義務付けたりする私法的効力はないと考えられています。したがって,高年法9条に違反して高年齢者雇用確保措置を取らなかったとしても,使用者に再雇用等を義務付ける就業規則等の根拠規定がない限り,定年退職した高年齢者は,訴訟で再雇用等を命じる判決を獲得することはできないことになります。
高年法9条の高年齢者雇用確保措置として,どれが取られることが多いのでしょうか。
厚生労働省の「今後の高年齢者雇用に関する研究会」が取りまとめた「今後の高年齢者雇用に関する研究会報告書」によると,平成22(2010)年の時点において,雇用確保措置を導入している企業の割合は,全企業の96.6%であり,そのうち,
① 定年の引上げの措置を講じた企業の割合 → 13.9%
② 継続雇用制度を導入した企業の割合 → 83.3%
③ 定年の定めを廃止した企業の割合 → 2.8%
となっています。
高年法9条の高年齢者雇用確保措置としては,②継続雇用制度を導入している企業の割合が,圧倒的に多くなっています。
60歳の定年退職間近な社員が,65歳までの雇用確保を要求してきました。何を根拠にそんなことを言っているのでしょうか。
高年法9条は,65歳未満の定年の定めをしている事業主は,以下のいずれかの高年齢者雇用確保措置を講じなければならないとしています。
① 定年の引上げ
② 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度)
③ 定年の定めの廃止
貴社の定年は60歳とのことですので,①②③いずれかの雇用確保措置を取る必要があります。仮に,貴社が高年齢者雇用確保措置を取っていないのだとすれば,高年法9条を根拠に,65歳までの雇用確保を要求してきたものと思われます。
定年は原則として60歳を下回ることができませんので(高年法8条本文),60歳以上とする必要があります。