労働審判利用の理由としては,どのようなものが多いのでしょうか。
東京大学社会科学研究所の意識調査によると,労働者が労働審判 を利用した理由としては,
① 公正な解決
② 経済的利益
③ 社会的名誉や自尊心
④ 強制力のある解決
⑤ 自分の権利
等が多くなっています。
これに対し,使用者側が労働審判を利用した理由としては,
① 公正な解決
② 申し立てられたので仕方なかった
③ 事実関係をはっきりさせる
等が多くなっています。
労働審判利用の理由としては,どのようなものが多いのでしょうか。
東京大学社会科学研究所の意識調査によると,労働者が労働審判 を利用した理由としては,
① 公正な解決
② 経済的利益
③ 社会的名誉や自尊心
④ 強制力のある解決
⑤ 自分の権利
等が多くなっています。
これに対し,使用者側が労働審判を利用した理由としては,
① 公正な解決
② 申し立てられたので仕方なかった
③ 事実関係をはっきりさせる
等が多くなっています。
調停がまとまらない場合には労働審判が行われ,労働審判に対して異議を申し立てた場合には,自動的に訴訟に移行することが重要なのはどうしてですか。
この点も,労働審判 を民事調停と比較して考えると分かりやすいでしょう。
民事調停で調停不成立の場合には何らの判断もなされないまま調停手続が終了してしまいます。民事調停が不成立になった場合,自動的には訴訟に移行しませんので,訴訟で争う場合には別途訴訟提起が必要となります。何らの判断もなされていない状態で別途訴訟を提起する負担は重いこともあり,そのまま紛争が立ち消えになることも珍しくありません。
他方,労働審判手続で調停がまとまらなければ,たいていは調停案とほぼ同内容の労働審判が出され,労働審判に対して当事者いずれかが異議を申し立てれば自動的に訴訟に移行することになりますので,必ず訴訟対応が必要となります。さらに何か月も訴訟を続ける価値がある事案でなければ,調停案や労働審判の内容に多少不満があっても,労働審判手続内で話をまとめてしまった方が合理的なケースが多いところです。
裁判官(労働審判官)1名と労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名により権利義務関係を踏まえた調停が試みられることが重要なのはどうしてですか。
この点は,労働審判 を民事調停と比較して考えると分かりやすいでしょう。
民事調停を利用した場合,裁判官が調停期日の全ての時間に同席するとは限らず,ほとんどの時間は裁判官は調停の場に同席せず,調停が成立することになったとき等,わずかな時間しか調停の場に現れないということも珍しくありません。必ずしも労働問題の専門的な知識経験を有するとはいえない調停委員が,調停をまとめることばかりに熱心になってしまい,権利義務関係を十分に踏まえずに,言うことを聞きやすそうな当事者の説得にかかることもあります。当然のことですが,権利義務を踏まえた調停を行わないと,調停が不調に終わった場合に訴訟を提起した場合,調停委員から言われていたのとは異なる結論となる可能性が高くなってしまいます。
他方,労働審判手続では,裁判官(労働審判官)1名が,常時,期日に同席しており,労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名とともに,権利義務関係を踏まえた調停を行うため,調停内容は合理的なもの(社内で説明がつきやすいもの,労働者が納得しやすいもの)となりやすくなります。また,調停をまとめず,労働審判に対し異議が出して訴訟で争っても,労働審判は裁判官(労働審判官)1名と労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名により権利義務関係を踏まえて出されたものですから,労働審判の内容よりも自分に大幅に有利に解決する見込みが大きい事案はそれほど多くはありません。
労働審判手続の特徴として,迅速な解決が予定されていることが重要と考えているのはなぜですか。
労働者の大部分は,解雇 されたことなどを不満に思ったとしても,自分を解雇するような会社に本気で戻りたいとは思わないことが多く,従来は,転職活動や転職後の仕事の支障になりかねないことなどを懸念して,余程の事情がなければ,時間のかかる訴訟手続を利用してまで解雇の効力を争うようなことは多くありませんでした。
しかし,労働審判 手続は,原則として3回以内の期日で審理を終結させることが予定されており(労働審判法15条2項),申立てから3か月もかからないうちにかなりの割合の事件が調停成立で終了しますので,退職後,次の就職先を見つけるまでのわずかな期間を利用して労働審判を申し立て,それなりの金額の解決金を獲得してから転職することも十分に可能となっています(ただし,調停が成立せず,労働審判に対して異議が出された場合は,自動的に訴訟に移行することに注意。)。
使用者側にも,労使紛争を早期に解決できるというメリットがありますが,従来であれば表面化しなかった紛争が表面化する可能性が高くなるという側面を有していますので,労使紛争の予防を意識した労務管理がますます重要となっています。
労働審判手続の特徴として,どのような点が特に重要と考えていますか。
労働審判 手続の特徴はどれも重要なものですが,私が特に注目しているのは,
① 迅速な解決が予定されていること
② 裁判官(労働審判官)1名と労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名により権利義務関係を踏まえた調停が試みられること
③ 調停がまとまらない場合には労働審判が行われ,労働審判に対して異議を申し立てた場合には,自動的に訴訟に移行すること
の3点です。
労働審判 法は,
① 労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(個別労働関係民事紛争)に関し,
② 裁判所において,裁判官(労働審判官)及び労働関係に関する専門的な知識経験を有する者(労使双方から1名ずつ選任される労働審判員合計2名)で組織する委員会が,当事者の申立てにより事件を審理し,
③ 調停の成立による解決の見込みがある場合にはこれを試み,
④ その解決に至らない場合には,労働審判(個別労働関係民事紛争について当事者間の権利義務関係を踏まえつつ事案の実情に即した解決をするために必要な審判)を行う手続(労働審判手続)を設けることにより,
⑤ 紛争の実情に即した迅速,適正かつ実効的な解決を図ること を目的とするものです(労働審判法1条)。
社労士会労働紛争解決センターで特定社会保険労務士が代理できる請求金額に制限はありますか。
特定社労士は,社労士会労働紛争解決センターでも代理人となることができますが,社労士会労働紛争解決センターの場合は,60万円を超える請求については,弁護士との共同代理が必要となります。
紛争調整委員会から,「あっせん開始通知書」が会社に届きました。どのように対応すればいいでしょうか。
労働者の請求に全く理由がないため,会社側は1円も解決金を支払う意思がないなど,全く譲歩の余地がない場合は,あっせんに参加しない旨記載した連絡票を紛争調整委員会宛,郵送又はFAXすることになります。あっせんに参加しない理由が客観的にもっともな内容で,労働者の納得を得ることができる可能性がある場合は,その理由を会社意見欄に記入した上で,「会社意見等について申請人(労働者)に知らせることについて」欄の「可」を○で囲んで提出してもいいとは思いますが,万が一にも後日の訴訟等で不利な結果になることがないよう,弁護士に相談した上で記載すべきでしょう。
労働者の請求にそれなりの理由があり,あっせんで解決しておかないと,後日,労働審判 を申し立てられたり,訴訟を提起されたりするリスクがあるため,ある程度の解決金を支払ってでも早期解決するメリットがあるような場合は,あっせんへの参加を検討すべきでしょう。その場合,あっせんに参加する旨記載した連絡票を紛争調整委員会宛,郵送又はFAXすることになりますが,会社の主張を事前に提出する必要があります。労働者の請求にそれなりの理由がある事案は,後日,訴訟等になる可能性が比較的高いので,主張内容,証拠の収集選定について,弁護士と協議して決めることがより重要となります。
しっかりとした書面さえ提出できれば,あっせん実施日当日は,代理人弁護士が同行する必要はないケースも多いものと思われますが,不安なようでしたら,弁護士に代理人として同行するよう相談してもいいかもしれません。ただ,弁護士費用を支払ってでも代理人弁護士に同行してもらわなければならないような事案は,そもそも,簡易迅速な紛争解決手続であるあっせん手続にはなじまない可能性もあると思います。
落としどころが微妙な事案については,一定金額以上の解決金は支払わないことを弁護士に相談して事前に決めてからあっせん実施日に臨み,その金額以下であれば合意を成立させ,その金額を超えなければ合意が成立しないようであれば合意不成立のまま,あっせん手続を打ち切ってもらえばいいのではないでしょうか。
紛争調整委員会が労働局長の委任を受けて行うあっせんには,どのような特徴がありますか。
東京労働局によると,紛争調整委員会が労働局長の委任を受けて行うあっせんには,以下のような特徴があるとされています。
① 労働問題に関するあらゆる分野の紛争(募集・採用に関するものを除く。)がその対象となります。
(例)解雇 ,雇止め,配置転換・出向,降格,労働条件の不利益変更等労働条件に関する紛争,いじめ・嫌がらせ等,職場の環境に関する紛争,労働契約の承継,同業他社への就業禁止等の労働契約に関する紛争,その他,退職に伴う研修費用の返還,営業車等会社所有物の破損に係る損害賠償をめぐる紛争など。
② 多くの時間と費用を要する裁判に比べ,手続が迅速かつ簡便です。
③ 弁護士,大学教授等の労働問題の専門家である紛争調整委員会の委員が担当します。
④ あっせんを受けるのに費用はかかりません。
⑤ 紛争当事者間であっせん案に合意した場合には,受諾されたあっせん案は民法上の和解契約の効力を持つことになります。
⑥ あっせんの手続は非公開であり,紛争当事者のプライバシーを保護します。
⑦ 労働者があっせんの申請をしたことを理由として,事業主が労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。
個別労使紛争の解決のために,労働局ではどのようなことを行っていますか。
個別労使紛争の解決のために,労働局では以下のようなことを行っています。
① 総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談
② 都道府県労働局長による助言・指導
③ 紛争調整委員会によるあっせん
④ 労働局雇用均等室の援助と調停
是正勧告を受けた労基法違反についての送検リスクはどれだけありますか。
ニュースで報道されるような重大事件や,刑事告訴されている事件を除き,是正勧告に対し誠実に対応すれば,送検されるリスクは低いです。起訴されて有罪判決を受けるリスクは更に低くなります。
指導票とは,労働基準監督官などが事業所調査や臨検をした場合において,労働法令違反には該当しないが,労働法令の趣旨に照らして改善した方が望ましいと思われる事項,又は後々労働法令違反につながる可能性がある事項などを確認した場合に交付されるもののことをいいます。