My ordinary days

ようこそいらっしゃいました!
ふと思い立ち第2のキャリアを始めてしまった、流されがちなひとの日々を綴るブログです

ちょっとお疲れなわたくしとご本。中村文則「掏摸[スリ]」

2011-09-07 12:44:21 | 読書
新学期が始まりばたばたとしてちょっとお疲れきみなわたくしですが

そういう時は早く寝ればよいのにそんな時に限って本を読んでしまって睡眠時間を削ってしまうしょうもないわたしぃ。

中村文則「掏摸[スリ]」読了。

本を読んでおもしろい、と思っても人に貸す気になれない本、薦めない本もあります。内容はおもしろいのだけど読後感がよくないものだったりあまりに衝撃的かなと感じたもの・・・
今回は・・・おもしろかったのですが、うーん。

悪い、なんて悪いんだ。真っ黒だ!
という悪の人「木崎」と、天才的すり師の「僕」との対峙、いや対峙にもならない、圧倒的な力で「僕」を含めた回りの人間を動かし世の中を動かす木崎からの断るすべのない命令を受けて、そしてそれをその天才性でこなしていく「僕」・・。というのが本筋のお話。

主人公の「僕」は小説の中では全く描かれていませんが相当壮絶な人生を送ってきた人間のようです。安アパートに住み回りの人との関係は希薄、数年前に愛した女は自死、幼いころから盗みを繰り返し服装にだけは注意を払う・・スリを成功させるためにはボロボロの身なりではうまくいかないという理由からですが・・・。スーパーで子に万引きをさせる母と子どもに出会い、子どもの貧しそうな服にどうしても気がいってしまうのは自分もそうした子どもの一人だったから。(冬場に薄着の子どもは私も気にになるけど)その後も突き放しながらもなにくれと面倒をみてしまう「僕」。

小説の後半に「僕」の小学生時代の盗みの回想がでてくるのですが、盗みが皆の眼前で露見してしまい押さえつけられて責められ、恥ずかしさを覚えるけれども皆に自分が盗んだということが明らかになったことに恍惚となる「僕」が心の中に存在する。
悪いことが明るみにでて逆にほっとするかのような解放感。 
「光が目に入って仕方ないなら、その反対側に降りていけばいい。
という感覚。
また、「僕」の恋人もみごとに破滅型というか、
「目の前にある価値を、すべて駄目にしたくなる。
タイプの女性。

うー ちょっと    すみません、かな。小説の中のこととわかっていても、合わない。個人的にです、もちろん。そういう感覚、わかる、という方もいるでしょう。

しかし濃い?人物満載で、疲れる。 
光と闇とで混沌とした世界の中で闇を見続けるのはつらい。そこを見続けて見続けて、その先に光を求め、でも求められない自分を自虐的に楽しんでいるかのような・・・


ラスト、傲慢な神のようにふるまう木崎に一矢報いようとする「僕」。どうなるのかその先は明示されていませんが、木崎の描いた運命に何かしらの影響を与えてくれれば、と願いますね。
「僕」の望みはこういう風に生きてきた人間の最後がどうなるのかを知ることでした。
けれど最後に「僕」は、抗うのです。絶対的な悪である木崎に。木崎に司られたかのような運命に。 その先に光、希望という名の塔…メタファーとして「僕」にだけ見える塔がでてきます。私はそれは「僕」が彼にとっての高みに昇っていくための塔、と思いたい。

(でも悪の権化木崎より万引きさせる母のほうがより酷い)


あっという間に読んだのでそうは疲れなかったけれど、気持ち的にはああ疲れた。




ばかみたいに本を買ってしまい読み途中も何冊か・・・ (併読可能型)

少し休め自分。