上村悦子の暮らしのつづり

日々の生活のあれやこれやを思いつくままに。

4月 ステイホーム 

2020-04-16 20:28:43 | エッセイ
出産を機にフリーランスとなった私は、家を仕事場として在宅ワークを続けている。
還暦を過ぎ、高齢者となった今も、そのスタイルは変わらない。

最初は広告向けのコピーを手書きで原稿用紙に書いていた。
原稿用紙のマスの大きさや線の色、また万年筆にもこだわった時期がある。

ワープロが出回ってからは、「手書きより随分ラク」、「段落ごと移動ができて便利やわ」と勧められ、
ワープロを使い始めて、数台は消耗しただろう。

そうするうちにコンピューターなるものが登場した。
「もうワープロなんて古すぎる」
「驚くほどの機能がついていて仕事がはかどるし、そのまま原稿も遅れるよ」
と、また勧められ、パソコンを手にした。

世の中98%はウィンドウズだったけれど、デザイン会社の仕事をしていた関係でマックを選択。
最初は、可愛いブルーの「アイ・マック」。時代を調べてみると1998年だ。

そのアバンギャルドなデザインは話題になったものの、もうフリーズするわするわ。
小型テレビ大のimacを両手に抱え、日本橋の電気屋に駆け込んだことも数回。

それから数年してノート型の「マックブック」に変更して、もう何台買い換えたことか。
その間に2人の娘は成人し、いくつかの難題に直面したが、
2020年になった今も在宅ワークは変わらない。

ところが今、様相は様変わりしている。
昨年暮れから広がり始めた新型コロナウイルスは、社会を、世界を一変させた。

4月に入って「緊急事態宣言」が発令されてからは、
私たちのささやかな日常はさらに深刻さを増し、大きく変わろうとしている。

「ステイホーム!」
子どもたちは学校に通えず、友だちとも自由に遊べない。
映画館、図書館、体育館、商業施設……、お気に入りのカフェまで何もかもが閉鎖されている。
約30年通っていたヨガ教室もお休み。
いつもおしゃべりを楽しんでいた友だちとも自由に会えない。
大企業も、中小企業も、在宅ワークへ。

「ステイホーム」
目に見えないウイルスは、私たちの日常生活にドカンと入り込み、大暴れしている。
人は、自分たちの力ではどうしようもない状況に陥ったとき、絶望感に襲われてしまうという。
だからこそ、気分転換。

友だちとは電話もできる、ラインもできる。
私は、家にずっといられる機会を利用して、見逃した映画をパソコンで楽しんでいる。
家にある材料で久しぶりにお菓子を焼いてみた。

買い置きしている本も読もう。
好きな音楽をピックアップして、自分のアルバムを作ろう。
ベランダのお花の苗をもう少し増やそう。
余ったプランターを利用して、間違いなくできるというキュウリの苗も植えてみる予定だ。

訳のわからない閉塞感の中で、小さな楽しみは心を安定させてくれる。
取材は、電話取材に。
でも、在宅ワークのスタイルは変わらない。
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