上村悦子の暮らしのつづり

日々の生活のあれやこれやを思いつくままに。

4月 青い海

2022-04-25 09:16:08 | エッセイ

ここ数年、NHKの朝ドラを日課のように観ている。
3月末まで続いた「カムカム・エヴリバディ」が終了したところで、
4月から新ドラマ「ちむどんどん」が始まった。

「ちむどんどん」とは、胸がワクワクすることのよう。
本土復帰前の沖縄北部、亜熱帯の深い森が広がる山原(やんばる)の家族の物語だ。
子役たちが可愛いすぎるけれど、とにかく海が……。
青く、青く、美しい!
きっと、プロの人たちが作っているのだろう島料理も美しい!

私は、学生時代に3度も行った与論島を思い出してしまった。
このドラマの設定よりは少し後だが、沖縄返還前の与論島。
今のようにホテルも、民宿も、飛行場も何も何もなかった時代だ。

ガイドブックなどあったのだろうか。
食べ物もあまり確保できないと聞き、与論島行きの船に乗る前に鹿児島のスーパーで材料を調達。
しかし、台風のため船は欠航。
予算も限られる中、安そう旅館を探し、翌日は一泊250円の鹿児島大学で雑魚寝した。

待たされた末の出航で私たちの気も逸っていた。
36時間後の夜に到着し、最も安い船底の船旅から解放された私たちは、
あまりの嬉しさに何を考えることもなく、
すぐそばの白い灯台の近くの海に飛び込んでしまった。
足がとどかいない所では泳げないことも忘れて。

言葉にすると美しいが、月の光のもとでアップアップしながら泳ぎ、そのまま野宿という野生児体験。
そして翌朝、とにかく島で最も美しい海岸といわれる百合が浜に向かったのだ。
簡素なキャンプ場でテントを張って着替えると、ひたすら海に走った。

低く茂る樹木の間を通り抜けると、
想像を絶する青い青い透明の海が目の前に広がっていた。
どこまでも、どこまでも続いて、あまりに美しすぎた……。
同じようにどこまでも続く白い砂浜の砂は、すべて星形をしているというのだから、
まさに夢の国を訪れた感覚だった。

だが、日を重ねるごとにあまりに暑さにひれ伏してしまった。
南の島で質素に暮らす人々の生活にふれ、その過酷さも痛感した。
どこに暮らしても良いことばかりではない。

しかし、
夜空に広がる満点の星、色とりどりのサンゴ礁。青いヒトデやカラフルな魚群……、
その自然はそこに生まれた人にとっては揺るがない故郷の大きな財産だ。

青春の真っ只中でその自然にふれさせてもらった私にとって、
そのピュアすぎる光景は、後の人生で何があっても、
また立ち直り前進させてもらえる大きな原点、出発点になったことは間違いない。
何かあるごとに思い出す、南の島に感謝である。