毎年暮れになると、お正月準備で慌ただしい。
一応、お節は秋のうちに注文しておくが、
黒豆煮、きんとん、高野豆腐、蕪のなます、鯛の子煮は手づくりが自分の決め事。
そして、いちばん時間をとられるものの楽しみでもあるのが豆もちづくりだ。
実家では、昔から毎年暮れになると「お餅つき」が大イベントだった。
母は前日からたくさんの餅米を水につけ、重い石臼やら餅をつく杵、3段の木製蒸し器、
ついた餅を丸める餅台、できた餅を並べる沢山の「もろぶた」
(麹蓋/浅い木箱で本来は酒造りに使われていたよう)などを準備し、
家族全員どころか、仕事関係の人も混じって賑やかにガチャガチャととり行なわれた。
『あー、いろんな人の懐かしい顔が浮かんでくるなあ……』
私自身、その雰囲気を忘れたくないのだと思う。
ある日、新聞で豆もちはすり鉢を利用すれば、
家で簡単にできるという記事を見て、嬉しくなって始めたのが恒例になった。
用意するのは、黒豆と餅米、塩、モチ取り粉の代わりの片栗粉、水だけ。
使う道具は、すり鉢とすりこぎ棒、餅台やもろぶたの代わりにワインの木箱の蓋を利用する。
当日、前の晩から水につけておいた黒豆をコトコト煮ておけば、さあスタート。
餅米を洗ってすぐに炊飯器で炊き、炊き上がったらすり鉢へ。
お餅をつく要領ですりこぎ棒でついていく。水で湿らせたシャモジで適当に混ぜながらトントン。
間で塩を指で摘んで2〜3回ふりかけ、炊いた黒豆も適度に入れて、またついていく、トントン。
何回か繰り返せばもう出来上がり。豆もちは米粒が少し残るくらいの荒さで充分。
それを数等分して片栗粉を敷いた餅台に移し、手のひらにも片栗粉をつけて丸い長方形に成形していく。
素人でも嬉しくなるほどの出来上がりだ。
餅米の量に合わせて、この工程を何度か繰り返せばOK。
2日ほど涼しい場所で寝かせ、包丁で適当に切って完成となる。
完全に乾かないで少し包丁についたりするが、それも愛嬌。
焼いた豆もちは柔らかくて香ばしく絶品だ。
みんなが美味しそうに笑顔で食べるのが嬉しくて、毎年の行事にしてしまった。