上村悦子の暮らしのつづり

日々の生活のあれやこれやを思いつくままに。

2月 自立

2022-02-26 20:49:04 | エッセイ
つい先日、立春を迎えたと思っていたら、もう雛祭りが近づいている。
この冬は例年になく寒い日が続いて、本当に春が来るのだろうかと案じる日々。
今年の啓蟄は3月5日だそうだが、
冬ごもりをしていた虫たちが目覚めて、本当に出てくるのだろうかと心配になってしまう。

そんな中で、素敵な若者に出会った。
高校時代に部活の人間関係からうつ病になり、3年間ひきこもりになってしまった松崎雛乃さんだ。

たまたまネットショップで買った洋服を着て気分が前向きになり、
外に出られるようになったという松崎さん。
勉強への意欲もわいて、高校認定制度を利用して芸術大学へ進学した。

自分自身が服がきっかけで立ち直れたことから、その経験を生かした服づくりを始める。
「ひきこもりの人が外に出られる服」をと、
デザインしたのが肌に優しいスウェット地のトレーナーとワンピースだ。
服の前につけた大きなポケットに仕掛けがあって、
中にはウサギやクマのぬいぐるみが取り付けられている。
 
どういうこと? と疑問に感じる方が多いだろう。
そのポケットの中のぬいぐるみは、着た人が外出できるようになって、
外で不安を感じた時にギュッと握ると落ち着けるというもの。
手汗をかいてもいいようにタオル地にしたのも経験者ならではの発想だ。
実際に「ぬいぐるみ療法」というものがあるそう。

このワンピースが同じ悩みを抱える人たちの間で話題になっている。
この服で外に出られた人や、アルバイトに行けるようになったという人も。

ただ、一人で作るには限界がある。
松崎さんは同じひきこもりの人たちに声をかけ、
ぬいぐるみを作ってもらうワークショップを開いた。
参加者はチクチク縫うことで心を癒し、自分の作品が人の役に立つということで自己肯定感も高まる。

そして、今度は同じ立場の人たちの居場所づくりを始め用としている。
制作に加わりたい人を集めて、仕事を分業し、利益をお給料にしていきたいと考えているのだ。
居場所づくりは、働く場の提供であり、労働賃金を得られる場にもなろうとしている。

たった26歳の女性の発想と行動力。そして、本業は会社員。
ほんの6年ほど前まではひきこもり状態で、社会的に弱者だと思われた人の行動である。
それを少しずつ少しずつ前進して、人はここまで変化できる。
一度だけのお出会いだが、芯の強い人の印象だった。

なんだか自分のことのように嬉しくなってしまう。
彼女の顔を思い出すと微笑んでしまうのだ。
コメント
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