上村悦子の暮らしのつづり

日々の生活のあれやこれやを思いつくままに。

「もったいない」

2024-11-12 10:26:59 | エッセイ


絵本『もったいないばあさん』のシリーズで人気の
絵本作家・真珠まりこさんのお話を聞く機会があった。
20年前、4歳の息子さんから「もったいないって、どういう意味?」と
聞かれたことがきっかけで誕生した絵本だそうだ。
以来、もったいないばあさんの絵本は17冊を数え、
もったいないばあさんのキャラクターは世界各国で愛されている。

『もったいないばあさん』は、
ノーベル平和賞を受賞したケニアのワンガリ・マータイさんが
日本の「もったいない」の精神に感動し、
MOTTAINAIキャンペーンを始めた前に誕生している絵本というから、さらに嬉しくなった。

私自身、親から「もったいない」の精神を叩きこまれて育った世代だ。
大正生まれの父は誠実で穏やかな人だったが、無駄遣いをそれは嫌った。
お刺身を食べる醤油は、「最後の一切れを食べ終わる時点でなくなるだけの量に」という人だった。
焼き肉用のタレも、水炊きのポン酢も同じで、声に出して注意はしないけれども、必要量以上に使うのを嫌った。
ちょっと長電話をしていると、父の視線が気になった。

お陰で 習性というものは恐ろしい。
ティッシュ1枚も無駄に使いたくない。ラップもパッパと使えない。
自然にもったいないと思ってしまうのだ。
シャンプーも歯磨き粉も、マヨネーズも、逆さにして最後の最後まで使わないと気が済まない。

今回「もったいない」という言葉に出会って、
子どもたちの手が確実にぶきっちょになっているという記事を思い出した。
昔の日本人の暮らしと比べて、手先の動作が極端に減っているのだ。
お箸がきちんと持てない、小刀で鉛筆が削れない……。

そういえば、少し前まで石けんは自分で泡立てるものだったし、
学校では雑巾掛けがあったので、雑巾は手で絞らなければならなかった。
幼い頃の遊びも、おはじきやメンコ、お手玉、影絵、着せ替え遊びなど手遊びが多かった。
手や指は第二の脳を呼ばれ、大脳とつながっていて脳の活性化につながっているという。

以前、子どもの教理教室を取材した時も、
子どもの手先の器用さが失われているという話を聞いた。
子どもは誕生後、成長段階に合わせて自然にいろんな行動ができるものではなく、
自分の意思で「つかむ」「口に入れる」など、手や体を繰り返し動かすことで動作を獲得していくというのだ。
だから、子どもが小さいうちから、洗う、切る、まぜる、こねるなどの台所仕事を一緒にさせると、
手の動きだけでなく、においを嗅いだり、味わったりして五感が鍛えられるそう。
 
今の子どもたちは小さい頃から器用になる要素を奪われているのかもしれない。
携帯やゲーム機の使い過ぎで、親指ばかりが発達したらどうなるのだろう。
便利すぎて「失うものも大きいなあ」とつくづく思う。
これこそ「もったいない」話である。

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