日が落ちると、博士の家が建つ草原は、暖かな日中とはうって変わって、凍えるほど寒くなった。サトルは、みんなと一緒に夕食のテーブルを囲んだ。
「さっきあれほど食べたのに、まだ食べるのかよ……」と、トッピーが夢中で料理を口に運ぶサトルを見て、あきれたように言った。博士と奥さんが、クツクツと、今にも吹き出しそうになりながら、目に涙を浮かべて笑っていた。
食事が終わると、博士が火をくべた暖炉のそばでくつろぎながら、みんなでおしゃべりをして過ごした。サトルも、自分が住んでいた町のことや、学校や友達のことを、時がたつのを忘れるほど夢中になって話した。
やがて眠くなると、サトルは博士の少し大きめのパジャマに着替えて、「お休みなさい」と言うと、眠そうに目を擦りながら、ふかふかのベッドに潜りこんだ。
――真夜中、サトルはふっと目を覚ました。
覚えていないほど、ぼんやりとした夢を見ていた。なぜか、胸がドキドキしていた。鼻の頭が、びっしょりと脂汗をかいていた。意識していないはずの不安を覚えて、目を覚ましてしまったようだった。一度目を覚ましてしまうと、目がさえて、なかなか眠ることができなかった。ベッドの中で、何度も寝返りをうった。
どこからか、心地よい音楽が聞こえてきた。息を殺してじっと耳を澄ましていると、言葉はわからなかったが、誰かが歌っているようだった。
サトルは、ベッドからそっと起きあがると、聞こえてくる歌に耳をそばだてながら、暖炉のある居間にやって来た。おき火が、まだ赤くプスプスとくすぶっていた。
心地のいい歌声は、暖炉の上の棚にある、小さなラジオから聞こえてきた。歌を聞いていると、急に友達や両親の顔が思い出されて、胸がキュッとなるほど、さびしくなってきた。サトルは、暖炉の前に座ると、目をつぶりながら、聞こえてくる歌に黙って耳を傾けていた。
歌声が、だんだんと小さくなっていった。パチパチと、おき火のはぜる音だけが、静かな部屋に聞こえていた。
サトルは、立ち上がってラジオを手に取ると、ベッドに戻った。枕を正面にして座ると、横に置いてあったランドセルの中から、物語をかなえる本を取り出した。パラパラとページをめくると、もともと国語の教科書だった本には、授業中にサトルが書いたイタズラ書きや、難しくて読めなかった漢字に添えた振り仮名があった。見ていると、今にも授業をする先生の声が聞こえてきそうで、妙に懐かしく感じられた。
「早く元の世界に帰りたいなぁ……」
サトルが思わず独り言を言うと、本が金色にまぶしく輝き始めた。目も眩むような光に包まれたサトルは、けれど不思議と心地よい眠気を覚え、そのままグッスリと、深い眠りに落ちていった。
「さっきあれほど食べたのに、まだ食べるのかよ……」と、トッピーが夢中で料理を口に運ぶサトルを見て、あきれたように言った。博士と奥さんが、クツクツと、今にも吹き出しそうになりながら、目に涙を浮かべて笑っていた。
食事が終わると、博士が火をくべた暖炉のそばでくつろぎながら、みんなでおしゃべりをして過ごした。サトルも、自分が住んでいた町のことや、学校や友達のことを、時がたつのを忘れるほど夢中になって話した。
やがて眠くなると、サトルは博士の少し大きめのパジャマに着替えて、「お休みなさい」と言うと、眠そうに目を擦りながら、ふかふかのベッドに潜りこんだ。
――真夜中、サトルはふっと目を覚ました。
覚えていないほど、ぼんやりとした夢を見ていた。なぜか、胸がドキドキしていた。鼻の頭が、びっしょりと脂汗をかいていた。意識していないはずの不安を覚えて、目を覚ましてしまったようだった。一度目を覚ましてしまうと、目がさえて、なかなか眠ることができなかった。ベッドの中で、何度も寝返りをうった。
どこからか、心地よい音楽が聞こえてきた。息を殺してじっと耳を澄ましていると、言葉はわからなかったが、誰かが歌っているようだった。
サトルは、ベッドからそっと起きあがると、聞こえてくる歌に耳をそばだてながら、暖炉のある居間にやって来た。おき火が、まだ赤くプスプスとくすぶっていた。
心地のいい歌声は、暖炉の上の棚にある、小さなラジオから聞こえてきた。歌を聞いていると、急に友達や両親の顔が思い出されて、胸がキュッとなるほど、さびしくなってきた。サトルは、暖炉の前に座ると、目をつぶりながら、聞こえてくる歌に黙って耳を傾けていた。
歌声が、だんだんと小さくなっていった。パチパチと、おき火のはぜる音だけが、静かな部屋に聞こえていた。
サトルは、立ち上がってラジオを手に取ると、ベッドに戻った。枕を正面にして座ると、横に置いてあったランドセルの中から、物語をかなえる本を取り出した。パラパラとページをめくると、もともと国語の教科書だった本には、授業中にサトルが書いたイタズラ書きや、難しくて読めなかった漢字に添えた振り仮名があった。見ていると、今にも授業をする先生の声が聞こえてきそうで、妙に懐かしく感じられた。
「早く元の世界に帰りたいなぁ……」
サトルが思わず独り言を言うと、本が金色にまぶしく輝き始めた。目も眩むような光に包まれたサトルは、けれど不思議と心地よい眠気を覚え、そのままグッスリと、深い眠りに落ちていった。