くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

よもよも

2016-04-08 06:33:09 | Weblog
なんとも、

雪が降らないと思ったら

雨かよ…。

気分下げ下げじゃねーの。。

まだ現場の仕事も入ってこないし

事務所で書類に追われるのはもうこりごりだわ。。

毎日陽が落ちる海岸見ながら帰るんだけど

遠い昔のご先祖さん達は

よくあんな先もわからない海の向こうに行こうと思ったよなって思う。

地図があるから日本海の向こうの事なんかわかってるけどさ、

風の噂か当てにならない地図を頼りに

船で乗り出していくって、

勇気うんぬんじゃないよなぁ。。

つまらん事でぐずってる場合でないわ。
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夢の彼方に(55)

2016-04-08 06:23:45 | 「夢の彼方に」
「ぼくは、一度も行ったことがないんだけどね。この絵を見ていると、ねむり王様の城は、とっても青くて澄んだ湖のほとりに建つ、まぶしいほど白くて美しいお城なんだなって、手に取るようにわかるよ」
 絵には、たっぷりと水をたたえた青い湖と、森に囲まれた白い城が描かれていた。地面の起伏に沿って、うねるように延びる一本の細い道が、城に続いていた。サトルは、見上げるように絵を見ていたが、湖のほとりに近い森に小さな女の子が描かれているのを見つけた。目を凝らしてよくみると、髪の長い女の子は、胸の前で祈るように両手を組み、、湖に負けないくらい青い空に向かって、歌を歌っているようだった。
 トッピーが、大きな絵の隅から隅まで、何かを確かめるように見ていると、振り返ってサトルに言った。
「間違いない。これは、ねむり王様の城だよ」
 案内してくれた親切な男の人にお礼を言うと、サトルとトッピーは、男の人が戻っていった後も、絵の前に立ったまま、どうすればいいのか考えていた。
「この絵の中の道が歩けりゃ、王様の城はもう目と鼻の先なんだけどな……」と、トッピーがため息混じりに言った。
「ひょっとすると、風博士はこの絵があるのを知っていて、ぼく達をこの町に来させたんじゃないのかな? だったら――」
 サトルは言うと、背負ったランドセルを下に降ろして、中から物語をかなえる本を取り出した。
「また、失敗しちゃうかもしれないけど――」と、サトルは自信なげに言った。
「ここまで来たんだ、思い切って試してみようぜ」と、トッピーが不安を打ち消すように言った。
 サトルは力強くうなずくと、ランドセルを背負って、両手で物語をかなえる本を持ちながら、胸の前で腕を伸ばした。心を落ち着かせるように目を伏せ、何度も暗唱するように短い言葉をつぶやくと、サトルはパッと目を開け、絵に向かって大きな声で叫んだ。
「絵に描かれたねむり王様の城に続く道が本物になると、サトルとトッピーはその道をズンズン歩いて、ねむり王様の城に行くことができた」
 物語をかなえる本が、金色の光を迸らせて、まぶしく輝きだした。本を手にしたサトルの姿が、すっぽりと光の中に包まれて、見えなくなるほどだった。大きく膨らんだ光は、ゆっくりと明滅しながら勢いを失い、泉のように湧き出していた光は、本の中へ静かに消えていった。
 ねむり王の城を描いた絵には、どこにも変わったところがないようだった。
 サトルは、絵に人差し指を伸ばすと、ツンと探るように指先を当てた。絵の表面が、プルルンと波打つように揺らめいた。もう一度、今度はゆっくり触れていくと、やはり絵がプルルンと揺れ、絵の中にスッと指が入りこむと、コップの水に入れた棒のように指が屈折して見えた。
 もしかしたら、とサトルは絵に描かれた道の前に立つと、恐る恐る伸ばした足先から、少しずつ絵の中に入っていった。
「やったぜ、サトル――」喜んだトッピーは、何度も弾むように宙を飛ぶと、サトルに続いて絵の中にスポンと入りこんだ。
 絵と一緒になったサトルとトッピーは、ねむり王の城に延びる道を、急ぎ足でどんどん進んでいった。
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夢の彼方に(54)

2016-04-08 06:22:48 | 「夢の彼方に」
 苦しそうに荒い息をついているサトルのそばで、トッピーは黙って見守るようにふわふわと浮かんでいた。
 と、トッピーがハッとしたように聞き耳を立て、キョロキョロと辺りを見回しながら言った。
「水の音だ――」
 山の奥へ、ゆっくりと探るように飛んでいくトッピーの後を目で追いながら、サトルは立ち上がった。山頂は、見上げるほどではなかったが、まだ遠くに見えていた。登ってきた時は、疲れ果てて周りを気にする余裕もなかったが、サトルの足下に広がっているブロックは、それまでのブロックとは様子が違っていた。繋ぎ目のない広く平らな面が、緩い階段のようになって山の奥へと続いていた。山頂とは反対の方角だったが、トッピーの後ろについて歩いていくと、透明なブロックが線を引いたように消え、替わって下草が足首をくすぐる固い地面の道に出た。
 さわさわと、水の流れる音が、サトルの耳にも聞こえてきた。
「川だ……」サトルは、トッピーが浮かんでいる崖の上に立つと、下を見おろして言った。
 細い川は、透きとおって見えるブロックの上を滑るように流れ、キラキラと光る小さなブロックの粒を削り出しながら、急な階段を駆け下りるようにしぶきを上げていた。
「生きているみたいだったけど、ブロックの欠片だったんだね」と、サトルはトッピーを見上げて言った。
「サトル、もしかしてさ」と、トッピーは目を細めて、遠くを見るように言った。「あそこ見えてるのが、風博士の言ってた町なのかな?」
「え?」と、サトルは背伸びをするように見ると、緑の葉を茂らせた林の中にちらりと三角形の屋根が見えた。
「行ってみよう――」サトルは言うと、固い地面の道を大股で歩き出した。

 ふもとの町にたどり着いたサトルは、町の不思議な光景に息をのんだ。
 どこまでが絵で、どこまでが町なのか、大きな小山のようなキャンバスがあちらこちらに建てられ、パッと遠目に見ただけでは、絵なのか本物の景色なのか、境目がすぐにはわからないほどだった。
「積木の次は、絵かよ――」と、トッピーがくたびれたように言った。
(風博士は、この町でどうしろって言うんだろう……)と、サトルは思った。
 大通りを歩いていると、敷物の上にバラバラになった積木の山のブロックを広げ、もともとの大きなブロックに組み立て直しているような人達がいた。
 サトルは、その人達にねむり王の城にはどう行けばいいのか、聞いてみることにした。
「それなら、あそこにあったはずだよ」と、手袋を脱ぎながら、メガネをかけた男の人が立ち上がった。「面白い帽子を被ってるんだね?」
「砂漠の町で、友達にもらったんです」と、サトルは言った。
「砂漠の町……」と、男の人が歩きながら、考えるように言った。「そう言えば、そんな絵もどこかにあったような――」
「……?」と、道をたずねたはずのサトルとトッピーは、目を合わせて首をかしげた。
 サトルが案内されたのは、町中に飾ってある絵の中でも、ひときわ大きなキャンバスに描かれた絵の前だった。
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夢の彼方に(53)

2016-04-08 06:22:01 | 「夢の彼方に」
 はじめに気がついたのは、「がんばれ!」とサトルを励ましていたトッピーだった。
「あれ? ちょっと待って――」
 サトルは、ハァハァと息を切らせながら、高いブロックの縁に指をかけたまま、立ち止まってトッピーを見上げた。
「どうしたの……」
「あそこを見て」と、トッピーが言った。「青騎士の様子が、なんだかおかしいんだ」
 サトルは腕を伸ばしてブロックと向かい合ったまま、後ろを振り返って下を見た。長い槍を振るう青騎士が、ブロックを低く崩しながら、もう山の五合目近くまで登ってきていた。青騎士の操る馬も、高い場所にひるむことなく、軽々とブロックに飛び移っていた。
 と、サトルもどこかおかしいことに気がついた。黙って見ていると、休むことなく馬がブロックに飛び移っているにもかかわらず、青騎士は山を登ってくるどころか、逆に少しずつ下に降りていくようだった。
「あっ――」と、サトルは思わず声を上げた。
 青騎士が槍で乱暴に崩したブロックは、下へ下へと雪崩のように滑り落ち、おさまる気配は微塵もなかった。いくら馬が次々とブロックに飛び移っても、飛び移ったブロックは、すぐに山の下へと流されてしまった。
 青騎士が、ズズンと大きく下に滑り落ちた。多くのブロックが崩されたことで、山全体が安定を失い、一気に崩れ落ちたようだった。馬から振り落とされた青騎士は、雪崩を打ってゴロゴロと転がっていくブロックに飲みこまれ、不意に姿が見えなくなると、再び姿を現すことなく、流れ落ちるブロックと共に遙か下へと流されていった。
 息を飲んだのもつかの間、崩れ落ちていくブロックの先端が、サトルが登っているブロックの真下まで、みるみる迫ってきていた。すぐに登りかけていたブロックに向き直り、伸ばしていた腕に力をこめると、サトルは歯を食いしばって、一心不乱に山頂目指して登り始めた。
 サトルのすぐ間近にまで迫った崩落は、しかし次第に崩れていく速度を落とし、やがてピタリと動きを止めた。
「助かった……」と、トッピーが胸をなで下ろしたように言った。
 八合目を過ぎるまで、ひたすらブロックを登り続けていたサトルは、トッピーの声を聞いてようやく手を休め、息を弾ませながら、振り返って下を見た。
 眼下に見える山は、先ほどまではなかった深い渓谷を、幾筋も無惨に穿たれていた。谷底には、砕け散ったおびただしい数のブロックが、瓦礫の山のように積み上がっていた。サトルは、崩れ落ちていくブロックに飲みこまれた青騎士を思い出し、助かったという安心感よりも、無闇に自然を壊す恐ろしさを覚えて、ぞくりと背筋を凍らせた。
「サトル、がんばってここまでおいでよ――」と、トッピーが一段上のブロックから顔をのぞかせて言った。
 サトルは、休みたい気持ちを抑えて、目の前のブロックを登りきった。すると、頂上が近くなったせいか、それまでの急な斜面がウソに思えるほど、広場のように開けて平らになった場所に出た。
「大丈夫……?」と、トッピーが心配そうに聞いた。「少し、休んでいこうよ」
 サトルは力なくうなずくと、その場に倒れこむように寝転んだ。
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夢の彼方に(52)

2016-04-08 06:21:08 | 「夢の彼方に」
 サトルは、「大丈夫さ」と言うと、うんしょ、と手を伸ばして、ブロックの縁に飛びついた。一段ずつブロックの山を登っていくと、まだ数段しか登っていないところで、崩れていない大きなブロックが、行く手を阻んだ。
 ブロックは、半分から下が岩で、上が土だった。サトルが登ってきたブロックも、同じように下が岩で、上が土だった。段違いの壁のようになっている左右のブロックには、いずれも細い木が茂っていた。
 サトルは、前のブロックにそっと手を当てると、右側に滑らせた。
 岩と土のブロックは、その大きさに似つかわしくないほどなめらかに動き、細い木が見えるブロックにぶつかると、粉々に砕いてしまった。と、サトルがブロックを動かしたせいで、真上に載っていた岩と土のブロックが、ズドン、と地響きを立てるように落ちてきた。足下も同じ岩と土のブロックだったため、一段ずり落ちただけで、それ以上崩れることはなかったが、サトルは一瞬ヒヤリと凍りついた。真上から落ちてきたブロックがピタリと動きを止めると、ホッと安堵のため息を漏らした。
 砕け散った細い木のブロックは、氷がはじけたように四角い小さな粒となって、下の段へバラバラと滝のように崩れ落ちていった。崩れたブロックの上に載っていた木のブロックが、ストン、ストン、と空いたブロックのすき間を埋めるように下に落ちてきた。壁のようだったブロックが、次々と崩れ落ち、サトルが動かした岩と土のブロックを土台にして、新しく段々に積み上がった。
 サトルは、自分の背の高さになったブロックを、また一段ずつ登り始めた。大きなブロックが行く手を阻んで立ちふさがると、しっかりとブロックの種類を見極めて動かし、足場を作るために必要な最小限のブロックを崩しながら、山を登っていった。
 積木の山を登り始めて、六合目をなんとか過ぎた頃だった。サトルの頭上を飛んでいたトッピーが、急に大きな声を上げた。
「青騎士が来た!」
「えっ――」と、サトルは登りかけていたブロックの上にしゃがんで、下をのぞきこんだ。
 見ると、馬に乗った青騎士が、サトルを追って山に登ろうと、立ちふさがるブロックを、次から次へと長い槍で砕き割っていた。小さく砕け散ったブロックは、ザザーッと耳障りな音を立てながら、滝のようにどんどん下へ流れ落ちていった。上から見ていると、崩れ落ちていく範囲が、大きな波紋を描くようにみるみる広がっていくのがわかった。
「おいおい、なんて無茶なヤツなんだ――」と、トッピーが槍を振るう青騎士を見ながら言った。「このまま、山ひとつ崩しちまう気じゃないだろうな」
「――いけない、逃げなきゃ」サトルは立ち上がると、振り返ってブロックに飛びつき、無我夢中になって、どんどん上に登っていった。
 青騎士は、砕かれて低い段になったブロックの上に飛び移りながら、楽々と積木の山を登ってきた。このままでは、すぐに追いつかれてしまう……と、サトルは後ろを振り返る余裕もなく、ブロックを登り続けたが、いつまでたっても、青騎士が後ろに迫ってくる気配はなかった。
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夢の彼方に(51)

2016-04-08 06:20:22 | 「夢の彼方に」
 サトルが登ってきた山道は、一番下のブロックにぶつかると、そこでプッツリと途切れてしまった。辺りを探しても、山頂に向かう別の道は、どこにも見あたらなかった。
「ここから、どうやって進めばいいんだろう……」
 サトルが困ったように言うと、空高く飛んでいたトッピーが、サトルの目の前に降りてきて言った。
「ホントにこの山なのか? 上から見ても、どこにも道なんかありゃしないぞ。あるのは、このおかしなブロックだけだ――」
 サトルは力なくうなずくと、黙ったまま、立ちふさがるブロックに近づいた。
「それじゃ、もうひとっ飛び調べてくるか――」トッピーは言うと、水の中で小刻みにヒレを動かしながら、金魚鉢ごと山の頂上に向かって飛んでいった。
 透明なブロックは、大きさの違いこそあれ、川に流れていた氷のような粒にそっくりだった。表面に映し出されている景色は、顔を近づけてよく見ると、ブロックの中にすっぽりと閉じこめられた景色が、透明な壁を透して、見えているのだった。
「あっ」と、サトルはブロックに触れていた手をあわてて引っこめた。
 ほんのわずかしか力を加えていないにもかかわらず、大きなブロックが軽々と、滑るように動いたような気がしたからだった。
「そうか――」
 サトルは思いつくと、目の前のブロックをポンと両手で押した。
 ブロックは、思ったとおりにスッと軽く動いたが、予想していた以上に大きく動き、ストンとブロックひとつ分だけ、奥に入りこんでしまった。すると、上に載っていたブロックが、周りのブロックを巻きこみながら、ズドンと雪崩を起こすように落ちてきた。もしもすぐに離れていなければ、危うく崩れ落ちてきたブロックの下敷きになっていたかもしれなかった。
「どうした!」と、トッピーが叫びながら、血相を変えて矢のように空から降りてきた。
「わかったよ、トッピー」と、サトルがうれしそうに言った。「トミヨが言っていた意味が、なんとなくだけど、わかったような気がするんだ――」
”――ただ気をつけなきゃならないのは、上の物は上向きに、下の物は下向きに、重い物は下、軽い物は上だよ”
 と、サトルは不思議そうな顔をしているトッピーを見ながら、トミヨが別れ際に言っていた言葉を繰り返し思い出していた。
 サトルとトッピーは、ブロックが自然に崩れて、登れるようになった場所を探すことにした。山の裾に沿って歩いていくと、隣り合ったブロックよりも低く落ちこんで、サトルが手を伸ばせば登れそうなブロックが、階段のように積み上がっている場所があった。
「あそこなら、登れるかもしれないよ」と、サトルがブロックに駆け寄った。
「大丈夫なのか……」と、トッピーが心配そうに言った。「下からじゃ見えないかもしれないけど、少し登ったところから、また崩れていないブロックが、しっかり積み上がってるぞ――」
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夢の彼方に(50)

2016-04-08 06:19:13 | 「夢の彼方に」
 サトルとトッピーは、物語をかなえる本をじっと見据えたまま、固まったようにしばらく動かなかった。川を流れる水音と、風に揺れる梢の音だけが、しんとした空気の中に止むことなく聞こえていた。
 二人とも無言のまま、いつまで待っても、はっきりと目に見える変化は起こらなかった。
「うまく、いったんだよな――」と、トッピーが確認するように言った。
 本を見たまま、こくりとうなずいたサトルは、ごくりと喉を鳴らしてつばを飲みこむと、立ち上がってぴょん、とその場に飛び跳ねた。
 トッピーが、地面にストンと降りたサトルを見て、ため息混じりに言った。
「やっぱり、ダメだったか――」
 サトルはあきらめきれず、何度も高く飛び跳ねたが、息を切らせて、立ったまま膝に手をついた。と、顔を上げたサトルが指を差して、急に大きな声を上げた。
「トッピー!」
「なんだ? どうした?」と、トッピーがあわてたように言いながら、金魚鉢の中を暴れるように泳ぎ回った。
「トッピー――」と、サトルがつぶやくように言った。「飛んでるよ……」
「は?」と、目線の高さがサトルと同じなのに気づいたトッピーが、水の中に浮かびながら、金魚鉢の底を探るようにうかがった。
「ほんとだ――」と、金魚鉢ごと宙に浮かんだトッピーが、サトルを見ながら、信じられないというように言った。
 夜が明けると、空を飛べるようになったトッピーは、上り坂で悪戦苦闘しているサトルを軽々と追い越して、一人でどんどん先に進んでいった。
「待ってよ、トッピー……」と、立ち止まったサトルが、ぜえぜえと息を切らせながら言った。「そんなに早く……登れないよ……」
「なんだ、もう休憩か? 積木の山はもう目の前なんだぜ」と、空に浮かんだトッピーが、困ったように言った。「ほら、弱気なことばかり言ってないで、元気出せよ」
「こんな事になるんだったら、空なんて飛ぼうとしなけりゃ良かったよ――」と、サトルがぼそりとつぶやいた。
「ん、なんか言ったか?」トッピーが、サトルの回りをぐるぐると8の字に飛びながら、怒ったように言った。
「ううん。なんでもないよ、なんでもない……」と、サトルはあわてて首を振った。
 とうとうと流れていた川は、山に近づくにつれて川幅が次第に狭くなり、流れも急になってきた。川面には、いまだ途切れることなく、四角い氷のような粒がたくさん浮かんでいた。大きな岩が目立つようになり、川に沿って歩き続けるのが難しくなると、サトルはやむを得ず、川のそばを離れることにした。トッピーが、林の中を飛んで川と平行に延びる山道を見つけると、サトルはトッピーが見つけた細い山道を、川の上流に向かって進んでいった。
 山道の先が急に開けると、目の前に積木の山が現れた。積木の山は、一見するとまるでピラミッドのようだった。四角く切りそろえられたような透明なブロックが、見上げるほど高く積み上げられていた。サトルの背の二倍は優にある透明なブロックは、それぞれの面に風景を切り取ったような画像を映し出していた。わずかなすき間もなく、びっしりと並んだブロックは、一段二段と重なり合って、山頂まで続くひとつの大きな斜面となっていた。映し出された風景が、一枚の画像のように繋がって、緑の木々が生い茂る豊かな山の姿を描き出していた。ブロックに映った木々は風を受け、地面から生えた木と同じようにゆらゆらと枝を揺らしていた。気が遠くなるほど多くのブロックが、山頂までびっしりと積み上げられていた。自然が作り出したものとは、にわかには信じられなかった。
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夢の彼方に(49)

2016-04-08 06:18:16 | 「夢の彼方に」
 はじめから、うまく火をつけられたわけではなかった。砂漠を歩き続けた最初の夜は、拾った石を打ち合わせて、たきぎに火をつけようとした。集めてきた枯れ草を下に敷いて、なんとか火の粉を飛び移らせようと、何度も石を打ち合わせたが、すっかり日が暮れても、一向に火がつく気配はなかった。見かねたトッピーが、物語をかなえる本を使ってみれば、と歯を食いしばってがんばるサトルに言った。
 サトルは、目から鱗が落ちたように手を止めると、物語をかなえる本を取り出して、火をつけてみることにした。簡単に思えたが、なかなかうまくいかなかった。一度はたきぎが一瞬で燃え尽きてしまい、すぐに辺りが暗くなってしまった。残り少なくなったたきぎを組み直すと、今度はたきぎに火をつけることはできたが、赤々と燃える炎の映像を、空間に浮かび上がらせていただけだった。結局その夜は、ほとんど深夜になるまで時間をかけて、やっと暖かな火をたくことができた。
 ランドセルに物語をかなえる本をしまうと、サトルはトミヨとおそろいのサボテンの帽子を脱いで、パチパチとはぜる火のそばに腰を下ろした。トミヨからもらったパンは、砂漠の町を出た日にすっかり平らげてしまった。その後、空腹を癒してくれたのは、風博士がランドセルの中にそっと入れておいてくれた干しイモだった。軽く火にあぶって焦げ目をつけると、ホクホクしているうちにかじりついた。満腹とはいかなかったが、お腹を十分に満たすことができた。同じ食事ばかりが続いて、トッピーはぶつくさと文句を言ったが、小さくちぎって金魚鉢の水に浮かべた干しイモは、いつもきれいになくなっていた。
「そうだ、トッピー」と、サトルが思い出したように言った。「物語をかなえる本で、また飛行船を出してみようか。そうすれば山なんて、あっという間に越えられちゃうよ」
「そう言えば、そんな手もあったな……」と、トッピーは一瞬考えるようにヒレを頬に当てたが、すぐに目が覚めたように言った。「ダメダメ、もう二度とあんな物になるのはゴメンだね。それにいくら山を越えるためだからって、もしも魔法をかけるのに失敗したら、どうなっちまうんだよ。また世界の果てまで飛んでいったら、今度こそ戻ってこられなくなっちゃうぜ」
 サトルは、ふくれたようにしかめっ面をしたが、すぐにうれしそうに言った。
「じゃあ、こういうのはどう?」と、両手を肘を折るように横に持ち上げて、小さく羽ばたく真似をした。「二人とも、空が飛べるようにすればいいんじゃない」
 トッピーは首をかしげながら、不安そうに言った。
「……空が飛べるようにするだけなら、世界の果てまで飛んでいくことはないかもな――だけど空なんて飛んだこともないくせに、うまくいくのかなぁ……」
「大丈夫。失敗なんてしないさ――」と、サトルは自信ありげに言いながら、物語をかなえる本を取り出した。
「本当に心配ないんだろうな……」と、トッピーが念を押すように言った。
 サトルは緊張した面持ちで本を手に持つと、目を伏せて深く息をついた。暗唱するように何度も小さく口を動かすと、顔を上げて大きな声で言った。
「トッピーとサトルは、翼を持った鳥のように、自由に空を飛ぶことができるようになる」
 と、物語をかなえる本が、まぶしく光り始めた。
「ほら、うまくいったじゃないか……」と、サトルがトッピーを見ながら言った。
 まぶしく迸り出ていた金色の光が、次第に勢いを失い、ゆらゆらと細い線のようになると、本の中に吸いこまれるようにプッツリと消え去った。まぶしい光りが消えてしまうと、夕焼け色に燃えるたきぎの火だけが、柔らかく辺りを照らしていた。
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夢の彼方に(48)

2016-04-08 06:17:09 | 「夢の彼方に」
         8
 トミヨからもらった地図に従って、サトルは黄色いカレー粉の砂漠を抜けると、宝石をちりばめたように光り輝く大きな川に出た。
 砂漠の乾きが信じられないほど、とうとうと豊かに水をたたえた川は、じっと見ていると目が痛くなるほど、砂漠に照りつける強い日差しを、キラキラと反射させていた。瞬く光は、火傷しそうなほど熱い火花を、四方に飛び散らしているようだった。川床の石に弾んだ流れが、ピシャリと跳ねあがり、小さな白波のしぶきを涼しげに上げていた。
 サトルは地図に従って、さらに上流へと、ひたすら川に沿って歩き続けた。
「なんだあれ、波が光ってるわけじゃないぞ――」と、トッピーが金魚鉢から顔を出して、サトルに言った。
「えっ?」と、サトルは目を細めながら、まぶしく光る川を見た。よく見ると、四角い氷のような粒が、ぷかぷかと川面を埋め尽くすほど浮かんでいた。さわさわと、小さな波に浮き沈みする立方体は、上流から途切れることなく流れ続け、波に乗って互いにぶつかり合いながら、まぶしい光を反射させて踊るように下流へ流れていった。
「おい、なにすんだよ」と、トッピーが怒ったように言った。
 サトルは、脇に抱えていた金魚鉢を足下に置くと、急ぎ足で川に近づいた。靴の中に水が入らないよう、そっと川の縁に足を踏み出すと、手を伸ばして近くに流れてきた立方体を拾った。
「トッピー、こんなの見た事ある?」と、サトルは透きとおった立方体を指でつまむと、金魚鉢の方に腕を伸ばした。
「――生きてる、のか……」と、トッピーは出目金のように目を見開いたまま、ぷくりと泡をひとつ、言葉を失った。
 サトルが拾った立方体は、軽いガラスのようだった。透き通っているせいで、一見すると型に入れて作った氷のようだったが、けして冷たくはなく、手で持っていても溶けることはなかった。不思議なのは、その中身だった。緑とも青ともつかない、淡い色の煙を閉じこめたようだった。見ていると、ゆらりゆらりと流れるように形を変える煙は、トッピーが目を丸くしたとおり、まるで生きているかのようだった。
「どこから流れてきたんだろう……」と、サトルは首をかしげた。
 行く先には、緑に溢れる山々が連なっていた。積木の山までは、あともう少しだった。後ろを振り返ると、黄色い砂漠が、自分でも驚くほど遠くに見えていた。ゴツゴツと聳えていた岩山の頂上が、しっかりと見下ろせた。
「ずいぶん歩いてきたんだなぁ」と、トッピーがしみじみと言った。
「ちぇ、歩いてきたのは、ぼくじゃないか」と、サトルは額の汗を拭きながら、不機嫌そうに言った。
 日が暮れると、サトルは川のそばの高台で休むことにした。目の前の林でたきぎを拾ってくると、サトルはランドセルから物語をかなえる本を取り出して、火をつけた。手にした本が、金色の光をまぶしく迸らせると、互い違いに組んだ細いたきぎが、金粉を振りかけたようにチラチラと輝き、赤々とした炎が、一気に燃え上がった。
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