歩きながら、又三郎はサトルに聞いた。
「私は、どのくらい眠っていたんでしょう――」
「二日だよ」と、サトルは言った。「もう目を覚まさないんじゃないかって、ドキドキしちゃったよ。でも、トッピーが様子を見に来てくれて、あいつなら心配いらないから、目が覚めるまで寝かせてやって欲しいって、そう頼まれたんだ」
「トッピー?」と、又三郎が顔をしかめながら言った。「あいつが、湖に戻ってきたんですか……」
「知ってるの?」サトルが聞くと、又三郎はもちろん、とうなずいた。
サトルが、一緒に旅をしてきたトッピーのことを話すと、又三郎は残念そうに言った。
「――もっと早く気がついていれば、あのヒラヒラした尾びれにひと囓りして、私の力を認めさせてやれたんですが」
食堂の隣の調理場に入ると、又三郎が「ウッ……」と顔をしかめて声をもらした。
「どうしたんですか、この有様は――」又三郎は、食材の切れ端や、焦げついた鍋が山積みになっているのを見て言った。
「ごめんね……」サトルは言うと、恥ずかしそうに頭を掻いた。「料理なんてろくにしたことなかったから――」
「これじゃ、猫でも食べられませんよ」と、又三郎は、あきれたように言った。「青騎士と戦う勇気ももちろん必要ですが、お城から知らせが届くまで無事に戦い抜くためにも、食事はしっかり取らなければいけません」
又三郎は、サトルに代わって腕を振るうと、具のたっぷり入ったおいしそうなスープを手早くこしらえた。
「ドリーブランドに来る前、見よう見まねで覚えたスープです。人の味覚に合わせたつもりですが、なにぶん猫の身ゆえ、お口に合うかどうか自信はありません――」
ひと匙スープをすすったサトルは、
「おいしい……」
目を丸くして言うと、あっというまに平らげてしまった。
又三郎は、スープのおかわりを皿に盛りつけながら、サトルに聞いた。
「ところでここ最近、覚えていたはずのことがなかなか思い出せない、そんなことはありませんでしたか」
料理を目の前に舌なめずりをしながら、サトルは首を振った。
「早く食べないと、全部なくなっちゃうよ――」スープがたっぷりと入った皿を受け取りながら、サトルは少し怒ったように言った。
又三郎はなにか言いかけたが、「それでは私も、いただきます」と言って、自分の皿にスープをよそうと、スプーンを器用に使って食べ始めた。
食事を終えると、又三郎はサトルを砦の中に残し、見回りのために城壁の上に登っていった。
「私は、どのくらい眠っていたんでしょう――」
「二日だよ」と、サトルは言った。「もう目を覚まさないんじゃないかって、ドキドキしちゃったよ。でも、トッピーが様子を見に来てくれて、あいつなら心配いらないから、目が覚めるまで寝かせてやって欲しいって、そう頼まれたんだ」
「トッピー?」と、又三郎が顔をしかめながら言った。「あいつが、湖に戻ってきたんですか……」
「知ってるの?」サトルが聞くと、又三郎はもちろん、とうなずいた。
サトルが、一緒に旅をしてきたトッピーのことを話すと、又三郎は残念そうに言った。
「――もっと早く気がついていれば、あのヒラヒラした尾びれにひと囓りして、私の力を認めさせてやれたんですが」
食堂の隣の調理場に入ると、又三郎が「ウッ……」と顔をしかめて声をもらした。
「どうしたんですか、この有様は――」又三郎は、食材の切れ端や、焦げついた鍋が山積みになっているのを見て言った。
「ごめんね……」サトルは言うと、恥ずかしそうに頭を掻いた。「料理なんてろくにしたことなかったから――」
「これじゃ、猫でも食べられませんよ」と、又三郎は、あきれたように言った。「青騎士と戦う勇気ももちろん必要ですが、お城から知らせが届くまで無事に戦い抜くためにも、食事はしっかり取らなければいけません」
又三郎は、サトルに代わって腕を振るうと、具のたっぷり入ったおいしそうなスープを手早くこしらえた。
「ドリーブランドに来る前、見よう見まねで覚えたスープです。人の味覚に合わせたつもりですが、なにぶん猫の身ゆえ、お口に合うかどうか自信はありません――」
ひと匙スープをすすったサトルは、
「おいしい……」
目を丸くして言うと、あっというまに平らげてしまった。
又三郎は、スープのおかわりを皿に盛りつけながら、サトルに聞いた。
「ところでここ最近、覚えていたはずのことがなかなか思い出せない、そんなことはありませんでしたか」
料理を目の前に舌なめずりをしながら、サトルは首を振った。
「早く食べないと、全部なくなっちゃうよ――」スープがたっぷりと入った皿を受け取りながら、サトルは少し怒ったように言った。
又三郎はなにか言いかけたが、「それでは私も、いただきます」と言って、自分の皿にスープをよそうと、スプーンを器用に使って食べ始めた。
食事を終えると、又三郎はサトルを砦の中に残し、見回りのために城壁の上に登っていった。