暁に咲く幻の花

花が咲くように生きていきたいな。日々のあれこれ、嬉しいこと楽しいこと好きな人のことを、花や自然にことよせて綴ります。

楪の木のように継がれていく想い

2015-06-25 22:38:27 | シンガーソングライター

こんばんは。
とても蒸し暑い夜です。明日は朝から雨で、楽しみにしていた水泳の時間が算数になると娘が残念がっていました。

楪の木に新しい芽が出てきました。
この芽が葉に成り、木全体に若葉が生えそろったら、今まだ木にある古い葉が「後はよろしくね」と託す様に散って行きます。
後に譲る葉だから、ゆずり葉と呼ばれるようになったそうで、別名親子草です。

去る三月、息子は5年生に「次は、君たちがこの学校の伝統と誇りを守る番です。最高学年として新一年生を迎えた四月から、全ての学年の手本となる立派な行動をして下さい。僕達、私達は一年間君たちを導いてきました。来年胸を張って次の5年生に学校を任せられるように導くのは君たちです。君たちなら大丈夫です。必ず出来ると信じて、僕達、私達は、今日卒業します」と宣言して、中学に入学しまた新たな伝統と誇りを守る訓練中です。
 譲る心と譲られる心。
伝統とはこうして先人から受け継いだものを欠けることなく守り、出来るなら良い物を受け入れて更に価値あるものにして、次の世代に渡して行くことの繰り返しで出来たものなんですね。

私や夫は社会的には二代目と呼ばれる立場です。
父は会長職に就いてますが、中々実権を譲ってくれない大きな葉です。父の権利を受け継ぎ、事業の発展を考えるなら一々父の意見を聞かず私達に一回全てを任せて欲しい。信頼して欲しいのです。
そして、夫の実力をわかってくれたら、即引退ではなく、顧問として残って欲しい。若い葉に譲った大きな古い葉として。
静かに閑日月を過ごして欲しいのです。
走り続けた父だから、支えてきた母と旅行を楽しんだり、若いころ我慢して出来なかったことを楽しんでこその人生です。
そして夫は、三代目になる息子を鍛えるでしょう。
家庭を持ち子供も生まれたら(きや、お祖母ちゃんデスね)もっと責任ある仕事を任せる為に更に、鍛えます。
役職を任し、全てを託して大丈夫と判断したら、夫は引退するでしょう。
楪の木のように。
古い葉は落ちないといけないのです。伝統の木を大きく茂らせ立派な木に育つために古い葉は落ちて、木の養分になります。
人の営みとはそういうものかもしれませんね。
 伝えたい願いを受け継がせる為に、教え導き守り。
時が来たら受け継いで貰う。
その繰り返しが愛おしいし、貴いことだと思います。
 老舗と呼ばれる数々の職業は、伝統の技と誇りを守り更に、改良を加えてまた、次代に渡して行く。
日本は古来より楪の木の精神で生きてきました。
私も息子が一人前に育つ姿を見て、木の養分となるため落ちて行く一枚の葉でありたいですね。

読んでいただき、ありがとうございました。
では、また明日…



楪の木では、ありませんが、美しい木です。









離れているから育つ愛、もしくは… ③彼女の話vol1

2015-06-25 10:12:54 | 恋愛 彩とりどりの愛の軌跡
 私から見た二人を描いてきましたが、今回からは当事者の彼女が語り手になります。彼女から聞いた話を忠実に再現し、どうしても足りない点のみなるべく彼女ならこう考え、話し、動くと信じて書きます。
フィクションとノンフィクションが混じった彼女の物語。なので一人称で書きます。【私】は=彼女 貴子(仮)で私ことゆりりんではありません。 では、彼女の恋物語を聞いてください。

 私は、パリのオペラ座をやや興奮気味に親友のMと見学していました。私達は劇団四季の『オペラ座の怪人』の世界が大好きで、関西公演が決まった時に即初日と千秋楽のチケットを予約したのに、ロングラン公演になり、もう一度本当に最後の千秋楽のチケットを購入して、計3回観に行った程役者も、音楽も演出に至る全てに虜にされていたから、本物のオペラ座を見て、空気を感じるだけで、気持ちが高ぶってしまうのは仕方なかった。
Mはボックス席から照明だけキラキラ輝く誰もいない舞台を見下ろし、『怪人』ではなく、オペラ、プッチーニ作『マノン.レスコー』の「華やかに着飾っても」を小さく呟くように歌っていた。
ソプラノからメゾまで出るのは、声楽をやっていたからだろう。
マノン.レスコー、贅沢で優雅でわがままな女。およそMとは別人の女を可憐なのに誇り高い女性に解釈して歌っても違和感が
全くない「貴方がいなければ 柔らかなレースで飾った寝台の中も
死んだように冷たく 私を凍らせてしまう…」
いきなり隣のボックス席から小さい拍手と「ブラボー!」と声が聞こえてMは真っ赤になって両手で口を抑え、とにかく頭を下げた。
そんな仕草も身長が低く、猫毛でふわっとしたセミロングヘア、瞳もつぶらな子猫の様な可愛い彼女には似合う。
暗くてよく見えなかった声の主は、隣のボックス席から私達のボックス席に入って来た。
「ノックもなく…」とMが言えば、「イタリアの女の子かと思ったら日本の女の子だったんだ。イタリア語上手だね。パリにはオペラ留学?」
「まさか…ただの観光旅行です」
入ってきたのは、背の高い日本人の青年2人だった。
眼鏡をかけた理知的な瞳が好奇心に輝いている。
もうひとりは眼鏡の男性より、少し背は低いけど口元に穏やかな笑みをたたえ、二人共同じような雰囲気を持っていた。何処か落ち着いていて、今まで合コンなどで知り合った男性とは何か違って見えた。
元々、私は、中学校から女子校で、大学も系列は違うけど女子大。
Mは大学までは共学校だったから、私よりは男性に免疫はあるとはいえ、突然歌を聞かれオペラ留学かと揶揄されたと勘違いしている今のMはまさに毛を逆立ててる猫みたいに見える。
 「9月も夏休みなら大学生だね。僕達も夏休みだからツアーみたいな旅をしてみようかっていう思いつき旅行。君たちはツアー?」
「いいえ、私たちは自由に行動したいから日程とホテルとTGVや高速バスと飛行機だけ決めたやじきた道中記みたいな旅です!」いいい切る語尾の強さとやじきた道中記になってしまった私たちの旅に、私もそんな答えが返ってくると思わなかった二人も笑ってしまった。
「た、貴子まで笑う事無いでしょ!」
M、真里子は顔を真っ赤に染めて抗議する。
「ごめんごめん。私たち弥次さん喜多さんにいつなったのかと思って…!」
流石に変な事口走ったと真里子は思ってる様子だった。
「では、美人二人のやじきた道中記の護衛に僕ら二人を雇いませんか?まだまだパリは物騒だよ」
「貴方たちが物騒じゃないでしょうね。大使館に走るわよ」
真里子の言葉にくっくっと笑い、眼鏡の男性は学生証とパスポートを見せて、どう?と聞く。
学生証とパスポートの情報は合致していたし、何よりガツガツ感が一切ない二人に真里子はついに立ててた尻尾をおろした。
「いいけど、私は行きたいとこに行くから、そっちの都合にはあわさないわよ」
「かしこまりました、マドモワゼル方」いとも優雅に執事のような仕草で腕を動かす。きっと向こうも演じて遊んでいるんだろう。
「僕は、鷹木哲也。こっちは瀬戸和弘」名乗られたら名乗るしかない。
「結城真里子です」「折原貴子です」
よろしく、と微笑んだ鷹木さんに私は一瞬胸に電流のようなピリッとした痛みが走ったけど、男性になれてない私の緊張だろうと思い、気を取り直して私は顔を上げて二人に微笑んだ。
 vol2に続く


 まだ愛ではない2人の恋 恋の痛みも何もない頃の恋に
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