エア・アジア機などで、クアラルンプールーシンガポール間を往侵した県企画部の清瀬和彦部長(当時は次長)と空港対策課の薮中完一課長は、その翌日の3月25日、エア・アジアⅩの本社を訪れていた。視察の一番の目的、オスマンラニCEOに直接会い、就航を正式に要請するためだ。
会議室での面談。オスマンラニCEOら同社幹部は興味のない話にはまったく乗って
こなかった。袋田の滝、日光東照宮、草津温泉、ゴルフ場 。県側が薦めた観光スポツトやレジャーは、彼らの狙いから外れていた。逆にこう質問してきた。「家電量販店やアウトレットはありますか」
エア・アジアⅩのビジネスプランは明快だ。東南アジアの中流階級を日本に運び、買い物をしてもらう。人気の高い日本製の家宅や服を安く買える店や、宿泊費が1万円を切るホテルがあれば、茨城にとどまる客層も生まれるとみる。東京に遊びに行く人や、国内線で大阪や札幌などに向かう乗り経ぎ客も想定する。低運賃を掲げて日本人利用客の掘り起こしも狙う。
4月末。自民党県連の山口武平会長ら県議十数人もマレーシアを訪問し、エア・アジアⅩの創業者でもあるトニー・フェルナンデス・エア・アジアCEOに就航を訴えた。そして今月16日。フェルナンデスCEOの公の発言がニュースとしても県にも届いた。「福岡、茨城、名古屋は候補だ」
懸念材料もある。「国民性からして、安かろう、悪かろうで、危ないという論調が生まれかねない」。航空マーケティングに詳しい筑波学院大学の大島慎子教授は消費者の理解不足を心配する。「必要な整備費は削らず、稼働率の良さなどで運賃を下げている。県はしつかり広報してほしい」
大島教授は成功の条件も挙げる。「都心からの鉄道アクセス」「成田空港との役割分担の明確化」「空港としての戦略」…。
エア・アジアⅩから関心とニーズは示されたが、まだ候補にすぎない。交歩材料をしっかり提示する宿題が県には残されている。