12月8日(土) 所沢ミューズに、ゲルギエフ+マリンスキー歌劇場管弦楽団のコンサートに行く。正直当初予定されたプログラムにはあまり食指は動かなかったが、このコンビでのミューズでの演奏会は、2002年に当時はキーロフ歌劇場管弦楽団と呼んでいた時代に初めて聴き、その圧倒的な音量に、これぞ「ルースキー」の音と驚嘆した。その後は彼らの来演を楽しみにチケットは欠かさず購入したが、幻想交響曲の時は、母親が、危篤状態の電話報告を病院から受け、聴けなかった以外は聴き続けた。中でもワグナープログラムの時はあまりの迫力に圧倒されその思い出が今でも脳裏に焼き付いている。そんな私には、チケット購入後に送られてきた、リハーサル鑑賞券と追加された、パルシファルの前奏曲には期待は高まり、しかもリハーサルが聴けるとあって、この日を待ち望んだ。各駅乗り換えで航空公園駅に降り、ミューズに足早に歩いた、ケヤキの枯葉を踏む音が弾んだ。既にリハーサルの見学者の列ができていた。
リハーサル会場に入るとリハーサルは始まっており残念ながら、パルシファルの前奏曲はあらかた終わり少ししか聞けなかった。また、この時も、マナー違反の観客(しかも我らが団塊世代が遅く来たのに、事前の注意事項を無視して席探しで音を立てながら自由席なのに敢えて前でウロチョロしていた。)情けなかった。 パルシファルの後のリハーサル曲は、事前のプログラムにはない曲で、一瞬戸惑ったが、聞き覚えのある現代曲だが、曲名が出てこない。木管と打楽器群との音のバランスを調整していた。リハーサルは途中で退席させられ、渡された本日のプログラムを見ると、思いもよらぬヂュティーユのメタボールだった。俄然この日のコンサートの期待は高まった。
出だしがまさかこのコンビで所沢で聴けると思わなかったデュティーユのメタボールを初めて生演奏で聴けた。作曲当時、世界最高のオーケストラと言われたジョージ・セルとクリーブランドオーケストラからの委嘱作品だけにオケの各パートのテクニックが最高に生かされ、各楽器の音色が対比的に提示されて変奏曲風に発展していくさまが、このオーケストラの力量のデモンストレーションだった。まさに圧倒された。この曲を聞けただけでも満足だった。
チャイコのバイオリン協奏曲の庄司紗矢香はそれこそ私の好きな指揮者の一人であり、ゲルギエフの師匠でもあるテルミカーノフとの演奏を聴いているが、それとの比較では、言葉は悪いが「ド演歌」的なネチコイ演奏で驚いた。敢えて、テルミカーノフとのスタイリシュなさわやかさの殻を破った変身ぶりはゲルギエフの影響なのか。私にはお嬢様が姉御に変身したような驚きだった。
後半の最初は、メタボールがなければ、この曲が今日の目的だったが、期待に違わず、洗練された響きが広がった。弦の響きが重厚でいながら、透明度のある音でミューズの音響の良さが堪能できた。
最後の展覧会はまさにこのオーケストラの持ち味が出されたものだ。最初に聴いたコンサートのシエラザードと同様にこのオーケストラのバカでかい音量は、「この曲の原曲はルースキーの曲だ」と言わんばかりにホールに充満した。アンコールに「花のワルツ」を聴きお開きになったが、会場を出ると真暗の中にイルミネーション点灯され「今はもう冬」を実感した。
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