所沢ミューズのワンコイン・コンサートに行く。退職後の外出は、そのついでが結構ある。交通費を浮かせるための貧乏人のなせるけちいーいマネー節約術である。墓地管理費用の年会費の振り込み、何か月かほったらかしの通帳の記帳、そしてコンサートの帰りにはカミサンに頼まれた買い物。用事が多くコンサートの感激も薄れてしまうほどだ。
下山口ー西所沢ー所沢ー航空公園の各駅乗り換えで行く。11時半に着く。市役所の食堂で、本日の地産地消定食「味噌漬け焼き豚定食」450円を注文しおつりで今日のワンコインコンサートの500円玉を確保する。食堂には私同様の、コンサート客らしき人で、満員状態。市役所の職員は困るだろうなーと思いながら食べる。
航空公園駅からのケヤキ並木が晩秋の風景になっていた。ミューズに着くと行列ができていた。我ら団塊世代は小中高と常に整列行進をやらされてきたが、その教育は無駄のようだった。「2列づつの四列にお並びください」の係の声にも列を崩すのは「ババーどもだ!!!」12時30分会場。そして開演間際に、席さがしをするのもババーどもだ。最初の曲が終わったときに、そのバーさんが通路に座り込んでいたのにはびっくりした。すぐに係員に連れ出されたが、年を取ると「知恵も薄れるが、恥も消えていくのか」とちょっと寂しくなった。
今日は久しぶりに、若さ溢れる素晴らしい演奏に感激した。どうしても、好きなブラームスだけに、しかも彼の晩年の名曲だけに、これまでは先入観で聴いていた。私は「渋さ・寂寥感・それを囲む込むような構成感」で固まった曲と理解していた。その名曲を若き日本人の俊英は、その固定観念をものの見事に打ち破り、ダイナミックな躍動感と清涼感あふれる明確なハーモニーの美しさを提示し、テンポよく、スピード感あふれる演奏を行った。正直私の良しとするブラームスとは真逆の演奏だった。だがそれもまた素晴らしいブラームスだった。
晩秋の昼下がり、「ブラームスの晩秋」を聴こうと思って出かけたが、うれしい裏切りに逢った。素晴らしいブラームスが聴けた。
帰りは航空公園を歩き所沢駅に出てかみさんの頼まれ買い物をデパ地下で調達し帰宅した。
晩秋の航空公園
私の手持ち
Cl:Karl Leister Pf:Ferenc Bognar
私のイメージしていたブラームス。日本ではあまり話題にならなかったが、Brahmsの室内楽が網羅された室内楽集のうちの1枚だが、どれもがいわばスタンダードなブラームスを聴かせてくれる中での白眉な演奏だと思う。
Cl:Dvid Shifrin Pf:Carol Rosenberger
これは私が最初に手にしたBrahmsのクラリネットソナタ。Shifrinのスリリングな演奏の中に何とも言えない寂寥感を感じる演奏が気に入って聴く機会の多いCD、余禄のシューマンのファンタジックも珠玉の名曲と思う。今日のコンサートにひそかに期待したが、かなわなかった。
Cl:Jonahan Cohler Pf:Judith Gordon
BBC MUSIC という英国の音楽雑誌の付録。音楽雑誌のレベルとしては大衆向けのもので、英国人の一般教養雑誌的要素の強いもので、毎年のように「英国人の好きな曲」100選的な特集をしていた。そして毎年のように上位にチャイコフスキーが顔を出していたのだが、それよりも付録につくCDがすこぶるつきに面白くそれを目当てに時折購入していた。このCDも好きなブラームスのほかに日本ではお目にかかれないボーン・ウイリアムとダリウス・ミヨーの小品のおまけにつられて購入した。ブラームスの演奏は本日聴いた演奏に近い感性を感じたが、スケール感、音の清涼感は本日の演奏がだんぜん素晴らしかった。
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