とりとも雑楽帳

狭山丘陵の里山歩きとクラッシク音楽の鑑賞日記です。

追悼 クルト・ザンデルリンク

2011年09月23日 | クラシックCD
 9月18日にザンデルリンクの逝去のニュースを知った。私の好きな指揮者マルケヴィッチと同年生まれ、他にはチェリビダッケ、ショルティ、ヴァントとそうそうたる指揮者が並ぶ。こうして見るとマルケヴィッチは少し死ぬのが早すぎたきがする。
 私自身、正直同年次の指揮者はマルケヴィッチ以外はあまり手持ちの音源は多くない。まして実演を聞いたことがない。同じ旧東独の指揮者であれば先に述べた(2010/1/17)スウィートナーのほうが好きだった。それはザンデルリンクにはモーツアルトのオペラもなく、モーツアルト好きにはあまり縁がなかったからかもしれない。
 したがってLP時代は彼の演奏はハイドンの交響曲1枚しかなかった。これが彼を知った最初だ。でもこのLpは彼の演奏と言うよりはドレスデンゼンパーオパーの音色の良さを聞いた。


Haydn交響曲 45番「告別」 104番「ロンドン」 

 そんな私でも以下のCDはすごいと思った。


 シベリウス 交響曲全曲

 シベリウスの交響曲全曲。彼はムラビンスキーとレニングラードフィルを指揮していたことからチャイコフスキーが評判だが、私は彼の重く、ガチガチのチャイコは嫌いだ。むしろ彼には重くガチガチに凍えそうなシベリウスが似合う。この1番の出だしのカラヤン的なキラキラ粉雪の光り輝く出だしよりも、寒々とした弦の響きが好きだ。全曲構成の取れたベートーベン的なシベリウスであり弦のある種くすみと重たさがかえって厳しい自然と向き合った作曲者の意図にあっているのではと思え、かれのユニークな演奏だが全曲とも素晴らしい出来だ。


 ブラームス交響曲全曲 +悲劇的序曲+ハイドンの主題による変奏曲

 これはドレスデンの音に惹かれ、1996年当時全曲2000円の最安値?だったこともあり手を出したが、ブラームスは好きな作曲家だけに交響曲の手持ちは多いが、全曲単位でみれば、バルビローニとウィーンフィル、ザンデルリンクとドレスデンの響きは音を楽しむブラームスとしては最良の出来と思う。


 マーラー交響曲10番(クック版全曲)

 意外というかベルリンの重い弦の響きがハマっているというか、ショスタコービッチの5番、8番、10番の演奏に連なる彼の名演奏だと思う。「重い・暗い・遅い」の三拍子が曲にハマっている。この演奏がベストかどうかは知らないがペシミズムを音で現すとこうなるのだと思う。


 ショスタコービッチ 交響曲8番 10番
 
 この曲に関してはベストだと思う。8番、10番は曲の成り立ちからして「煉獄の悲劇」だ。ショスタコビッチは身の危険を感じつつ作曲したこれらの曲を、ユダヤ人としてナチスを逃れ、敢えてナチスの最前線に対峙したソ連に亡命し、大戦後のスターリン粛清時代を生き抜いた彼の音楽からは「苦悩から歓喜」のベートーベンは聞こえない。ベルリンからあふれる音は苦悩の叫びだ。
 それが作曲者の意図を代弁者として語っている。


 ショスタコービッチ 交響曲5番 10番(指揮オイストラッフ) 同Vn ConNo.1(Vnイゴールオイストラッフ)
プロコフィエフVn Con No.1-2 (Vn ダビッド・オイストラッフ)
シューマン交響曲 No.4 モーツアルト Pf Con No.24(内田光子)他  


 これは5枚組CDセットで彼の引退記念演奏会(2002年3月19日)の全曲とベルリン交響楽団創立50周年記念として、歴史的演奏会(必ずしも歴史的名盤ではない)を合わせ5枚のCDにおさめたものである。
 これは内田光子とのモーツアルトの24番を期待しての購入だが、モーツアルトと言うにはあまりにも弦の響きが暗く、重たい。
でもこのセットの中のショスタコの5番はおそらく私の聞いた演奏の中ではバーンステインの東京公演に次ぐものだろう。ただしレニー演奏はVTRでの映像が非常にプラスなのだが、8番、10番同様に彼の人生を語っている。この1枚だけでもこのセットの価値があると思う。


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