とりとも雑楽帳

狭山丘陵の里山歩きとクラッシク音楽の鑑賞日記です。

追悼 ルドルフ・バルシャイ

2010年11月07日 | クラシックCD
ルドルフ・バルシャイ氏が11月2日に亡くなられたことを知った。我がおふくろと同年の1924年生まれで86歳だった。
何度も来日していたが、残念ながら一度も生でのコンサートは聴くことがなかった。

ただこの指揮者の演奏には忘れられない思い出がある。中学の時だったと思うが、当時「新世界レーコード」というソ連の音楽家のレコードを発売していた会社から17cmのLPでモーツアルトの40番の交響曲が売り出された。自分のお小遣いで買えるステレオ録音の1番安い40番だった。レコード針を下ろした瞬間にさっそうとした出だしに驚き感動したが、レコード雑誌での評価はレコード会社は17cmに収めるため反復を省略とか、買うべきLPではないとさえいわれ、あとで読んだ小林秀雄の「悲しみのシンフォニー」とはあまりにも乖離があると思いこんだ。その後ワルターの先生方ご推薦のLPを買った。バルシャイのLPは不要になりいとこにあげてしまい聴くことはなかった。
1970年にジョージセル・クリーブランドの来日時に、FM放送でLIVEを聴いた。この演奏は新聞紙上の音楽評でも、雑誌の音楽評でも絶賛だった。私自身もFM放送を安物のオープンリールのテレコに録音し聴いていた。ただなぜか、バルシャイの40番が同じ音楽作りをしていることを思い出したが、実証できずにいた。
今手元にセルの来日公演LIVEのCDとバルシャイのCDを聞き比べると、演奏時間は2,4楽章を省略なしに演奏しているバルシャイ盤は10分ほど長いが、オーケストラを室内楽のように演奏した、セル盤と室内楽をオーケストラ的に演奏したバルシャイ盤の到達点が非常に近いことを改めて認識し1963年当時のバルシャイ+モスクワ室内管弦楽団の質の高さを改めて感じた。この2枚組には小ト短調の25番も素晴らしい出来だ。


バルシャイのモーツアルトにリヒテルと組んだ素晴らしいCDがある。K.595とk.450だ。ただしここでのオケは手兵だったモスクワ室内ではなくモスクワ交響楽団だ。それと1994年にサントリーホールで実現したコンサートだ。これはNHKでTV放送されVTRに録画したのをDVDに焼き直し、今でもよく聞いている。CDで市販はされているがまだDVDでの市販は無いので大切にしている。
ここでのバルシャイのサポートも素晴らしい。特に最初期のK.37、K.175の素晴らしさはここでしか聞けない。




ロストロポーヴィチと組んだハイドンのコンチェルトの颯爽とした音の流れは「ソ連時代の音楽の頂点」だったのだろう。


1976年のイスラエルへの亡命後彼の名が大きくクローズアップされたのはこのショスタコービッチの交響曲全集だろう。
ソ連崩壊後のショスタコーヴィッチの解釈を作曲者の身近にいたバルシャイが亡命者の立場で見据えた全集に惹かれて購入した。しかし、既存の手持ち(コンドラシン、ムラビンスキー、バーンステイン、ハイテンク)を凌駕しているかは疑問だが、聴くに値する全集であることは間違いない。


マーラーの交響曲10番(バルシャイ盤) 5番
ここでの聴きものは10番だろう、5番については値段が安いと言ってあえてこれをチョイスする意味はない。しかし10番に関しては一聴の価値はある。マーラーサウンドの大きなうねりが押し寄せる。編曲者としての彼の見識と能力を示すすばらしさだ。 



彼自身の編曲によるショスタコービッチの弦楽四重奏曲からの交響曲。弦楽四重奏曲はショスタコーヴィッチの本音。編曲は本音を声高に叫ぶようであまり好きにはなれないが、バルシャイの業績でもある。これはモスクワ室内管弦楽団の録音で聞いてこそ価値があるとおもう。追悼に当たっての蛇足。





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