中学からクラシック音楽を聴きだしたが、当時はまだ運命・未完成とニックネームのある名曲が対象となり、モーツァルトではジュピター、ハフナーぐらいだった。
高校生になって、ご多分に漏れず当時の傾向として小林秀夫「モオツアルト」に多分に影響され、短調に興味を持ち、購入したレクイエムはヘリオドールレーベルの輸入盤が当時一番安かったことからだ。なぜか今も昔も輸入盤のほうが安かった。このレコードの価値は1956年のモーツァルト生誕200年を目的に彼の命日の1955年の12月5日にウィーンのシュテファン大聖堂でのライブ録音されたとのことだ。しかしレコードは1968年?当時はステレオ録音が主流で、モノ録音は時代遅れになりつつ有り、其のため敢えて電気的に擬似ステレオに加工されたものだった。其のため音の定位が不明で音楽的な価値をあれこれ言えるしろものではなくなった。しかしなぜか大聖堂にいる錯覚を覚え、始めて聴いたときはやたら感激した思い出がある。
大学に入ると、バイトで稼いで、LPを買ったがバイトの稼ぎもたかがしれ、もっぱら廉価版と輸入盤あさりに精をだし、当時ようやく日本でのレコード販売も盛んになり各社ともLP1枚1000円の廉価版を出すようになった。中でもカール・ベームのグロリアシリーズはLP1枚900円だった。しかしこれも擬似ステレオだった。その後、ベームはウィーンフィルと再録音した。そのLPは評論家先生からの絶賛を浴び、その後講談社からLP2枚組みの音楽全集になり売りだされた。就職したことからも小遣いに余裕ができ、好きな弦楽五重奏曲とのセット販売も魅力ですぐに予約を入れて購入した。しかし演奏は、なにか弛緩したモーツァルトで自分には納得のいかないものだった。そんな中でカール・リヒター=ミュンヘンバッハOrchは、正真正銘のステレオ録音でしかもソプラノがマリア=シュターダー。発売当初は彼のバッハは良いがモーツァルトにはむかないとの評論が多く不評だったが、私の手持ちの中では一番好きなレクイエムだ。古楽演奏を先取りしたリズムのキレ、構築された枠組みの中での各楽器の響き、其の上に流れるマリア=シュターダーの清涼な響きが魅力だ。
Lp時代にワルター・ニューヨークPhiの生誕200記念の録音がある。しかしこれもCD時代になりウィーフィルとの生誕記念コンサートのLiveが売り出されると、正直存在意義は薄くなったが、CDも思ったほど感銘はうけない。むしろ古さを感じる演奏だ。むしろCDでのジェスマイヤー版ではミシェル・コルボが素晴らしい。マリア=シュターダーほどではないがアメリングの響きがすばらしい。
ホグウッドのモンダー版はジェスマイヤー創作部分を切り捨ているが、元々が共作なのだからそこまでやらなくてもという思いもする。かれの交響曲同様、古楽器の弾むようなリズムが心地良い。ただしおなじ古楽演奏でもアーノンクールのバイヤー版の方が違和感はない。このCDはSACDでもCDでも再生できCDのばあいはPC画面上で、自筆原稿が曲の進行にそって表示される+アルファが素晴らしい。音楽自体も素晴らしく、リヒターとの差は、ソプラノの出来だけだ。
でもいつでも、何度きいても飽きないのはコルボの演奏かもしれない。
NHKで放送されたものをDVDにダビングした中に、1991年のクリスマスに全世界中継された、記念ミサの実況録音がある。ショルティーの指揮するウィーンフィルの演奏にソプラノがアーリン・オジェでこの演奏後まもなく亡くなったおそらく最後の演奏会だったのだろう。
キリスト教に無縁の私にはザルツブルグの大主教のミサとはなにかを初めて知った演奏会だった。
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