イブラギモヴァは2011年11月にミューズに登場していたのを知らなかった。オールバッハプロなのに聞き逃した。バッハ好きの私としては、考えられないことで、今思えば残念でならないが、調べてみると、ちょうどこのとき北海道の出張予定が入り日程がどうなるが不明で、チケットを買っていなかったためだ。またこれまで彼女の演奏は聞いたことがなく、たまたま先日Netラジオで、Boston Symの定期演奏会での ハルトマンとハイドンのヴァイオリン協奏曲を聴いた。現代音楽と古典派を同時に演奏会で演じしかも見事までに時代感を弾き描いた、彼女の実力に驚嘆した。そんなことで、今日のBachとBartokのどちらもわたしの大好きな作曲家の無伴奏曲は大いに期待して出かけた。
正直年度末の14時開演にどんな人が聴きに来るのだろうかと思った。現役組は厳しい時間だし、われらが年金組が主体であることは間違いなく、過半以上を占めていたが、それでもちらほら会社を早退したのかビジネス鞄を下げていた御仁もおみうけした。出足は悪く心配したが。1階席はほぼ満席だった。彼女が弾きだす最初の音が非常に気になったが、ビーバー作の「ロザリオのソナタ」より、はあまりにもつまらない曲で拍子抜けだった。続いてのBachは何よりも楽しみにしていた曲だが、出だしから音が硬質で力強い響きで構築された音楽だった。私好みの「美しいBach」ではなかったが、シェリングの演奏をより鋭く切り込んでいく演奏だった。
イザイの曲は、これまで聴いたことがなく比較の対象はないが、曲そのものは技巧的には難しい曲なのだろうが、聴くだけの人にはその技巧の難易度には興味はないので、音楽的にはあまり好きにはなれない曲だった。最後のバルトークはそれこそ、今日のハイライトだった。素晴らしいの一言。ヴァイオリンを弾いたことのないものには技巧的なことはわからないが、曲そのものが、人の心をずたずたに切り裂いた時代を反映した曲だけに、バルトークのその絶望からの叫びを一音一音を見事なまでに引き出し30分の音楽の中にバルトークの人生を描き切ったような演奏だった。30歳そこそこの彼女の演奏からバルトークの叫びが聞えるのはすごいことだ。
アンコールは無伴奏ソナタ2番からアンダンテだった。2011年のBachを再演にまた来てほしいと思った。私の好きなBachは時代遅れのBachなのかもしれない。
私の手持ち Bach
シェリング
①②
③
①は学生時代、「バッハの無伴奏を聴かずして、音楽を語ることなかれ」の風潮に従い、また当時は「無伴奏はシェリングに尽きる」みたいな雑誌レコード**の評論家諸氏に従い、布張りケースに入った3枚組LPにバイトで稼いだ大金大枚5000円を払って購入した。しかし正直正座して聴けみたいな、威厳と威圧感に違和感を感じた。就職してすぐTEACの4トラックのテープレコーダーを買い込み、仕事が忙しく、コンサートにいけない代用にFM東京でコンサートLIVE中心の番組「TDKオリジナルコンサート」を留守録音して聴いていた。その中にシェリングが1976年に来日LIVEがあり、②むしろこちらを好ましく思いメインに聞いていたが、単身赴任中に、CD時代には時代遅れのごみとみなされ、すべて処分されてしまった。21世紀になってCDで復刻されすぐに買い求めた。③スイス・イタリア語圏放送局のLIVE録音で1975年のアスコーナ音楽祭のLIVE。演奏時間もほぼ同じで②と大差ないが、プログラムがドイツ三大BのBeethoven、Brahmsと並べたコンサートが面白い。
グルミヨー
①②
①は私の推薦:とにかく癒されるBachだ。Vnの美音がすばらしい。1961年の録音だが、以来レコード**なる雑誌評論家には無視され続けているが、クリスチーヌ・ジャコティと組んだソナタを含め美しいバッハを私は好む。②は1962年のサラバンドと1967年のシャコンヌのみモノクロのDVDだが、これはドラティーの指揮するフランス放送管弦楽団のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の付録。
ヨハンナ・マルティーモノラル録音ながら、音は美しい。私好みのBachだ。
キドン・クレメルNHKで放映されたDVD、クレメルの30年ぶりの再録音にあたってのドキュメントとパルティータ全曲が収録。音楽全体が穏やかになり、「円熟」が感じられるが、その分とんがった部分がなくなり面白味には欠けるが、私はこのほうが好きだ。
Bartok
ジェルジュ・パウク雑誌レコード**誌では無視され続けたNAXOSレコードの名盤。このCDでバルトークの無伴奏ソナタが名曲だと知った。でも今日の演奏はその上を行く演奏だと思った。
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