おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ジャッカルの日

2019-07-26 08:25:35 | 映画
「ジャッカルの日」 1973年 イギリス / フランス


監督 フレッド・ジンネマン
出演 エドワード・フォックス
   ミシェル・ロンズデール
   アラン・バデル
   トニー・ブリットン
   シリル・キューザック
   エリック・ポーター
   オルガ・ジョルジュ=ピコ
   デルフィーヌ・セイリグ
   ミシェル・オークレール

ストーリー
1962年8月26日ペティ・クラマール郊外で、エリゼ宮殿からパリ近くの空港へ向かうドゴール大統領を乗せた車が、待ち伏せていた軽機銃で武装した1隊の襲撃をうけたが、奇跡的に大統領は無事だった。
すでに大統領暗殺は6回も計画されており、首謀者ジャン・マリエ・タリー中佐が銃殺刑に処せられた。
全てが、アルジェリアからのフランス撤退政策をとったドゴールに反対する秘密組織OASの仕業だったが、63年に入ると政府側のしめつけが激しくなり、OASは動きが取れなくなった。
国外に難をさけたOASの指導者ロダン大佐は最後の残された手段として、外国人でしかも当局には顔も名前も知られていない殺し屋を雇う事にした。
その男の暗号名はジャッカルと言い、契約金は50万ドル。
その金を用意するためにOASはフランス各地で銀行強盗を決行した。
しかしその突然のテロ行為はフランス当局を警戒させるもととなった。
やがてロダン大佐の護衛の1人ウォレンスキーがフランス側につかまり、拷問にかけられた。
彼はしゃべらずに死んだがその断片的な言葉からフランス警察が動きだした。
その頃、ジャッカルの準備も着々進み、精巧な狙撃銃を作らせフランス国内に潜入した。
ウォレンスキーの断片的な自白は、大統領を守る立場にある大臣を緊張させ、早速政府首脳陣の主だった連中が召集された。
会議の結果、警察のルベル警視と補佐のキャロンに全権が委任され、捜査が開始された・・・。


寸評
フレッド・ジンネマン監督らしい、派手なアクションなどないにもかかわらず手に汗を握らせ、ドキドキするような緊迫感を生み出している社会派サスペンスの一級品だ。
イギリスやフランスの当局が特定し見つけ出すことが出来なかったジャッカルを、OASの連中がなぜ簡単に連絡が取れたのかなどという疑問はさておいて、前半のジャッカルが身分を偽る準備段階からスリルたっぷりで引き込まれる。

先ずは身分証などを偽造するが、その相手から取引を持ち掛けられると、ためらいもなく一撃のもとに倒す。
おそらくジャッカルの元の身分証などはどうせ作ったもので、それが戻ってこなくても大したことはなかったのではないかと思った。
鍵を手に入れた彼は、預けたものを取り返したかもしれないが、取り返さなくても問題はなかったように思う。
それほどジャッカルは謎の人物で、正体が判明していない本当は誰なのかが分からない人物なのだ。
特注のライフル銃の調整場面などもスピーディで一気に見せる。
それは車の手配やら、ボディのカラー変更、ナンバープレートの付け替えなどでも同様で、その手際の良さが心地よい。
自分に似た風貌の旅行者を見つけ出し、パスポートをすり取ってその人物になりきるくだりも面白い。
目的達成の為には平気で人を殺す残忍さも持ち合わせているが、その処置も素早い決行なので残忍さよりも手際の良さが目立つ演出だ。

後半はジャッカルの存在を知ったフランス当局との駆け引き合戦に入っていくが、常に先手を行くジャッカルを追うフランス当局の動きが面白い。
担当するのが凄腕の諜報員ではなく、どこか風采の上がらない中年敏腕刑事のルベル警視というのが雰囲気を作り出していく。
その捜査方法は人海戦術を用いた地道なもので、それがかえってスリリング感をだすから不思議だ。
パスポート申請者、ホテルの滞在者名簿の収集、入国者の洗い出しなど、対象件数が多い案件ばかりだ。
会議メンバーの中から情報が洩れていると悟ったルベル警視は盗聴を駆使しててその人物を割り当て、スパイを逮捕するが、会議メンバーの一人から「なぜ分かったのか?」と尋ねられ、「みなさん全員を盗聴させてもらった」とボソリというあたりは、その滑稽さに思わず笑みが漏れた。
面白いのは、そのルベル警視が犯人が分かったから後は我々でやると解任されることである。
簡単に発見されると思われたジャッカルが、あることで思惑通りに発見されなくなってしまうと、再びルベル警視が呼び出される。
権力機構の身勝手さがにじみ出てくる、面白い描き方だった。
ルベル警視は勘が鋭い。
警備の警官と話をするが、会話の内容は聞こえてこない。
しかし、話の内容は容易に想像がつく。
この演出も最後のスピード感と雰囲気をだして上手いと唸らせる。
結末もくどくなく、そのテンポを最後まで維持した作品だ。