「007 スカイフォール」 2012年 イギリス / アメリカ
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監督 サム・メンデス
出演 ダニエル・クレイグ
ハビエル・バルデム
レイフ・ファインズ
ナオミ・ハリス
ベレニス・マルロー
アルバート・フィニー
ストーリー
NATOが世界中に送り込んでいるスパイのリストが収録されたハード・ドライブを盗まれる緊急事態が発生。
MI6のエージェント、ジェームス・ボンド(ダニエル・クレイグ)は新人女性エージェントのイヴ(ナオミ・ハリス)と、ハード・ドライブを取り戻すべくM(ジュディ・デンチ)の指示に従い、敵のエージェントを追い詰め、イヴはMの指示で犯人の狙撃を試みるが銃弾はボンドに命中し、彼の体は深い渓谷へ落下し犯人は逃げ延びる。
Mは責任を問われ、情報国防委員長であるマロリー(レイフ・ファインズ)から引退を勧められるも拒絶。
今度はMのコンピュータがハッキングされ、MI6本部が爆破される事態が発生し、窮地に立たされた彼女の前に手負いのボンドが姿を現わし、首謀者を突き止めるため僅かな手掛かりをもとに奔走する。
上海へ行くことになったボンドの前に「Q」(ベン・ウィショー)が現れ、一見学生のような若者・Qから秘密道具を渡され、黒幕の手がかりを掴んだボンドはマカオへ向かう。
NATOのエージェント5名の氏名がインターネット上に晒され、毎週さらに5名ずつ公表すると予告される。
マカオでボンドは上海で見かけた謎の美女・セヴリン(ベレニス・マルロー)と接触。
セヴリンの「ボス」への怯えを見抜いたボンドは、ボスに会わせて欲しいと持ち掛ける。
ボディガード達を倒したボンドはセヴリンとアジトの島へ行く船に乗ったが、島に着く直前に二人は囚われの身となってしまい、そこで一連の犯行はMへの復讐に駆られた元MI6の凄腕エージェント、シルヴァ(ハビエル・バルデム)によるものだということが判明。
一瞬の隙をつきボンドはシルヴァを捕らえ、MI6へと護送するが、それはシルヴァの予定の行動だった。
執拗にMをつけ狙うシルヴァとの戦いに挑むべくボンドはスカイフォールの廃墟のような生家にむかい、そこでボンドは番人・キンケイド(アルバート・フィニー)と再会し、自分を殺しに来る奴を、殺される前に殺すと告げた。
寸評
50周年を迎える記念作とあって、監督に1999年の「アメリカン・ビューティー」でアカデミー作品賞と監督賞を受賞したサム・メンデスを迎え、悪役を2007年の「ノーカントリー」でアカデミー賞の助演男優賞を獲得したハビエル・バルデムが演じ、気合を入れているなという布陣である。
冒頭のカーチェイスは、何とタイトル表示前の13分間にも及ぶから、まずはそれに注目だ。
しかもこのカーチェイスによって「ジェームズ・ボンド死す!」のニュースが流れることになるから、最高のカッコよさを売り物にしてきたシリーズとしてはあれあれというオープニングである。
もっとも僕は初期の007を見ているが、その後はご無沙汰しているので最近のボンドのスタイルは知らないでいる。
この作品のストーリーは単純である。
かつてMの優秀な部下だったエージェントのシルヴァが冒頭のボンドと同じように非情にもバッサリ切り捨てられてしまったため、その個人的な恨みを原動力として、M個人やMI6ひいては英国そのものに対して復讐するというのが本作のストーリーの軸である。
この構図はたとえば1994年にヤン・デ・ボンが撮った「スピード」の犯人の動機と同じようなもので、取り立てて目新しいものではない。
僕はこの作品を見ているうちに、裏テーマとして新旧交代を描いているのでないかと思えてきた。
まずMが責任を問われ、情報国防委員長であるマロリーから引退を勧められている。
実際ジュディ・デンチが演じるMI6の局長Mは本作で消えそうだ。
007シリーズではMI6武器開発担当者のQが面白い存在だが、本作ではそこに若手のQが登場する。
Qがボンドに支給するさまざまな武器や小道具が見もののひとつだったが、本作で支給されたのは、ボンドの指紋でしか撃てない銃とボンドの所在地を示す機器のみだ。
拳銃がその特性を生かすワンシーンはあるが、「出たぞ新兵器!」という感じではない。
Qは「あなたが1年かけて敵に与えるダメージを僕は紅茶を飲みながらパソコンであっという間にできる」と豪語していて、今はパソコン操作が全ての時代となったため、現場のスパイの武器はこれだけで十分ということか。
ボンドはここで「世代交代か・・・」とつぶやいている。
しかし話は旧世代としてのボンドとシルヴァの対決に絞られている。
ボンドはシルヴァのいる島にセヴリンと乗り込むが、二人はいとも簡単に囚われの身となる。
一瞬の隙をつきボンドはシルヴァを捕らえMI6へと護送するのだが、ボンドが捕らわれる展開といい、シルヴァが捕らわれる展開といい、なんだか簡単なものなんだなあと感じ、ちょっと中だるみ感がある。
もっともシルヴァが捕まるのは彼の計算の内であったことが判明するけれど、やはりあんちょこ感はある。
ボンドの生家での対決で、ボンド側は旧来の武器で戦うことになる。
アルバート・フィニー のキンケイドが登場するが、これがショーン・コネリーだったら面白かった。
シルヴァが近代的兵器をいくらでも使えるのなら、ヘリコプターから爆弾を一発落とせばいいではないかと思う攻防は汗握る興奮からは遠いものだが、総じてスパイアクション作品としてかなりの水準になっていると思うし、シリーズの中でも出色の出来の1本だろう。
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監督 サム・メンデス
出演 ダニエル・クレイグ
ハビエル・バルデム
レイフ・ファインズ
ナオミ・ハリス
ベレニス・マルロー
アルバート・フィニー
ストーリー
NATOが世界中に送り込んでいるスパイのリストが収録されたハード・ドライブを盗まれる緊急事態が発生。
MI6のエージェント、ジェームス・ボンド(ダニエル・クレイグ)は新人女性エージェントのイヴ(ナオミ・ハリス)と、ハード・ドライブを取り戻すべくM(ジュディ・デンチ)の指示に従い、敵のエージェントを追い詰め、イヴはMの指示で犯人の狙撃を試みるが銃弾はボンドに命中し、彼の体は深い渓谷へ落下し犯人は逃げ延びる。
Mは責任を問われ、情報国防委員長であるマロリー(レイフ・ファインズ)から引退を勧められるも拒絶。
今度はMのコンピュータがハッキングされ、MI6本部が爆破される事態が発生し、窮地に立たされた彼女の前に手負いのボンドが姿を現わし、首謀者を突き止めるため僅かな手掛かりをもとに奔走する。
上海へ行くことになったボンドの前に「Q」(ベン・ウィショー)が現れ、一見学生のような若者・Qから秘密道具を渡され、黒幕の手がかりを掴んだボンドはマカオへ向かう。
NATOのエージェント5名の氏名がインターネット上に晒され、毎週さらに5名ずつ公表すると予告される。
マカオでボンドは上海で見かけた謎の美女・セヴリン(ベレニス・マルロー)と接触。
セヴリンの「ボス」への怯えを見抜いたボンドは、ボスに会わせて欲しいと持ち掛ける。
ボディガード達を倒したボンドはセヴリンとアジトの島へ行く船に乗ったが、島に着く直前に二人は囚われの身となってしまい、そこで一連の犯行はMへの復讐に駆られた元MI6の凄腕エージェント、シルヴァ(ハビエル・バルデム)によるものだということが判明。
一瞬の隙をつきボンドはシルヴァを捕らえ、MI6へと護送するが、それはシルヴァの予定の行動だった。
執拗にMをつけ狙うシルヴァとの戦いに挑むべくボンドはスカイフォールの廃墟のような生家にむかい、そこでボンドは番人・キンケイド(アルバート・フィニー)と再会し、自分を殺しに来る奴を、殺される前に殺すと告げた。
寸評
50周年を迎える記念作とあって、監督に1999年の「アメリカン・ビューティー」でアカデミー作品賞と監督賞を受賞したサム・メンデスを迎え、悪役を2007年の「ノーカントリー」でアカデミー賞の助演男優賞を獲得したハビエル・バルデムが演じ、気合を入れているなという布陣である。
冒頭のカーチェイスは、何とタイトル表示前の13分間にも及ぶから、まずはそれに注目だ。
しかもこのカーチェイスによって「ジェームズ・ボンド死す!」のニュースが流れることになるから、最高のカッコよさを売り物にしてきたシリーズとしてはあれあれというオープニングである。
もっとも僕は初期の007を見ているが、その後はご無沙汰しているので最近のボンドのスタイルは知らないでいる。
この作品のストーリーは単純である。
かつてMの優秀な部下だったエージェントのシルヴァが冒頭のボンドと同じように非情にもバッサリ切り捨てられてしまったため、その個人的な恨みを原動力として、M個人やMI6ひいては英国そのものに対して復讐するというのが本作のストーリーの軸である。
この構図はたとえば1994年にヤン・デ・ボンが撮った「スピード」の犯人の動機と同じようなもので、取り立てて目新しいものではない。
僕はこの作品を見ているうちに、裏テーマとして新旧交代を描いているのでないかと思えてきた。
まずMが責任を問われ、情報国防委員長であるマロリーから引退を勧められている。
実際ジュディ・デンチが演じるMI6の局長Mは本作で消えそうだ。
007シリーズではMI6武器開発担当者のQが面白い存在だが、本作ではそこに若手のQが登場する。
Qがボンドに支給するさまざまな武器や小道具が見もののひとつだったが、本作で支給されたのは、ボンドの指紋でしか撃てない銃とボンドの所在地を示す機器のみだ。
拳銃がその特性を生かすワンシーンはあるが、「出たぞ新兵器!」という感じではない。
Qは「あなたが1年かけて敵に与えるダメージを僕は紅茶を飲みながらパソコンであっという間にできる」と豪語していて、今はパソコン操作が全ての時代となったため、現場のスパイの武器はこれだけで十分ということか。
ボンドはここで「世代交代か・・・」とつぶやいている。
しかし話は旧世代としてのボンドとシルヴァの対決に絞られている。
ボンドはシルヴァのいる島にセヴリンと乗り込むが、二人はいとも簡単に囚われの身となる。
一瞬の隙をつきボンドはシルヴァを捕らえMI6へと護送するのだが、ボンドが捕らわれる展開といい、シルヴァが捕らわれる展開といい、なんだか簡単なものなんだなあと感じ、ちょっと中だるみ感がある。
もっともシルヴァが捕まるのは彼の計算の内であったことが判明するけれど、やはりあんちょこ感はある。
ボンドの生家での対決で、ボンド側は旧来の武器で戦うことになる。
アルバート・フィニー のキンケイドが登場するが、これがショーン・コネリーだったら面白かった。
シルヴァが近代的兵器をいくらでも使えるのなら、ヘリコプターから爆弾を一発落とせばいいではないかと思う攻防は汗握る興奮からは遠いものだが、総じてスパイアクション作品としてかなりの水準になっていると思うし、シリーズの中でも出色の出来の1本だろう。