「日本沈没」 1973年 日本
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監督 森谷司郎
出演 藤岡弘 いしだあゆみ 小林桂樹 滝田裕介
二谷英明 中丸忠雄 村井国夫 夏八木勲
丹波哲郎 伊東光一 松下達雄 河村弘二
山本武 森幹太 鈴木瑞穂 垂水悟郎
細川俊夫 加藤和夫 中村伸郎 島田正吾
ストーリー
海底開発KKに勤める深海潜水艇の操艇者・小野寺俊夫(藤岡弘)は、小笠原諸島北方の島が一夜にして消えた原因を突きとめようと、海底火山の権威、田所博士(小林桂樹)、幸長助教授(滝田裕介)らとともに日本海溝にもぐった。
潜水艇“わだつみ”が八千メートルの海底にもぐった時、彼等は異様な海底異変を発見した。
東京に帰った小野寺は、自由奔放に生きる伊豆の名家の令嬢・阿部玲子(いしだあゆみ)と会った。
そして、湘南の海岸で二人が激しく抱擁中、突如、伊豆の天城山が爆発し、それを追うように、三原山と大室山が噴火を始めた。
小野寺と幸長助教授は、ふたたび田所博士に呼び出された。
田所はなぜか、日本海溝の徹底した調査を急いでいた。
内閣では、山本総理(丹波哲郎)を中心に、極秘のうちに地震問題に関する学者と閣僚との懇談会が開かれた。
出席した学者たちは楽天的な観測をしたが、一人、田所博士だけが列島の異常を警告した。
しかし、この意見は他の学者に一笑に付されてしまった。
懇談会から十日ほどたったある日、田所博士は渡(島田正吾)という高齢の老人に会った。
渡は政財界の黒幕として君臨し、今もなお政治の中枢になんらかの影響力を持つという人物だった。
それから一週間後、内閣調査室の邦枝(中丸忠雄)という男が田所博士を訪れ、列島の異変への調査を依頼してきた。
田所博士は、幸長、小野田、邦枝、そして、情報科学専門の中田(二谷英明)らを加えてプロジェクト・チームを結成し、D計画を設置して、異変調査の“D1計画”を秘密裡に始動させた。
全員は、フランスより購入した高性能の深海潜水艇“ケルマディック号”に乗り、連日、日本海溝の海底調査に没頭、調査が終了して得た結論は、日本列島の大部分は海底に沈むだった。
その時、“第二次関東大震災”の勃発が知らされた。
電車の脱線、追突、車の衝突が続発し、地下鉄・地下街は一瞬にして停電、処によっては泥水が流れ込み、首都圏は想像を絶するパニック状態に陥り、まさに地獄と化した。
そんなある日、田所博士が、テレビに出演し、日本は沈没すると発表してしまう。
その頃、山本と渡との間で秘かに、一億国民の国外大移住“D2計画”の話し合いが行なわれていた。
母の急死により大阪に帰っていた小野寺は兄と別れた後、意外にも玲子と再会した。
一年半前から玲子は小野寺を捜し求めていたのだった。
その夜、二人は空港ホテルの一室で結ばれる。
一方、D計画本部では遂に恐るべき事実が判明した。
日本列島は後10ヵ月後に急激な沈下が始まるというのである。
翌日、総理官邸では、緊急臨時閣議が開かれ、日本国民の海外移住について、審議された。
小野寺は玲子とともにスイスへ移住することを決意した。
小野寺の出発する日、山本総理は、宇宙衛星を通じて全世界に向けて、列島沈没を報道した。
時を同じくして、富士山が本格的な噴火、爆発を始め、箱根、御殿場での避難が始まったという連絡が入った。
その時、小田原近くで富士山の大噴火のために立往生してしまった玲子から小野寺に電話が入った。
必死になって声をはり上げる玲子の声にかぶさるようにゴーッという山鳴りのような響きが聞こえ電話が切れた。
小野寺は気狂いのように受話器を叩きつけ部屋を突び出した。
この日から日本各地で火山が爆発を開始、日本列島はズタズタに引き裂かれ、急速に沈下を始めた。
この間にも“D2計画”は急ピッチで進められ、世界各国に特使が飛び、日本国民の避難交渉が進められた。
アメリカ、ソ連、中国から救助の手がさしのべられ、続々と国民は沈没していく列島から避難していった。
やがて、四国が、東北が、北海道が次々と裂けていき、やがて、日本列島はその姿を海中に没した……。
寸評
光文社カッパ・ノベルスから出た小松左京の原作が大ベストセラーとなり、僕も上下2巻を買って読んだのだが非常に面白かった。
本作はその映画化である。
VFX技術が進んだ現在ではもっとリアルな特撮が可能だろうが、当時としてはよくできていたと思うのに、映画は小説ほどのヒット作とはならなかった。
ジャンルとしては空想科学映画の部類に入ると思うが、地震大国に住む日本人である僕は絵空事と思えないものを感じてしまう。
当時もそうだったが、現実に阪神淡路大震災や東日本大震災が起き、熊本地震や能登地震も起きているからなおさらだ。
東南海地震の発生確率も上がっているのだが、まあ自分の生きている間は大丈夫だろうとの甘い気持ちがないわけではない。
さすがに列島がずたずたに分断されて海中の没してしまうことはないだろうが、いつ自分の家が倒壊するか分からないのが日本国土である。
地震学者の予想など当てにならないと思っている。
それでも自分に都合の悪いことは起きないと思ってしまうのが人の常なのかもしれない。
海底開発会社の深海潜水艇の操縦者である藤岡弘が物語前半の主人公である。
後半は富士山の噴火など列島の異常事態が占めるようになり、集団群像劇の様相を見せてくる。
しかしどこか中途半端で乗り切れないものがある。
自分勝手なイメージを想像できる小説ほどの緊迫感を僕は感じ取れなかった。
小野寺と玲子の関係も消化不良だった。
田所博士がテレビで日本は沈没すると発言するのは、それとなく国民に事態を知らせるための芝居だったなどというのは、この国の政府がじっさいにやりそうなことだ。
各国に日本人を受け入れてもらうように働きかえるが、難民の受け入れに厳しい日本は勝手すぎないかという皮肉を感じる。
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