おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

メリー・ポピンズ

2020-05-19 08:37:54 | 映画
「メリー・ポピンズ」 1964 アメリカ


監督 ロバート・スティーヴンソン
出演 ジュリー・アンドリュース
   ディック・ヴァン・ダイク
   デイヴィッド・トムリンソン
   グリニス・ジョンズ
   エド・ウィン
   ハーミオン・バッデリー

ストーリー
ロンドンでも美しい桜通りに住むバンクス氏(デイヴィッド・トムリンソン)は銀行家で気むづかし屋。
奥さん(グリンス・ジョーンズ)も婦人参政権運動に夢中で子供は放りっぱなし。
乳母任せの子供たちは腕白ざかりで一向に乳母が居つかない。
ある日、子供たちは自分の夢にぴったりの、優しくて、美しい、親切で若い乳母という条件を書いて父親に見せたが、父は紙片をストーブに放りこんでしまい、それは煙突から空高く飛んでいった。
翌朝、パラソルを開いた若い女性がフワフワ空からやってきた。
彼女はメリー・ポピンズ(ジュリー・アンドリュース)という魔法使いで、子供達の書いた紙片を持っていた。
彼女が指を鳴らすと魔法のように散らかったものが片づき、彼女は不思議な鞄からは何でも出すのだ。
散歩のときなど大道芸人バート(ディック・V・ダイク)の描く絵の中にさえ入って行け、遊ぶことさえできる。
彼女がやって来てからは家中が朗らかになり、歌まで歌いだしたのがバンクス氏は不思議でたまらない。
子供の躾に厳格なバンクス氏は子供たちに倹約を教えようと預金させようとした。
銀行の老頭取が無理に預金をさせようとしたので、子供は思わず「私のお金を返して!」と大声をだした。
それを聞いた預金者たちは銀行が危ないのではないかと勘違い、あわてて払いもどしに殺到し大混乱。
逃げだした子供は途中で煙突掃除夫姿のバートに出会った。
煙突だらけの屋上に上ると、煙突の中からメリー・ポピンズが現れ、あちこちから煙突掃除夫が飛んできて、皆で踊りつづけた。
その夜、バンクス氏は銀行から呼び出しをうけて重役から取り付け騒ぎを起こしたと叱りとばされたが、メリー・ポピンズのことが目に浮び、まったく気にならない。
翌朝、陽気になったバンクス氏は一家揃ってタコあげにでかけた。


寸評
ジュリー・アンドリュースは映画デビューする前にすでにブロードウェイで名声を得ていたのだが、映画デビュー作となったこの「メリー・ポピンズ」でいきなりアカデミー賞の主演女優賞を獲得した。
日本では同じミュージカルの「サウンド・オブ・ミュージック」が先に封切られ大ヒットしていたので、当時の僕の印象はそれにあやかって「メリー・ポピンズ」が封切られたというものだった。
「メリー・ポピンズ」はデズニ―映画らしく、実写とアニメと融合させた子供たちも楽しめる内容となっている。
バートが描いた絵の中に入ってアニメの動物たちと遊園地で遊んだりメリーゴーランドから飛び出て競馬をやったする楽しい場面がある。
アニメとの融合を見せたかったのか、このシーンにかなりの時間を割いている。
主人公が魔法使いのこともあってファンタジー映画なのだが、僕はミュージカルとしては断然「サウンド・オブ・ミュージック」の方が好みだ。

ミュージカル映画としてメインタイトルを入れて17曲が披露される。
最もポピュラーなのは「チム・チム・チェリー」で、一度は聞いたたことがある名曲だ。
前任の乳母を初め、出演者がこぞって歌って踊ってを繰り返すが、主演のジュリー・アンドリュースとディック・ヴァン・ダイクがいたるところで歌声を響かせるのは当然で、ミュージカル・ファンは楽しめる。
ただ僕はディック・ヴァン・ダイクのオバー過ぎると感じる演技に抵抗があった。
乗り切れなかったのは、この映画の描いたファンタジー性が僕の感性とマッチしなかったからだろう。
メリー・ポピンズの叔父さんは笑うと空中に浮かび上がってしまうという場面がある。
面白いギャグを言っては笑い、一向に下に降りてこられない。
メリー・ポピンズが帰ると言うと、悲しくなって降りてくるという微笑ましい場面なのだが、僕はジョークに反応できなかったし、何か乗り切れないものを感じてしまった。

厳しい父親がいて子供たちを躾ている親子の関係は「サウンド・オブ・ミュージック」と同様である。
僕はどうしても先に公開された「サウンド・オブ・ミュージック」と比較をしてしまう。
父親は銀行の役員で、厳格なうえに帰宅時間もいつも同じというお堅い人物である。
メリー・ポピンズと父親の対立は常にあるわけではなく、父親からクレームを受けた時にはいつもメリー・ポピンズが父親を煙に巻いてしまう。
あくまでもメリー・ポピンズと子供たちの交流をメインに描き続けている。
このあたりはまさにデズニ―映画と言う感じがする。
子供たちはメリー・ポピンズになついていて、彼女が大好きなのだが最後には父親と凧揚げに出かけて行く。
これは大好きなメリー・ポピンズよりも、子供たちはやはり父親が、家族が一番なのだと語っているのだろう。

デズニ―は誰でもが楽しめる分かりやすい作品を作り続けているので、いわゆる性格俳優と呼ばれるような俳優を必要としていない。
そのことがデズニ―映画からアカデミーの主演女優賞が出ない理由の様に思うのだが、本作で主演女優賞に輝いたジュリー・アンドリュースは特異な例で、もしかすると唯一となるかもしれない。