性別、年齢によって腰痛の裏に
色々な病気が潜んでいることがあります。
私の臨床経験と共に
つくづく実感しています。
最近、一人の中年男性が
腰痛を改善したいとのことで
友人の紹介で来院。
50歳代後半、がっしりした体格、
腰痛以外に大きな病気はありません。
腰痛の機会は二年前、
重いものを持ち上げた瞬間
腰に激痛が走った。
湿布を貼ったり、
鍼灸整骨院でも治療を受けたが、
その後、完全に良くならず、
二年間繰り返していました。
病院の診断は「ヘルニア」予備軍
と言われ、特別な治療方法もなかった。
私からの問診は以下の様に行いました:
問:二年間、腰痛を再発する原因は何ですか?
答:突然出る事が多く、特にお酒を飲んだ後、
ある時は、飲んでる最中でも激痛がはしる。
問:腰痛の具体的な場所はありますか?
答:腰の真ん中よりやや右寄りでした。
問:下肢の痛みやしびれは出現しますか?
答:時々出現し、左右不定でした。
問:どの様なことをしたら緩和しますか?
答:一晩休んだら、次の日は普通に生活し、
ゴルフもできます。
問:激痛がない時、
腰や下肢の違和感はありますか?
答:少しだるい感じがあります。
ここで、私が認識しているのは
この方の腰痛は一般的な
整形外科によくみかける腰痛ではなく、
今まで、私がみたこともない症例でした。
その大きなポイントとは、
突然腰痛が出て、特にお酒を飲むと
腰痛が発症することでした。
循環器系の疾患ではないかと疑いました。
鑑別するために「定期的な健康診断は
受けていますか」と質問しましたら
答:必ずします。血圧やや高いのと
コレステロール、中性脂肪が高い。
以上の内容を総合的に考えると、
腹部に大動脈瘤の可能性が
あると思われます。
その日の治療は、
強い刺激を避けるように行い、
無事に終わりました。
次の日、もう一度本人に
確認したところ・・・
実は胸部と腹部とも
動脈瘤の診断があり、
近いうちに入院検査と
手術を行う予定があるとの事でした。
仕事に支障がない様に
周囲の人に知らせないと決めた為、
問診の時は、伝えて貰えませんでした。
ホッとしました。
二回目の鍼灸治療をお断りし
「病院での治療を優先する様、
術後の健康管理や疾病の予防には
鍼灸医学に任せて下さい」
と伝えました。
私達鍼灸師の責任は
単なる局所にある症状を
緩和させることではなく、
年齢や性別、主訴と随伴症状;
精密機器検査の結果、
血液の検査などなど、
総合的に分析し、
疑いがある病気を確認した上で、
一番良い治療方法を
患者さんに提供するのが
最も大切な事ではないでしょうか。