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自分が生きている世界に違和感を感じている。誰にも言えない本音を、世界の片隅になすりつけるように書きつけよう。

「外国人が無人島を買う」問題の本当の問題とは

2023年02月17日 11時15分32秒 | Weblog

 今、中国の実業家らしき女性が沖縄の無人島を買ったというSNS投稿を巡って、マスコミ報道が過熱している。
 問題となっているのは沖縄の米軍基地から数十キロメートルのところにある無人島で、安全保障上問題があるのではないかと言われている。政府は昨年、一部から疑問が呈される中で重要土地等調査規制法を施行したが、その制度では規制外なのだという。

 ただ、細かく報道を見ていると、どうもその島は「いわくつき」の島だそうで、かつてから土地が細かく分割されて900以上の地権者がおり、しかもその所有者は数年毎に入れ替わるという、かなり複雑な状況にあるのだそうだ。
 どうやらかつての原野商法的な売られ方をしたようで、土地を買った人達の多くが現地を見ておらず、図面上で整然と区分けされた土地が、あたかも整地された区分のように思える錯覚を利用して売りさばかれたのではないかという。
 実際に中国女性が購入したのは島の土地の半分くらいの面積なのだが、その中には他の地権者の小さな土地が無数に点在している。実際に何か開発などをするとなれば、この他の人の土地を買っていく必要が出てくる。
 女性によればリゾート開発をするとか、自分が住むとかいう話らしいが、水道などのインフラも通っていないようで、SNSで高い価値のある投資だと語っているが、事実はむしろ騙されて使いようのない土地を買わされたという方が正しいような気がする。
 なお、船を着けられるたぶん唯一の埠頭(?)を含む島の海に面するかなりの部分は村有地となっている。

 そういう意味では、今回の問題は別段軍事的脅威などは無さそうに見えるが、ただ一般論として、同じようなケースが安全保障上の問題になるかどうかは今後も議論が続くだろう。

 この議論には三つの観点が必要だと思う。
 一つ目は、政府や自民党、右派の言うような日米安保や外国からの侵略の脅威などという問題意識は、問題を矮小化させるだけだと言うことだ。
 思い出して欲しい。過去に広大な土地を購入し、軍事拠点として整備し、日本中を震撼させたのは誰だったか? 中国スパイではない。日本のオウム真理教だ。
 我々生活者にとっての安全保障とは、米国のためのものでも、政治家の集票のためのアジテーションでもなく、現実に日々生活している人々にとっての生活の安全のことである。もちろん防衛問題を排除するつもりはないが、我々が直接さらされてきた脅威とは、そうした大上段から振りかぶった外国軍による侵略脅威論の中にではなく、むしろ人権、人命を軽視するオウムや統一教会などのカルト、原発事故を起こすような企業や経済構造、長期保守政権の中にこそあったというのが現実であり、歴史的事実である。

 二つ目は、今回の件も含めて、外国人による土地購入だけが突出して軍事的脅威になるわけではないという点だ。
 実は今回の件でむしろ気になるのは、件の中国人女性が個人として直接島を買ったのではなく、中国系とも言われる東京の企業名義での購入だったことだ。というのは、この企業、登記先に実態が無い。実際にそこにあるのは郵便物等の転送会社らしい。
 これは外国企業のみの問題では無いが、こうした実態不明の企業が普通に経済活動をすることが出来てしまうことも大きな脅威である。
 そしてそれは土地購入に限らない。一昨年騒がれたDappi問題を思い返そう。どこからともわからない(というか事実としては自民党のようだが)多額の資金を使って、ネット上で野党を排撃する世論工作が行われた。情報社会において、情報工作は直接的軍事以上の脅威にもなり得る。
 言っておくが、もちろんこうしたことは逆に特定の目的を持った外国勢力によって行われないとも限らない。現に統一教会は正体を隠して盛んにやっている。
 現実には裏貿易やスパイ活動なども企業、個人に関わらず行われているのであって、むしろ公然と日本の法律に従って土地を購入することは、軍事的脅威としてはあまり大きな問題では無いとも言えるではないだろうか。

 三つ目に、上記の二点とも関連することだが、我々の日常生活において最も脅威なのは、軍事面より環境面ではないかということだ。
 外国人が水源地を購入しているということが、安全保障上の問題として指摘されているが、それは当然国内企業であっても同じ事が言える。
 外国人は何をするか分からないが、日本人なら大丈夫だろうなどと考えるのは全くナンセンスだ。日本人が日本国内で利権目当てにどれほどの環境破壊を行い、人々の命や健康や生活に被害を与えてきただろうか。しかも知らずにやっているのではなく、分かった上で不法投棄や違法埋め立て、森林伐採などの環境破壊・汚染を行い、水俣病のように因果関係を知りながらそれを隠蔽するなどという事例が、それこそ山のようにある。
 しかも、そうした問題のほとんどは、原状回復などの責任を取らず、ひどい場合には裁判にもかけられずに済まされているのだ。
 無人島を買った中国人はまだ何をやったわけでもない。だが、実際に開発に着手して、それが頓挫し、自然を破壊したまま逃げ出すなどというケースは、別に外国人で無くても過去にたくさんある。
 そんなことが起きれば、本当に取り返しがつかなくなる。

 繰り返すが、今回の無人島購入問題は、確かに多くの問題を示している。しかし、それをマスコミや右派が主張するような問題に単純化したら、それはもっと大きな問題なのではないだろうか。
 本当は何を見るべきか、何をどう判断すべきか、それを過去の歴史と現代の見識をもって考えることが、我々にとってのリアルな安全保障の第一歩であると思う。


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