ゆっくり行きましょう

気ままに生活してるシニアの残日録

「人間ぎらい~メランコリックな恋人 喜劇5幕~」を観る

2023年01月18日 | 演劇

NHKのプレミアムステージで放映されたモリエール原作の「人間ぎらい」を観た。プレミアムステージは毎月1回、演劇公演を2演目放映する番組で、ここ2、3年演劇に興味がでて毎回録画して見るようにしている。この「人間ぎらい」は1月8日に放映されたもの。

モリエール(1622-1673、仏の劇作家)の本は恥ずかしながら今まで全然読んでこなかったが昨年11月東京芸術劇場で上演された「守銭奴」を見に行った際に、事前に原作を読み興味が持てる作家だと感じたので、今回のプログラムを見て早速観劇することにした。公演が行われた2022年はモリエール生誕400周年だ。

番組の解説によれば、モリエールは人間の誰もが持っている虚栄心や偽善的な心を繊細に描いた数々の喜劇を世に送り出した、「人間ぎらい」は17世紀のフランスの貴族階級の人間模様を鮮やかに描き出していく、主人公のアルセストはお世辞やおべっかが大嫌いで自分が思ってきたことは正直に相手に伝えてきた、友人のフィラントは正直過ぎるアルセストの生き方を心配するが耳を貸さない、アルセストの恋の相手セリメーヌは自分に好意を寄せる人に対しては誰にでも愛想良く振る舞う、アルセストはセリメールの八方美人的な性格に苛立つが彼女への恋心は変わらない、アルセストは自分の信念に従いある決心をするが・・・と説明されている。

演出の五戸真理枝(文学座)はTVのインタビューで「人間ぎらいは学生時代にタイトルに惹かれ、アルセストの世の中への批判について共感し、かつ、救われずに終わるところが笑えた、泣けてきた」と話している。五戸は今まで多くの作品の演出を手がけているとのこと。また、主演の采澤は「現実の演劇の世界でも自分があまり良い印象を持たなかった作品でもお世辞を言ったりしている自分がある」と「人間ぎらい」の魅力について聞かれてこう答えている。

結末に救いが無いのはフランス映画ではよく見るのだが、演劇でもそうなんだ。世の中少し斜めに見て皮肉り、一つのことで思い詰めないし、思い詰める人間を皮肉る、こういった私が見るフランス人の特徴は、マスコミ誘導により常に世論が一つになりやすい日本人としても大いに参考にすべきだと思う。

なお、舞台に設置してある黄色い三角の小舞台と階段が何を意味しているのかわからなかった。

<スタッフ>
作:モリエール
翻訳:北 則昭(新訳)
演出:五戸 真理枝

<出演者>
釆澤 靖起(文学座) アルセスト:五戸とは2回目の共演
那須 凜(青年座) セリメール:五戸とは初めての共演
齊藤 尊史(民藝) フィラント
真那胡 敬二(アンティーヌ) オロント
小川 碧水(フリー) エリアント
頼経 明子(文学座) アルシノエ
平尾 仁(青年座) アカスト
斉藤 祐一(文学座) クリタンドル