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「東京都交響楽団 第986回定期演奏会」に行く

2023年11月13日 | クラシック音楽

東京芸術劇場で開催された東京都交響楽団 第986回定期演奏会に行ってきた。14時開演で終演は16時過ぎ、S席7,000円、今日は1階席、前から10列目くらいの良いところ。日曜ということもあろうかほぼ満員であった。若い人も結構きていたように見えた。

演目は

シルヴェストロフ/沈黙の音楽 (2002)
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
ショスタコーヴィチ/交響曲第5番 ニ短調 op.47

出演は

ジョン・アクセルロッド(米、57)
アレクサンドラ・コヌノヴァ(Vn)(モルドバ、35)

都響のホームページからの抜粋した解説と、今日聴いた感想を書いてみたい。

シルヴェストロフ(1937~)は、ウクライナを代表する作曲家のひとり。旧ソ連において彼の作品は演奏が禁止されていたが、今世紀になって彼の作品を収めたCDが相次いで発売された。ロシアのウクライナ侵攻は、彼の運命も大きく変え、ドイツへ亡命した。彼が2014年に書いた「ウクライナへの祈り」は、ウクライナへの連帯を表明する作品として世界各地で演奏されるようになった。

今回の演目「沈黙の音楽 」は静かな曲で、沈黙という意味を音で表現したのか、と感じた。10分くらいの短い曲だった。

1904年に発表されたシベリウス(1865~1957)のヴァイオリン協奏曲は、彼が残した唯一の協奏曲。もともとヴァイオリニストを目指していた彼が作曲したこの曲は、傑作協奏曲として高い人気を博しているが1904年に披露された初稿は大失敗、大幅な修正を加えた改訂稿も酷評される。それでもジネット・ヌヴーやハイフェッツらの尽力により協奏曲の真価が少しずつ認められると、その後広く世界中で演奏されるようになった。

さて、バイオリンのコヌノヴァであるが、ピンチヒッターだ。当初予定のアリーナ・ポゴストキーナが気候変動問題への取り組みの一環として、今後一切航空機を利用しないことを決めたため、来日は不可能となったためである、やれやれ。

この協奏曲は、自宅でもヌヴーのCDでよく聞く曲だが、確かにそう簡単に理解できるような曲ではないだろう。何回も聞いていくうちにその良さを感じるタイプの曲ではないか。その意味で、今日のコヌノヴァのバイオリンによりじっくり聞けたのはよかった。彼女は派手な衣装で細身の体を着飾って、一生懸命に演奏していた。アンコールにバッハを弾いてくれた。

ショスタコーヴィチ(1906~75)の交響曲第5番は、ソ連によって歌劇『ムツェンスク郡のマクベス夫人』が厳しく批判され、絶体絶命の危機に陥った時に作曲した曲だ。ベートーヴェン風の「苦悩から歓喜へ」という明快な構成、輝かしいフィナーレで終わるこの曲の初演は大成功、危機を脱した。指揮したムラヴィンスキーは、このときが彼との初めての出会いだったが、以後、多くの作品の初演指揮を任せられた。彼の存命中は、社会主義の闘争と勝利を描いている曲と思われていたが、その後、実は彼がこの曲にスターリンに対する批判を込めたという考え方が広まった。

この曲は自宅ではバースタイン指揮のNYフィルの演奏でたまに聴くが、そんなに好きな曲でもなかった。今回、会場でじっくりと聴いてみると、なるほど解説にあるとおり、ベートーベン風の「苦悩から歓喜へ」ということがよく感じられ、最後に一番盛り上がるような曲になっており親しみを感じるようになった。ティンパニやシンバルが大活躍していたのでアクセルロッドから何回か終演後立ち上がるように促され、盛大な拍手を受けていた。

自宅でクラシック音楽を聴くときは、自室にいて読書などをしている時にずっとBGMで同じCDを繰り返し聞いているので、曲の細かいニュアンスなどはテレビや公演で理解する。そして公演などでじっくり聞いて、初めて曲の良さがわかることが往々にしてある。このやり方が自分には合っていると思っている、その意味で今回の公演はよかった。

さて、今日の公演前の昼食だが、会場に到着してからだと遅くなるので、自宅で、昨日買った吉祥寺いせやの焼き鳥を使った「焼き鳥丼」にした。