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気ままに生活してるシニアの残日録

「河村尚子 × アレクサンドル・メルニコフ」を聴きに行く

2023年11月18日 | クラシック音楽

東京芸術劇場のVSシリーズVol.7、河村尚子 × アレクサンドル・メルニコフを聴きに行ってきた。19時開演、終演は21時ちょっと前。6,000円。9割方埋まっていたか。今日は前から2列目だった。

VSシリーズとは、初顔合わせとなる2人のピアニスト、ジャンルの違う2人のピアニストによる、表現の交歓の中で即興的に生まれていく、予想することのできない”衝突“を観客も一緒に体感する狙いの企画とのこと。

有名なピアニストは普通、連弾はやらないと言う。ピアノを引く手が交錯し、ペタルも2人が分けて踏む、個性と個性がぶつかり合い、なかなか呼吸が合わないからであろう。その意味でこのVSシリーズは意欲的な取組みと言える。

出演は、

河村尚子(42)
ミュンヘン国際コンクール第2位、クララ・ハスキル国際コンクール優勝。ドイツを拠点に、ウィーン響、バイエルン放送響などにソリストして迎えられ、室内楽でもカーネギーホールなどで演奏。現在、ドイツのフォルクヴァング芸術大学教授。

2019年秋公開の映画『蜜蜂と遠雷』(恩田陸原作、この本の読書感想はこちら参照)では主役・栄伝亜夜のピアノ演奏を担当し、その音楽を集めた。「河村尚子plays栄伝亜夜」もリリースされているようだが、これは知らなかった。また、ベートーベンのピアノソロ全14曲のリサイタルを開くなどしている。ドイツを拠点にしているので、ベートーベンが好きになったのかもしれないが、私も好きだから、彼女の演奏を聴けるのはうれしい。

アレクサンドル・メルニコフ(Alexander Melnikov、ロシア、50)
1989年のシューマン国際コンクール、1991年のエリザベート王妃国際音楽コンクールなど主要な国際ピアノコンクールで入賞、以来国際的に活躍している。室内楽では、現在、イザベル・ファウストとデュオを組んでいる。また、アンドレアス・シュタイアーなどとピアノ・デュオ活動も行っている。しかし、こういったロシア人のピアニストなどはウクライナ侵略後は、ロシアに住んだままロシア外で活動しているのだろうか。侵略についてどう考えているのだろうか。

演目は、

シューベルト/幻想曲 ヘ短調 D940
ドビュッシー/交響詩『海』(作曲者による1台4手版)
ラフマニノフ/交響的舞曲

「シューベルト/幻想曲 ヘ短調 D940」はピアノ1台4手連弾の傑作。「ドビュッシー/交響詩『海』」はドビュッシー自身の編曲による「1台4手連弾版」、オーケストラの名作としても知られる、そして2台ピアノ作品の金字塔「ラフマニノフ/交響的舞曲」。

今日の演目のうち、ドビュッシーとラフマニノフの作品は知らない曲で、事前にちょっと予習したが、そのくらいではその良さがわからない難しい曲だ。「海」という題名だから静かな曲かと思ったが、結構激しいところがあったのには驚いた。

最初のシューベルトの幻想曲は大好きな曲だ。なんとも言えない憂いを帯びたメロディーに惹かれる。作家の百田尚樹氏はクラシック音楽ファンとして知られているが、氏の書いた「この名曲が凄すぎる」(PHP)では24曲の氏が推奨するクラシック音楽が書かれており、この幻想曲D940も含まれている。氏によれば、この曲は誰にも教えたくない曲で、自分の何かが詰まっているような気がする曲だと述べている。

この曲はシューベルトが亡くなる年に書かれたもの。氏によれば、彼がほのかに思いを寄せていたエステルハージ家の姉妹の妹カロリーネに献呈するために書かれたものだが、実は彼女への愛の告白の曲として書かれた曲である、としている。身分違いの女性を口説くような勇気を持ち合わせていない内気なシューベルトは、この曲を彼女に献呈して自分の思いが伝わることを期待したとしている。そんなシューベルトの見果てぬ夢がこの曲の悲しみに充ちたメロディーに込められていると私も思う。

なお、この曲のCDはAmazonで探してもほとんど売っていないのはなぜなのだろう。

今日の公演であるが、2人のピアニストの息はピッタリと合っていたように見えた。事前に相当練習したようだ。メルニコフはおとなしい感じの人で、なんだか河村尚子の方がリードしていたように見えた。ピアノも2人で同時に弾く専用のものなのだろうか、それ専用のピアノに見えた。つまり、2台のピアノを使ったというより1つの大きなピアノに鍵盤が左右に2つついているように見えた。

さて、今夜の公演前の夕食だけど、池袋東口の蒙古タンメン中本東池袋店で食べることにした。激辛タンメンで有名で、名前は聞いていたが来たことがなかった。相当辛いらしいので、10段階の辛さの3の「みそタンメン」を選んでみた。

さすがにこれはあまり辛くなかった。次は辛さ度合い5の蒙古タンメンに挑戦しようと思う。女性も含め若い人がほとんどでシニアはいなかった。