猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

戦場のピアニスト

2015-02-27 03:37:57 | 日記
2002年のフランス・ドイツ・イギリス・ポーランド合作「戦場のピアニスト」。
1939年、ナチス・ドイツがポーランドに侵攻。ワルシャワのラジオ局でピアノを弾いていた
ウワディスワフ・シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)とその一家は、ユダヤ人に対する
ゲットーへの移住命令により、住み慣れた我が家をあとにする。ナチスの残虐行為がエス
カレートする中、ウワディスワフはカフェのピアノ弾きとして日々を過ごす。42年、シュピル
マン一家は大勢のユダヤ人と共に収容所へ送られるが、ウワディスワフは警察の友人の
手引きで1人収容所行きを免れた。43年、ウワディスワフはゲットーからの脱出を決行する。

悲惨で、尚且つ感動的な映画である。実話であるというのが胸に重くのしかかる。
ユダヤ人は何故迫害されなければならなかったのか。「アンネの日記」や「夜と霧」を思い
出す。紀元前1300年のモーセの時代から、ユダヤ人は何故迫害されてきたのか。
映画では、壁に並ばせたユダヤ人や、逃げまどうユダヤ人を射殺する残酷なシーンが度々
描写されていて、胸が痛む。ユダヤ人というだけで、どうして殺されなければならないのか。
私は、ナチス・ドイツのユダヤ人虐殺は、人類史上最悪の歴史だと思っている。
ウワディスワフはゲットーを脱出した後、命がけで潜伏生活を送ることになる。ポーランド
人の友人らが、アパートを用意してくれたり、食べ物を持ってきてくれたりするが、いろんな
不運が重なり、居場所を失くしては潜伏する。ひげが伸び、やせ細っていくウワディスワフ。
彼の不安や恐怖が、自分の恐怖となって感じられる。どんなに恐ろしかったことだろう。
廃墟に潜伏していた時、ドイツ軍将校に見つかってしまう。これが運命の出会いだった。
ラスト近くで、ウワディスワフは自分を助けてくれたヴィルム・ホーゼンフェルト(トーマス
・クレッチマン)というその将校を助けてやれなかったことは、さぞ心残りだったことだろう。
ラストの演奏会のシーンは本当に感動的である。エイドリアン・ブロディの演技は素晴らし
かった。



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チェイシング/追跡

2015-02-24 04:21:16 | 日記
2008年のアメリカ映画「チェイシング/追跡」。
ニューヨーク州郊外。両親を殺害した少年エリックが2年間の服役を経て出所してきた。この
事件を担当した刑事のクリストフオロ(ラッセル・クロウ)は、エリックが未解決の2人の少女
殺害事件にも関与した連続殺人犯ではないかと疑い、捜査を始める。一方、16歳の少女
ローリは、ニュースでエリックの姿を見た瞬間、強い衝動に駆られ、家を飛び出した。そして
エリックに会いたい思いが現実となった時、2人は当てのない逃避行へと旅立つ。クリストフ
オロは、エリックの不穏な動きから新たな犯行を予感し、尾行を開始する。

ラッセル・クロウ主演のサスペンス映画ということで観てみたが、あまりおもしろくなかった。
サスペンスというより、暗くて重たい人間ドラマという感じ。私はそういうのは好きなのだが、
なんというか何もかもが中途半端で、結局なんだったの?という感じ。
両親を殺して少年院に入っていたエリックが出所するが、担当刑事のクリストフオロは彼が
殺人に快楽を感じる殺人鬼で、またいずれ犯行を犯すのではないかと思っている。そして、
2人の少女を殺した犯人なのではないかと疑っている。まず、クリストフオロが何故そう思って
いるのかがわからない。エリックは一見更生しているように見える。
ローリがエリックに付きまとうのはわからない訳ではない。エリックは覚えていなかったが
昔ローリとエリックは出会ったことがある。そして、家庭に問題を抱えていたローリが、ニュース
でエリックを見て、自分と同じ波長というか、同じ匂いを嗅ぎ取ったのであろうことはわかる。
それにしてもずっとエリックと行動を共にして、彼女は結局何がしたかったのか。
そして、クリストフオロはエリックが連続殺人犯であるという証拠は掴めたのか。
なんだかよくわからない映画だった。この映画、ラッセル・クロウが主演する必要があったの
だろうか、と思う。



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ラースと、その彼女

2015-02-20 03:24:36 | 日記
2007年のアメリカ映画「ラースと、その彼女」。
アメリカの田舎町に住む26歳のラース(ライアン・ゴズリング)は、心優しく町の皆に好かれて
いる青年だが、とてもシャイで特に女性と話すのが大の苦手。兄のガスとその妻カリンが住む
家の裏にある、ガレージを改装した部屋に1人で住んでおり、限られた人間関係しか築けない
でいた。ある日ラースは、ガスとカリンに、インターネットを通じて知り合った女性がいるので
紹介すると伝える。ラースのことを気遣っていたガスとカリンは最初喜ぶが、車椅子に乗った、
元宣教師でブラジルとデンマークのハーフである女性ビアンカを紹介されて驚く。何故なら
ビアンカは、アダルトサイトで販売されているリアルドールだったのだ。

シュールだが悲しく、心に染みる物語だった。孤独な青年ラースは、兄夫婦ともあまり接触
しようとせず、兄の妻が朝食や夕食に招待しようとしてもなかなか来ない。人見知りのラースを
いつも心配していた兄夫婦だが、ラースがやっとできた恋人を連れてきたと思ったら、それは
人形だった。驚く兄夫婦に、ラースは恋人ビアンカの生い立ちや性格などを真面目に話す。
頭がおかしくなったのかと、医者に相談に行く兄夫婦だが、医者は「受け入れてあげなさい」
と言う。夫婦は町の人たちにこのことを話し、ラースとビアンカを受け入れてくれるよう頼む。
こんなこと本当にあるのかなあ、と思う。リアルドールを恋人にし、話しかけ、一緒に食事を
とり、一緒に車で外出する青年を、町中の人が受け入れてあげるなんて。普通なら頭が変に
なったと言って気持ち悪がるだろう。なんて寛容な町の人々だろう。教会でも、皆普通にビア
ンカに話しかけてあげているのだ。
だが、孤独だったラースが、同じ会社に勤めている女性に好意を持ったことで、ラースとビア
ンカの関係に変化が生じていく。
悲しい終わり方だが、ラースが社会の中で人間的に成長していくには、必要だったのだろう。
ラースは大人になったのだ。ラストシーンも良かった。



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ファニーゲーム

2015-02-16 02:44:34 | 日記
1997年のオーストリア映画「ファニーゲーム」。
ある夏の午後、バカンスを過ごしに湖のほとりの別荘へ向かうショーバー一家。主人のゲオルグ
(ウルリッヒ・ミューエ)、妻のアナ(スザンネ・ロタール)、息子のショルシ(ステファン・クラプ
チンスキー)と愛犬のロルフィー。別荘に着き、台所で食事の支度をするアナの元に、見知らぬ
青年が訪れる。ペーターと名乗るその青年(フランク・ギーリング)は、卵を分けてくれないかと
申し出る。アナは快諾するが、ペーターは2度も卵を割ったり、アナの携帯電話を水の中に落とし
たり、さり気なくアナを苛つかせる。そこへもう1人の青年パウル(アルノ・フリッシュ)が現れ、
さらにアナを挑発する。ゲオルグが仲裁に入るが、パウルは逆にゴルフクラブでゲオルグの膝を
打ち砕き、一家に言う。「明日の朝9時までに君たちが生きていられるか、賭けをしないか?」と。

ミヒャエル・ハネケ監督の作品だが、非常に理不尽で後味が悪い映画である。ある日突然幸せな
一家に訪れる恐怖、悲劇。何故この家族がこんな目に遭わなければならないのか。理由なき暴力
の恐ろしさが描かれているこの映画、1度観たらもう2度目はいいなあ、という気持ちになる。
とにかく俳優たちの演技が凄いので、怖さも倍増である。普通のホラー映画とは違う怖さ。
人間の悪意とはこうも理不尽で卑怯で恐ろしいものなのか。
バカンスでやってきた別荘に、見知らぬ青年が卵を分けてもらいに来るところから、何とも言え
ないザワザワとした不気味さを感じ始める。もらった卵を割ったり、携帯電話を流しに落としたり、
過失に見せかけて、明らかに故意にやっている。故意とは思っていないものの、アナはイライラ
し始める。その時点で既に犯人たちの罠にはめられているのだ。果たしてこの罠から逃れる道は
あったのだろうか。犯人たちが来たことで、もう絶対に逃れられないと決まっていたのか。それを
考えると、この家族の不運さがかわいそうでならない。
本当に怖い映画だった。
関係ないが私はドイツ語の響きが好きなので、ゲオルグやペーターといった名前を聞くと、いい
なあ、と思ってしまう。



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チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密

2015-02-13 03:18:44 | 日記
アメリカ映画「チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密」を観にいった。
イギリス・オックスフォードで美術修復家の老女が殺され、ゴヤの幻の名画が盗まれる。うさんくさい
美術商のチャーリー・モルデカイ(ジョニー・デップ)は、英国諜報機関の警部補であり友人のマート
ランド(ユアン・マクレガー)にその捜索を依頼される。やがて、国際テロリストにロシアンマフィア、
香港マフィアにアメリカの大富豪を交えた争奪戦に巻き込まれたモルデカイと用心棒のジョック
(ポール・ベタニ―)は、イギリス、ロシア、アメリカと舞台を移しながら数々の危機にさらされること
になる。

アクション・アドベンチャー・コメディといった感じで、とてもおもしろかった。とにかくチャーリーのキャ
ラクターがいい。破産寸前の貴族で、いんちきくさい美術商で、ナルシストで皮肉屋。悪いヤツとも
取れるチャーリーがチャーミングで愛すべきキャラに見えるのは、ジョニー・デップの演技力による
ものだろう。そして、他の登場人物も皆とてもいい。チャーリーの最愛の妻ジョアンナ(グウィネス・
パルトロー)はヒゲアレルギーで、夫が生やしたちょびヒゲを受け入れられない。チャーリーの友人で
警部補のマートランドは、オックスフォード大学時代からジョアンナを好きだったが、チャーリーに
奪われてしまい、ずっとライバル意識を持っている。そして最高なのがチャーリーの用心棒のジョック。
主人にものすごく忠誠心を持っており、強くて不死身、そして性欲もすごい。チャーリーは何度もジョ
ックに命を助けられており、2人の間には強い絆がある。このジョックの不死身さと性欲の強さには
笑わせられた。
セリフが多い映画で、そのセリフの掛け合いがしゃれていておもしろかった。また、チャーリーが
ロサンゼルスのホテルに宿泊した時、「ここがロスか。下品な街だ」他、たくさんアメリカへの皮肉を
口にするのだが、本当にイギリス人はアメリカに対してああいう感情を持っているのだろうか?と
思い、またそれもユーモラスだった。(この映画はイギリスの小説を原作としている)
イギリスやアメリカやロシアを飛び回りながらの、ゴヤの名画の争奪戦はとても痛快で、ミステリーの
要素もあり、なおかつチャーリーの破産は免れるのか、ジョアンナのヒゲアレルギーは治るのか、
などといったくだらない笑いもあり。おもしろい映画だった。



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