猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

クリムゾン・リバー

2015-06-30 03:47:01 | 日記
2000年のフランス映画「クリムゾン・リバー」。
フランスのアルプス山脈の大自然の中。目がくり抜かれ手首が切断され、胎児の
ように縛られている若い男性の変死体が発見された。パリから派遣されたベテラン
刑事ニエマンス(ジャン・レノ)は捜査を開始し、アルプス山脈の麓にあるゲルノン
大学の閉鎖的な雰囲気に、秘密の匂いを嗅ぎ取る。一方同じ頃、墓の盗掘事件と
小学校での強盗事件を調査中の若手刑事マックス(ヴァンサン・カッセル)がいた。
やがて、何の関係もないと思われたこれら2つの事件を結びつける驚愕の事実が
明らかになる。

猟奇殺人事件を扱ったミステリー映画である。冒頭からショッキングである。目が
くり抜かれ両手首が切断された、若い男性の死体が凍った山で発見される。まぶ
たの氷が溶けて、水がスーッと涙のように流れるシーンは印象的である。
また一方で、子供の墓が暴かれ、小学校の事務室が荒らされるという奇妙な事件
が起きる。それぞれの事件を捜査していた刑事のニエマンスとマックスは、やがて
出会うことになる。何の関係もないように見えた2つの事件は、つながっていたのだ。
これはとてもおもしろい映画である。アルプスの大自然の中で起きた、動機のわか
らない殺人事件。墓荒らし。小学校での盗難。犯人の目的は何なのか。
映像がとてもスケールが大きくて、見応えがある。しかしこの映画、ジャン・クリスト
フ・グランジェという人の原作があり、小説の方が数倍おもしろい。長い小説なので、
これを2時間位の映画にまとめるに当たって、設定の変更や省略がかなりある。映
画だとわかりにくい所もあるが、原作を読めば納得できるし、謎が謎を呼ぶという
感じで、本当におもしろい。ラストも、映画では明るく描かれているが、原作はそう
ではないし、物語全体に暗く陰惨な空気が漂っている。映画もいいが、是非小説
を読んで頂きたい。



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天使の涙

2015-06-22 03:42:25 | 日記
1995年の香港映画「天使の涙」。
そろそろ足を洗いたいと思っている殺し屋(レオン・ライ)とそのパートナーである
エージェントの女(ミシェル・リー)。仕事に私情を持ち込まないのが彼らの流儀で、
2人は滅多に会うことはない。しかし、その関係が揺らぎつつあるのを2人は知って
いる。エージェントが根城とする重慶の安宿の管理人の息子モウ(金城武)は口が
きけない。定職に就けない彼は、夜な夜な閉店後の他人の店に潜り込んで勝手に
”営業”する。ある日彼は失恋したての女の子(チャーリー・ヤン)に出会って恋を
する。しかし彼女は失った恋人のことで頭がいっぱいで、彼のことなど上の空だっ
た。一方、殺し屋はおかしな金髪の女(カレン・モク)と出会い、互いの温もりを求
める。

香港の夜、ネオンの灯りの下で繰り広げられる、5人の男女の群像劇である。ユー
モラスでかっこよく、切ない映画だった。キャストもスター揃い。
殺し屋とモウはほとんどセリフがなく(モウは口がきけないので全くないが)、心の
中でのセリフが多い。まずレオン・ライの殺し屋が凄くかっこいい。ハンサムでスマ
ートで無口で、そんな人が両手に拳銃を持って撃ちまくるシーンは本当に素敵だ。
1番おもしろいのはモウだろう。とにかくモウの行動は意味不明、摩訶不思議で笑
える。閉店後の他人の店で勝手に営業するなんて、とんでもない話だ。無理矢理
物やサービスを客に押し付け、客が激しく困っているシーンは爆笑である。
殺し屋、エージェント、モウ、失恋した女の子、金髪の女、皆心に淋しさを抱えて
いるが、それでも、必死に生活している。ウォン・カーウァイ監督の独特のカメラ
ワークやセリフのおもしろさは、彼らのキラキラした人生を繊細に映し出している。
本当にこの監督は俳優を魅力的に撮るなあ、と思う。
ラスト近くでモウの父親が急死し、モウがホームビデオを観ている時の表情が何
ともいえず切なく、ホロリとする。父親の笑顔に涙が出そうになった。とても好き
なシーンである。この映画、何回も観たくなる。



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オリヴィエ オリヴィエ

2015-06-19 03:10:21 | 日記
1992年のフランス映画「オリヴィエ オリヴィエ」。
フランスの田舎町。獣医の夫・デュヴァル(フランソワ・クリュゼ)と専業主婦の妻・
エリザベト(ブリジット・ルアン)の間には、娘のナディーヌとその弟で8歳になるオリ
ヴィエという2人の子供がいた。エリザベトは異常なまでにオリヴィエを溺愛していた。
ある日オリヴィエが行方不明になり、警察も彼を見つけられなかった。エリザベトは
半狂乱になり、家庭は崩壊していき、この事件は担当刑事の心にも強く残った。事件
から6年経ったある日突然、パリに転勤していた刑事から、オリヴィエ(グレゴワール・
コラン)らしき少年が見つかったという電話が、エリザベトの元にかかってくる。

ミステリーであり、人間ドラマでもある、とても見応えのある映画だった。8歳の子供が
失踪し、家庭は壊れていく。息子を溺愛していた母親は精神的にひどく参っててしまい、
衰弱していく。夫や娘の言葉にも耳を貸さなくなり、いたたまれなくなった夫は家を出て
いく。そして母親と娘の2人の暮らしが始まる。
子供が行方不明になれば、どこの親でも嘆き悲しむだろう。だがこの母親は元々息子
を異常な程溺愛していたので、その悲しみようも尋常ではない。その様子は観ていて
少しいらついた。もし失踪したのが娘であれば、ここまで衰弱しただろうか。そしてその
娘は、母親が弟を溺愛していたのを知っていたので、弟がいなくなった悲しみもあるが、
これでやっと母親を独占できる、という期待も持っている。
それから6年経って、オリヴィエらしき少年がパリで見つかったという突然の知らせ。母
親はすぐにパリへ行き、少年と対面する。しかし6年の間に顔も変わり、自分より背が
高くなった少年を、本当に息子なのか自信が持てない。それでも母親は少年を自宅に
連れて帰る。父親も戻ってきて、夫婦は少年をオリヴィエだと確信し、大喜びする。け
れども姉のナディーヌだけは信じず、少年に冷たく当たる。
この映画は、母親と子供、父親と子供、夫婦、姉弟、といった家族関係のあり方に焦
点を当てており、考えさせられる。まず母親が何故あんなに息子を溺愛していたのか
がよくわからない。その母親の態度ゆえに父親と娘は不満を感じていて、既に家庭
崩壊が始まっていたという気もする。
俳優は皆良かったが、特にオリヴィエを演じたグレゴワール・コランが素晴らしい。こ
の人の映画は何本か観たが、本当に凄い演技力。物語のラスト近くで、少年が本物
のオリヴィエかどうかは判明するのだが、ラストは驚きに値する。



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復讐者に憐れみを

2015-06-16 04:01:25 | 日記
2002年の韓国映画「復讐者に憐れみを」。
ろうあの青年リュ(シン・ハギュン)は姉の腎臓病の治療のため、工場の退職金をつぎ
込んで闇組織で移植用の腎臓を求めようとするが、金は取られ、逆に自分の腎臓を
摘出されてしまう。その直後姉のドナーが見つかったという連絡を受けるが、既に金は
なかった。仕方なくリュはろうあ学校の同級生だったヨンミ(ぺ・ドゥナ)と共に身代金
誘拐を企てる。ターゲットは会社社長パク・ドンジン(ソン・ガンホ)の幼い娘だった。

悲惨で、全く救いのない物語である。主要登場人物の中でリュとパク社長は善良な
人間だが、ヨンミの説得で、リュは誘拐事件を起こしてしまう。ヨンミは過激派の組織の
メンバーで、耳は聞こえるのにろうあ学校へ行き、バレて退学になったというおかしな
女である。誘拐は成功し、2人は身代金を要求する。別段危害を加えようとしない2人
に、幼い娘もそれなりに懐き、全てはうまくいくかに見えたが、目を離した隙に少女は
川で溺れてしまう。助けを求める少女の声はろうあであるリュの耳に届くことはなく、
少女は溺死してしまう。そして、娘を奪われた父親の復讐が始まる。
何が悪かったのだろうか。リュはとても姉思いで、初めは自分の腎臓を提供しようと
するが、血液型が合わないと言われてしまう。それではと臓器密売組織の元へ行くと、
金も自分の腎臓も取られてしまう。そこで恋人のヨンミが思いついたのが身代金誘拐
である。ヨンミが「悪い誘拐と良い誘拐がある」とリュに話す内容は、妙に説得力が
あるのが不思議だ。少女を誘拐してからも、リュの耳が聞こえさえすれば、少女は死
なずにすんだのだ。善良だったリュは殺人者になってしまった。
パク社長のリュとヨンミに対する、そしてリュの臓器密売組織に対する、凄惨な復讐
が始まる。韓国の映画は残酷シーンがきついが、この映画も例外ではない。川に流
れる真っ赤な血が、人間の憎しみの深さを物語っている。パク社長とリュはそれぞれ
加害者であり被害者でもある。それがとても悲しいのだ。人間対人間の憎しみには、
少しの救いもない。何が悪かったのか、誰が悪かったのか、私にはわからない。

ドラキュラ伯爵役で有名だったクリストファー・リーが亡くなった。子供の頃、この人の
怪奇映画をいくつも観たが、怖かったなあ。90歳を過ぎても現役だったというのが凄
い。でも素顔は知的なイギリス紳士という雰囲気だった。ご冥福をお祈りします。



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ホワイト・オン・ライス

2015-06-08 04:55:38 | 日記
2009年のアメリカ映画「ホワイト・オン・ライス」。
日系アメリカ人のハジメ(別名ジミー/渡辺広)は、仕事もうまくいかず、愛する妻にも
去られ、妹のアイコ(裕木奈江)一家の所に居候し、次こそ理想の妻を見つけようと
奮闘する。

日系アメリカ人たちの生活を描いた、ゆる~いコメディ映画である。とてもおもしろか
った。日系に限らず、アメリカで暮らす人はこんな暮らしをしているんだなあ、と興味
深く、ほのぼのとした物語だった。セリフは英語が1/3、日本語が2/3くらいだろうか。
冒頭で英語の時代劇を家族(ハジメ、アイコ、アイコの夫タク、息子ボブ)で観ている
シーンがあるのだが、切腹と介錯の場面になったら、ハジメがボブに「ここは子供に
は向かないシーンだから」と言ってボブを部屋から出ていかせる。アメリカはそういう
ところ厳しいんだなあ、と思った。私なら何も思わないが。
タクは40歳にもなるハジメを同居させることを内心嫌がっている。このハジメはとても
のん気で、ドジで、子供っぽい。元妻もおそらくそれで愛想を尽かしたのだろう。ハジ
メ役の渡辺広はお世辞にもハンサムとは言えないが、この人を主役に起用したのが
監督のセンスだろう。ハジメはイケメンではいけないのだ。妹役の裕木奈江は相変わ
らず可愛くて魅力的。ハジメとアイコとタクはバイリンガルだが、小学生の息子ボブは
日本語はわかるが絶対話さない。タクがボブに日本語で話しかけて、ボブが英語で
答えるシーンは笑えた。それにボブは落ち着いていてクールで、タクが過失でナイフ
が腹に刺さってしまった時も、母親の携帯電話に「ママ、学校から帰ったらパパが
お腹にナイフを刺してたよ。じゃあね」と伝言を残すところは爆笑である。
とにかく登場人物の演技もいいがセリフがおもしろい。ハジメがもの凄く背が高い女
性をアイコに紹介されてにびっくりして、「タンパク質とかよく食べるんですか」と聞い
たのも爆笑した。ハジメのキャラクターが本当におもしろい。
監督は若く、日本語がペラペラな人だそうだ。日本に留学でもしてたのかな?名作
とは言えないかもしれないが、傑作なのは間違いないと思う。



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