猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

MINAMATA-ミナマタ-

2021-09-28 22:23:00 | 日記
2020年のアメリカ・イギリス合作映画映画「MINAMATA-ミナマタ-」を
観に行った。

1971年、ニューヨーク。かつてアメリカを代表する写真家と称えられたユー
ジン・スミス(ジョニー・デップ)は、現在は酒に溺れる日々を送っていた。そ
んなある日、アイリーンと名乗る女性(美波)が日本人カメラマンを伴って訪れ、
熊本県水俣市のチッソ工場が海に流す有害物質によって苦しんでいる人々を撮
影して欲しいと依頼する。そこで彼が見たのは、水銀に冒され歩くことも話す
こともできない子供たちの姿や、激化する抗議運動、そしてそれを力で押さえ
込もうとする工場側という信じられない光景だった。衝撃を受けながらも冷静
にカメラを向け続けるユージンだったが、やがて自らも危険にさらされてしま
う。

水俣病を世界に知らしめた写真家ユージン・スミスの写真集「MINAMATA」
を題材に描いた伝記映画。主演のジョニー・デップが製作にも参加している。
著名な写真家のユージン・スミスは今では酒に溺れ、子供たちにも見放され、
すっかり荒んだ生活を送っていた。ある日アイリーンという米日ハーフの女性
が日本人カメラマンと共に彼の元を訪れる。「あなたに憧れて写真家になった
んです」と言う若い日本人に、ユージンは笑顔を見せる。アイリーンは熊本県
水俣市で公害病に苦しむ人々を撮影して、世界に発信して欲しいと言うが、ユ
ージンは沖縄戦の撮影で大変な思いをしたのでもう日本には行きたくないと断
る。アイリーンはユージンに封筒を手渡して帰る。初めは興味を持たなかった
ユージンだが、封筒の中の数枚の写真を見て、心を動かされる。
水俣病についてはもちろん知っているが、私が子供の頃のことだし、学校で習
ったりテレビなどでたまに見る程度で、正直「昔の出来事」という印象がある。
しかし水俣病は現在も続いているのだ。胎児性患者や、水俣病と認定されずに
補償を受けられていない人たちがたくさんいる。そしてこの映画が外国映画だ
ということがとても興味深い。外国人の目から見た水俣病や工場の真実を描い
ている。当時水俣病は海外でも報道されていて、知っている人も結構いたよう
だ。猫たちの足がもつれてけいれんを起こして死んでいく実際の映像はとても
痛ましかった。
ジョニー・デップの演技がすごい。ユージン・スミスという人を私は知らなか
ったが、写真を見ると彼になりきっている。アイリーン夫人(ユージン氏とア
イリーン氏は後に結婚している)も撮影中時々ジョニーが夫に見えたそうだ。
チッソ工場に対する抗議運動のリーダーを演じた真田広之の演技も素晴らしか
った。裁判の後、彼が裁判所から走り出てきて「勝訴」と書かれた紙を掲げる
シーンは感動的だった。「まだまだ闘いは続くのです」というセリフも。ユー
ジン氏は抗議運動に混ざっている時、工場側からひどい暴行を受けている。そ
れでも、包帯だらけの姿で撮影するシーンは鬼気迫るものがあった。
アイリーンを演じた美波は仏日ハーフなので納得だが、抗議運動のメンバー役
である加瀬亮やチッソの社長役の國村準の英語も堪能だし、日本人キャストの
演技もとても良かった。エンドロールの時世界中で起きている公害の映像が流
れるのだが、こんなにたくさんの公害病が発生しているのかとびっくりした。
チェルノブイリ原発事故などはあまりにも有名だが、あまり世界的には知られ
ていないであろう公害がたくさんあるのだ。恐ろしい現実である。水俣病とい
う日本の公害病にアメリカ人俳優のジョニーが関心を持ち、映画化を熱望した
というのは有り難いことだ。多くの人に観て欲しい、心を揺さぶられる映画だ
った。




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暗くなるまで待って

2021-09-23 22:04:19 | 日記
1967年のアメリカ映画「暗くなるまで待って」。

盲目の女性スージー(オードリー・ヘプバーン)の夫サム(エフレム・ジン
バリスト・Jr.)は、カナダからニューヨークへ帰る途中に知り合った女か
ら人形を預けられた。サムは不審に思うも、とりあえずその人形を自宅に
持ち帰る。実はその人形にはヘロインが隠されていた。人形の行方を捜す
犯罪グループのリーダー、ロート(アラン・アーキン)は仲間のマイク(リ
チャード・クレンナ)、カルリーノ(ジャック・ウェストン)と共にサムの
自宅を突き止め、留守中に忍び込むが見つからない。帰宅したスージーの
目が見えないことに気づいた男たちは、ひと芝居打って彼女から人形のあ
りかを聞き出そうとする。

オードリー・ヘプバーン主演のサスペンス。少し前に耳が聞こえない女性
が殺人鬼に狙われるという映画「サイレンス」を観た時にこの映画のこと
を思い出し、相当昔に観たのだがもう1度観ようという気になった。こち
らは目の見えない女性が詐欺師たちに狙われる物語である。サムは仕事か
ら帰る途中、空港である女から半ば強引に人形を預けられる。変に思いな
がらも自宅アパートへ持ち帰る。しかしその人形にはヘロインが隠されて
おり、女は犯罪グループからそれを奪って独り占めしようとしていたのだ
った。
最初から最後まで緊張感が途切れず、一気に観られる映画。犯罪グループ
はサムの自宅を突き止めるが、捜しても人形は見当たらない。そこへサム
の妻のスージーが帰宅し、3人は隠れるが、スージーが盲目であると知る。
そしてスージーを騙して人形のありかを聞き出すことにする。まずマイク
がサムの軍隊時代の友人だと嘘を言ってスージーに近づき、「連絡せずに
来てすみません」と言う。スージーはマイクの言うことをあっさり信じる。
2人で話しているとカルリーノが刑事のふりをして訪れ、スージーに色々
と質問をしたり、ロートもある人物のふりをしたりして騒々しくなってい
くので、スージーは次第に不安になっていく。
スージーがいつ男たちの正体に気づくのか、そして気づいた後どうやって
逃げるのかが焦点になっていて、もうハラハラドキドキである。部屋の中
にはサムに人形を預けた女の死体もあるのに、スージーはすぐ側まで行っ
て気づかないのだ。見えない目でどうやって戦うのか。しかしスージーは
聡明な女性で、一計を案じる。けれども追い詰められ命の危険が迫るスー
ジー。どうか助かって、と願わずにはいられない。オードリー・ヘプバー
ンが盲目の女性を熱演している。リチャード・クレンナは渋くて悪役がよ
く似合う。ほぼアパートの一室を舞台に展開されるこの映画、とてもおも
しろかった。


野良ちゃんたち。

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バック・ビート

2021-09-18 22:34:58 | 日記
1994年のイギリス映画「バック・ビート」。

1960年、イギリスのリヴァプール。スチュアート・サトクリフ(スティー
ヴン・ドーフ)は美術学校で出会った親友のジョン・レノン(イアン・ハー
ト)と毎夜街へ繰り出しては酒を飲み、ケンカを起こすなどして過ごして
いた。スチュアートには天才的な絵の才能があったが、ジョンは絵よりも
音楽に興味を持っていた。ある日、ジョンはスチュアートをバンドに誘う。
初めは戸惑ったがジョンに憧れを抱いていた彼はベーシストとしてバンド
に加入する。初めての巡業でドイツのハンブルクに行った際、スチュアー
トは彼らのライブを観に来ていた写真家アストリッド・キルヒャー(シェ
リル・リー)と運命的な出会いをする。やがてスチュアートは恋愛と絵を
描きたいという気持ちにより演奏に身が入らなくなり、ポール・マッカー
トニー(ゲイリー・ベイクウェル)は不満を募らせる。

ビートルズの初期メンバーだったスチュアート・サトクリフの生涯を描い
た映画。スチュアートはビートルズが正式にデビューする前に脱退してい
るのだが、しばしば「5人目のビートルズ」と呼ばれているという。スチ
ュアートとジョンはリヴァプール・カレッジ・オブ・アートで出会い、共
同生活をする程に親しくなる。その仲の良さはポールが嫉妬する程だった。
スチュアートは画家を目指していたが、ジョンに誘われベースを購入し、
バンドに加入した。やがてハンブルクに巡業に行った際、ライブの客だっ
た写真家のアストリッドとお互いひと目で恋に落ちた。
ポール・マッカートニー役の俳優がよく似ていておもしろかった。メイク
などもあるのだろうが、よくこんなに似た俳優を見つけてきたなあという
感じ。スチュアート・サトクリフ役の俳優はなかなか美青年だが、本物の
スチュアートはもっと美形。本当に美しい顔をしている。アストリッド・
キルヒャー役のシェリル・リー(「ツイン・ピークス」のローラ・パーマ
ー役で有名)もかなり似せていた。スチュアートとアストリッドが一緒に
写った写真を見たが、本当に素敵なカップルだった。
だがスチュアートはアストリッドに夢中になるにつれ、バンド活動に身が
入らなくなる。彼はバンドと並行して絵も描き続けていて、どちらかと言
うと絵に情熱を傾けていた。ジョンはスチュアートがバンドに身が入らな
いのはアストリッドのせいだと考え、彼女を邪魔な存在だと思うようにな
る。スチュアートは演奏も歌も決してうまくはなく、ポールはイライラを
募らせ、ジョンにスチュアートを辞めさせるように言う。しかしジョンは
「あいつを辞めさせるのなら俺も辞める」「君が辞めるなんて有り得ない
」と口論になることもよくあった。
そしてスチュアートは本当は画家になりたいことや、ジョンとポールが自
分のことで揉めていることが辛くなり、自ら脱退する。そしてアストリッ
ドと同居するために奨学金を得てハンブルク美術大学に編入する。しかし
その頃から彼はひどい頭痛に悩まされるようになっていった。「5人目の
ビートルズ」のことは聞いたことがあったが、こうして映画を観てみると
ジョン、ポール、スチュアートたちの心の葛藤がよくわかってとても興味
深かった。ビートルズの初期の頃の曲も色々聞けて嬉しかった。しかしジ
ョンは複雑な性格だなあと思った。彼と付き合っていくのは結構大変そう
な感じがする。スチュアートは1962年に21歳で脳出血でこの世を去った。




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後宮の秘密

2021-09-13 22:33:30 | 日記
2012年の韓国映画「後宮の秘密」。

朝鮮時代、王の異母弟ソンウォン大君(キム・ドンウク)は、狩りの途中
に寄った屋敷で美しい女性ファヨン(チョ・ヨジュン)に一目惚れしてし
まう。彼女は使用人のクォニュ(キム・ミンジュン)と愛し合っていたが、
父親に引き離されてしまう。ファヨンはクォニュの命を救うことを条件
に宮殿に上がり、王の側室となる。5年後、彼女は王子を授かり安泰に
暮らしていたが、ある日王が不審な死を遂げる。そしてソンウォンが新
たに王位に就くが、ソンウォンは兄嫁であるファヨンを想い続けていた。
摂政として権力を振るうソンウォンの母・大妃(パク・チヨン)はそれを
快く思わず、ファヨンの命を狙う。

欲望と陰謀の渦巻く宮中で運命に翻弄されながらも必死に生き抜こうと
する女性の姿を描いたドラマ。美しいファヨンに一目惚れした王の異母
弟ソンウォンだが、彼女は使用人クォニュと恋仲だった。しかし父親に
引き離され、クォニュを殺さないことを条件に王の側室として宮殿に上
がる決意をする。昔はこういうことはよくあったのだろうなあ。身分違
いという理由で恋人と別れさせられるなんてかわいそう。現代でもなく
はないと思うが。ファヨンは王子を産み、平穏に暮らしていたが、ソン
ウォンはずっと彼女に恋心を抱き続けていた。やがて5年後のある日、
王が不審な死を遂げ、ソンウォンが王位に就く。
ファヨン役のチョ・ヨジュンがとても美しい。でもどこかで見た顔だな
と思っていたら、「パラサイト 半地下の家族」のお金持ちの奥様だっ
た。あの奥様は美しいが天然で、ちょっとユーモラスな役どころだった
が、こちらはとてもシリアスな役をオールヌードになって熱演していた
(しかもスタイル抜群)。ソンウォンは新王になったものの、政治は母親
である大妃が仕切っていて、自分は操り人形同然であることに不満を抱
いていた。決定権は自分ではなく大妃にあるのだ。野心丸出しの大妃は
観ていて憎々しかったなあ。ソンウォンは兄嫁であるファヨンを奪いた
いと思ってはいるが、別に悪い人ではない。ある日ソンウォンの前に意
外な人物が現れる。
宮殿の中で陰謀が渦巻きすぎていて、少し混乱してしまう感じはあった。
とにかく登場人物が多いし皆同じような髪型、服装で見分けがつきにく
いし。おとなしい女性だったファヨンが自分と幼い息子の命を守るため
に悪女のようになっていく様子はおもしろかった。対立していた姑であ
る大妃と同じようになっていくのは悲しいが。ファヨンの忠実な侍女が、
ソンウォンに一夜の寵愛を受け、後宮の座に収まったからといって、人
が変わったように傲慢になるのも興味深い。彼女は早速ファヨンを見下
し始める。人は権力を得た途端に人格が変わってしまうということもあ
るものだ。
終盤は色々な陰謀が明るみになったり意外な展開になったりして、見応
えがあった。でもラストはそこまでしないといけないのかな、とちょっ
と納得がいかなかった。他に方法はあったと思うのだが。ファヨンがか
つての恋人クォニュに囁いた言葉の残酷さ。クォニュは絶望を感じたこ
とだろう。女は強しというか母は強しというか。とてもおもしろかった。




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BRICK ブリック   &ノエルの誕生日

2021-09-09 22:42:46 | 日記
2005年のアメリカ映画「BRICK ブリック」。

南カリフォルニアの高校に通うブレンダン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)
は元恋人のエミリー(エミリー・デ・レイヴィン)から助けを求める電話を受け
た。だがエミリーの話は要領を得ず、何を言っているのかわからない。エミリ
ーは「ブリック、フリスコ、タグ、ピン」という謎の言葉を残して電話を切る。
翌日ブレンダンはエミリーと学校で会うが、「昨日の電話は忘れて」と言われ
る。復縁したいと言うブレンダンに、エミリーは無理だと言って去っていく。
そしてその翌日、ブレンダンは学校近くの排水溝でエミリーの遺体を発見する。
ブレンダンは親友のブレイン(マット・オリアリー)と共にエミリーの死の真相
を探り出す。

ライアン・ジョンソン監督による学園ミステリー。全体的な雰囲気は好きなの
だが、ちょっとわかりにくかった。私だけだろうか。田舎の高校生のブレンダ
ンは自分を振った元彼女のエミリーから「助けて」という電話を受ける。だが
彼女は混乱しているようで何を言っているのかわからない。そして「ブリック、
フリスコ、タグ、ピン」という意味不明の言葉を残して電話を切る。その2日
後エミリーは学校近くの排水溝で遺体となって発見される。発見したのは他な
らぬブレンダンだった。ブレンダンは遺体を排水溝の奥深くに隠す。
ブレンダンは親友の(というより唯一の友人)ブレインと共にエミリーの残した
謎の言葉の意味を考えながら、事件の真相を解明しようとする。その結果謎の
言葉は暗号で、麻薬絡みの事件だということが次第にわかってくる。ブレンダ
ンたちの通う高校は麻薬がはびこっていたのだった。私はブレンダンとブレイ
ンがどうして暗号の謎をあんなに簡単に解いていったのかが釈然としなかった。
2人とも秀才設定っぽかったが、それにしてもあんなにわかるだろうか?と思
う。更に舞台が高校というのに無理がある気がした。登場人物が皆大人っぽい
し、肝が据わりすぎているし、せめて大学生設定なら…と思ったが、あんな田
舎の高校でも麻薬に汚染されているというのがアメリカらしさを表しているの
だろうか。
ジョセフ・ゴードン=レヴィットが若い時の作品で、くるくるパーマに眼鏡が
似合っている。探偵役みたいなものだから眼鏡にしたのだろうか。そして彼が
とにかくひどい目に遭いまくる。何度も殴られて流血するし、首を絞められる
し、車のトランクに入れられるし、ジョセフ推しの人は嬉しいかもしれない。
しかもやられっ放しではなく、見た目は軟弱そうなのに何度も立ち上がって向
かっていく。ブレンダンの家族が全く出てこないが、高校生の息子がしょっち
ゅうあんなに傷だらけになっていたら、親は変に思うと思うのだが。
割と好きなタイプの映画だったが、同じライアン・ジョンソン監督の映画なら
ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」の方がおもしろかった。


今日はノエルの4歳の誕生日でした。ついこの間我が家にやって来た気がする
けど、もう4歳なのね~。立派な大人なのだけど精神年齢が低くてやんちゃ。
ノエル、これからも元気で、ベルと仲良くね。




ノエルが私のお気に入りのカーテンをカジカジ…( ;∀;)

















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