猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

アナザーラウンド

2022-05-27 22:17:53 | 日記
2020年のデンマーク・オランダ・スウェーデン合作映画「アナザーラウ
ンド」。

冴えない高校教師のマーティン(マッツ・ミケルセン)とその同僚のトミー
(トマス・ボー・ラーセン)、ニコライ(マグナス・ミラン)、ピーター(ラ
ース・ランゼ)の4人は、ノルウェー人の哲学者が提唱した「血中アルコー
ル濃度を一定に保つと仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる」という理
論を証明するため、実験をすることに。朝から酒を飲み続け、常に酔った
状態を保つと惰性で行っていた授業も楽しくなり、生き生きとするマーテ
ィンたち。生徒たちとの関係も良好になり、人生は良い方向へ向かってい
くと思われた。しかし、実験が進むにつれて次第に制御がきかなくなって
しまう。

偽りなき者」のトマス・ヴィンターベア監督と主演のマッツ・ミケルセ
ンが再びタッグを組んだコメディあり、シリアスありの人間賛歌。第93
回アカデミー賞国際長編映画賞他多くの賞を受賞している。冴えない高校
の歴史教師マーティンたちは、生徒から「先生の授業は退屈」と言われて
しまう。悩んだマーティンたち4人の同僚は、ノルウェー人哲学者の提唱
した理論を試してみようと思い立つ。それは「人間の血中アルコール濃度
を常に0.05%に保つと仕事の効率が良くなり、自信とやる気がみなぎる」
というものだった。ヘミングウェイと同じように夜8時以降と週末は飲酒
禁止とした上で、彼らは学校でこっそりと酒を飲むようになる。すると彼
らは授業もうまくいくようになり、生徒たちも楽しく授業を受けるように
なる。
前半はコミカルに進んでいく。マーティンは夜勤ばかりの妻とすれ違いの
生活で、子供たちともあまり会話がなく悩んでいたが、次第に明るくなっ
てきて家族の絆も戻ってくる。他の3人もそれぞれ仕事だけでなく家庭で
も問題を抱えていたが、事態は好転していく。しかし実験がうまくいけば
欲が出るのが人間というもので、「もっと飲んだらどうなるか?」と考え
始める。そして少しずつ酒量を増やしていき、他の教師たちも彼らの様子
がおかしいことに気づき始める。マーティンは長男から「最近いつも酔っ
てるね」と言われる。
主要キャスト4人の演技がとてもいい。人生につまづいた中年男性の悲哀
がよく描写されている。それにしてもマーティンの妻、あっさり不倫する
ものだなあと思った。マーティンは妻が浮気していることに勘づき問い詰
めるが、妻は「淋しかったのよ」と答える。生活がすれ違っていて淋しい
と言ってもそれはマーティンの方も同じだし、妻が夜勤ばかりなのはマー
ティンのせいではないではないか。マーティンは激怒して妻子を追い出し
てしまう。
マーティンが生徒に1週間にどれくらいビールを飲むか聞き、生徒が答え
るシーンがあってびっくりしたのだが、デンマークは18歳から飲酒でき
るそうだ。高校生も普通に飲んでいるんだな。終盤は悲しい展開になる。
まさかトミーがあんなことなるなんて。学校は悲しみに包まれる。私はト
ミーの愛犬がどうなったのか気になった。最後の方でマーティンが踊るシ
ーンがとてもいい。ラストのストップモーションも。素敵な映画だった。


良かったらこちらもどうぞ。トマス・ヴィンターベア監督作品です。
偽りなき者
光のほうへ



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ヒメアノ~ル

2022-05-23 22:21:23 | 日記
2016年の日本映画「ヒメアノ~ル」。

平凡な毎日に焦りを感じながら、ビル清掃会社のパートタイマーとして
働いている青年・岡田進(濱田岳)は、同僚の安藤勇次(ムロツヨシ)から思
いを寄せるカフェの店員・阿部ユカ(佐津川愛美)との恋のキューピッド役
を頼まれる。ユカが働くカフェで、高校時代に過酷ないじめに遭っていた
同級生の森田正一(森田剛)と再会する岡田だったが、ユカから彼女が森田
にストーキングをされていることを知らされ、不穏な気持ちを抱き始める。
森田はある事件をきっかけに、欲望のままに無抵抗な相手を殺害していく
快楽殺人者になっていたのだった。

古谷実氏の漫画を映画化したサイコ・サスペンス。おもしろかった。主演
はV6の森田剛だが、私はこの人の演技を見るのは初めてかもしれない。こ
んなにうまい人だとは知らなかった。濱田岳は安定のうまさ。ビル清掃の
パートをしている岡田は、同僚の安藤に好きな女性との仲を取り持って欲
しいと頼まれるが、その女性・ユカが働くカフェに2人で行くと、ユカは
とてもかわいい人だった。岡田の「無理ですよ、安藤さん。かわいいし、
人間としてのカテゴリーが違いすぎますよ」というセリフに笑った。でも
何だかんだと2人はユカと親しくなることに成功する。
前半はコミカルな感じに進んでいき、いつ怖い映画になるのだろう?とい
う感じ。ところがかなり時間が経ってから映画のタイトルが出るのだが、
それをきっかけに雰囲気が変わってくる。度々ユカのいるカフェに足を運
ぶ岡田だが、ある日高校の同級生だった森田と再会する。岡田と森田は入
学した頃は仲が良かったのだが、そのうち森田は壮絶ないじめを受けるよ
うになり、自分も標的にされたくないと思った岡田は、森田を助けなかっ
た。岡田はそのことで罪悪感を持っていた。懐かし気に話す森田はいじめ
のことなど忘れている風に見えた。しかし森田は快楽殺人者へと変貌を遂
げており、岡田やユカ、安藤は事件に巻き込まれていく。
森田の殺人の独壇場になってからはとても怖い。顔色ひとつ変えずにあっ
さりと人を殺すのだ。いじめというものが人に与える影響を改めて感じた。
森田剛の演技は迫力満点で、一体何人殺したのだろうと思う。ユカは結局
安藤ではなく岡田を好きになり、彼と付き合うようになるのだが、冴えな
い岡田のどこが良かったのかな、と思った。ユカもそれほどかわいいとは
思わなかったし、安藤はもちろん気持ち悪いタイプ。森田が殺人犯だと知
った岡田は、何とか森田の犯行を止めようとするが、森田は「どうせ死刑
だ。お前ら(岡田とユカ)を殺す」と言い放つ。
ラストは原作と違っているらしく、切ない終わり方だった。森田の家に岡
田が来て、一緒にゲームをしている回想シーンがあるから余計に悲しい。
「お母さーん、麦茶2つ持ってきてー」と言う森田のセリフが忘れられな
い。森田は普通の少年だったのに。どこかで引き返すチャンスはあったの
だろうか。それとも、いじめがあってもなくても森田はこうなる運命だっ
たのか。人はいくつになっても変わらないと言われるが、簡単に変わって
しまう場合もあるのだ。とてもサスペンスフルでおもしろかった。


上を向いているノエル、かわいい





ゴシゴシ。

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恋するシェフの最強レシピ

2022-05-19 22:00:00 | 日記
2017年の香港・中国合作映画「恋するシェフの最強レシピ」。

ビジネスにも食事にも常にパーフェクトを求め、世界の味を知り尽くした
やり手の若手実業家のルー・ジン(金城武)。彼が買収に成功した上海の名
門ホテルで有名料理長が提供する料理はどれも彼を感動させるものではな
かったが、見習いシェフのグー・ションナン(チョウ・ドンユィ)が編み出
す斬新なレシピだけはジンの舌を満足させた。ジンが指定したテーマに合
わせ、完璧な料理を次々と提供していくションナン。2人は食を通して心
を通わせていくが、ジンたちの前にションナンの才能を凌ぐ美人シェフ(
リン・チーリン)が現れる。

ロマンティック・ラブ・コメディ。上海で名門ホテルの買収に成功した実
業家のルー・ジンは、ビジネスにも食事にもパーフェクトを求める高慢な
男。"絶対味覚"を持つジンにとって、このホテルの有名料理長が提供する
メニューはどれも特別に感動できるものではなかった。けれども自由な発
想で斬新なレシピを編み出す見習いシェフのションナンだけがジンの舌を
満足させることに成功する。互いに顔を合わせることなく、ジンがテーマ
を決めて料理をオーダーすると、ションナンもプライドをかけて完璧な料
理を作り出していく。その対決がヒートアップすればするほどジンはショ
ンナンに会ってみたいと思うようになる。
ルー・ジンは美食家で潔癖症で傲慢な資産家だ。金城武はこういう役がよ
く似合うと思う。彼を満足させるシェフはなかなかいない。ところがショ
ンナンが作った料理にだけはジンは感動を覚える。そして作ったのが女性
シェフであることも言い当ててしまう。ジンは彼女に会ってみたいと思う
ようになるが、実はジンとションナンは何度も会っているのである。ジン
はションナンの顔を知らないがションナンはジンを知っており、遭遇しそ
うになる度にションナンは逃げたり隠れたりしようとするが、その際いつ
もやっかいな事が起きてしまい、ジンは彼女を疫病神扱いする。
王道の少女漫画的ラブコメなのだが、結構おもしろかった。ジンのスーツ
ケースから大量の「出前一丁」が出てくるのが笑えた。金城武主演の香港
映画でも出前一丁が登場したが、中華圏で出前一丁は人気があるのだろう
か。ホテルのキッチンで出前一丁を作ろうとするジンだが、完璧主義者な
のでインスタントラーメンの作り方にも非常なこだわりがある。そのシー
ンがユーモラスでいい。ジンがションナンの正体に気づいてからは2人の
距離は縮まっていくが、最初はジンはションナンを天才的なシェフという
興味で見ている。
よくあるように親しくなった2人はケンカ別れをしてしまうが、それで初
めてお互いをとても大切に思っていることに気づく。もうベタベタの王道
である。最後の方で2人の仲を取り持つのがションナンの愛犬だというの
もいい。ションナンは愛犬に向かって「裏切者」と言っていたが。ジンと
ジンの父親が話すシーンはちょっと切なかった。登場する料理がどれもと
てもおいしそうで、特にチョコレートケーキは食べてみたかったなあ。残
念だったのはセリフが広東語ではなく中国語だったこと(私は広東語が好
きである)と、ションナン役のチョウ・ドンユィがかわいくなかったこと。
金城武の相手役としては釣り合っていないと思った。でも全体としてはお
もしろかった。




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宿命

2022-05-15 21:53:45 | 日記
2008年の韓国映画「宿命」。

父の死後、男癖の悪い母の家を出たウミン(ソン・スンホン)は、道端で
裏社会で生きるドワン(キム・イングォン)に出会う。ウミンとドワンは
意気投合するが、ドワンと組んでいるチョルジュン(クォン・サンウ)は
ウミンの存在を快く思っていなかった。彼らは人生をやり直すため、対
立する組織の金を盗む作戦を実行するのだが、失敗し、ウソンは逮捕さ
れる。2年間の服役生活を終えて出所し、裏社会に戻ったウミンが目に
したのは、多くの部下を従えるチョルジュンの姿だった。

ソン・スンホンとクォン・サンウ共演のサスペンス・アクション。この
2人の共演は豪華だが、それ程おもしろくなかったかなあ、という感じ。
ウソンは裏社会で生きるドワンと知り合い、仲良くなる。だがドワンと
組んでいるチョルジュンはそれをあまり良く思っていない。ドワンは重
い薬物中毒で、ウミンはドワンを治してやりたいと思っていた。やがて
チョルジュンたちは足を洗うために、対立する組織のカジノを襲撃して
金を強奪する計画を立てるが、失敗し、ウミンはリーダーから代表して
自首してくれと言われる。ウミンは自首し、2年間の服役を終えて戻る
が、その間にチョルジュンは出世して多くの部下を抱えていた。
足を洗うために強盗をするというのがヤクザの考え方だなあ。1からや
り直そうとは思わないのだろう。仲間のために代表して自首させられた
ウソンは気の毒だ。ウソンという人は根はいい人なのだが、なかなか普
通の生活に戻れない。親友のドワンの薬物中毒はますますひどくなって
おり、ウソンは何とかしなければと思う。しかしこれは本人に治そうと
いう気持ちがなければなかなかうまくいかないものである。
クォン・サンウが演じるチョルジュンのキャラクターに魅力を感じない
のが残念。見た目はもちろんかっこいいのだが、チョルジュンは短気で
やたらすぐに怒ったりどなったりして、うるさいというか落ち着きがな
いというか。もっとどっしりと構えていられないのか、と思う。チョル
ジュンが夫婦関係がうまくいっていない妹から相談を受けて、後日妹の
夫に「ケンカするのはいい。だが妹に手をあげたら承知しない」と言う
シーンは静かな迫力がある。妹の夫は「はい、約束します」と答えるが、
ああいう義兄がいたら怖いだろうなあ。チョルジュンはロクな人間では
ないが妹はかわいいんだな、と思った。
全体的にアクションが弱いというか、ヤクザがどうして銃を持たずに棒
や刃物で戦っているのだろう、と思った。ヤクザ映画ならやっぱり銃だ
ろう。だから迫力が今ひとつなのだ。棒でボコボコ殴っててもねえ。終
盤は悲劇的な方向へ向かう。ウソンとドワンがそれぞれよりを戻そうと
していた元恋人の女性たちもかわいそうだ。ラストはあっけなく、いき
なり終わる感じ。この終わり方は賛否あるかもしれないが、私はまあ良
かったんじゃないの、と思った。でも物語自体がもっとおもしろかった
ら良かったなあ。スンホンとサンウ目当てに観るのならいいかもしれな
い。




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不都合な理想の夫婦

2022-05-11 22:15:00 | 日記
2019年のイギリス映画「不都合な理想の夫婦」を観に行った。

1986年、ニューヨークで貿易商を営むイギリス人のローリー・オハラ
(ジュード・ロウ)は、アメリカ人の妻アリソン(キャリー・クーン)と娘
と息子と共に幸せに暮らしていた。しかし、更なる大金を稼ぐことを夢
見て、好景気に沸くロンドンに一家で移住し、かつての上司が経営する
商社に舞い戻る。仕事面では才能を評価され、ロンドン郊外に豪邸を借
り、息子を名門校に編入させ、妻の好きな乗馬のために広大な敷地を用
意するなど、ローリーの生活は順風満帆だった。しかしアリソンはふと
したきっかけから、新生活のために用意していた貯金が底をついている
ことを知ってしまう。

心理サスペンスで、なかなかおもしろかった。ニューヨークで暮らすイ
ギリス人のローリーは、アメリカでの生活に限界を感じ、家族で自分の
出身地であるロンドンに移住することを提案する。アメリカ人の妻アリ
ソンは困惑するが、結局一家で移住する。ローリーはかつての上司が経
営する商社に入社し、歓迎される。仕事の能力を高く評価され、プライ
ベートも充実しており、オハラ家の生活は順調だった。いや、順調だと
思っていたのはローリーだけで、アリソンは慣れないイギリスでの暮ら
しに不満を感じており、娘と息子も戸惑っていた。
結局ローリーはアメリカが好きではなく、アリソンはイギリスが好きで
はないのだ。アリソンはニューヨークで暮らしていた時から朝は誰より
も遅く起き、ローリーがコーヒーを淹れてアリソンのベッドまで持って
いっていた。子供もいるのにのん気というか、ちゃんと家事しているの
だろうかと思った。昼間は乗馬や馬の世話だし。子供たちを車で学校へ
送り届けるのはローリーだったりアリソンだったりだが、アリソンはい
つも遅刻して、子供たちはそれを嫌がっていた。私は最初からこの妻が
好きではなかった。そしてアリソンは些細なことがきっかけで、家の貯
金が底をついていることを知ってしまい、夫婦は口論が増えていく。
こうなると1番かわいそうなのは子供たちで、不安の中に置かれること
になる。夫婦の留守中に娘(多分高校生)はクラスメイトを家に呼んで酒
とドラッグで騒いだり、息子(小学生)は学校でいじめに遭って暴力事件
を起こしたりと、生活は乱れていく。アリソンの心も追い詰められてい
た。ローリーの言っていたことやしていたことは見栄や虚飾ばかりだっ
たのだ。金は心配ない、今度大金が入ると言ってアリソンを納得させよ
うとするがそううまくはいかない。それでもアリソンはローリーに伴わ
れて会食に行かなければならない。アリソンも皆の前でローリーが恥を
かくようなことを言わなくてもいいのに、と思うが、もう限界だったの
だろう。
金の切れ目が縁の切れ目というか、ありがちな物語なのだが、ジュード
・ロウとキャリー・クーンの演技力にぐいぐい惹き込まれる。端正な美
貌のジュード・ロウが嫌な奴を演じているのがかえっていい。こういう
役似合うなーと思う。ローリーは母親ともうまくいっていないようなの
で、多分昔から嘘つきで問題が多かったのではないかと思った。少しわ
からないシーンもあったが、スリリングな会話劇でおもしろかった。唐
突に終わるラストも好きだが、あの家族には救いはあるのだろうか。あ
るのだと思いたい。


喫茶店のモーニングに行って来ました。モーニングなんて何10年ぶり
かな…多分20代の時以来ではないだろうか。大昔ですね(^^;)
おいしかったです

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