猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

search/サーチ

2021-07-30 22:25:22 | 日記
2018年のアメリカ映画「search/サーチ」。

デビッド・キム(ジョン・チョー)は妻をがんで亡くし、16歳の高校生の
娘マーゴット(ミシェル・ラー)と2人で暮らしていた。ある日マーゴット
が突然姿を消し、行方不明事件として捜査が開始されるが、家出なのか誘
拐なのか判明しないまま37時間が経過する。娘の無事を信じるデビッド
は、彼女のパソコンにログインし、Instagram、Facebook、Twitterとい
った娘が登録しているSNSにアクセスを試みる。だがそこには、いつも明
るくて活発だったはずの娘とは別人の、デビッドが知らない娘の姿が映し
出されていた。

物語の全てがパソコンの画面上で展開されるという異色のサスペンス・ミ
ステリー。アニーシュ・チャガンティ監督のデビュー作である。高校生の
娘マーゴットがある日友達の家で勉強会のため外泊すると言ってきた。翌
朝父のデビッドは自分の就寝中にマーゴットが3回も電話をかけてきてい
たことに気づく。デビッドは折り返し電話をするが、つながらない。そし
てデビッドはマーゴットが学校へも行っておらず、放課後のピアノ教室に
も行っていないことを知る。そしてマーゴットは半年前に勝手にピアノ教
室を辞めていた。更に幼馴染たちとのキャンプにも参加していないことが
わかり、デビッドは警察に連絡をする。
サスペンス・ミステリーではあるが、根底にあるのは家族の物語である。
デビッドは娘のFacebookやInstagramを見て自分の知らない娘の一面を
知り、ショックを受けるが、同時に観ている側にも「あなたは子供のこと
をどれだけわかっているか」という問いを投げかける。デビッドの弟はマ
ーゴットくらいの年頃なら親に告げずにフラッと出かけることもあるだろ
う、と言ってデビッドを励ます。ところがデビッドはマーゴットの銀行口
座から失踪直前に2500ドルが謎のアカウントに送金されていたことを知
る。ニュースではマーゴットが何らかの犯罪に関わり、2500ドルを持っ
て逃亡しているのではないかという報道がなされる。更にデビッドはある
理由から弟に疑惑の目を向け、問い詰める。
事件の真相は2転3転し、とてもおもしろい。全編映像がパソコン上とい
うのも斬新だ。最初はずっとパソコン画面を見ているのって飽きないかな、
と思ったが、全くそんなことはなかった。娘は父親に何を隠しているのか。
犯罪に関わっているのか。今生きているのか。デビッドの心の中で不安や
希望や落胆や、いろんな感情が渦巻いて、とてもスリリング。デビッド役
のジョン・チョーの演技が迫真で秀逸だ。それに主要登場人物たちがアジ
ア系米国人なので親近感がある。
終盤のどんでん返しは本当に驚いた。「ああっ、そうかあっ!」と声に出
しそうになったくらいだ。そんなに意外な真相だったとは。とてもおもし
ろい映画だったが、パソコンやSNSのことがよくわからない私としては、
全編パソコン上で物語が進行するという手法ではなく、普通の映画として
作ってくれた方が良かったかな、と思った。確かに斬新で個性的な作り方
なのだが、普通は普通でおもしろかったのではと思う。でもとにかく脚本
がよくできていたし、見応えがあってとても良かった。




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アーバン・エクスプローラー

2021-07-26 22:12:19 | 日記
2011年のドイツ映画「アーバン・エクスプローラー」。

ベルリンに集まったアメリカ出身のデニス(ニック・エヴァスマン)ら各国の
4人の若者たち。彼らの目的は旧ドイツ軍の地下道を捜し探検すること。現
地ガイドのクリス(マックス・リーメルト)の案内に従って地下へ向かった彼
らだったが、途中でクリスが負傷してしまい、身動きがとれなくなる。女性
2人は救助を呼ぶため地上を目指すが、なかなか戻ってこない。そこへ地下
に住んでいるという元軍人の男が現れ、救助を呼んでくれることになった。
ところが男はデニスたちを住みかに招き入れると態度を豹変させる。

ベルリンの地下で正体不明の殺人鬼に襲われる若者たちの恐怖を描いたスプ
ラッター・ホラー。ナチスの地下壕を探検するツアーに参加するため、世界
各国から4人の若者が集まった。こういうツアーって本当に行われているの
だろうか。私だったら行きたくないなあ。地下壕なんて暗いし汚いし。地下
が舞台なので画面は暗く、いかにも何か起こりそうな雰囲気。ドイツ人ガイ
ドのクリスの案内に従って道を進んでいたのだが、1人の女性のちょっとし
たいたずら心が元でクリスは重傷を負ってしまう。その女性ともう1人の女
性が地上へ助けを呼びにいこうとするが、いつまで待っても戻ってこない。
デニスと彼の恋人がクリスの側で待っていると、地下道に住んでいるという
男が現れ、彼らを家に招き入れ、救助の電話をかけてくれる。
男は元軍人だと言うが、どうして地下なんかに住み着いているのか、デニス
たちは変に思わないのだろうか。女性3人はともかくデニスはそんなにアホ
ではなさそうなのだが。男は電話をかけてデニスたちに食事を振る舞い、皆
で談笑する。デニスと恋人は助けを呼びにいった女性たちは多分逃げたのだ
ろうと考える。しばらく話していると、男の様子が変わってきて、デニスた
ちに襲いかかる。この男は地下を訪れた人たちを殺害している連続殺人鬼だ
った。
デニスは恋人を守りながら必死に抵抗し、最初は割とあっさりと男を倒すの
だが、ホラー映画の定番で、何故かトドメを刺さない。「殺人鬼にはトドメ
を刺さなきゃダメでしょ」と観ながら思う。まあここで殺人鬼が死んでしま
ったら映画が終わってしまうので仕方がないのだが。とうとうデニスの恋人
が男に捕らわれてしまう。それからデニスと男の激しい攻防戦が始まる。
先日観た「0:34 レイジ34フン」と同じような映画である。どちらも地下が
舞台だし、謎の連続殺人鬼が登場するし。私はこういう映画が好きなのだ(
地下じゃなくてもいいけど)。どっちの方がおもしろかっただろう。どちら
もそれなりにおもしろかったな。グロテスクさでは「アーバン・エクスプロ
ーラー」の方が上だろう。ラストもこちらの方が好き。


丸顔に写ったノエル。



ノエルきょとん。




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バニー・レークは行方不明

2021-07-21 22:33:56 | 日記
1965年のイギリス・アメリカ合作映画「バニー・レークは行方不明」。

アメリカからロンドンにやって来たシングルマザーのアン・レーク(キャロル・
リンレー)は、特派員をしているロンドン在住の兄・スティーブン(キア・デュ
リア)が前もって手配してくれた保育園に娘のフェリシア(愛称はバニー)を預け
る。アパートで荷物を解いた後、バニーを迎えにいくが娘の姿はどこにもなく、
保育園の職員たちも姿を見ていないと言い、名簿にもバニーの名前は記載され
ていなかった。通報を受け、捜査に当たったニューハウス警部(ローレンス・オ
リヴィエ)に求められ、バニーの写真を見せようとするアンだったが、写真どこ
ろかバニーの存在を示すものは何1つ見つからなかった。バニーを目撃した者
がいないため、警部はそもそもバニーは存在していなかったのではないかとの
疑念を持つ。

ヒッチコック風のサスペンス・ミステリー。子供が行方不明になるというのは
フライトプラン」「プリズナーズ」など題材としてたくさんあると思うが、
この映画が他の映画と違うのは、最初から子供の姿を見せていないという点だ。
母親がいくら娘がいなくなったと訴えても、誰も姿を見ていないので、警察は
「娘は本当に存在しているのか?母親の妄想ではないのか?」と考える。そし
て観ているこちら側も母親の妄想?と思ってしまう。いやでも兄も捜査に協力
しているし、やっぱり娘は存在するんだよね…?とも思う。この演出が秀逸だ
と思った。
兄を頼ってイギリスに娘とやって来たアンだが、保育園の初日に娘がいなくな
ってしまう。職員や園児や母親たちに聞いても見ていないと言う。アンは何が
何だかわからず、非常に精神不安定になる。それは当然だろう。警察から娘の
存在を怪しまれ、アンも兄のスティーブンもとても不快になる。当時は未婚で
子供を産むというのは少なかったのか、警察はアンが独身であることにも不信
感を持つ。ニューハウス警部はスティーブンにアンとの子供の頃の生活ぶりを
聞く。孤独だった兄妹はとても仲が良かったらしく、アンはバニーという想像
上の友達を作って遊んでいたと話す。そのことで警部は余計にアンが捜してい
るバニーの存在を訝しむことになってしまう。
保育園の職員たちの無関心、無責任ぶりにはイライラした。自分の保身のこと
しか考えておらず、事情聴取の時も態度が悪い。そして怪しい人が次々に登場
するのだ。アンが話をした園の女性コックが姿を消したり、担任の先生がいき
なり歯科医院に行ってなかなか戻って来なかったり、元園長がとても変な人だ
ったり、アンの家の大家が勝手に入り込んで長々と居座る気持ち悪いおっさん
だったり(いくら大家で鍵を持っているからと言って普通は勝手に入らないだ
ろう)。
アン役のキャロル・リンレーはきれいで、ヒステリックで不安定になっていく
演技がとても良かった。警部役のローレンス・オリヴィエは素敵なおじさまだ。
ラストのブランコのシーンは狂気を感じて、怖かった。モノクロ映画なのも相
まってサスペンス・ミステリー要素がより強く感じられた。これは傑作だと思
う。




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0:34 レイジ34フン

2021-07-17 22:47:14 | 日記
2004年のイギリス・ドイツ合作映画「0:34 レイジ34フン」。

深夜0時34分の地下鉄最終電車に乗り遅れたケイト(フランカ・ポテンテ)は、
駅の出口からも締め出され、無人のホームに取り残されてしまう。その時無
人の電車が到着し、不審に思いながらも飛び乗るケイト。しばらく経って、
突然電車が停車する。彼女は車掌室へ向かうが、そこで運転士の死体を発見
してしまう。恐怖に怯えるケイトは助けを求め、地下鉄内を疾走する。

深夜の地下鉄や地下道を舞台にしたホラー映画。パーティーを抜け出したケ
イトは地下鉄の終電を待っていたが、ベンチでうたた寝をしてしまい、電車
を逃してしまう。更に駅の出口はどこも閉まっており、ケイトはホームから
出られなくなる。そこへもう来ないはずの電車が到着し、ケイトは変に思い
ながらも乗り込む。車内は無人だったが、ケイトは人の気配を感じる。近づ
いて来たのはパーティーで一緒だったガイ(ジェレミー・シェフィールド)だ
った。ケイトはガイのしつこい誘いにうんざりしてパーティーを抜け出して
いた。ガイは車内でもケイトに迫るが、急に電車が停止し、ドアが開き、ガ
イは突然ドアの外に引きずり降ろされてしまう。更にケイトは運転士の無残
な死体も発見する。
ネットのレビューを読むと評価は散々だが、私は結構おもしろかった。夜中
の地下道で何者かに命を狙われるというシチュエーションが怖い。ただ突っ
込みどころも満載ではある。まず終電を逃したからといって駅に閉じ込めら
れるのがおかしい。警備員とか巡回していないのだろうか。それに終電の後
に電車が来るのも変。殺人鬼が運転しているわけではないのだが。伏線もち
ゃんと回収されていないし(そういうところはアメリカ映画と違う点)、でも
色んなおかしな点があってもなかなか拾い物だと私は思った。
電車の外に消えたガイはしばらくすると重傷を負って這いあがってきて、ケ
イトに「逃げろ」と言う。ケイトは助けようとするが(いくらセクハラ男で
も瀕死の状態なら助けるよね)、ガイは死んでしまう。「すまなかった」と
言って。ケイトは逃げ惑う途中でホームレスのカップルや水道管工事の男性
などと出会うが、次々に殺されてしまう。犯人は地下に住み着いているらし
い奇形の殺人鬼・クレイグ(ショーン・ハリス)なのだが、この男の正体はわ
からない。
クレイグの住みかには手術室みたいな場所があり、彼は犠牲者を相手に医者
の真似事をしたりする。子供の頃のクレイグと医者が一緒にいる写真がある
のだが、クレイグはその医者の息子なのか?それとも医者の人体実験の対象
だったのか?結局わからないままなのはちょっと残念。残念なのはもう1つ
あって、ケイト役の人に全然魅力がないこと。どうしてこの人が主役?と思
った。スプラッター・ホラーのヒロインはもっと美人であって欲しい。イギ
リスではヒットしたというこの映画、私はなかなか好きである。




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港のマリー

2021-07-13 22:22:58 | 日記
1949年のフランス映画「港のマリー」。

情婦オジール(ブランシェット・ブリュノワ)の父親の葬儀に港町にやって
来たシャトラール(ジャン・ギャバン)は、オジールの妹マリー(ニコール・
クールセル)を見染める。マリーは理容師のマルセル(クロード・ロマン)と
付き合っているが、嫉妬深いマルセルに最近ではうんざりしていた。シャト
ラールは港に来る度にマリーに言い寄るがいつもはねつけられる。

マルセル・カルネ監督の恋愛映画。シャトラールとオジールは中年の恋人同
士で長年同棲しているが、倦怠期に入っていた。オジールの父親の葬儀のた
めに彼女の実家がある港町を訪れるが、シャトラールはオジールの妹でカフ
ェで働く18歳のマリーに恋をしてしまう。マリーには同年代のマルセルと
いうボーイフレンドがいるが、マルセルはしつこい上に嫉妬深く、マリーを
束縛しようとするので、マリーは嫌いになりかけていた。そしてマリーはこ
の港町で終わりたくないと漠然と思っており、それを見抜いたシャトラール
は度々マリーに言い寄るが、いつもかわされてしまうのだった。
つまり裕福なおじさまが若い娘を好きになり、さてどうなるかという物語で、
筋らしい筋はそんなにない。大体同棲中の恋人の妹を好きになるのって複雑
な関係のような気がするが、マリーの姉オジールは年の離れた妹をかわいが
っており、大して気にしていない。おまけにシャトラールとは倦怠期で、オ
ジールはオジールで何か新しいことを始めたいと思っている。マリーの恋人
であるマルセルがちょっと気持ちが悪い。若いせいもあるのだろうが、妙に
自信家で、マリーがカフェの男性客に絡まれているのを見ただけでもひどく
嫉妬する。もちろんマリーに付きまとうシャトラールにも。これはマリーで
なくても嫌になるだろう。
マリー役のニコール・クールセルが魅力的。少女から大人になりかけの女の
子の気持ちの移ろいを繊細に表現している。ジャン・ギャバンは私の中では
渋いおじさまというイメージだったが、この映画では下心見え見えのスケベ
な中年そのもの。娘のような年齢の女の子を好きになり、振り回されている
様子はユーモラス。ラストはちょっと意外と言えば意外な方向に行くが、あ、
結局そうなるんだという感じ。何ということはない映画だったが割とおもし
ろかった。マルセル・カルネ監督の映画は「嘆きのテレーズ」がすごく悲劇
的で好きだ。




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