猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

関ヶ原

2024-04-29 13:05:07 | 日記
2017年の日本映画「関ヶ原」。

幼くして豊臣秀吉(滝藤賢一)に才能を認められ、取り立てられた
石田三成(岡田准一)は、秀吉に忠誠を誓いながらも、正義ではな
く利害で天下を治める秀吉の姿勢に疑問も抱いていた。そんな三
成の下には、猛将として名高い島左近(平岳大)や伊賀の忍びの初
芽(有村架純)らが仕えるようになるが、秀吉の体調が思わしくな
い中、天下取りの野望を抱く徳川家康(役所広司)は、言葉巧みに
武将たちを自陣に引き込んでいった。そして1598年8月、秀吉
が逝去。1600年9月15日、毛利輝元(山崎清介)を総大将に立て
た三成の西軍と、家康率いる東軍が関ヶ原で天下分け目の決戦に
挑むこととなる。

司馬遼太郎の小説を原田眞人監督が映画化。とにかくスケールが
大きい映画。キャストも豪華で、岡田准一、役所広司、有村架純、
平岳大、東出昌大、滝藤賢一、松山ケンイチ、麿赤児とスター揃
い。149分という長尺で、観始めた時はそんなにおもしろくない
かな?という感じがしたが、何だかんだで最後まで観るととても
おもしろかった。大体関ヶ原の戦いをテーマにした映画がおもし
ろくないはずがない。
石田三成の人となりはよく知らないが、子供の頃から目端が利き、
賢かったようだ。ある時知り合った豊臣秀吉に気に入られ、重用
された。やがて三成はくノ一の初芽の命を救って配下とする。更
に島左近の後を追い、自分の家老になるよう懇願した。悪の参謀
と言われている三成だが、三成自身は不義を嫌い、秀吉が若かり
し頃に抱いていた正義の道を貫くことを目指していた。秀吉が逝
去した後、徳川家康は権力拡大のために諸大名と親しくなる。
役所広司が演じる家康は貫禄があり、どこかユーモラスで、そし
てとても憎らしい。ものすごくお腹が突き出た裸が出てきたが、
あれはCGなのか?役所広司のお腹はあんなに大きくないはず。
伊賀の忍びである初芽は、各藩に潜入している仲間たちと情報を
交換し、三成に注進を続けた。そんな初芽を三成は愛おしく思う。
三成には妻子がいたが、正室だけで側室はいなかったという。こ
ういうところにも三成の不義を嫌うという性格が表れていたので
はないだろうか。
戦いのシーンはとても迫力があり、見入ってしまう。どれだけの
数の俳優やエキストラが登場しているのだろう。やっぱり戦国時
代の合戦シーンはすごい。小早川秀秋(東出昌大)は三成と共に西
軍で戦おうと思っていたが、臣下たちは秀秋を羽交い絞めにして
東軍に寝返ってしまう。三成の最期は有名なところだが、秀秋が
三成に助けられなかったことを泣きながら詫びるシーンは胸に迫
るものがあった。三成の最期は本当にああいう感じだったのでは
ないだろうか、と思った。
必ずしも家康が悪で三成が善という訳ではなく、どちらにも自分
なりの正義はあったのだろうが、やっぱり三成に肩入れして観て
しまった。おもしろかった。


人みたいな寝方をしているノエル

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ゴールデン・ジョブ

2024-04-23 21:31:27 | 日記
2018年の香港映画「ゴールデン・ジョブ」。

後見人の親父(エリック・ツァン)の元で厳しくも温かく育てられた
シウォン(イーキン・チェン)、フォサン(ジョーダン・チャン)、ビ
ル(マイケル・ツェー)、タンディン(チン・ガーロウ)、マウス(ジ
ェリー・ラム)は、兄弟のような固い絆で結ばれていた。ある日彼
らは、貧しい子供たちを救おうと高額の新薬を強奪しようとするが、
襲撃した輸送車の積荷は金塊で、密かに外国人マフィアと手を組ん
でいたビルの画策だったことが判明する。

ジャッキー・チェンが製作総指揮に参加しているクライム・アクシ
ョン。仲間の裏切りによって離れ離れになった男たちが、復讐のた
めに立ち上がる。チャン(親父)の元で兄弟同然に育ったシウォン、
フォサン、ビル、タンディン、マウスは、彼らなりの正義の掟に従
って人生を歩んでいた。ビルの発案により、5人はアフリカで貧し
い子供たちを救済するため、高額の新薬強奪計画を実行する。5人
は輸送車を奪うことに成功するが、車に積まれていたのは新薬では
なく膨大な金塊だった。
4人を裏切ったビルが金塊を手に入れるために画策したのだ。金塊
はビルの手に渡り、口封じのために壮絶な銃撃戦に巻き込まれた
4人は散り散りになってしまう。5年後、再び顔を合わせた4人は、
ビルへの復讐のため壮絶な戦いに挑む。大体、いくら貧しい子供た
ちを救うためとはいえ、新薬の強奪を計画するなんてどうかと思う
のだが、彼らにとってはそれが正義なのだろう。香港映画にはこう
いう「これも彼らなりの正義なんだな」というシーンがよく登場す
る。
本作は香港スターたちがアフリカ、ハンガリー、日本(福岡と熊本)
を飛び回る。本当に現地で撮影したのかはわからないが。日本くら
いは近いので撮影に来たのかもしれない。カーアクションとガンア
クションがメインで、とにかく派手。香港のアクション・ノワール
が好きな人は楽しめると思う。ただいつも思うが人が死にすぎるの
がちょっと辛い。あの人も、この人も死ぬのか…と、観ていて悲し
い気持ちになってしまう。あまりに人が死ぬのでR15指定なのだろ
う。
とにかく「来世でも家族だ」と誓い合った4人のアクションが派手
でかっこいい。イーキン・チェンはいくつになってもハンサムだな
あ。この人ちっとも変わらない。大体香港スターは年を取っても変
わらない人が多いように思う。あれはどうしてだろう。香港スター
の体に組み込まれた特別なDNAだろうか。エリック・ツァンの安
定感もいつも通りだし、倉田保昭の着物姿でのアクションも良かっ
た。熊本では変なお祭りに香港スターたちが参加していておもしろ
い。彼らが畳の部屋で大きなテーブルに着き、飲食をするシーンを
観られただけでも嬉しい。華流映画好きにはお勧めの1本。



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女と男のいる舗道

2024-04-18 21:15:06 | 日記
1962年のフランス映画「女と男のいる舗道」。

パリのあるカフェ。ナナ(アンナ・カリーナ)は別れた夫・ポール(アン
ドレ・S・ラバルト)と近況の報告をし合い、別れる。ナナは女優を夢
見て夫と別れ、パリに出てきたが、夢も希望もないままレコード屋の店
員を続けている。ある日、ナナは舗道で男(ジル・ケアン)に誘われるま
まに抱かれ、その代償を得た。ナナは昔からの友人のイヴェット(ギレ
ーヌ・シュランベルジェ)と会う。イヴェットは売春の仲介をして生活
している。ナナはいつしか娼婦となり、ラウール(サディ・ルボット)と
いうヒモがついていた。やがてナナは見知らぬ男と関係を持つことに無
感覚になっていく。

ジャン=リュック・ゴダール監督が公私にわたるパートナー、アンナ・
カリーナを主演に撮った作品。女優を夢見て夫と別れたナナは、チャン
スもないままレコード屋の店員を続けている。ナナは元夫のポールとカ
フェで会い、疲れ切った人生を語り合った。ある日ナナは舗道で誘われ
た男に体を与え、その代償を得た。古い友人のイヴェットと会い、彼女
が売春の仲介をしていることを知る。家賃も払えなくなるほど困窮して
いたナナは、娼婦になることにする。
ナナが23歳の若さで離婚歴があるというのもすごいと思うが、お金に
困っているからとあっさり娼婦になるのも驚く。時代なのか、お国柄な
のか。12の章にわたって描かれているが、アンナ・カリーナのアップ
が多く、美しい。ロングヘアのイメージがあるが、ナナ役はショートボ
ブで、これもまた似合っている。章を追うごとにナナは無表情になって
いく。そして会話も何だか抽象的でよくわからない。ゴダール作品は3
本しか観ていないが、どれもそんな感じだ。意味があるようなないよう
な会話やシーンが続く。
この映画の感想を書くのは難しい。特に何とも思わないからだ。私はこ
ういう映画は好きなので、おもしろいと言えばおもしろいが、これとい
う感想はない。ナナが次第に無表情になっていく様子は印象的だ。売春
も慣れるとそうなるのだろう。客の男とちょっとしたトラブルになるこ
ともあるが、その時は悲しさを感じる。ナナはやがてある若い男を好き
になり、愛し始める。この時どうにかしていれば、と思う。すぐに娼婦
をやめることはできないのだろうが、不幸にはならなかったのではない
か、と思う。ラストシーンは「まあ娼婦の末路ってこんなものよね」と
思わせられる。ちなみにこの映画がきっかけでゴダールとアンナ・カリ
ーナは破局したそうだ。


良かったらこちらもどうぞ。ジャン=リュック・ゴダール監督作品です。
勝手にしやがれ
女は女である
気狂いピエロ


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THE FIRST SLAM DUNK

2024-04-12 21:38:18 | 日記
2022年の日本映画「THE FIRST SLAM DUNK」。

沖縄で生まれ育った宮城リョータ(声・仲村宗悟)には3つ上の兄・
ソータ(梶原岳人)がいた。幼い頃から地元で有名な選手だった兄の
背中を追うようにリョータもバスケにのめり込む。しかしソータは
海難事故で命を落とし、リョータ一家は神奈川に引っ越す。高校2
年生になったリョータは、湘北高校バスケ部で、桜木花道(木村昴)、
流川楓(神尾晋一郎)、赤木剛憲(三宅健太)、三井寿(笠間淳)たちと
インターハイに出場。今まさに王者、山王工業高校に挑もうとして
いた。

1990年から96年まで「週刊少年ジャンプ」で連載され、現在まで
絶大な人気を誇る名作バスケットボール漫画「SLAM DUNK」を
新たにアニメーション映画化。原作者の井上雄彦氏が監督・脚本を
手がけ、高校バスケ部を舞台に選手たちの成長を描き出す。2022
年12月3日の公開から23年8月31日の終映まで約9ヵ月のロングラ
ン上映となり、興行収入は国内歴代13位となる157億円を突破す
る大ヒット作となった。
私はバスケットボールのことはまるでわからないのだが、とてもお
もしろかった。一応昔コミックスも全巻読み、テレビアニメも全部
観ている。主人公は桜木花道だが、映画では宮城リョータとなった。
リョータは沖縄で兄のソータと共にバスケットに打ち込んでいた。
いつも公園で練習をしていたが、ソータは友人たちに誘われ船で釣
りに行く。もっと練習をしていたかったリョータはソータに「バカ
野郎!死んじまえ!」と泣き叫んだ。その後ソータは海難事故で死
んでしまう。母親、妹と共にショックを受けるリョータだが、バス
ケの練習は黙々と続けていた。
家族は神奈川へと引っ越し、リョータは湘北高校のバスケ部に入部
する。そして「絶対王者」と呼ばれている山王工業高校とインター
ハイでぶつかろうとしていた。バスケ用語など全くわからないのだ
が、おもしろく観られるのが不思議。選手たちの動き、試合の進み
具合と、滑らかで且つ緊迫感にあふれていて、日本のアニメーショ
ン技術はすごいと改めて思った。これは日本のアニメにしかできな
いのではないだろうか。湘北対山王の試合もだが、リョータとソー
タの心の絆もメインに描かれていて、それがいい。所々沖縄時代の
回想シーンが挟まれる。男子の兄弟ってこんな感じなのだろうな、
と思った。
花道は試合中に背中を痛めて顧問の安西先生(宝亀克寿)に交代させ
られるが、「あんたの栄光はいつだったんだよ。俺は今なんだよ!
」と言って試合に出る。花道が安西先生のほっぺたをむにーっと引
っ張ったり、顎をたぷたぷたぷとさせるお決まりのシーンもいい。
顧問の先生に向かって本当に無礼だなあ。そして安西先生の「諦め
たらそこで試合終了ですよ」というセリフも久しぶりに聞けて良か
った。これぞ「SLAM DUNK」の世界である。
バスケがわからないのに(わからないと何度も書いているが本当に
わからない)このおもしろさは何なのだろう。試合終盤はハラハラ
する。実際に試合を観ていたら「行けーっ!」と叫びたくなってし
まうのだろうな、と思った。ラストシーンも良かった。9ヵ月に及
ぶロングランも納得のおもしろさだった。ただ欲を言えば、花道の
声はテレビアニメと同じ草尾毅にして欲しかったなあ、と思った。

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ラブレス

2024-04-07 21:42:12 | 日記
2017年のロシア・フランス・ドイツ・ベルギー合作映画「ラブ
レス」。

一流企業で働くボリス(アレクセイ・ロズィン)と美容サロンを経
営するジェーニャ(マルヤーナ・スピヴァク)の夫婦は離婚協議中
だった。夫婦には既にそれぞれ別のパートナーがおり、新たな生
活のため一刻も早く縁を切りたいと考えていた。2人には12歳の
息子・アレクセイ(マトヴェイ・ノヴィコフ)がいたが、どちらも
新生活に息子を必要としておらず、ある日激しい罵り合いの中で
息子を押しつけ合ってしまう。その翌朝、学校に行ったはずの息
子がそのまま行方不明になってしまい、彼らは必死でその行方を
捜す。

ロシアの鬼才、アンドレイ・ズビャギンツェフによる人間ドラマ。
一流企業で働くボリスと、美容サロンを経営するジェーニャの夫
婦は離婚協議中。12歳の息子アレクセイと3人で住んでいたマン
ションも、買い手が決まりそうになっていた。ボリスとジェーニ
ャは早く新生活を送りたいと考えており、そのことに気がついて
いるアレクセイの様子は元気がなかった。息子に関心のないジェ
ーニャはしょっちゅうスマホで恋人とやり取りをしており、息子
の世話にはイラつきを見せていた。
一方ボリスの恋人は既に妊娠していたが、彼の会社の経営者が厳
格なキリスト教徒のため、そのことを会社では隠していた。そん
なボリスとジェーニャはどちらがアレクセイを引き取るのかで揉
めていた。ジェーニャは息子を寄宿舎学校に入れようと考えてい
たが、ボリスは「子供は母親が引き取るものだ」とジェーニャを
非難し、、2人はいつも激しい口論をしていた。
離婚しようとしている夫婦が子供の親権で揉めるというのはよく
あることだと思うが、この夫婦は親権を押しつけ合っているのだ。
2人とも自分のことしか考えていないのが呆れる。激しい罵り合
いを聞いていたアレクセイのくしゃくしゃになって泣いている顔
は忘れられない。その後、学校からアレクセイが2日も登校して
いないという連絡をジェーニャは受ける。慌ててボリスに電話す
るが、彼は気のない返事しかしない。刑事がやってきて、最後に
アレクセイに会ったのはいつかとジェーニャに聞くが、彼女の記
憶はあいまいだった。
子供が2日も登校していないのに気づかない親なんているのだろ
うか。ボリスもジェーニャも本当にアレクセイに関心がないのが
よくわかる。刑事もそのうち帰ってくるかもしれないからと、あ
まり動こうとはしない。ロシアの警察はそうなのだろうか。日本
だと子供が行方不明になったら大きく報道され、捜査が行われる
と思うのだが。そしてアレクセイの捜索をメインで行うのは市民
ボランティアの捜索救助団体なのだ。ジェーニャとボリスはボラ
ンティア救助団体と共にアレクセイを捜すが、一向に見つからな
い。
ジェーニャは自分の母親の家を訪ね、アレクセイが来ていないか
聞くが、どうもジェーニャと母親は不仲なようだ。ジェーニャは
母親から愛情を受けて育っていないのが見て取れる。ジェーニャ
は妊娠したためボリスと結婚したのだが、母親は「あの時冷静に
なれと言ったのに。中絶して別れろと言ったのに」と罵り、驚い
た。帰り際、ジェーニャはボリスに「中絶すれば良かった」「あ
なたを愛しているから結婚したんじゃなくて、あの母親から逃げ
出したかった」と激昂する。
アレクセイは誰からも望まれずに生まれてきた子だったのだろう
か。アレクセイがかわいそうでたまらない。ある日警察から身元
不明の少年の遺体が発見されたから確認に来るようにと夫婦に連
絡が入る。しかしそれはアレクセイではなかった。ジェーニャは
「私はあの子を引き取るつもりだったのよ」と号泣し、ボリスを
叩く。ボリスはへたり込んで涙を流す。夫婦が親らしさ、人間ら
しさを見せた唯一のシーンだったと思う。子供が行方不明のまま
なのと、死んでいることがはっきりするのと、どちらがマシなの
だろう。寒々しい雪のロシアを舞台にした胸をえぐられるような
重たい映画だった。


良かったらこちらもどうぞ。アンドレイ・ズビャギンツェフ監督
作品です。
父、帰る
裁かれるは善人のみ


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