猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

真夜中の虹

2015-05-29 05:27:40 | 日記
1988年のフィンランド映画「真夜中の虹」。
フィンランドの北の果て、ラップランド。炭鉱の閉鎖で失業したカスリネン(トゥロ・
パヤラ)に、白いキャデラックの鍵を託し、父は自殺する。カスリネンの南を目指すロング・
ドライブが始まった。ヘルシンキに向かう途中、2人組の強盗に有り金全部奪われ、
仕方なく日雇い仕事に出たその帰り、駐車違反の切符切りのイルメリ(スサンナ・
ハーヴィスト)と知り合う。家のローン返済のため複数の仕事を抱えて働きづめの彼女と、
その息子リキ(エートゥ・ヒルモカ)に、カスリネンは不思議な愛情を抱く。

続けてアキ・カウリスマキ作品。彼の主義・思想とも言える、社会の底辺にいる人たちを
描いた映画である。主人公のカスリネンはついていない。働いていた鉱山が閉鎖され、
旅の途中で強盗に金を奪われ、キャデラックも手放すことになり、その後見つけた強盗
の1人に飛びかかり、逆に自分が捕まって刑務所送りになってしまう。
それでも恋人関係になったイルメリが待っていてくれるのが救いだった。刑務所で同室
になったミッコネンと親しくなり、イルメリが差し入れの中に潜ませていたヤスリを使い、
2人は刑務所を脱走する。そして偽造パスポートを作る資金のために、強盗までする。
皆でメキシコへ行くためだ。
カスリネンは不運だが、自分の道を切り開くために積極的に動く。強盗は褒められた
行為ではないが、カスリネンやミッコネンにはその方法しかなかった。メキシコ行きの
船に乗るために。
いつも通り、セリフが少なく静かな映画だが、心に残るものがある。失業して住む所も
失くしたカスリネンは、教会が経営する宿泊所(大部屋にベッドがたくさん並べてある)
に寝泊まりするのだが、やがて宿泊代が払えなくなって追い出されてしまう。教会が
経営しているのなら、もう少し親切にしてくれてもいいのに、と思った。そういえば「過去
のない男」にも教会関係の施設が出てきたが、あれは食事を配給しているだけだった
ろうか?カウリスマキの映画を観るとよく思うが、フィンランドはあんなに不景気で失業
者が多いのだろうか。



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ハムレット・ゴーズ・ビジネス

2015-05-25 03:13:39 | 日記
1987年のフィンランド映画「ハムレット・ゴーズ・ビジネス」。
ある企業の社長が何者かに殺害された。その息子ハムレット(ピルッカ・ペッカ・ぺテリ
ウス)は父の残した会社を継ごうとするが、彼の伯父が会社の乗っ取りを企んでいた。
ハムレットは会社の権利を守るため、ある商品の世界的独占権を武器に伯父と対立する。

「ハムレット」の舞台を現代に置き換えた、アキ・カウリスマキのブラック・コメディ映画
である。私はハムレットを読んでいないので、どこまで原作をベースにしているのか
わからないが、全編モノクロのこの映画、なかなかおもしろかった。
ハムレットの父は殺された後、幽霊となって庭に出てくるのだが、ハムレットが「消え
てくれ。寒いし、もうすぐ夕食だし」と父に言うのが笑えた。野心家のハムレットはどん
な手を使ってでも会社を自分のものにしようとするが、伯父とその一派も負けてはい
ない。やがて殺し合いに発展する。(原作もそうなのかな?)
それにしても、お皿の上のチキンをむしってつまみ食いするのは、イカンでしょ。
カウリスマキ作品の常連、カティ・オウティネンやエリナ・サロ(若い!)も出演してい
るし、皆安定の無表情で、楽しめた。フィンランドの人ってよくタバコを吸うんだな~。



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キス・オブ・ザ・ドラゴン

2015-05-22 03:46:07 | 日記
2001年のアメリカ・フランス合作映画「キス・オブ・ザ・ドラゴン」。
麻薬捜査のために中国からパリにやってきた捜査官リュウ(ジェット・リー)は、地元
警察のリチャードと共にフランス―中国間で麻薬密売を行うギャングの逮捕に向かう
が、そこでリチャードの目論見により殺人犯に仕立て上げられてしまう。リチャードは
密かに麻薬の市場独占を狙う悪徳警官だった。リュウは、かくまってもらった親類の
エビチップス売りの店先で、娼婦ジェシカ(ブリジット・フォンダ)と出会うが、彼女も
またリチャードにはめられ、幼い娘を人質に取られて客引きをさせられていた。ジェ
シカは娘を取り戻すため、リュウに協力することを約束する。

ストーリーもアクションもテンポが良く、とてもおもしろかった。とにかくジェット・リーが
かっこいい!ジェット・リーの映画の中でも相当アクションが凄いのではないだろうか。
見どころ満載である。
殺人犯にされてしまったリュウはパリの街を逃げ回るが、すぐに追手が迫ってきて、
本当にハラハラする。ジャッキー映画とは違い、ジェット・リーの映画はコミカルでは
ないので、ジェット・リーはあまり表情を変えない。そしてその静かな表情で演じる
アクションは、かっこいいとしか言いようがない。道場のような所で数10人を相手に
戦うシーンは、凄まじく迫力があり、もうあの武術は芸術だと思わせられる。箸で敵
を殺すシーンも、東洋人らしくて気が利いている。
リュック・ベッソンが脚本と製作を担当しているので、ベッソンらしさとジェット・リーの
キャラクターが融合していて、とても見応えのある映画になっていたと思う。



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フューリー

2015-05-19 05:06:31 | 日記
2014年のアメリカ映画「フューリー」。
1945年4月、ドイツへ侵攻する連合軍の米兵ドン(ブラッド・ピット)は、自ら「フューリー」と
命名した戦車に乗り、戦いを続けていた。ドンと3人の仲間に新兵のノーマンも加わり、
5人となった部隊は絆を深めていくが、進軍中にドイツ軍の攻撃を受け、他部隊がほぼ
全滅。なんとか生き残ったドンの部隊にも、過酷なミッションが下される。

とにかくリアルで迫力のある戦争映画だった。戦車がメインの映画はあまり観たことが
ないと思うが、とてもおもしろかった。あまりに次々と人が死ぬので、観ていてきつい面も
あったが、それは新兵のノーマンの目を通しても描かれている。
ノーマンは若く、職業はタイピストで、人を撃ったこともない。死んでいく人たちに心を痛
める。そんなノーマンに、ドンは戦場の厳しさを教え込もうとし、人を撃たせたりする。ドン
に反発しながらも、次第にノーマンはたくましくなっていく。
この辺りはノーマンがかわいそうに思える。彼はドンのように戦闘慣れしていない、普通
の人なのだ。そしてその普通の人が人を撃ち殺すようになるのが、戦争なのである。
後半、他部隊が全滅し、300人くらいのドイツ兵と、ドンたち5人が戦うことになるのだが、
そのシーンが凄かった。1台の戦車で、300人を相手にするのである。時間も長く、とても
迫力があった。戦争は恐ろしい。戦争映画はいくつも観たが、改めてそう思った。
ブラッド・ピットのかっこよさも印象的だった。



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恐怖分子

2015-05-16 04:47:42 | 日記
1986年の台湾映画「恐怖分子」を観にいった。
銃声が響き渡る朝。警察の手入れから逃げ出した不良少女シューアン(ワン・アン)。
その姿を偶然カメラでとらえたシャオチェン(マー・シャオチュン)。上司の突然の死に
出世のチャンスを見出す医師のリーチュン(リー・リーチュン)と、スランプに苦しむ
小説家の妻イーフェン(コラ・ミャオ)。彼女の元恋人シェン(チン・スーチェ)。リー
チュンの友人クー警部(クー・パオミン)。シューアンがかけたいたずら電話をきっかけに、
何のつながりもなかった人々の間に奇妙な連鎖反応が生じ始める。

日本では1996年に一部の映画館で上映されたこの映画、私はレンタルビデオで観たの
だが、今回デジタルリマスター版で上映ということで、とても楽しみにして観にいった。
やはり映画館で観るのは違うものだ。
舞台は暑い台北の夏。警察の手入れから逃げ出し、足を骨折しながらも逃げる不良
少女を、偶然撮影したカメラマン。仕事にしか興味のない医師と、スランプに苦しむ小
説家のその妻。主だった登場人物は6人ほどである。不良少女がかけたいたずら電話
が元で、何の接点もなかったこれらの人々に、奇妙な関係が生じてくる。
電話によって、夫の浮気を疑う小説家の妻は、元恋人とよりが戻ってしまい、夫の元を
離れようとする。引き止めようとする夫は、仕事の悩みもあり、精神的に追い詰められ
ていく。
群像劇というのだろうか、1人1人の事情が絡み合って、糸を張っていく様子はスリリング
である。何故そうなっていったのか。いたずら電話がなければ、何も起きなかったのか。
都会に生きる人々の孤独や不安、犯罪に走る様子が重苦しく描かれていて、ユニーク
でおもしろい物語だ。
この映画は長い間DVD化されていなかったが、やっと発売されたようで、喜ばしい
ことだ。



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