猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

コレクター

2017-01-29 23:29:35 | 日記
1965年のイギリス・アメリカ合作映画「コレクター」。
蝶の収集を生き甲斐とする銀行員フレディ(テレンス・スタンプ)。ある日、フットボールの
賭けで大金を手に入れた彼は、もっと美しいものを収集しようと企て、人里離れた一軒
家を購入する。彼の目的は、若く美しい女性ミランダ(サマンサ・エッガー)だった。麻酔を
かがされてその家に閉じ込められたミランダ。フレディは彼女に何をする訳でもなく、紳
士的に接して、ひたすらいつかミランダが自分のことを理解してくれるようになるという
望みを叶えようと努力するが、ミランダは絶えず脱出の機会を窺っていた。

古い映画だが、今観てもやっぱりおもしろい。「人(主に女性)を監禁する」という映画の
古典的作品ではないだろうか。孤独な銀行員フレディは蝶の収集を趣味としていたが、
美しい人間の女性を監禁するために家を買う。そして街で目をつけたミランダを拉致す
る。こういう男のわからないところは、「優しく接してやっていれば、いつか彼女は自分を
理解するようになってくれるだろう」と思っている思考回路だ。どうして拉致された女が
自分を理解すると思うのだろう。
最初はフレディにことごとく抵抗し反発していたミランダだが、そのうち、フレディの機嫌
をとっていた方が逃げる機会が得られるのではないかと思い始める。そしてフレディの
言うことに同調したり褒めたりするが、フレディはミランダの嘘を見抜き、怒る。近所の
人が家を訪ねてきた時、ミランダは自分の存在を知らせようとするが、失敗してしまう。
その時のミランダの絶望感は、こちらも感情移入してしまう程深い。もうミランダは逃げ
ることができないのではないか?と思うと、怖くなる。
今時のサスペンス映画に比べると地味だが、不気味さは秀逸だ。おとなしそうな感じの
テレンス・スタンプに狂気を感じ、ぞっとする。ラストも絶望的である。このストーリーは
「ボクシング・ヘレナ」を思い出す。あれも拉致してきて監禁している女に愛を捧げ、自
分のことも愛してもらおうと努力する男の話だった。あっちは途中まではおもしろかっ
たのだが、ラストがちょっと…。観て損をした。「コレクター」は間違いなく異常な男の心
理を描いた傑作だと思う。




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おしまいの日。

2017-01-23 07:12:47 | 日記
2000年の日本映画「おしまいの日。」。
大学時代に知り合い結婚した三津子(裕木奈江)と忠春(高橋和也)。保険会社に勤める
忠春はノルマに追われ、深夜に帰宅して朝食もとらずに出かける多忙な日々を送って
いた。三津子は夫の体を心配し、毎日夕食を作り、ひたすら待ち続けていた。次第に
三津子の心配は過剰になり、忠春はそんな三津子を愛しながらも重荷に感じ始める。
三津子は心配のあまり精神を病んでいく。

新井素子の小説の映画化である。私は原作を読んでいないのでおもしろかったのだが、
原作を読んだ人は重要な描写が省略されていて物足りなかったようだ。とにかく忙しく、
あまり家にいない夫。食事もまともにとらず、睡眠時間も充分ではない。そんな夫の体
を非常に心配する妻。日本ではありがちな光景かもしれない。だが妻の三津子は夫の
忠春を愛しすぎて、心配しすぎて、精神が不安定になっていく。
三津子は偶然高校時代の友人・久美と再会し、三津子がノイローゼ状態にあることを
気づいた久美は、何かと三津子のことを気にかける。実は久美は夫とうまくいっておら
ず、離婚話も出ていた。三津子夫婦と並行して久美夫婦の関係も描かれる。三津子が
久美みたいに気が強くて、何でも言える性格だったら、恐らく精神を病むことはなかった
だろう。おとなしくて心配性で、日記に書くのも夫のことばかり。これでは病んでもおかし
くはない。
ひたむきに夫を愛し、心配し、心が崩れていく痛々しい妻の様子を演じる裕木奈江の
演技力はさすが。私は昔から裕木奈江のファンである。彼女はやっぱり演技がうまい。
ラストも本当に痛々しい。三津子と忠春の結婚は何だったのだろう。もし忠春があんな
に多忙な人ではなかったら?もし三津子があんなに心配性ではなかったら?2人は幸
せになれたのだろうか。ほんのちょっとしたズレで人間関係は変わっていくのだと考え
させられた。辛い映画だった。




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ゴーン・ベイビー・ゴーン

2017-01-20 02:22:18 | 日記
2007年のアメリカ映画「ゴーン・ベイビー・ゴーン」。
パトリック(ケイシー・アフレック)とアンジー(ミシェル・モナハン)は、ボストンで私立探偵
として働くカップル。ある日4歳の少女アマンダが誘拐される事件が発生し、ボストンの
街は騒然となる。そして、事件発生から3日目、警察の捜査に進展が見られない中、ア
マンダの叔母夫婦が、街の裏側に精通するパトリックたちの元に捜索依頼に現れる。
人捜しと言っても単なる失踪ではなく、警察が捜査中の誘拐事件であり、自分たちの
出る幕ではないと、あまり乗り気ではないパトリックとアンジー。更に、アマンダの母親
へリーン(エイミー・ライアン)にかなり問題があることが明らかになり、ますます気の重い
2人だったが、それでも叔母の必死な願いを聞き入れ、依頼を引き受ける。

ベン・アフレックの初監督作品である。初監督とは思えないくらいおもしろかった。ケイ
シー・アフレックが兄のお陰で主演をさせてもらっている感じがちょっとアレだが。4歳の
女の子の誘拐事件によって、複雑に絡み合った人間関係が明らかになっていく。序盤
はちょっと退屈な気もするが、どんどんおもしろくなっていく。舞台がボストンなのもいい
(もちろん私はボストンになど行ったことはなく、単なるイメージだが)。
いろんなことを考えさせられる物語である。最終的には、誰も幸福にはならない。後味
はとても悪い。重たくて辛くて、それでも観る価値のある作品だ。この映画、日本未公
開だったらしいのだが、何故なのだろう。こんなにおもしろくて、モーガン・フリーマンや
エド・ハリスといったスターも出演しているのに。これ映画館で観たかったなあ。
「正義とは何か。そして、正義は正しいのか」ということを深く考えさせられた。ラストで、
パトリックの考えに同意できないアンジーは彼の元を去っていくが、私もアンジー側の
考え方だ。たとえそれが「正義」ではなくても。




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Mommy マミー

2017-01-17 02:20:29 | 日記
2014年のカナダ映画「Mommy マミー」。
未亡人の女性ダイアン(アンヌ・ドルヴァル)。ADHDを持つ彼女の息子スティーヴ
(アントワーヌ・オリヴィエ・パイロン)は、入居している施設で放火騒ぎを起こし、強
制的に退所させられてしまう。ダイアンはスティーヴを引き取り、2人での生活を始
めるが、感情の起伏が激しいスティーヴの衝動的な行動に頭を悩ませる。そんな
ある日、ダイアンとスティーヴは向かいの家に住むカイラ(スザンヌ・クレマン)と出
会う。カイラは精神的ストレスで吃音に苦しみ休職中の教師だが、スティーヴの
世話に通うようになり、3人で互いに支え合うようになる。

若き天才グザヴィエ・ドランの映画。メインの登場人物は3人。その3人が心を通わ
せる濃密な時間を繊細に描いている。感動的な物語なのだが、この映画を好きか
どうかと聞かれたら、好きではないと答える。とにかく始終イライラするのだ。ADHD
で施設に入居している息子が放火騒ぎを起こしたので、母親が施設から退所を要
求されているシーンから始まるが、この母親の教育方針なのか、絶対に子供を怒
らないのだ。施設の人は、警察に通報することもできるんですよ、と言うが、母親は
「それでは息子が刑務所に入れられてしまう。絶対に嫌」と言うのだ。ここでまず
イラッとする。放火は重い罪だ。スティーヴはあの時刑務所に入れられるべきだ
ったと思う。
スティーヴは常にテンションが高いが、MAXになってしまった時は何をしでかすか
わからないので、母親は目が離せない。それから向かいの家のカイラはどうして
ダイアンとスティーヴ親子にあんなに関心を持ったのだろう。観ていてしっくりこ
ない。カイラにも夫と娘がいるのに、やがてダイアンたちを中心にカイラの生活は
回っていくようになる。カイラの吃音はひどく、言葉が全く出てこない時もある。何
が原因なのかわからないが(恐らく仕事のストレスだと思うが)、カイラがそこまで
になるのも、1日の大半をダイアンたちと過ごすのも、イラッとする。
ダイアンは46歳にもなって超ミニスカをはいている下品で教養もない女だ。全然
美人でもない。それなのに近所の弁護士がダイアンをきれいだとか魅力的だとか
言うのもしっくりこない。ある訴訟のことで弁護士はダイアン親子の力になってや
ろうとするが、3人で外食に出かけた時スティーヴのあまりの態度の悪さに、弁護
士はスティーヴの頬をパチンとやるのだが、ダイアンが「何をするの」と言って弁
護士を叩いてしまうのである。そのため弁護士は怒って帰ってしまう。当たり前だ。
ダイアンは自分も含めてスティーヴに手を上げることを絶対に許さないのだ。体罰
が良いとは思わないが、スティーヴのような言ってもわからない子には、ある程度
は仕方ないのではないだろうか。冒頭で施設の人が「発達障害の子供とその親は
自分を過信してはいけない」と言っていたのを、このシーンで思い出した。
他にも同じようなシーンがあり、スティーヴを押さえつけようとしている人たちに対
して「乱暴しないで!」と言っていたが、それは無理な話だ。とにかくダイアンは
スティーヴを溺愛しすぎ。ダイアンのしつけ方がスティーヴの障害を重くさせてい
る気がした。
ADHDにも重度軽度があるだろうが、スティーヴは重度なのだろう。3人の演技は
とても素晴らしかった。だからこそリアリティがあり、私はイライラしたのだと思う。
色々と考えさせる映画で、スティーヴは障害があるので仕方ないのだが、ダイア
ンとカイラには本当にイラッとした。スティーヴがスケボーに乗るシーンは美しく、
印象的だった。



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接続 ザ・コンタクト

2017-01-14 18:31:27 | 日記
1997年の韓国映画「接続 ザ・コンタクト」。
ラジオで音楽番組を担当するディレクターのドンヒョン(ハン・ソッキュ)とCATVショッピング
ガイドのスヒョン(チョン・ドヨン)。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの音楽をきっかけに、
お互い会ったこともない2人はインターネット上で匿名の会話を交わすようになる。

韓国で大ヒットした大人の恋愛ドラマ。接続シンドロームという言葉も生まれたそうだ。シ
ンドロームとまではいかないものの、私もこの映画にはとても感動し、余韻にずっと浸った
ものだ。主役は韓国の大スター、ハン・ソッキュ。相手役のチョン・ドヨンはほぼ無名だった
が、この映画で一気に人気が出た。この時のチョン・ドヨンかわいかったなあ。1997年とい
うと今みたいにインターネットが普及していない頃で、チャットというものがとても斬新に感
じられた。この映画をきっかけに韓国でチャットがはやったであろうことは想像に難くない。
勘違いから始まったドンヒョンとスヒョンのインターネット上のやり取り。それがとても切な
いのだ。
ドンヒョンは何年も前の失恋を未だに引きずっている。スヒョンは親友の彼のことを密かに
想っている。この親友が意地悪なんだよね~。美人だけど。勘違いをしているドンヒョンに
対して本当のことが言えず、嘘をつき続けるスヒョン。でもドンヒョンの表情を見ていると、
スヒョンを責める気にはならないのが不思議。「シュリ」でとてもかっこよかったハン・ソッ
キュが抑えた演技をしていて、好印象である。ラストシーンもとても良かったし、音楽も良
かった。音楽というのはラストの音楽のことで、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのこと
ではない。私はヴェルヴェット・アンダーグラウンドを知らなかった。
どうしてこの映画、DVDが出ないのだろう。こんなにいい作品なのに。韓国版でもいいか
ら欲しい!




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