ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

リミッツ・オブ・コントロール

2009-09-19 15:39:45 | ら行
この週末、観にいこうとしている人には
すみません。

ジム・ジャームッシュ監督最新作

「リミッツ・オブ・コントロール」40点★


ついにここまで突き抜けたか、という
境地にたどり着かれちゃった感じ。


謎めいていて、観念的で

とにかく退屈なのだ。



主人公の殺し屋(イザック・ド・バンコレ)が
仲間たちにヒントをもらいながら
任務遂行のために
スペイン中を移動するという設定なんだけど

まあ話はあってないようなもの?


深読みし放題のセリフや
繰り返される同じ動作やシーン
などなど

目指すものはわからなくもないけれど

どこか最近のデヴィッド・リンチにも似ていて
逆に個性が感じられない。


青春時代、ジャームッシュ作品に
多大な影響と感銘を受けた身としては
ちょっと残念すぎる結果に…


構図と音楽のセンスはさすがですけどね。


ちょうど
ジャームッシュが影響を受けたという
ハンガリーの鬼才・タル・ベーラ監督の
「倫敦(ロンドン)から来た男」が
11月からシアターイメージフォーラムで公開されますが

こちらもまた138分をスローテンポで進む
ものすごい作品ですが

こちらには、刃のごとき鋭さと
オリジナリティ、美学があります。

★9/19からシネマライズ、新宿バルト9ほか全国で公開
コメント (4)
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ファイティング・シェフ~美食オリンピックへの道~

2009-09-17 09:11:26 | は行
料理の鉄人、なんてありましたが

こちらは“世界最高”を目指す
シェフのドキュメンタリー。

「ファイティング・シェフ」80点★★★


鑑賞後感が実に晴れやかで
すがすがしい良品です。


あの有名なポール・ボキューズ氏の
呼びかけで始まった
世界的フランス料理コンクールに挑む
スペイン代表のシェフを追いかけたドキュメント。


コンクール勝ち抜きのドキュメンタリーは
テレビでもときどき見るけれど
この作品はまず
対象をひとりに絞ったのが正解。


主人公であるスペイン人シェフの
人なつっこそうなキャラの魅力もあり

休み返上で試合に備える彼が
プレッシャーと疲労でブチ切れるシーンなんて
誰もが共感できると思う。


そして、それを乗り越えた後の
達成感がこちらにも伝わるのだ。


単なるスポ根と違って興味深いのは
料理というテーマから
スペインというお国柄が見えてくるところ。


すなわち、とても創造的で
実質、美味しそうなんだけど
ちょっとおおざっぱ?


形が揃ってなかったり
見せ方に工夫がなかったり


さて、そんな彼が繊細なフランス人やら
技巧派の中国人ライバルたちと
どう戦うのか?!

見てのお楽しみ!

ちなみに日本人シェフも参加しています。



ラスト、映画の作り手の人情がにじみ出る
エピソードも微笑ましかったなぁ。


★10/10からTOHOシネマズ・シャンテで公開

※本日これから
2003年に同コンクールに出場した
銀座「みつ和」の川端清生さんに取材してきます。

実際の現場はどうなのか?楽しみ~

その模様は10/5発売(予定)の
「週刊朝日」で!
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ヴィヨンの妻

2009-09-15 22:31:05 | は行
生誕100年ということで
今年~来年にかけて
太宰治映画が数本公開されますが

頭ひとつリードか?というのが
「ヴィヨンの妻」61点★★


浮気に借金、果ては自殺未遂を繰り返す
まさに「生まれて、すみません」な作家(浅野忠信)を

献身的というか、本能的な母性で包み込む
妻(松たか子)の物語。


文学作品の映画化ってなぜか
独りよがりでアート性の強いタイプが多いけど
(イメージでいうと、椎名林檎的世界?)

本作は
「雪に願うこと」「サイドカーに犬」の
根岸吉太郎監督だけに
さすが信頼できるクオリティ。

いくつかの太宰作品から
エッセンスを集めた作りで

暗~くなることもなく
きちんと“見せる映画”にまとまっています。


特に、2歳の息子に夫のことを平然と
「こういう人を、ヒモっていうのよ~」と言い放つ

松たか子の天性の品と
おとぼけが光ってました。


この妻のキャラクター造形はなかなか深くて
「水が低きに流れるが如く素直」ゆえに

無自覚に男を惹きつける、
女の底力や潔さも併せ持つという
難しいニュアンスをよく演じたなあと感じた。

浅野忠信もいままで見た映画のなかで
一番サマになっていたかな。

広末涼子の濡れ場(一応…)もあり


ただ、きちんと作られてはいるけれど
それ以上の衝撃はなかった…ですね。


第33回モントリオール世界映画祭コンペティション部門で
最優秀監督賞受賞。


★10/10から全国で公開
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ワイルド・スピードMAX

2009-09-13 02:24:12 | わ行
渋い系からイケイケ系まで
意外となんでも観るぽつお番長。(いや、一応仕事ですから


予想を上回って楽しめたのが
「ワイルド・スピードMAX」73点★★★


クルマ好きは放っておいても見るだろうけど
そのほかの人でも
「パーッとしてえなあ!」ってときに
断然おすすめ。


シリーズ4作目ながら
ここから見ても全然OKだし。
(そういや3作目に妻夫木聡が出たって話題になった。
実際はほんのちょびっとしか出てなかった)


で、話は
トレーラー強盗のボスである敏腕ドライバー(ヴィン・ディーゼル)が

ある許されざる出来事の復讐のために
FBI捜査官(ポール・ウォーカー)と
共同戦線を張って悪を追い詰める、というもの。


悪党だけど正義感あふれる主人公と
やんちゃな捜査官という
コンビがうまいし


レースシーンやアクションばかりでなく
話がしっかりしているのがいい。


クルマにつきものの
プレイボーイ系セクシー美女ももれなくついてきます。


最後に「くれぐれもマネしないでください」的な
注意書きが出て
「んなアホな」と思ったけど
実際に全米で事故が多発したそうで…
くれぐれも!


★10/9から全国で公開
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パイレーツ・ロック

2009-09-12 00:00:24 | は行
テレビで
「ワールドトレードセンター」やってましたね。
あれ、開始20分くらいから後は
ずーっと瓦礫の中だよね…しんどい。


さて、今日の映画は
「パイレーツ・ロック」68点★★☆


「ラブ・アクチュアリー」の監督らしい
ノリノリのハッピー・ムービー。


「ラブ~」のクネクネ踊りで笑わせたビル・ナイや
フィリップ・シーモア・ホフマンなど
濃いーいキャラたちが魅力です。


舞台は1966年のイギリス。
風紀上よろしくないとポピュラー音楽の放送が
1日45分と制限されていた時代に

船から24時間ロックを流し続けた
反社会的おやじDJたちの物語。


海の上の海賊ラジオ局という
シチュエーションの妙と
(実話というのが、またイカしてる)

ちょいワルーなおやじたちがハジけまくる様は
誰が見ても楽しめると思う。


特に音楽ファンには
たまらないんでしょうな。


ただこれもやっぱり長すぎて
中だるみ。

135分もあると
「楽しいだろ♪」の押し売りが
ちょい過ぎる感じですね。惜しい。


★10/24からTOHOシネマズ六本木ヒルズ・みゆき座ほか全国で公開
コメント (2)
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