白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

西健伸-福岡航太朗(テイケイ杯俊英戦)

2022年12月21日 23時59分59秒 | 幽玄の間

皆様こんばんは。
またずいぶんと間が空いてしまいました
先日、こども棋聖戦低学年の部で永代斗真くんが優勝しましたね!
小学2年生での優勝は初めてとのことです。
子供の1年差は大きいですからね。

実は大会の1週間前、半年ぶりに斗真くんと対局したのですが、見違えるように打ち筋が鋭くなっていて驚きました。
首藤瞬八段も同意見でしたね。
優勝目指して頑張ろうと言いましたが、まさか本当に優勝するとは・・・。


さて、本日は第2回テイケイ杯俊英戦Aリーグ4回戦から、西健伸五段と福岡航太朗三段の対局をご紹介します。
なお、この対局は日本棋院ネット対局幽玄の間で中継されました。

1図(テーマ図)
西五段の黒番です。
終局直前で形勢もはっきりしていますが、最後に手どころが生じました。
右下に白からどのような手段があるでしょうか?
なお、白Aから直接黒7子を取りにいくのは、黒B、白C、黒Dと進んで「眼あり眼なし」で攻め合い黒勝ちとなります。



2図(実戦)
正解は白△!
黒石が×のような並びになっているときの「形の急所」ですね。
ここで黒が投了しました。



3図(変化図)
この後、黒1と受ければ白2のハネを利かしてから白4と這います。
そして黒5に対して、白6のハネでぴったり渡れることがポイントです。
白10まで、黒はAからもBからもダメを詰めることができず、全体が大きなセキになってしまうのでした。



4図(実戦)
では黒1と打って白3子を取るのはどうかと言えば、白2、4でコウに持ち込まれてしまいます。
2つの手段がぴったり見合いになっていて、黒がどう受けても手になってしまうのです。
鮮やかなものですね。



永代塾囲碁サロン・・・武蔵小杉駅徒歩5分です。2020年7月から共同経営者になりました。

☆「やさしく語る」シリーズ、好評発売中!
現在、「やさしく語る 碁の本質」 「やさしく語る 布石の原則」 「やさしく語る 碁の大局観」 「やさしく語る 棋譜並べ上達法」の4冊を出版しています。
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幽玄の間シリーズその8 李炯珍ー仲邑菫(三星杯)

2022年11月01日 23時49分46秒 | 幽玄の間

皆様こんばんは。
本日は幽玄の間で中継された、三星火災杯本戦2回戦の李炯珍六段(黒)と仲邑菫三段の対局をご紹介します。

1図(テーマ図)
黒△と切られた場面です。
ここは白Aと伸びて×のシチョウを見合いにするか、あるいは黙って白Bと形を整えれば無難です。
それで形勢も十分でしょう。
ただ、やや緩んだ形ではあるので、完成の鋭い仲邑三段としては引っかかるものを感じたのでしょう。



2図(実戦)
実戦は白1、3と目一杯の手で応戦しました。
これも2つのシチョウを見合いにした手ですが、黒4(×の所)のハネを一本打つ手筋で両方凌いでいます。
もちろん、仲邑三段には読むまでもないことで、あえて実戦の振り替わりで打ってみたくなったのでしょう。
ただ、実際問題としてこの振り替わりはかなり黒有利で、形勢も黒がリードしました。

仲邑三段は筋や形にこだわりがあり、それが魅力的な棋譜を残せる要因の1つでもあるでしょう。
半面、それが勝負においてマイナスに働いてしまう場面もしばしば見受けられると感じています。



3図(実戦)
しかし、中盤戦のセンスは流石のものです。
左右の黒を脅かしながら、白7まで下辺に大きな地をまとめてしまいました。
こうなっては逆に白優勢でしょう。



4図(実戦)
地は白リードですが黒1~5と、中央、左下の白を攻めて挽回を図っていす。
ここから一進一退の攻防が繰り広げられますが、残念ながら最後にミスが出たのは仲邑三段の方だったようです。
僅かに届かず、1目半負けとなりました。

惜しい結果でしたが、世界戦本戦で素晴らしい戦いぶりだったと思います。
次の機会を楽しみにしています。

 


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幽玄の間シリーズその7 権孝珍ー仲邑菫(三星杯)

2022年10月28日 23時44分09秒 | 幽玄の間

皆様こんばんは。
明日10/29(土)と30(日)に第5回SGW杯中庸戦本戦が行われます。
実力者ばかりですが、誰が優勝するでしょうか?
ぜひ贔屓の棋士を応援して頂ければと思います。

さて、本日は幽玄の間で中継された、三星火災杯本戦1回戦の権孝珍四段(黒)と仲邑菫三段の対局をご紹介します。
仲邑三段は呉侑珍九段と同じくワイルドカードでの出場です。

1図(テーマ図)
黒△とツケられた場面です。
この手は形だけ見ると無い手ですが、Aの弱点周辺の利き筋を意識したものです。
例えば、白B、黒C、白D、黒E、白Fと脱出するのは、黒Aと出られて白2子を取られます。
白としては閉じ込められたくないのですが、どうしたものでしょうか?



2図(実戦)
実戦は白1~5!
利き筋を見られていると縮こまらざるを得ないことが多いですが、実戦は手筋で反撃しました。
問題の黒6には、黒×を捨てて白7と取れば良いという柔軟な発想です。
前図で示した手順より数段白の姿が良く、白優勢が確立されました。



3図(実戦)
しかし、白1から戦ったのは大変な勇み足でした。
黒にはAやBの断点がありますが、白も危うい姿になっています。
おそらく何か錯覚があったのでしょうが、せっかくの優勢を手放すことになりました。

積極的な姿勢は棋力向上に欠かせませんが、目先では勝率を落とす要因になることもあります。
多くの若い棋士や棋士志望者の悩みどころではないでしょうか。



4図(実戦)
黒×と白×の攻め合いはセキになりました。
先手で黒△に回り、はっきり黒優勢です。
しかし、今の仲邑三段は非常に粘り強くなっています。
我慢してチャンスを待ち、黒のミスを捉えて見事逆転勝利を収めました!

男女混合の国際棋戦で日本の女性棋士が勝ったのは、これが初めてのことです。
仲邑三段が、またしても歴史に名を刻みました。



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幽玄の間シリーズその6 呉侑珍-一力遼(三星杯)

2022年10月27日 23時59分59秒 | 幽玄の間

皆様こんばんは。
本日は幽玄の間で中継された、三星火災杯本戦1回戦の呉侑珍九段(黒)と一力遼九段の対局をご紹介します。

1図(テーマ図)
黒△とツケて利かしにきた場面です。
ここは白A、黒B、白Cと受けるのが形です。
黒D、白E、黒Fなどと進んで、黒のサバキに苦労は無さそうですが、ほとんどのプロは仕方ないと我慢するでしょう。



2図(実戦)
しかし、実戦は白1、3!
白は3か所に断点があるうえ、黒AやBとハネられる弱みもあります。
何か1つでも見落としがあれば簡単に負けてしまう、白にとって極めて「怖い」打ち方ですが、自分の読みを信じて最強手を繰り出しましたね。



3図(実戦)
黒1に対しては、白2ともう1手かけて大丈夫と読んでいます。
続いて黒Aには白B、黒C、白D、黒E、白Fとなり、攻め合いは白有利です。



4図(実戦)
左上の方も頑張りきりました。
この後黒Aには白B、黒C、白Dで大丈夫です。
結局、利かしにきた黒を丸飲みしてしまいました。

黒が押し気味の形勢だったと思いますが、力づくでひっくり返しましたね。
冷静な一力九段ですが、ここぞというときの迫力は凄いものがあります。



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幽玄の間シリーズその5 崔精-上野愛咲美

2022年10月18日 23時25分59秒 | 幽玄の間

皆様こんばんは。
天元戦第2局は伊田篤史挑戦者が勝ちましたね。
内容としては、またしても見たことの無いような展開だったと思います。
既存の枠にとらわれない対局は面白いですね。

そして、昨日は杉内寿子八段が勝ちましたね!
95歳7か月での公式戦勝利ということで、自身の持つ女性棋士の記録を更新しました。
今後もお元気に活躍されることを願っています。
なお、棋士全体での記録は故・杉内雅男九段の96歳10か月とのことです。
嘘みたいな本当の話・・・。



皆様こんばんは。
本日は湖盤杯ソウル新聞世界女子囲碁覇王戦、崔精九段(黒)と上野愛咲美四段の対局をご紹介します。
なお、この対局の模様はyoutubeの日本棋院囲碁チャンネル幽玄の間にて中継されました。

1図(実戦)
白×をあっさり捨ててしまいました。
そして、先手を取って白8の仕掛けに向かいました。
上野四段らしい積極策ですね。



2図(実戦)
白1、5はぜひとも打ちたかったところでしょう。
黒×に詰め寄っていきました。
なんと言っても、攻めの強さは上野四段最大の持ち味だと思います。



3図(実戦)
そして、白△のツケ!
力強いモタレ攻めが飛んでました。
本当の狙いは上辺黒です。



4図(実戦)
白6まで、あっという間に黒が薄くなりました。
白優勢は明らかです。
上野四段、見事に韓国最強棋士を破りました。
日本は上野四段のみ、中国はあと3人残っていますが、明日以降も頑張って欲しいですね。



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