白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

全局を見る(私の対局)

2016年11月30日 23時59分59秒 | 対局
皆様こんばんは。
読者コーナーで著書についてのご指摘・ご質問等を募集しましたが、早速色々なミスが発覚しました。
順次記事に反映させています。
ありがとうございます。

さて、本日は先日の私の対局を振り返ってみます。
打つ手はかなり高度になりますから、真似しようとして頂く必要は全くありません。
考え方をご理解頂ければ十分です。



1図(テーマ図)
安田泰敏九段との対局で、私の黒番です。
形勢は苦しいながらも、左辺が大きな黒地になるなら、チャンスはあるかと思っていました。
ここで白△の切りは予想していませんでしたが、意図する所はすぐに察しが付きます。
黒を取ろうという訳ではありません。





2図(変化図)
まず黒1以下、正面から戦っていく展開を考えてみます。
しかし、白6となると、困った問題が生じています。
右辺の黒が生きていないのです。





3図(続・変化図)
となれば黒1と生きる事になりますが、白2から上辺の黒がターゲットになります。
一例として黒9までとなると、黒は狭い所で生きただけです。
その間に白が打った手は全て、中央や左辺に出来そうな黒地を消して、立派に活躍しています。
黒としては、こういった展開は避けなければいけません。





4図(変化図その2)
では、黒1から捨ててしまうのはどうでしょうか?
発想は悪くないのですが、この図は黒△が、あっても無くても同じ石になってしまう事がつらいのです。
取られるにしても、少しは働いてから取られて欲しいものです。





5図(実戦)
そこで、実戦は黒1とひねってみました。
あまり見かけない形なので、こんな手あるのかな?と思いつつ・・・。

直線的に黒△を助けるのも捨てるのも上手く行かないので、中間ぐらいの手を探してみました。
プロはよく、「中間の手」を使います。
黒△と黒1の間が、はっきりとは繋がっていない代わりに、黒5までと打ち、右辺の黒が孤立しません。
傷だらけの打ち方でもあるので、勿論読みは必要になります。





6図(実戦)
白1には黒2と引き、まずは右辺の黒を安全にしました。
次は白番ですから、黒の包囲網がいかにも薄く見えると思います。
ですが問題ありません。
黒は白を取ろうとしている訳ではないのです。





7図(実戦)
白1のツケコシが脱出の手筋です。
無理やり取りに行くと逆に取られるので、黒2は仕方ありません。
白3となって白は脱出、黒2子は取られましたが、これは想定内です。
まず、白△は動けない形なので、右上一帯の黒は全部繋がって安心しました。
そして、ここで黒に手番が回りました。





8図(実戦)
実はテーマ図の時点で、黒はとにかく右上の戦いを早く切り上げ、左辺に回りたいと思っていました。
そしてついに、待望の黒1に回る事ができました!
左右の黒を繋げ、左辺や中央を大きな地にする狙いです。
白Aが残っていますが、それは小さな問題です。





9図(変化図)
もし白1と取って来れば黒2に回り、左辺から中央にかけて、巨大な黒模様が出現します。
3図とは全く違う景色になっていますね。
こうなっては、逆に黒優勢です。
※実戦は白が違う手を選びました。


如何ですか?
黒は右上で戦っても良い結果にならないので、早く切り上げ、優位を主張できる左辺に回りました。
全局を見て、どこが一番大事なのかを判断する事が大切なのです。

繰り返しますが、手を真似する必要はありません。
私の打った手が最善かと言えば、全くそんな気はしませんし・・・。
それより一見複雑なプロの碁も、根底にあるのは簡単な理屈である事を、ご理解頂きたいですね。
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世界大会、開催決定!(農心杯棋譜紹介)

2016年11月29日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は有楽町囲碁センターで指導碁を行いました。
お越し頂いた方々、ありがとうございました。
著書についても、多くの方からご感想を頂き、嬉しかったです。

さて、本日は凄いニュースが発表されましたね。
ワールド碁チャンピオンシップ、開催!
日中韓のトップ棋士1名ずつに、AI(DeepZenGo)を加えたリーグ戦が行われます!

日本からは井山裕太六冠が参戦!
というより、これは明らかに井山六冠の出場が前提の棋戦ですね。
対局場は、井山六冠の地元、日本棋院関西総本部です。
タイトル戦に追われる井山六冠も、これなら全力が発揮できるというものです。
中国も韓国もAIもなぎ倒し、世界一になって貰いましょう!

また、本日は第18回農心杯第9戦が行われました。
韓国チーム最後の砦は、韓国ランキング1位、朴廷桓九段です。
范廷鈺九段の連勝を止められなければ、韓国は第3ラウンド開始までの3か月近く、チームが敗退した状態で待たなければいけません。
大変なプレッシャーのかかった1局でした。
そんな訳で、たまには日本棋士以外の対局もご紹介してみましょう。



1図(実戦黒29)
范九段は、序盤でリードを奪って逃げ切る展開を得意としています。
そうさせないよう、朴九段は細心の注意を払った事でしょう。

范九段が黒△と飛んだ場面です。
次に白Aなら黒Bと進出し、黒も十分に戦えます。





2図(実戦白30~白32)
しかし、実戦は白1、3と、黒を閉じ込めにかかりました!
白の包囲網に薄みはありますが、なかなか黒から手が出せないようです。





3図(実戦黒33~黒39)
黒5までと渡ったのは止むを得ません。
その間に白4までと外勢を築き、絶好点の白6に回りました。
そして黒7のツケに対しては、通常は白AかBと、相手をしますが・・・。





4図(実戦白40~白46)
左辺が大きいので、白1が正しい判断でした。
左辺を大きく広げた上に白7と、黒の最大の財産である、右下の模様を荒らす手順に回っては、白好調です。





5図(実戦黒47~白52)
白2~6までとコウの形にしたのは、捌きの常套手段です。
この白を取られたとしても、コウ立てで他に2手連打できれば十分という、柔軟な考え方です。





6図(実戦黒91~黒93)
その後は難しい駆け引きが続きましたが、この場面がハイライトです。
黒1とコウを解消しました。
白も2と生きを図りますが、そこで黒3!
眼を奪い、白を丸取りに行きました!





7図(実戦黒105)
その後黒△まで、右辺の白は5目中手で死にました。
こうなっては、黒が良く見える方が多いでしょうね。
しかし、実は朴九段の想定内の進行でした。





8図(実戦白106~白108)
白1を打っておいて、白3の逃げ出しが狙いです!
よく見ると、右辺の白を包囲した黒も、生きていません。





9図(実戦黒109~黒115)
そこで黒7までと守りました。
これで黒は、急に捕まる心配は無くなったので、一安心かと思いきや・・・。





10図(実戦白116)
白1とコスまれて、黒△に眼がありません!
かといって、逃げ出して行くのも厳しい道のりです。
右辺の黒も完全ではないだけに、どちらかが捕まってしまう可能性大でしょう。





11図(実戦黒117~白118)
止むを得ず右上を見捨て、黒1と振り替わる作戦を採りました。
とはいえ、白2と取ってはやはり大きく、白の勝ちが決まりました。

朴九段が、范九段の力を封じて完勝しました。
流石の内容です。
第18回農心杯優勝の行方は、2017年2月21日(火)に開幕される第3ラウンドに持ち越されました。

ワールド碁チャンピオンシップの韓国代表はまだ決まっていませんが、順当ならば朴九段が出て来るでしょう。
井山六冠との農心杯第10戦は、その前哨戦になるかもしれません。
楽しみに待ちたいと思います!
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村川八段、敗れる

2016年11月28日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
まずはお知らせです。
明日11/29(火)は、有楽町囲碁センターにて、午前11時から指導碁を行います。
ご都合の合う方は、ぜひお越しください。

さて、本日は第18回農心杯第8戦が行われました。
6連勝中の范廷鈺九段を止めるべく、村川大介八段が出場しましたが、残念ながら敗退しました。
十分に勝つチャンスのある内容だったと思いましたが・・・。
それでは、振り返っていきましょう。

なお、この対局は幽玄の間にて、柳時熏九段の解説付きで中継されました。



1図(実戦白4~黒9)
范九段の黒番です。
村川八段、近年では珍しい、目外しを採用しました。
黒6の後、白Aと伸びるのが、何十年も前からある定石で・・・。





2図(変化図)
白1と伸びれば、黒8までとなります。
黒は隅を確保し、白は勢力を築く分かれです。
しかし、村川八段は、こう打つつもりはありませんでした。





3図(実戦白10)
実戦は、白1のハネ出し!
この手には、黒Aの切りから中央に頭を出す手順があり、長年白が良くないと思われてきました。
しかし、最近研究されているようです。
黒Aには白BかCで、隅の黒の根拠を脅かす狙いです。
村川八段、この大事な一戦のために準備してきたのでしょう。





4図(実戦黒11~白20)
実戦は黒が前図黒Aからの進行を嫌い、白10までの分かれとなりました。
この分かれは白の勢力が大きく、なかなかのものかと思いました。
但し黒1の存在が問題で、この石が役に立つか、立ち枯れになるかが大きなポイントになります。





5図(実戦黒21~黒33)
その後、右上で戦いが始まりました。
黒13の後、白が上辺の黒にどうやってプレッシャーをかけるか、悩ましい場面ですが・・・。





6図(実戦白34~白36)
白の選択は、黒に最も厳しく迫る、白1、3!
村川八段、気合が入っています!





7図(実戦黒37~黒41)
黒は引き籠って生きるようではつらいので、黒1、3と反撃したのは当然です。
黒5の後、黒Aと右上の白を閉じ込められてはいけないので、何か頭を出す必要があります。
皆様なら、どう打ちますか?





8図(変化図その1)
白1、3なら形が綺麗で、所謂筋の良い打ち方です。
但し、黒Aから強引に分断して来る可能性があります。





9図(変化図その2)
それともう一つ、黒2、4と中央にはみ出される可能性もあります。
黒6となると、もう上辺の黒へは攻めが利きません。
村川八段、前図と本図、どちらかを嫌ったのでしょう。





10図(実戦白42~白48)
それにしても、実戦の白1、3とは!
ピンと来ない方が多いと思いますが、プロの感覚ではこの白1、3は、物凄く筋の悪い打ち方なのです。
白7まで、黒の両側からへばり付いていく打ち方は、左右どちらを大事にしたいか分からない、所謂兄弟喧嘩の状況を招いてしまうのです。

しかし、村川八段は、そんな事は承知の上です。
黒にAと繋ぐ暇を与えまい、という事でしょう。
村川八段の意気込みが伺える、必死の打ち方です。





11図(実戦黒49~黒53)
案の定、黒3、5の強襲が来ました!
AとBの2つの切断を狙う、両ノゾキです。
白はどちらを繋ぐべきでしょうか?





12図(変化図)
上辺の方が大きいと、つい白1と繋ぎたくなりますが、これはいけません。
黒2と出られ、白は進退自由になります。
白3には黒4の強手が成立し、分断されてしまいます。
黒△と白△の交換が、絶妙に効いていますね。





13図(実戦白54~白62)
という訳で、実戦の白1が正解です!
右上の白3子が分断されてしまいますが、白9まで、右辺で攻勢に立ちました。
こうなると、白△が黒のダメを詰める、絶好の一手になっています。

また、右上の白もいずれAに回れば、ただでは取られません。
白、苦しい状況から上手く切り返しました。





14図(実戦黒63~黒71)
黒も、白の右辺進出を、黙って眺めてはいませんでした。
黒7、9が強烈な反撃!
どちらかが潰れかねない、危険な状況になりましたが・・・。





15図(実戦黒95)
黒△までお互いに脱出、見事に分かれました!
幽玄の間解説の柳九段も指摘していましたが、ここで白Aなら黒7子の動き方が難しく、白優勢だったのではないでしょうか?





16図(実戦白96~黒97)
実戦はここで白1と打ちましたが、これは村川八段らしからぬ、中途半端な手だった気がします。
黒2がぴったりで、白は打つ手に困りました。





17図(実戦白98~黒105)
白1、3と打ち、黒4と突き出させたのは非常手段です。
白7まで、なんとか中央の黒を取る事はできましたが、とうとう黒△が活躍する事になってしまいました。
黒8まで、白4子を持っていかれてては大損害です。

とはいえ、まだまだ勝負はこれからと思っていたのですが、この後右上白3子の動き出しにも失敗し、負けを早めてしまいました。
後半から村川八段にしては考えられないような内容でしたが、プレッシャーが原因でしょうか・・・。
無念の敗退で、日本チームは井山裕太六冠を残すのみとなりました。

明日の第2ラウンド最終戦は、范九段と、韓国チーム最後の砦、朴廷桓九段が対局します。
どちらが勝つにしても、優勝の行方は第3ラウンドに持ち越しとなります。

第3ラウンドは2月21日(火)に開幕し、井山六冠が登場します。
残りのメンバー相手に5連勝というのは、個人での世界戦優勝より難易度が高いです。
しかし、なんとか踏ん張って欲しいですね。
井山六冠の奮闘に期待しましょう!
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一力七段、優勝!

2016年11月27日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
農心杯は、中国の范廷鈺九段が韓国の金志錫九段を破り、6連勝となりました。

スポーツ程ではありませんが、囲碁にもホームとアウェイがあります。
農心杯は韓国主催の棋戦ですから、韓国がかなりの好成績を収めてきたのです。
しかし、今年は1勝もできずに、残り1人となってしまいました。
中国の層の厚さを感じます。

さて、本日は第11回広島アルミ杯・若鯉戦本戦トーナメント、準決勝と決勝が行われました。
決勝は、本木克弥七段(黒)と一力遼七段の顔合わせとなりました。
それでは、振り返っていきましょう。

なお、この対局は幽玄の間にて、平田智也七段の解説付きで中継されました。
対局のスピードにも負けず、また言いたい事を言っていて(笑)、面白い解説だったと思います。



1図(実戦白26)
1局の碁には、重大な分岐点が何回も現れます。
そこでどの道を選ぶかが、その後の展開や勝敗に大きく影響します。

白△と押されて、正にそんな場面を迎えています。
「2目の頭は見ずハネよ」という格言がありますが、正確に表記するなら、「2目の頭はハネよ(伸びよ)」でしょう。
語呂は悪くなりますが・・・。

黒Aは、白の2目の頭をハネる、相手にダメージを与える手です。
一方黒Bは、自分の2目の頭を守る、安全な手です。
理屈の上では、どちらも価値は同じです。
強気の黒A、安全第一の黒Bを、周囲の状況に応じて選ぶ事になります。





2図(変化図)
黒1と安全な伸びを選ぶと、こんな進行になります。
黒はしっかりとした形になりますが、白にダメージも与えません。
平和的な進行で、これも十分考えられますが・・・。





3図(実戦黒27~白28)
実戦は黒1と、2目の頭をハネ、白も2と、2目の頭を切りました!
お互いに弱みができるので、こうなれば戦いは必至です!

勢いのある若手は、こういう所を迷わずハネて行く傾向があります。
戦いが不利とみれば、流石にやらないでしょうが、五分五分ぐらいなら、まずやって行きますね。
若手の碁の魅力の一つでしょう。





4図(実戦黒29~白34)
黒3、白4は、共に大事な一手です。
白に3と打たれては、一気に形が崩れますし、黒に4の右に切られると、白はバラバラになります。

さて、白6とツケられた場面が分岐点です。
黒Aなど、右辺を受ければ安全で、白もBと繋がる進行になります。
比較的穏やかな戦いとなるでしょう。





5図(実戦黒35~白36)
が、実戦は黒1の強硬策!
これは非常に勇気がいる手です。
白2とハネられて、黒△も危険になるからです。
しかし、リスクは承知の上で、白をやっつけに行こうというのです。
本木七段らしい最強手です。





6図(実戦黒37~白42)
しかし、まだ本当に切羽詰まった状況ではありません。
白6となった所が、また分岐点です。

黒Aと繋がれば、右辺の黒は無事です。
すると右辺の白も生きる事になって、平和的な進行です。

黒Bと打てば、白の眼を奪う事ができます。
しかし、右辺の黒も生きていないので、逆に取られてしまうかもしれません。
もしここで潰れたら、公開対局が30分で終わってしまいます。
私なら、そんな心配をしてしまうかも・・・。





7図(実戦黒43~白44)
が、本木七段、ブレーキを踏まず!
本木七段の辞書には、怖いという言葉が載っていないのでしょうか?
一力七段も白2と、黒の退路を断って、決戦の雰囲気が漂いました。





8図(実戦白50)
その後、白△と押さえた場面になりました。
黒Aと白の眼を取りに行くか、黒Bで生きるか?
本木七段の選択は・・・。





9図(実戦黒51~白56)
実は本木七段には、何か誤算がありました。
このまま右辺の白を取りに行けば、逆に自分の石を取られます。
もはや勘ではなく、読み切れるレベルでしょう。
となれば、気合や勢いとは言っていられません。
黒1、3と生きを図ったのは、やむを得ない後退でした。

しかし、一力七段はこの機会を待っていました。
右辺の白を生きる前に、白4、6が厳しい切断です!
一転して、白が攻勢に立ちました。





10図(実戦白68)
白△までと進み、中央の黒が一方的に狙われる展開になってしまいました。
強気に黒△とハネた黒からすれば、不本意です。
一力七段、ここで奪ったリードを最後まで保ちました。
隙の無い勝ち方は、本木ファンに嫌われそうな程でした(笑)。

碁の技術的に言えば、本木七段の不出来な碁、という事になるでしょう。
しかし私としては、危険を恐れずに踏み込んだ姿勢を称賛したいですね。
こうでなければ、世界で戦える力は身に付かないでしょう。
両者の力の籠った、好局だったと思います。


明日は、農心杯第8戦が行われます。
日本チームからは、村川大介八段が登場します。
もしここで負けると、大将の井山裕太六冠が、5連勝しなければならなくなります・・・。
何としても、范九段の連勝を止めて貰いたいですね。

対局の模様は14時から、幽玄の間にて中継されます。
皆様、村川八段を応援してください!
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広島アルミ杯若鯉戦

2016年11月26日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
農心杯河野臨九段が出場しましたが、残念ながら范廷鈺九段に敗れました。
明日は中韓戦、明後日は日本選手が対局します。
苦しい状況になりましたが、なんとか巻き返して欲しいですね。

さて、本日は第11回広島アルミ杯・若鯉戦本戦トーナメントも行われました。
2回戦まで終了し、ベスト4が決まっています。
当ブログでは2回戦全4局を、ダイジェスト版でご紹介します。



1-1図(実戦黒49~白54)
一力遼七段(黒)と三谷哲也七段の対局です。
黒1は、白3と受けてください、という手です。
しかし、相手の言いなりにはなるまいと、白2の反発!
勢い黒3と連打し、白も4、6と左辺を連打しました。
両者の気合がぶつかり、一気に激しい展開へと進みました。





1-2図(実戦白64)
白△と打った場面です。
黒△にプレッシャーをかけていますが・・・。





1-3図(実戦黒65~白66)
構わず黒1と、左辺の白を攻撃しました!
白2とカケられると黒が団子になるので、リスクの高い手です。
しかし、これで白に大きなダメージを与えられると踏んでいるのです。
読みに自信のある、一力七段らしい厳しい発想です。





1-4図(実戦黒75~白78)
その後黒1と白を閉じ込める態勢ですが、白2、4が捌きの手筋です。
白AとBが見合いで、脱出する事ができます。
これが見えているので、黒としては躊躇してしまいそうな展開なのですが・・・。





1-5図(実戦黒79~黒83)
一力七段、黒5のコウ仕掛けを見ていました!
普通は黒が無理ですが、この碁では黒A以下、多くのコウ材があります。
どうやら、一力七段のパンチが入ったようです。

最後は、白の三谷七段の時間が切れ、一力七段の勝ちとなりました。
優勝候補筆頭の一力七段、力強くベスト4進出を決めました。





2-1図(実戦黒27)
本木克弥七段(黒)と内田修平七段の対局です。
黒△が当たりなのにも関わらず、黒1とは!
近年開発された手法ですが、何度見ても違和感がありますね。
黒Aからの分断を狙って、しつこく食らいつく手です。





2-2図(変化図)
黒△と打った場面です。
私なら白1に向かいそうです。
中央の黒4子を、大きく飲み込む狙いです。





2-3図(実戦白42~黒49)
実戦は白1と打ちましたが、地だけの手であり、どうだったでしょうか?
すかさず黒2~8と、軽快に立ち回りました。
黒△を取りに来るならどうぞという打ち方です。





2-4図(実戦白50~黒61)
遅ればせながら白1と行きましたが、黒2の反撃が厳しく、黒A、白B、黒Cからの左右分断を狙われました。
仕方なく黒5子を取りに行きましたが、黒12までとなると、黒は外回り、右上の白は宙に浮いています。
黒が打ちやすい碁でしょう。
最後は、元木七段が黒番中押し勝ちを収めました。





3-1図(実戦白16~黒21)
藤沢里菜三段(黒)と寺山怜若鯉杯の対局です。
右下の型は、王冠戦決勝でも出てきましたね。
力自慢御用達の型です。





3-2図(実戦白56)
実戦は、見た事のない分かれとなりました。
白は右下を全部地にしましたが、外側の黒は✖の所に2眼あり、絶対に死なない強大な勢力です。
この分かれは、恐らく黒が相当良いでしょう。
そして、右下の勢力を生かすべく、藤沢三段は黒Aから大作戦に出ます。





3-3図(実戦黒89)
黒△まで、巨大な黒模様を形成!
両手が入る程の大きさです。
このまま地にさせる訳にはいかず、寺山四段、白Aから必死の突入を敢行しました。





3-4図(実戦白96~黒109)
その後白5、白7と切断し、黒模様の破壊を目指す進行に!
黒も支え切れるかどうか、ぎりぎりの戦いです。





3-5図(実戦白110~白112)
寺山四段、さらに白1、3と、大暴れ!
この後も難解な戦いが続きましたが、最後は藤沢三段の黒番9目半勝ちとなりました。
藤沢三段、前期優勝者を倒してのベスト4進出です。





4-1図(実戦白30)
最後は大表拓都初段(黒)と姚智騰三段の対局です。
姚三段は18歳、独特の渋い碁です。
14歳の入段時から、既に老成した印象がありました。
大表初段は20歳、こちらも非常に渋い碁を打つ印象があります。

さて、局面は白△と詰めた所です。
ここで私なら、ノータイムで黒Aと、頭を出しながら左右の白を分断するでしょう。





4-2図(実戦黒31~黒37)
ところが、実戦は黒1と、左辺の黒を補強しました。
白2のカケには黒5まで生き、今度は黒7と、右上をがっちり守りました。
うーん、渋い!





4-3図(実戦白38~白40)
黒が堅く守ったので、白1、3と凝らせにいきました。
18歳にして、やる事が老獪です。





4-4図(実戦黒57)
その後、右上でコウ争いが起こりました。
白はAにコウ立てして、難しい戦いになるかと思いきや・・・。





4-5図(実戦白72~白74)
その後白1、3の大場連打で手を打ち、あっさりと分かれました。
早くもヨセに突入した雰囲気です。
渋好みの両者の戦いは、大表初段の黒番半目勝ちとなりました。


明日は準決勝、決勝が行われます。
本日同様、幽玄の間でも中継されますので、ぜひご覧ください!
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