白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

井山本因坊、防衛!

2016年06月30日 22時20分57秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日本因坊戦第5局の2日目が行われ、黒番の井山本因坊が177手で中押し勝ちを収めました。
これで4勝1敗となって本因坊防衛に成功、七冠を堅持しました。
また本因坊戦5連覇により26世本因坊の資格を得ました(名乗るのは60歳以降)。
それでは2日目の対局を振り返って行きましょう。



封じ手は逃げ出しでした!
99%当たっているとは思いましたが、外れたらどうしようかとドキドキしていました(笑)
白5までの進行も予想通りです。





黒1と繋ぎ、白2には黒3と「ケイマにツケコシ」!
目一杯の打ち方で、ここで戦いが始まるかと思いましたが・・・





白1、3とあっさり打ち、白5に回りました。
広い所に打って白Aも狙っています。
高尾挑戦者、流石の判断力だと思いました。
封じ手前後の戦いでは、白がポイントを挙げたのではないでしょうか。





黒も一方的に狙われているのはつらいので、黒1、3と反撃!
難しい戦いになるかと思いきや・・・





白1、3、5のかわし!
これには驚きました。
何故なら黒4と出られた後・・・





黒1、3で黒石が全部繋がってしまうからです。
もったいないと思ってしまいますが、繋がった所を白6と寄り付いて行く手を見ていました。
白AやBの狙いがあり、それを守っているようでは黒地が足りなくなりそうです。
高尾挑戦者の明るい判断に感心した場面です。
しかし、これで簡単に白優勢とはなりませんでした。





井山本因坊、白の薄みを見逃しませんでした。
黒1が厳しい反撃です。
簡単に取られそうな手ですが、打たれてみると白の受け方が難しいです。





白7までと防戦に努める間に黒6の守りを先手で打ち、黒8に回りました。
黒△にも応援を送っており、非常に大きい手です。
どうやら黒わずかに抜け出した気配です。





その後も隙無くヨセて、最後は黒1、3の踏み込みが決め手になりました。
危険なようですがこの黒を取る事は出来ません。
これで差が開き、最後は高尾挑戦者が投げ場を求める形になりました。


シリーズ全体を通して両者布石に趣向を凝らし、凡庸な対局は1局もありませんでした。
中盤戦も素晴らしく、両者の明るい判断は大変勉強になりました。
勝負を分けたのは中盤後半から終盤にかけての戦いでしょうか。
第2局、第5局はどちらが勝ってもおかしくない碁でしたが、井山本因坊に殆どミスが出ませんでした。
結果僅かにミスの出た(恐らく)高尾挑戦者が2つ落とす結果になったと思います。
井山本因坊の強さが良く表れたシリーズでした。

果たしてこれほど強い井山七冠の牙城を崩すのは誰になるのでしょうか。
まずは現在碁聖に挑戦中の村川八段の戦いぶりに注目したいと思います。
第1局は惜しくも敗れたものの力負けはしておらず、打倒井山を目指す資格は十分でしょう。
今回の本因坊戦、高尾九段には以前にも増して気迫を感じました。
碁聖戦での村川八段も同様です。
ぎりぎりの戦いを見せてくれる事でしょう。
今年は全ての棋戦から目が離せません!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

封じ手予想?

2016年06月29日 22時23分41秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は本因坊戦第5局の1日目の対局が行われました。
早速振り返って行きましょう。



ここまで、向きは違いますが碁聖戦第1局と同一の進行です。
碁聖戦では黒A、白B、黒Cでしたが・・・





実戦は井山本因坊が黒1と変化しました。
碁聖戦での構えが失敗だったわけでは無く、違った碁を見せてくれようとしているのでしょう。
こういう所での自由度は碁の魅力の一つですね。
対する高尾挑戦者も村川八段と違ってすぐに左上を挟んで行きました。
これも個性の違いを表現したとも取れます。
一見平凡な布石ながら、そういう見方をすると奥深さを感じますね。





そして右上隅で「例のツケ」が出ました!
第2局では井山本因坊が打ちましたが、今度は高尾挑戦者が逆用しました。





その後定型通りに進み、白が上辺を開いた所です。
ここで黒1と早い仕掛け!
第2局で高尾挑戦者が似たような手を打っていましたね。
少し位置が違うものの、発想は似ています。
今度は井山本因坊が高尾挑戦者の手を逆用するような形になりました。
面白いやり取りです。





黒の狙いはこのような図です。
5目ぐらいの白地に対して中央が真っ黒になり、ここで勝負が終わってしまいます。





実戦は白が反発し、右辺を黒に譲る代わりに上辺の黒に寄り付いて行く展開になりました。





黒としても右辺の白を攻めたい所です。
しかしいきなり攻めるのではなく、黒1を打っておいたのがうまい手順です。





右上の黒は△の所に1眼が確定しているだけで、隅は白Aと打たれると眼がありません。
自分の石に不安が残っていては、思い切って白を攻める事はできません。





実戦進行です。
上辺に1回おまじないを打っておいた効果で、黒8までの形を得る事が出来ました。
黒AとBが見合いなので右上黒は完全に生きています。
そこで安心して黒10、12と白を攻める展開になりました。
同時に右下一帯の黒模様が大きくなっています。





白としては右下黒模様がそのまま地になっては大き過ぎます。
そこで白△と突入、黒も1、3と反撃して戦いになりました。
白〇から白△に滑る形は時々出来ますが、それに対して黒1、3も常用の反撃手段です。
覚えておくと役に立つ事もあるでしょう。





白1、3と1子取られましたが、黒2、4と白地を破って行きました。
振り替わりです。
さて、ここで次の白80が封じ手になりましたが・・・





白1と逃げる手以外があるのでしょうか・・・
この石を取られると黒の3つの石が繋がってしまうので、所謂「種石」です。
下辺白の生き具合にも関係して来るので、捨ててはいけない石でしょう。
しかしここで終わっては面白みが無いので・・・





白が逃げればここまで必然です。
そこで、次の84手目を予想してみる事にします。
形としては白A~Cが考えられますが・・・





高尾挑戦者らしく、堂々の白1伸びと予想します。
中央の要衝を占めて左上の黒弱石や白Aの薄みを狙って価値のある一着ではないでしょうか。


幽玄の間有料会員特典の一つとして、封じ手予想クイズが開催されています。
今回は正解者が多そうですね。
運試しに、ぜひご応募ください!

本日に引き続き、2日目の対局の模様も幽玄の間鈴木伸二六段の解説付きで中継されます。
お楽しみに!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

本日の問題

2016年06月28日 22時48分54秒 | 問題集
皆様こんばんは。
本日は問題を作りました。



問題その1
白番で左側の白を生きてください。
ただし右側の白が死んではいけません。
こちらで実際に石を置いて研究できます。




右側への渡りを見せる、白1が正解です。
黒2と渡りを止めれば白3となって生きです。





黒2と目を奪えば白3、右側へ渡る事が出来ます。





白1とハネるのは失着です。
それでは問題2、黒どうやって咎めますか?
これが本日メインの問題です。





黒1と押さえると白2、4で左側は生きです。
一方右側も実戦でよく出来る形で、白生きています。
黒1の石が役立っていません。





黒1も白2、4で生きられた後、右側に手がありません。
やはり黒1の石が緩んでいます。





正解は黒1の飛びでした!
「一線に妙手あり」です。





何はともあれ、白は1、3と生きるしかありません。
今までに似た図は色々出て来ましたが、この図は右側の白のダメが詰まった上に一線に下がりまで来ています。
それでは最後の問題、この白を殺してください。
所謂基本死活で、実戦でも生じる形です。
しかし知らなければなかなか解けない問題でしょう。





正解は黒1の切りです!
この手を初めて知ったときは驚きと共に深い感動を覚えました。
まさに手筋です。





白は1と抱えますが、そこで黒2と「2の1」の急所に置きます。
切りの効果で、これから白が打てる手が少なくなっています。
とりあえず白3と黒4を交換しますが、ここで白Aと打つと黒Bで欠け眼にされて即死なので・・・





全図黒Bを防いで白1ですが、それなら黒は2と打ってやはり欠け眼です。
白3と広げても黒4、この形はセキではなく白死です。
白が中の黒を取りに行くと3目中手になるので手が出せませんが、逆に中の黒が動く事は可能だからです。
所謂「隅の曲がり4目」という特殊な形ですが、これを詳しく解説すると長くなるので省略します
難易度の高い問題ですが、手筋の美しさを感じて頂ければ幸いです。


明日から本因坊戦第5局が福島県福島市、吉川屋で行われます。
今まで以上に素晴らしい対局になる事を期待しています。
また、シリーズの決着が付くかもしれない第5局ですから勝負として見ても大一番です。
井山本因坊がこのまま押し切るのか、高尾挑戦者が勝って流れを変えるのか!?
対局の模様は幽玄の間鈴木伸二六段の解説付きで中継されます。
お楽しみに!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

5月の投稿一覧

2016年06月27日 23時59分59秒 | 当ブログについて&バックナンバーまとめ
皆様こんばんは。
本日発売の週刊碁7月4日号で、NHK杯の内田修平七段対山城宏九段戦を解説しました。
テレビ放送とは違った視点で解説しており、二度楽しめるのではないかと思います。
ぜひご覧ください。

さて、本日は5月に投稿した記事をまとめます。
5月は休まず更新しました。

5/1 石の繋がり・・・7子局を題材に、石が繋がる事の重要性を解説しました。
5/2 1ヶ月経過・・・当ブログ開設から1ヶ月、今回のテーマは「本手」です。
5/3 弱い石には・・・・・・アマの皆さんが犯しがちなミスを解説しました。
5/4 チャリティー囲碁会・・・永代塾囲碁サロンでのチャリティーイベントの報告とヨセ講座を掲載しました。
5/5 本日の対局・・・伊藤優詩四段との対局を振り返りました。
5/6 9子局・・・9子局を題材に、置き碁の心構えについて書きました。
5/7 プロの駆け引き・・・林海峰名誉天元との対局を振り返りました。
5/8 この手なんの手・・・プロの対局によく現れる形について解説しました。
5/9 封じ手予想・・・本因坊戦第1局の名場面紹介と封じ手予想を行いました。
5/10 本因坊戦第1局感想・・・高尾挑戦者の思い切った構想に注目しました。
5/11 本日の問題・・・実戦に出来た手筋を問題にしました。ノーヒントなら高段者レベルです。
5/12 隅の死活・・・実戦に出来た死活問題です。ノーヒントなら高段者レベルです。
5/13 6子局・・・6子局が題材、石が繋がる事の重要性がよく分かります。
5/14 本日の問題趙善津九段との対局に出来た手どころを問題にしました。難解なので観賞用です。
5/15 宿題解答・・・前日の宿題の解答、やはり観賞用です。「様子見」というテクニックがテーマです。
5/16 第1回13路盤プロアマトーナメント戦・・・13路盤棋戦のPR活動を行いました。後にプロジェクトは成立しました。
5/17 7子局・・・置き碁で堂々と打つ事をおすすめしています。
5/18 村川八段、碁聖挑戦!・・・碁聖戦挑戦者決定戦の凄まじい迫力をお伝えしました。
5/19 幽玄の間・・・幽玄の間で中継された対局の名場面をご紹介しました。
5/20 焼き餅・・・焼き餅を焼いてはいけない事がよく分かります。
5/21 会津中央病院杯・・・1回戦全4局の名場面をご紹介しました。
5/22 会津中央病院杯・準決勝・・・準決勝2局の名場面をご紹介しました。
5/23 封じ手予想・・・本因坊戦第2局の名場面紹介と封じ手予想を行いました。
5/24 支援御礼&本因坊戦第2局感想・・・13路棋戦への皆様のご支援への感謝と、本因坊戦の名場面紹介です。
5/25 情報会員・・・日本棋院情報会員制度のPR活動を行いました。
5/26 13路棋戦続報&本日の対局・・・13路棋戦の満額成立のご報告を行い、私の対局を振り返りました。
5/27 ポン抜き30目・・・何故ポン抜きを許してはいけないのか、よく分かります。
5/28 良い形・悪い形・・・アマの皆さんがよく作ってしまう悪い形について解説しています。
5/29 棋士の生活・・・囲碁棋士がどんな生活をしているかをお伝えしました。
5/30 起死回生?・・・私の対局に出来た形を問題にしました。ノーヒントなら高段者レベルです。
5/31 13路盤棋戦、開幕!・・・ついに13路盤棋戦が実現しました。手どころの解説を行っています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

囲碁サロン尾越

2016年06月26日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
本日は囲碁サロン尾越を訪問しました。
昨年対局を引退した尾越一郎九段は棋士としては勿論ですが、中央大学の大先輩でもあります。
その尾越九段が釧路に移住して囲碁サロンを開いたと聞き、馳せ参じた次第です。
イトーヨーカドー内という斬新な立地、お客さんの入りも上々のようです。

本日は私の訪問に合わせてイベントを企画して頂き、公開対局と指導碁を行いました。
公開対局の3子局は、絶好調に打ち進めていた黒が種石を取られる大ポカ
無念の敗戦となりました。
指導碁の方は、全部で19局打ったそうです!
自分では何局打ったかわからないぐらいの大盛況でした。
皆さんとても碁が好きなようです。
初級者から県代表クラスまで、棋力に関わらず楽しまれている印象でした。



本日の題材は、指導碁の中の1局から選びました。
3子局、白△と出られた所です。
次の手は反射的に打ってしまいそうですが、白の狙いを考えてみましょう。
なぜわざわざ切れない所を出て来たのでしょうか?





中央の白が心配なため、白1と渡る手が非常に大きい所です。
しかしすぐに渡ると後手になります。
白3と切っても黒6まで何事もありません。
白Aの両当たりが気になるかもしれませんが、右の3子は取っても地がたった6目増えるだけのカス石です。





そこで先に白1と出て、黒2を待って白3と渡るのが手順です。
今度はダメが詰まったため、白5の切りが成立します。





切られると困るので黒1ですが、白先手が取れました。
そして白2が強烈です。
この手は右辺白2子の救出と右下一帯の黒大石を両睨みにしています。



黒1と受ければ、白2、4と黒を割いて白AとBが見合いです。





黒1と大石を繋がれば、右辺白が復活します。





実戦は黒1と1子取ろうとしましたが、白2、4と打たれると黒5と逃げるしかありません。
白6となって右辺の黒が逆に取られてしまいました。





それではテーマ図に戻ってみましょう。
これまでの図を踏まえて、白△の出に対して黒はどう打つべきでしょうか?





相手をせずに黒1と右辺を守るのが正解です。
ダメが詰まっていないので白2は成立しません。
カス石の3子を助けるか助けないかで、天と地の差が生じました。


私の経験上、テーマ図白△と出られると大半のアマの方は3子を助けてしまいます。
しかしダメ詰まりは恐ろしく、石が取られる原因の最上位です。
石が取られたり苦しんだりが多い方は、ダメ詰まりを作る癖が付いていないか確認してみましょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする