白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

名人戦第1局感想

2017年08月31日 23時48分55秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日の私の対局は残念な結果になりました。
感想はまた後日投稿します。

天元戦はまたしても一力七段が挑戦者になりましたね。
実力はもちろん、もはや「名前で勝てる」レベルになっているのではないでしょうか。
そろそろ井山六冠からタイトルを奪ってもおかしくないと思います。

さて、本日は名人戦第1局2日目が行われました。
またしても手順を追っただけというレベルですが、感想を述べたいと思います。



1図(封じ手)
封じ手は黒△の切り込みでした!
予告通り、私の予想とは違いましたね(笑)。
この手は村川大介八段が予想していました。
それを見て、私の予想が外れることを悟ったのです。
いかにもぴったりの一手でした。





2図(実戦)
黒△と左右の白を分断した場面です。
白はまたしても生きていない石を抱えました。
私がリアルタイムで見ていたら、とても白が勝てるようには思えなかったでしょうね。
両方の石を凌ぎ切るまでには時間がかかりそうです。





3図(実戦)
ところが、実戦はなんと白×を捨て、黒△と黒×を取りに行く振り替わり作戦に!
白が苦しそうな流れでしたが、このあたりで主導権を奪い返した印象です。
私は碁を観戦している時、こうした場面が一番楽しく感じますね。
私も捨て石は好きですが、流石にレベルが違います。

この後も大きな変化が続いたようですが、高尾名人が先勝しました。
第2局以降も楽しみです。
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名人戦第1局・封じ手予想

2017年08月30日 23時55分39秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は有楽町囲碁センターにて指導碁を行いました。
今回はなんと満員で、のべ12名のお客様と対局しました。
珍しいこともあるものです(笑)。
お越し頂いた皆様、ありがとうございました。
早くも新刊をご購入頂いた方もいらっしゃって、嬉しい1日でした。

さて、名人戦が始まっていますね。
あんなに手数が進むとは、プレッシャーの少ない第1局ならではでしょうか。
私はまだちらっと見ただけですが、感想を述べたいと思います。



1図(実戦)
白△とは珍しいですね。
白Aなら普通ですが、どちらにも良い面と悪い面があります。
そして、結果的にはこの手によって後の展開が大きく変わりました。
碁の奥深いところですね。





2図(実戦)
黒△と打たれ、上辺の白が薄くなっています。
私ならとても生きた心地がしないのですが、流石に高尾名人は落ち着いたものですね。





3図(実戦)
黒Aと打てば1目取れるところを、井山挑戦者は黒△と打って逆に取らせました。
取れと言われたら取りたくなくなるのはプロの習性のようなものですが、この習性はトッププロほど強い気がします。
井山挑戦者らしい打ち方だと思いました。





4図(封じ手予想)
封じ手予想は直感で決めようと思っていたので、打ち掛け局面を見た瞬間に浮かんだ黒△にします。
まあ、普通っぽい手ですね。

しかし・・・その後他の棋士の予想が目に入り、この手は外れと確信しました(笑)。
井山挑戦者のことですし、もっと厳しい手を選ぶでしょう。
2日目、どんな展開になるか楽しみですね。

じっくり観戦したいところですが、明日は私も対局があります。
良い碁が打てるよう頑張ります。
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明日は指導碁&Master対棋士シリーズ・編集後記

2017年08月29日 23時25分25秒 | Master対棋士シリーズ(完結)
皆様こんばんは。
明日はいよいよ、名人戦挑戦手合が始まりますね!
2年続けて、とてつもなく大きなものを賭けた勝負になっています。
名勝負を期待しましょう!

なお私は明日、有楽町囲碁センターで指導碁を行います。
ご都合の合う方はぜひお越しください。


さて、今回はMaster対棋士シリーズの編集後記です。
文字数制限も無いので、好きなように書いて行くとしましょう。

〇このシリーズが始まるまで
Masterの登場は衝撃的でした。
従来の囲碁の常識では考えられなかった数々の打ち方・・・。
そして、60戦無敗という信じられないほどの強さ・・・。
正直なところ、見なかったことにしたいと思いました。

しかし、私は現役の棋士です。
Masterの打ち方が棋士の対局に取り入れられていくことは明らかで、それに取り残される訳にはいきません。
そこで、モチベーションアップも兼ねてこのシリーズを始めることにしました。
棋士として囲碁ファンに見せる以上、自分なりにしっかり考えなければならないからです。
こうして全60局との戦いが始まりした。

〇Master? 強いよね。序盤、中盤、終盤、隙が無いと思うよ。
Masterは何が強いかと聞かれると、正直なところ困ってしまいます。
布石は先の先まで見据えた打ち方をしますし、中盤の攻めは力強く、凌ぎや捌きも鮮やかです。
大局観に優れていますし、弱点になりがちな部分戦でもミスが見当たりません。
ヨセだけは明らかな損をしますが、そもそも目数の差が縮まることを何とも思っていない感じで、最後は必ず残します。
全ての面で人間を凌駕しており、しかもポカ(バグ)が出ない・・・。
こんな存在に、勝ち目があるとはとても思えません。
2016年3月の李世ドル九段との対局時点でも人間を超えてはいましたが、もはや手が届かないレベルになってしまいました。

その後、AlphaGoの名前に戻って柯潔九段と対局しましたが、正直なところレベルは変わっていないように思えました。
しかし、公開された自己対局の対局を見てまた大変な衝撃を受けました。
強いのか弱いのか、全く分かりません。
多くのアマの皆様は、棋士の手の良し悪しを結果や勘によってしか判断できませんね。
同じことが、AlphaGo同士の棋譜を見る我々にも起こりました。
手が届かないというレベルではなく、もはや離れすぎて霞んで見えます。

〇Master流の流行
シリーズ完結までの7か月の間に、Master流の研究はずいぶん進んだようです。
当然のことではありますが、良いものは取り入れ、使いこなせそうもないものには拘らないという姿勢を取る棋士が多いですね。
AlphaGo自己対戦で打たれた手はまだまだ実験段階だと思いますが、そちらもいずれ落ち着いて来るでしょう。

〇Master流の活用法
「互角とされる定石を打てば良い勝負になる」「自分より強い人の打ち方を真似すれば勝率が上がる」
これらは、非常にありがちな勘違いです。
碁には基本的な石の形や考え方があり、そこを理解していないと付け焼刃になってしまいます。

Masterが選ぶ定石(?)はあくまで1つの型であり、正しく活用できなければ意味がありません。
表面的なものだけではなく、その裏にあるものを感じて欲しいですね。
このシリーズをきっかけに、定石全般についての誤解も解いて頂ければ幸いです。

〇最後に
このシリーズには大変な反響を頂きました。
おかげさまで、やりがいを感じながら取り組むことができました。
ありがとうございました。
なお、三村智保九段のブログでは、私とは違った視点でシリーズを振り返っています。
そちらもぜひご覧ください。
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新刊、発売!&例のツケ

2017年08月28日 23時22分51秒 | 著書
皆様こんばんは。
この度、新刊「やさしく語る 布石の原則」が発売されました!
早速多くの方にご購入頂けているようです。
ありがとうございます。
当ブログでは読者コーナーでご感想・ご質問や誤植等の情報を募集しておりますので、そちらもよろしくお願いいたします。
実は、早速メールで誤植の情報が寄せられました。



67ページの問題はこれが正しい図なのですが、本では赤印の白石が消えてしまっています。
68ページ1図、2図も同様です。
配置としては違和感が無く、これは私も見落としていました。
申し訳ありません。
このような情報は随時読者コーナーに反映させて行きますので、引き続き情報提供をよろしくお願いいたします。


さて、今回は幽玄の間で中継された、柯潔九段と朴廷桓九段の対局に注目してみます。
中国ナンバーワンと韓国ナンバーワンの、頂上決戦のような1局でしたね。



1図(テーマ図)
柯潔九段の黒番です。
黒△と引いた場面です。
私は似たような局面で白Aとつなぎ、黒B、白C、黒D、白Eと進みました。
多少位置をずらす手は色々とありますが、流れとしてはごく一般的なものです。
それで白に不満が無いと見る棋士がいる一方、「いや、開いたところをまた白Eなどと守らされるのは不満だ」と考える棋士もいます。
朴九段もそのタイプなのか、実戦は・・・。





2図(実戦)
白1のMaster(AlphaGo)流!
既に実戦例もかなり多いですが、何度見てもこの手には驚きます。
白の狙いとしては、この後・・・。





3図(実戦)
大体このような図を目指していると考えられます。
黒Aの厳しさを緩和し、右辺一帯を効率の良い構えにする狙いです。
その分右上の黒も固まっており、損得は微妙なところですが、どちらかと言えば白を持ちたい棋士が多いかもしれません。





4図(実戦)
そこで実戦は、黒7の打ち込みを急ぐためにこのような進行に・・・。
何となく白がやれそうに見えますが、良い勝負なのでしょうね。
ツケの後ここまでは自然に予想できそうな変化で、双方の研究範囲内でしょう。
世界トップの両者の碁だけあって(?)、この後は訳の分からない展開になって行きました。


AIの台頭により、流行の布石は大きく変わって行きます。
色々と試してみるのも面白いでしょうが、流されてしまうと自分の碁を見失う恐れがあります。
上手く距離感を取って向き合いたいものですね。
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書評・第8回 ひと目の詰碁

2017年08月27日 23時59分59秒 | 書評
皆様こんばんは。
今回ご紹介するのはこの本です。



死活は碁の基本です。
死活の間違いは勝敗に直結しますし、序盤・中盤で石の強弱を判断する能力にも大きく関わって来ます。
ですから、囲碁の上達法として第一に挙げられるのが詰碁を解くことです。

しかし、最も重要な分野でありながら、多くの方が苦手意識を持っているのがこの詰碁です。
長年勉強しているのに初段の壁を越えられない、という方は多いですが、必ずと言って良いほど共通しているのは「詰碁が苦手」ということです。
毛嫌いして全くやらない、という方も珍しくありませんね。
それでは決して有段者になることはできません。

もちろん、詰碁に苦手意識を持ってしまう気持ちもよく分かります。
例えば、追い落としや打って返しで石を取ってください、といった問題は最終的には石を打ち上げるので、正解・失敗が明確に分かります。
しかし、詰碁はそうではないので正解・失敗が分かり難く、最初に何をして良いかも分かり難いのです。
また、多くの方は勝手読みをする傾向が強いですね。
自分の手に対する相手の対応も考えなければいけないのですが、それを自分の都合の良いように考えてしまい、正解を見付けたと思い込んでしまうのです。
そして、答えを見ると間違いばかりで詰碁が嫌になってしまいます。
結果、頑張って詰碁に取り組んでも身に付かないということにつながります。
他の分野にも共通していることですが、嫌々やってもなかなか伸びないものです。

では、楽しく取り組むためにはどうすれば良いかというと、解きやすい問題集を選ぶことです。
その点、本書はまず各問のヒントが非常に充実しており、何をすれば良いのかが明確になっています。
また、正解は一手だけ示せば良いので、全てを読み切れなくても大丈夫です。
結果、正解率が高くなり、楽しく取り組むことができるでしょう。

段々難易度が上がって行く構成になっており、後半は初級者にはなかなか気が付かない手筋なども出て来ますが、一手だけ見付けるなら決して不可能ではありません。
勘で当てるぐらいの気持ちでも良いので、気楽に挑戦して頂くと良いでしょう。
間違っても全く問題無く、解答を見てなるほどと思えればちゃんと身になっています。

本書は楽しく詰碁を解ける良書です。
2003年の発売以来、かなりのロングセラーになっています。
ただし1つ注意点があり、本書は入門レベルの方には難しいです。
最初の数問を眺めてみて、簡単と感じられなければもっと難易度の低い問題集を選ぶと良いでしょう。
いずれ解けるようになるので、買っておいても損はないと思いますが・・・(笑)。
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