白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

棋聖戦第5局感想

2019年02月28日 22時20分10秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
先にお知らせしていた通り、明日からしばらく不定期更新になります。
タイトル戦や個人的なお知らせなど、何かあった時だけ更新する予定です。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は棋聖戦第5局の2日目が行われました。
早速振り返っていきましょう。



1図(封じ手)
封じ手は白△でした!
無事正解できて良かったです。





2図(実戦)
白1からの動きは流石ですね。
ただ逃げるだけでなく、目一杯に形を作っています。





3図(実戦)
白△まで、堂々と脱出しました。
黒×も弱くなっており、白の優勢が見えてきました。

しかし、最近の井山棋聖は優勢の碁をそのまま勝ちきれるとは限りませんね。
七冠時代は、一度リードしたら碁が終わったように思えるほどでしたが・・・。
やはり、まだベストコンディションには遠いのかもしれません。





4図(実戦)
山下挑戦者は、形勢が少し苦しいぐらいの状況で一番力を発揮するイメージがあります。
黒△のカケが厳しく、だいぶ雰囲気が変わってきましたね。
この後は激戦に突入しました。





5図(終局図)
これが終局図ですが・・・。
×の石は全て死に石です!
思いもよらない結末になりましたね。


結果は山下挑戦者が黒番6目半勝ちを収め、シリーズ成績を2勝3敗としました。
いよいよ盛り上がってきましたね。
3月7日(木)、8日(金)に行われる第6局は必見です。
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棋聖戦第5局封じ手予想

2019年02月27日 20時53分36秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
インドとパキスタンがやり合っていますね。
戦争に発展しないことを願います。
それにしても、日本は島国で良かったとつくづく思います。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は棋聖戦第5局の1日目が行われました。
これまで井山裕太棋聖が3勝1敗とリードしています。
山下敬吾挑戦者は苦しい状況ですが、本局に勝って望みをつなぐことができるでしょうか?

それでは振り返っていきましょう。



1図(実戦)
山下挑戦者の黒番です。
右上で白5子が取られていますが、白Aの切り狙いが残っています。
個人的には白乗りの分かれでした。





2図(実戦)
白△と動き出した手には感銘を受けました。
私なら白Aあたりから生きることしか考えませんが、井山棋聖らしい目一杯の打ち方です。
黒×を攻める可能性までみているのかもしれません。





3図(打ち掛け局面)
黒△と打ったところで打ち掛けとなりました。
次の白の手が封じ手ですが・・・。
ほぼ白AかBしかあり得ないと言って良いでしょう。
大穴として白Cという手もありますが、これはいかにも決めすぎ病です(笑)。
点数はそれほど低くないかもしれませんが、今打つ理由は全く無いでしょう。





4図(封じ手予想)
封じ手予想は白△です。
この手で白Aと切るのは、いかにも黒×が活躍しそうで嫌でしょう。
今回は簡単ですね。
・・・こういうことを言って、何度も外してきましたが・・・。
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囲碁の才能

2019年02月26日 23時59分59秒 | 囲碁について(文章中心)
<本日の一言>
花粉症が酷くなり始めました。
目、鼻、喉と全部ダメです・・・。
花粉症を完治させる薬があったら、全財産出しても買いたいぐらいです(笑)。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は才能についてお話ししたいと思います。

囲碁の才能には様々な種類があると考えられますが、私は主に3つに注目します。
それは「センス」「理解力・吸収力」「集中力」です。
4つじゃないかと言われそうですね(笑)。
理解力と吸収力に関しては近い分野であると考えているということです。

「センス」の意味を一言で表すことは難しいのですが、「直感で答えを出す力」と言えば比較的近いでしょうか。
普通の人が、ああでもない、こうでもないと一生懸命に考えるような場面でも、センスのある人はパッとそれらしき所に石がいきます。
あるいは、普通の人がどれだけ考えても思い付かないような所でも、センスのある人は真っ先に目が向くいくという場合もあります。
一般的には、センスは後天的に磨くことができますが、天才に関してはその限りではないと思います。
常識レベルを超えた発想は、持って生まれた才能によってもたらされると考えます。

「理解力・吸収力」とは、学んだことを身に付ける能力ですね。
例えば、囲碁のルールを教わってすぐに、終局までスムーズにこなせるようになる人がいます。
あるいは、新しい考え方を知り、すぐに実践できるようになる人もいるでしょう。
また、生き死にの形をあっという間に覚えてしまう人もいるでしょう。

「集中力」も大切です。
人間、ぼんやりとした頭で考えたことなど、何も覚えていないものです。
集中力次第で、学習効率は何倍も変わってくるでしょう。
もちろん、学習だけでなく、その場で答えを出せるかどうかにも大きく関わります。
次の1手を決めるのに30分、1時間考えなければならない場面だってありますからね。

人の才能を計る際には、主にこういったところを見ます。
その時点での棋力は、必ずしも重要ではありません。
棋力そのものは、それまでの勉強量や環境次第というところも大きいですからね。

プロになるような人は、程度の差こそあれ、全てを備えているものです。
ただし、理解力・吸収力と集中力に関しては、心身の成長度合いとも大きく関わってきます。
早い話、5歳の子が1時間勉強するのと、10歳の子が1時間勉強するのでは、成果が何倍も違ってくるということですね。
ですから、私のように9歳で囲碁を覚えた人間でも、なんとかプロになれたわけです。

ところが、世の中にはとんでもない天才がいるもので、その代表が仲邑菫新初段です。
5歳の時、既に毎日集中して7時間勉強に取り組んでいたとか・・・。
普通のプロは4歳や5歳で碁を覚えたとしても、最初はただ遊んでいるだけで、本格的に取り組むようになるのは7歳とか9歳になってのことです。
大袈裟に言えば、幼少期の数年はあっても無くても大きくは変わらなかったということになります。
ところが、彼女の場合はその数年が丸々アドバンテージになってしまったのですね・・・。

ところで、山下敬吾九段や井山裕太五冠も、幼くして頭角を現していましたが、彼らよりも仲邑新初段の方が成長スピードが速いです。
では仲邑新初段の方が才能が上かと言えば、それは分かりません。
なにしろ、全員大天才ですからね。
少なくとも、それほど大きな差があるとは考えにくいでしょう。
では何が違うかと言えば、始めた年齢と環境です。
仲邑新初段の碁を始めた年齢は他の2人より早く、そして囲碁の入門法、上達法は昔より進歩しています。
その結果、歴史上例を見ないほどのスピードで成長したのでしょう。
そう考えると、同時に入段する上野梨紗新初段や福岡航太朗新初段らも、色々な記録を塗り替えていく可能性は十分にあると思います。

ただ、これはごく一部の例外の話です。
プロとして活躍するためにはなるべく早く覚えた方が良いのは確かでしょうが、それは多くの人に当てはまるものではないと思います。
多くの人は、3歳かそこらで囲碁をスムーズに覚えることはできませんからね。
難しくて嫌になったり、年上に勝てなくて嫌になったり、そして最終的には囲碁自体が嫌いになってしまうリスクが大きいです。
ですから、無理に教えるようなことは避けなければいけません。
まだ理解力や集中力が足りないなら、それが身に付くまで待てば良いのです。

囲碁の世界は英才教育志向が進んできており、今後もその流れは続くと思います。
ただ、棋力が高ければ囲碁を楽しめるというものではありません。
囲碁があくまでゲームであることは、忘れないように気を付けたいですね。
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NHK囲碁講座3月号

2019年02月25日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
<本日の一言>
突如数億円が降ってきたらどうするでしょうか?
私なら、趣味として対局を続けるでしょうか。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
今年度も残り1カ月程度になりましたね。
最近は子供を指導する機会も多いので、生徒が進級したり小学生から中学生になったりと、色々変化を感じます。
また、私自身も4月で棋士生活が丁度14年になります。
14年も社会人をやっていれば、もう完全におじさんですね・・・。
9歳でプロ入りするような人は別ですが(笑)。

さて、年度末ということで、この仕事も区切りを迎えました。



昨年4月からNHK囲碁講座別冊付録で連載していましたが、2月16日発売の3月号にて、ついに最終回となります。
9つの病気とその治療方法をお伝えしてきましたが、いかがでしたか?

アマの皆様が上達に行き詰まってしまう原因は、多くの場合自分の課題を正しく認識できていないことにあると思います。
頑張っているつもりでも、あっちに行ったりこっちに行ったりしていては、なかなか前に進むことができません。
そこで、本連載では毎月1つずつ病気をご紹介して、皆様に自覚を促す形を取りました。
多くの方は9つの病気を客観的に見ていく中で、「自分もこの病気に罹っている!」というものがあったのではないでしょうか?

囲碁の病気は、自覚さえすれば必ず治療できると思います。
私自身、この連載を始めてから自分の状態を確認し直しましたが・・・。
結構病気を持っていることを自覚しました(笑)。
以来、対局の際には気を付けているのですが、少しは効果が出ているように思います。
皆様も、ぜひ今後の上達に活用して頂ければと思います。

本講座はライター、編集者、校正者など、多くの方の力で出来上がりました。
改めてお礼を申し上げたいと思います。
1年間ありがとうございました。
そして、読者の皆様もご愛読ありがとうございました!
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上野愛咲美二段-黒嘉嘉七段

2019年02月24日 17時48分44秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
本日はSENCO CUPワールド碁女流最強戦幽玄の間解説を務めました。
世界最強と呼ばれる2人の戦いだけあって、レベルが高かったですね。
また、劣勢になってからの崔精九段の粘りには驚きました。
世界の頂点を目指すには、精神的な強さも必要なのですね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
決勝の碁をまたここでご紹介するのも何なので、今回は1回戦の上野愛咲美二段と黒嘉嘉七段の対局をご紹介したいと思います。
この対局、残念ながら上野二段が負けてしまいましたが、内容は凄まじいものがありました。

ちなみに、黒嘉嘉七段はオーストラリア人と台湾人のハーフで、その美貌を生かして芸能活動も行っています。
仲邑菫新初段との記念対局では、「仲邑菫さん、台湾のトップモデル・黒嘉嘉七段と記念対局」という見出しを付けているニュースもあってビックリしました。
これだけ見ると、プロ同士の対局とは思えませんね(笑)。
(厳密には、仲邑新初段はまだプロではありませんが)

それでは対局を振り返っていきましょう。



1図(実戦)
上野二段の黒番です。
この碁は途中まで黒がリードしていたという話ですが、私が注目するのは別の部分です。

黒△!
この手では黒Aと打ち、全体の連絡を保つのが自然な形です。
しかし、一見カス石にも見える黒×を助けたということは・・・。
白×への殺意が見えますね。
物騒な世の中です。





2図(実戦)
黒2~6も凄い迫力です。
今度は白×を狙っています。





3図(実戦)
白1と黒模様を消しにきた時、黒2と怒りの反撃!
そして・・・。





4図(実戦)
実力行使!
左右どちらかの白を取る狙いです。


実際には本人の作戦は少し違うのかもしれませんが、傍目にはひたすら白石に襲い掛かっているように見えます。
凄い迫力です・・・。
ぜひこの棋風のまま世界一を目指して欲しいですね。
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