白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

芝野三段、竜星戦優勝!

2017年07月31日 22時01分38秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は大ニュースがありましたね。
芝野虎丸三段が、竜星戦で優勝しました!
竜星戦は全棋士参加棋戦ですから、これは言うまでもなく快挙です。

そして優勝により七段昇段、放映前のネタバレが確定しました。
今ニュースになっているのもそういう訳でしょう。
飛び昇段に限らず、この手の問題は起こり得ます。
防ぐ方法としては、正式な昇段日を昇段方法に関わらず全て同じ時期にしてしまうぐらいしかないでしょうね。
それはそれで、また新たな問題が生じるでしょうが・・・。

ともあれ、今回こうしてニューヒーローの誕生がニュースになった訳ですから、これを機に囲碁界を盛り上げていきたいものですね。
なお、決勝戦は9月25日(月)、囲碁・将棋チャンネルにて放映されます。
それまでの対局も含めて、ぜひご視聴ください。


また、本日は小・中学校囲碁団体戦の全国大会の2日目が行われました。
決勝は小学校の部は大分市立金池小学校(大分)と田布施町立麻郷小学校(山口)、中学校の部は駒場東邦中学校(東京)と洛南高等学校附属中学校(京都)で争われました。
主将戦の棋譜は幽玄の間で中継されています。
当ブログでは私の注目した場面をご紹介しましょう。



1図(金池小-麻郷小戦1)
小学校の部決勝、主将戦です。
白1の消しから白3、5とは、才能を感じる打ち回しですね。
善悪はともかく、自由な発想には好感が持てます。





2図(金池小-麻郷小戦2)
黒も根拠の要点である三々を占め、一歩も引きません。
なかなか見応えのある戦いでした。
それだけに、右辺で黒に大きなポカが出てしまったのは残念でしたね。

この対局の結果は白が勝ちましたが、チームとしては金池小が2勝1敗で勝利、優勝となりました。





3図(駒場東邦中-洛南附属中1)
中学生の部も気合の入った対局でした。
黒△の三々入りから仕掛けましたが、白も左辺の黒に反撃!
序盤早々にコウ争いとは、熱いですね!





4図(駒場東邦中-洛南附属中2)
それにしても、黒1~5の捌きは鮮やかでしたね。
これで白の攻めをかわすことに成功しました。
この対局は黒が勝ち、チームとしても駒場東邦中が2勝1敗で勝利、優勝となりました。

それにしても、最近の子供は本当にしっかりしていますね。
芝野七段のようなプロが出て来るのも、土台があってのことなのです。
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半目

2017年07月30日 23時59分59秒 | 囲碁について(文章中心)
皆様こんばんは。
本日は国手山脈杯のペア戦が行われましたが、日本ペア(柳時熏九段上野愛咲美初段)は台湾ペアに惜しくも半目負けでした。

半目というのは最小差であり、悔しさもまた特別です。
仮に、私がまず勝てそうもない棋士・・・例えば井山六冠と対局して、1目半や2目半の負けに終わったとしましょう。
その場合、もちろん内容にもよるでしょうが、善戦したとしてそれなりの満足が得られるかもしれません。
しかし、半目負けになったとしたらどうでしょうか?
間違いなく悔しさが先に来るでしょう。
何しろ、後半のミスの大半に敗因の烙印を押されてしまうのですから・・・。

囲碁界で生まれた重大な半目勝負の例を挙げてみましょう。
第2期棋聖戦最終局で、藤沢秀行棋聖加藤釼正本因坊(加藤正夫名誉王座)に半目勝ちして棋聖を防衛します。
その後藤沢棋聖は連覇を6まで伸ばし、名誉棋聖の称号を得ます。
一方、加藤名誉王座はその後も数多くのタイトルを獲得しますが、棋聖だけはついに手が届きませんでした。
棋士人生を左右する、史上最も価値のあった半目勝ちと言っても過言ではないでしょう。
「1億円の半目」などと言われたのも頷けるところです。

ですが、加藤名誉王座も半目に泣いたことばかりではありません。
第21期十段戦では趙治勲十段を3勝2敗で破っていますが、なんと勝った碁は全て半目です。
合計1目半でタイトル奪取と、ここでは大変な幸運に恵まれました。

では私はどうかと言えば、やはり大きな半目勝ちもあれば無念の半目もあります。
これまでの17局の半目を振り返ってみますと・・・。

2006/04/20 白石勇一 初段 白半目 工藤紀夫 九段
2006/09/28 首藤瞬  四段 黒半目 白石勇一 初段
2008/08/07 白石勇一 二段 白半目 宮崎龍太郎六段
2008/12/18 淡路修三 九段 黒半目 白石勇一 二段
2009/09/03 白石勇一 二段 黒半目 鈴木伸二 初段
2009/11/19 白石勇一 二段 黒半目 片岡聡  九段
2010/07/01 白石勇一 三段 白半目 山田晋次 五段
2010/10/07 首藤瞬  七段 白半目 白石勇一 三段
2011/02/24 白石勇一 三段 白半目 林子淵  七段
2011/05/26 加藤充志 八段 白半目 白石勇一 三段
2012/10/04 堀本満成 三段 白半目 白石勇一 四段
2013/10/03 白石勇一 五段 白半目 前田良二 七段
2014/02/27 白石勇一 五段 白半目 伊藤優詩 二段
2014/06/16 宮沢吾朗 九段 白半目 白石勇一 五段
2016/04/21 白石勇一 六段 黒半目 大森泰志 八段
2017/02/02 白石勇一 六段 黒半目 鈴木嘉倫 七段
2017/07/27 安達利昌 四段 白半目 白石勇一 六段

このようになっています(左が勝者)。
後から振り返って重要な半目勝ちの碁と言えば、2010年の山田晋次五段との対局です。
内容的にも苦しく、幸運な半目勝ちでした。
この碁は新人王戦の本戦トーナメントの1局であり、負けていればそこで終わりだったのです。
この半目勝ちの価値は高く、今後更新されることは無いでしょう。

また、翌年に加藤充志八段に負けていますが、これが最も悔しい半目負けです。
本因坊戦最終予選の対局であり、勝てばリーグまであと2勝というところでした。
勝っていればリーグ入りできたかと言えば、全くそうは思えないのですが、それにしても痛い半目でした。

半目差は運であると言われています。
誰しも幸運に恵まれることもあれば、不運に泣くこともあるでしょう。
半目負けしたとしても、そういうこともあると、割り切って次の対局に向かうのが正解ですね。




ですが、私に2回半目勝ちしている人だけは許せません。
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Master対棋士 第52局

2017年07月29日 20時47分38秒 | Master対棋士シリーズ(完結)
皆様こんばんは。
井山裕太六冠が名人挑戦を決めましたね。
高尾紳路名人に七冠独占を崩されて以降、1年間他のタイトルを守り切り、とうとう名人位を取り戻しに来ました。
リーグ序盤から隙の無い勝ちっぷりを見せ付けていたので、高尾名人も覚悟していたでしょう。
熱いシリーズになりそうですね!

また、本日は国手山脈杯・団体対抗戦の第1戦が行われました。
日本チームは韓国チームと対戦しましたが、残念ながら3戦全敗でした。
韓国トップの3人に対して日本は若手3人で挑んだとはいえ、ちょっと内容が悪過ぎた気がします。
鋼鉄のメンタルを持つ世界のトップ棋士に対し、日本の若手はまだまだ経験不足かもしれません。
実力的にはもっと食い下がれるはずだと思います。

さて、本日はMasterと范廷鈺九段(中国)との対局をご紹介します。
范九段は第27回に続き、2回目の登場ですね。



1図(実戦)
范九段の黒番です。
白1と2線に詰めたのには驚きました。
白9のハネ出しを狙ったものです。

また、白9、11にも驚きです。
詳しいことは解説本などに載っているでしょうが、右下の黒をいじめて得を図ろうとしています。

白1は新手ではありませんし、白9、11も人間に打てないレベルの手ではありません。
ただ、狭い所をつついて行く打ち方であり、従来のAIには苦手なイメージがありました。
ですが、Masterはこうした部分戦でも非常に正確です。





2図(実戦)
右下の戦いの結果、黒△を取り込む余地が残っては白が成功しました。
そして、ここからのMasterは優れた大局観、構想力を発揮します。

白1、3を利かしましたが、これは違和感のある打ち方です。
結果的にケイマの突き出しの悪形になっていますし、黒Aと分断する手も残っているからです。
しかし、白5から左下黒への攻めに入り・・・。





3図(実戦)
その後白1の急所に回ることになっては、白△の利かしが見事に働きました。
白△が無ければ黒Aと好形に受けることができますが、この状態では白Bと押さえられ、白Cからの切断が残ってしまいます。





4図(実戦)
そこで黒1と、働きの無い空き三角の形でつながりましたが、白2となって中央が急に白っぽくなりました。
しかも白Aの切りが残っており、白△はまだ輝きを失っていません。
こうなっては白の優勢は明らかです。

Masterは部分戦にも大局観にも弱点が見えず、完璧とすら思えます。
しかし、ここからさらに強さを求めた結果、自己対戦で複雑怪奇な打ち方をするようになるとは・・・。
不思議ですね。
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5目中手?

2017年07月28日 21時27分56秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
幽玄の間で行われているDeepZenGoと若手棋士の対局は、相変わらずDeepZenGoが圧倒的な強さを見せています。
直近20局の成績は次の画像の通りです。



井山、村川、伊田、一力といった、そうそうたる顔ぶれをなぎ倒していますね。
もはやDeepZenGo先生と呼ばなければいけないかもしれません。

・・・おや?
この画像の中に、一箇所おかしな所がありますね。



向井千瑛五段・・・白番51.5目勝ち!?

勝敗はともかく、この大差の碁を作ったことにはびっくりです。
大石が死ぬなどして、DeepZenGoが大敗すること自体はおかしくありません。
しかし、勝つ見込みが無くなった対局は投了するように設定されており、事実半目差以外の負けは全て中押しになっています。
一体何が起こったのでしょうか?
実戦の進行を追いながら調べてみましょう。



1図(実戦)
白番の向井五段が持ち味のパワフルな打ち回しを見せ、黒△一団を屠りました。
対するDeepZenGoは代償に白△を仕留めに行きますが、白はAから凌ぎを目指します。





2図(実戦)
黒△となった場面、左下の白一団はどうなっているでしょうか?
黒石が腹中に入っていますが、白Aと取りに行くと黒Bとつながれ、5目中手の形になるので白死にとなります。
という訳で、白からは手を出せません。

では、黒から白を取りに行けるかどうかですが、最終的に白石の外ダメが全て詰まったとして、黒から白を取りにいくためには、黒AやCに突っ込まなければいけません。
しかし、直接行っても黒が当たりになるので、取られていけません。
また、黒Bとつないでから黒Aや黒Cに行くのも上手く行きません。
黒石が6つになってしまうからです。
6目中手は花六と呼ばれる形しか無く、この形では単に白地を作らせるだけになってしまいます。

結論ですが、この形は双方共に手を出せないので、セキということになります。
アマ有段者でも実戦だと結構うっかりしてしまう形ですが、まさかDeepZenGo先生が間違える訳がありませんね。





3図(実戦)
その後、黒1から無意味な手を連発しています。
これは所謂水平線効果のように見えますね。
形勢が悪い時によく見られる、簡単に言えば勝負の結論をただ先送りにする現象です。
上辺の黒を取られた上に左下の白に生きられては、流石のDeepZenGo先生も投了が近いのでしょうね。





4図(実戦)
しかし、水平線効果のような悪手を続けつつ、どういう訳かDeepZenGo先生は投了しません。
そして、白1に対して黒Aと穴を塞がず、1目ちょっとの価値しかない黒2へ・・・。
これはもしや・・・。





5図(実戦)
その後、白△とずかずか入って来られましたが、平然と黒△と後退して受けています。
ここまで来れば、不思議な進行の意味は明らかです。
そう、DeepZenGoちゃんは左下を白死にだと勘違いしているのです!
確かに、この石が死んでいるなら、そこからどれだけヨセを打っても黒地は全く減りませんね・・・。

DeepZenGoちゃんに感情があったら、こんな感じでしょうか。
「このプロは、負けが決まっているのに無意味な手ばかり打ってマナーが悪いなあ。
早く投げてくれないかなあ。」
確かに、もしこの白が死んでいるとすると、30目ぐらい黒が勝ちますね。

しかし、実際にはセキなので、打てば打つほど黒地が減って行きます。
結局DeepZenGoちゃんは最後まで死活誤認に気付なかったようで、整地まで行ってしまいました。
空前の大差負けの理由には納得が行きましたが、それにしても凄い話ですね。
トップ棋士をなぎ倒すDeepZenGo先生が、突然アマ有段者レベルのDeepZenGoちゃんに転落してしまうとは・・・。
人間味すら感じます(笑)。
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本日の対局

2017年07月27日 22時37分00秒 | 対局
皆様こんばんは。
本日は棋聖戦Cリーグで安達利昌四段と対局しました。
変化が多くて非常に難しい碁でした・・・。
今回は盤面の移り変わる様子を、スライドショーのようにご覧頂きましょう。



1図(実戦)
手順を示すのはこの図だけです(笑)。
私の黒番、白1、3のアルファ碁流(?)に対して、すぐに黒4と打ち込んで行きました。
白1の石を攻める構想ですが・・・。





2図(実戦)
駆け引きの結果、逆に白が攻勢に立つことになりました。
地ではリードしたものの、右辺黒を攻めながら中央に壁を作られ、形勢は良くないと感じていました。





3図(実戦)
しかし、その後色々あって、意外な振り替わりになりました。
黒は×を取り、白は黒×の構えを突き破っています。
この結果は中央白の厚みを破壊したことの価値が大きく、形勢は黒リードに変わりました。





4図(実戦)
ところが、そのまま勝ち切れないのが私の碁・・・。
手所の読みに不足があり、黒×が取られる結果になりました。
周辺で利益を上げているのでただ取られではありませんが、形勢は白リードに変わりました。





5図(実戦)
ただ、白もリードを過信して着手が甘くなります。
白が堅く打っている間に左辺が黒地になり、勝負はまた分からなくなりました。
一時は勝勢を確信するところまで行きましたが、打った瞬間に気が付くミスを犯し、半目勝負に・・・。





6図(終局図)
黒△と半コウをつないで終局です。
19×19=361の盤面にはかなりの隙間がありますが、これで345手です。
何しろコウ争いを繰り返し、お互いのアゲハマは黒35対白34です。

ところで、アマの皆様には整地が苦手な方が多いですね。
そこで以前、整地のコツをご紹介しましたね。
しかし、この碁の整地は異常に楽でした。
何しろ、地を数えやすくする手続きが一切なく、ただアゲハマを埋めることしかしていません(笑)。





7図(整地後)
整地後の盤面を再現しました。
白地が無いどころか、アゲハマが1つ余っており、白地マイナス1目です。
一方黒地は5目、ということは・・・。
5引くマイナス1=6で盤面黒6目勝ち、コミ6目半があるので白半目勝ちです。

途中の計算で、半目負けになるような気はしていました。
しかし、まさか白地がマイナスになるとは思いませんでしたね。
これはひょっとしたら、計算違いで1目半勝っているのではないかと淡い期待をしましたが・・・やっぱり駄目でした。

昔から計算は苦手で、作ってみたら思っていたのと結果が違っていた、ということは過去に何度かやっています。
しかし、何故か半目勝負ではあまり間違えた記憶がありません。
集中力の違いでしょうか・・・。

以前は半目負けすると悔しさ倍増という感じでしたが、今はそれほどでもありません。
何故か私の碁には半目勝負が多く、本局で17回目です。
半目負けの悔しさにも多少は慣れました。
これでCリーグは陥落、というか退場になったのは残念ですが、実力不足だったので仕方ありません。

なお、半目勝負については、また別の機会に詳しく語ろうと思います。





あ~悔しい・・・。
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