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【血統・配合】キングヘイロー×モガミヒメ牝系 ③キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合~スルターナ編~

2017年05月26日 | 血統・配合
『キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合』の最後として、現在ターファイトクラブでお世話になっている現役馬スルターナの血統を取り上げようと思います。

なお、この配合からはスルターナの全兄として、トキノフウジンが5勝してOP入りを果たしています。



さて、スルターナは父がキングヘイローなので、キングヘイロー×モガミヒメ牝系を踏襲している配合になります。

キングヘイロー×モガミヒメ牝系の血統的相性については、これまでのブログで書いてきたのでここでは割愛します。

スルターナは帰厩後、ローカル開催のダート戦を予定すると思いますが、放牧先でも順調な調整ができた模様。

一度大きなケガをした身なので無理は禁物ですが、トレセンでも順調に調教をこなせれば、1000万円下のレースでも能力的は十分通用すると期待しているところです。


彼女の母ラヴァーズレーンの血統については、3つの血統的特徴があると考えています。

まず第一に挙げておきたいのが、彼女の持つMahmoudとNasrullahによる近親クロスです。

ラヴァーズレーンの母であるモガミヒメとその父カコイーシーズが持っていたNasrullahのクロスと、近親のMahmoudを組み合わせることで、よりダイナミックなスピードを期待する配合にしました。

一方で、父メジロライアンの特長とも言えるHyperionのラインはラヴァーズレーンのなかでもクロスされていますが、それほどの影響力はありません。

それでも、母モガミヒメのなかで強く影響していたPharamond=Sickleの全きょうだいがHyperionの半兄弟であり、結果としてこれら3頭の母であるSeleneの血をクロスできたことは能力強化という点でプラスに働いたと感じています。


ラヴァーズレーンの配合で2番目の血統的特徴として挙げられるのが、Prince ChevalierとPrincequilloによる相似クロスです。

Prince Chevalierは現役時に仏ダービーやリュパン賞を勝ち、凱旋門賞を僅差で敗れるなどクラシックタイプの馬でした。

種牡馬になってからも仏ダービー馬のCharlottesvilleを出すなど、クラシックディスタンスに強い産駒を出しています。

一方のPrincequilloは米国で走りジョッキークラブGC(ダ16F)、サラトガC(ダ14F)、クエッショニアーH(ダ13F)など長距離で活躍しました。

種牡馬になってからは、中距離馬を中心に多くのステークス勝ち馬を輩出しています。



これら2頭は、ただ父が同じPrince Roseというだけではなく、それぞれの母にはTraceryやCyllene、Isonomyなどの血が存在します。

Prince ChevalierとPrincequilloの組み合わせを持つ馬には質の高い中距離スピードが遺伝される傾向にあり、ラヴァーズレーンもこの組み合わせを5×6*6のラインブリードで持ちます。

ラヴァーズレーンは現役時、大逃げを打ってそのままゴールへというスタイルでしたが、そのスピードの一部はこの相似クロスが関係しているかも知れません。

Prince Chevalierを持つメジロライアンは、Pirncequilloを受け継ぐ牝馬に交配されると産駒に質の高いスピードを伝えており、春の天皇賞馬メジロブライト(母がPrincequilloの4×6)、G3ラジオたんぱ賞を勝ったエアガッツ(母がPrincequillo≒Prince Chevalierの5×4)などの活躍馬を出しています。


ラヴァーズレーンの血統的特徴の最後として挙げておきたいのが、2頭の牝馬Bull PoiseとGagaによる3/4きょうだいクロスです。



この2頭は、母がいずれもAlpoiseで、Gagaの父がBull Dogなのに対してBull Poiseの2代父がBull Dogという関係です。

Bull Poiseはムーランドロンシャン賞の勝ち馬Ambiopoise(アンバーシャダイの母父)の母として、GagaはTom Foolの母としてラヴァーズレーンの血統に登場します。

特に、ラヴァーズレーンの母モガミヒメはTom Foolを4×5で持つので、Ambiopoiseを介してBill Poiseを持つメジロライアンとは相性が良いのでしょう。


さて、母父にメジロライアンを持つスルターナですが、基本的にはキングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合から生まれた産駒です。

ただ、キングヘイロー×モガミヒメ牝系の血統的相性はこれまでのブログで書いてきたので割愛します。

ここでは、それ以外の視点から彼女の血統を見てみます。

母ラヴァーズレーンが持つBull Poise≒Gagaの3/4きょうだいクロスは、父キングヘイローがTom Foolを2本持っていることで、スルターナの代でも継続強化される配合になりました。

また、父キングヘイローはMahmoudの血が強い血統パターンですが、母父メジロライアンはそれと相性の良いHyperionの血を強く持っています。

母ラヴァーズレーンが持つPrince Chevalier≒Princequilloの相似クロスも、父キングヘイローがPrincequilloを3本持っているので、この特長もスルターナに受け継がれた形になります。

血統表を見ると、メジロライアンの血がキングヘイローやモガミヒメの血統的特徴と異なるようにも見せるのですが、細かいところでポイントとなる血がしっかりとクロスされる配合になっているので、スルターナの血統は父母の相性が良い配合だと思っています。


長々と書いてしまいましたが、これがキングヘイロー×モガミヒメ牝系の説明の最後です。

今後は、これらの説明をベースに、例えばローレルクラブ提供馬のダンケシェーン(ヘニーヒューズ×ゼフィランサス)や、ターファイトクラブ提供馬のクライオブザソウル(ハーツクライ×ラヴァーズレーン)などの血統・配合にも触れる予定です。


【関連記事】
【血統・配合】キングヘイロー×モガミヒメ牝系 ①キングヘイロー

【血統・配合】キングヘイロー×モガミヒメ牝系 ②モガミヒメ

【血統・配合】キングヘイロー×モガミヒメ牝系 ③キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合~ゼフィランサス編~

【血統・配合】キングヘイロー×モガミヒメ牝系 ③キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合~ローレルゲレイロ編~



牧場風景②

2017年05月25日 | 日記
前回が元ターファイトクラブ所属馬の関係馬が多かったので、今回は元ローレルクラブ提供馬の今をピックアップしたいと思います。

【アメージングムーン親仔】


ローレルゲレイロの半妹としてローレルクラブでお世話になったアメージングムーンですが、繁殖入りした初年度である一昨年は不受胎で終わってしまいました。

それから1年間、繁殖馬としてさらなる馬体づくりをして迎えた昨年は早い段階で受胎してくれて、今年の2月7日にロードカナロアの牡馬を出産しました。

父ロードカナロアは胴が短めで四輪駆動のような四肢の発達した馬体ですが、この当歳牡馬は雰囲気は父似のところがありますが、父より少し胴伸びがある印象。

これは、他のロードカナロア産駒にも見られる特徴です。

母がローレルクラブでお世話になったので、いずれ彼女の産駒もお世話になりたいと思っています。


【オーシャンフリート親仔】


オーシャンフリートは、今年を含めて3年連続でヘニーヒューズの仔を出産しています。

今年は牝馬を出産しました。

1歳の牝馬はローレルクラブで募集中です。

1歳牝馬の半姉がどちらかと言えば母似の雰囲気があるのに対して、今のところ当歳牝馬は父似の印象です。

母オーシャンフリートはこれまで3頭出産していますが、仔出しが良い印象を受けます。


【ダンシングハートの2017】


ダンシングハートは今年、クロフネの牡馬を出産しました。

栗毛っぽく見せますが、おそらく芦毛に変わるでしょう。

母のダンシングハートはこれまで10頭ほど出産しているので、母馬としてはベテランです。

自分の仔が離れてあちこちで遊んでいても、自身はのんびりと草を食んでいるくらいです。

この当歳牡馬は、今までの彼女の産駒と比較しても、出来は上位だと思っています。



牧場風景①

2017年05月20日 | 日記
ここ最近、日高地方の天気は晴天の日が多いので、時間を見つけて繫養馬の写真を少しずつ撮っているところです。

【フルオブスターズ】


2歳戦で新馬戦勝ちしたフルオブスターズですが、その後も良い末脚を使ってくれるものの、あともう少しのレースが続くなかで引退させることにしました。

4月下旬に到着後、比較的早く発情を見せたので早速種付をしてみました。

彼女の母ポエティクシーズンは今年、タートルボウルの牝馬を出産しています。

【ポエティクシーズン親仔】



フルオブスターズ同様、メジェルダも引退させることに。

【メジェルダ】


10日ほど前に到着したメジェルダはクラブ提供馬でしたが、近走の結果を見てもこれ以上は望めないという判断に至りました。

彼女の場合は、ターファイト会員さんに満口にさせて頂いた馬でしたので、引退させることについては当場を含めた関係者間で話し合いながら下した苦渋の決断でした。

今年の種付に間に合わせるための引退ではないので、基本的には来年度に向けての馬体つくりの最中です。

ただ、ここ最近の晴天と気温の上昇のなかで、すぐにでも良い発情が来るようならば、一度くらいは種付することがあるかもしれません。

彼女の母メリュジーヌも、メジェルダ同様に繁殖本場にて繫養中です。

【メリュジーヌ】


昨年不受胎だったので仔馬はいません。

天気も安定してきて馬体の状態も上向いているので、今年はうまく受胎してくれればと思っています。

繁殖牝馬たちの受胎状況は、繁殖シーズンを終えてしばらくしてから、当ブログでアップしようと考えています。



【血統・配合】キングヘイロー×モガミヒメ牝系 ③キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合~ローレルゲレイロ編~

2017年05月05日 | 血統・配合
キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合として、ここではローレルゲレイロを扱いたいと思います。

このローレルゲレイロこそが、キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合から誕生した第1号でした。

なお、ローレルゲレイロの全きょうだいには、リキサンマックス(G3きさらぎ賞2着)やキタサンラブコール(現4勝、中京日経賞、ハッピーエンドC)などがいます。

【ローレルゲレイロ】


ローレルゲレイロは、母ビッグテンビーの初仔として生まれました。

初仔ということもあり、同期のなかでもやや小柄に属する馬でしたが、とにかく獣医いらずの丈夫な馬だったことを覚えています。

放牧地で自分より大きな馬相手に対して威嚇行動を取るなど、この牝系特有の負けん気の強さを持つ馬でした。

育成場に行ってからも順調そのもので、それほど馬格があるほうでもなかったので、2歳戦から使えそうな仕上がりの早さを見せていました。

その予想通り、函館の新馬戦でデビューして同世代の勝ち馬第1号になりました。

その後は重賞路線で2着が続き、一時は「最強の1勝馬」などと呼ばれることもありましたが、古馬になった4歳時には重賞を連勝。

5歳になってからはG1高松宮記念とG1スプリンターズSを制して、最優秀スプリンターに選出されました。

現在は、優駿SSにて種牡馬として繋養されています。

ローレルゲレイロもまた、キングヘイロー×モガミヒメの組み合わせを持つ馬です。

この配合が血統的に相性が良いのは、キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合~ゼフィランサス編~で書いたので、ここではまず母ビッグテンビーの血統に焦点を当てます。



血統を見てすぐ目に付くのは、ビッグテンビーが持つNijinskyの3×4のインブリードです。

Nijinskyの血が、モガミヒメの持つAlydarと好相性なのは、『キングヘイロー×モガミヒメ牝系②』でも指摘しました。

もう一つ、ビッグテンビーの配合でポイントになるのが、父テンビー内のMill Reefとモガミヒメの2代母の父ボールドラッドによる相似クロスです。



いずれもNasrullahとPrincequilloのニックスを持っていて、しかもそれぞれの母が名牝であるという点も共通しています。

互いの母が優秀であるということは、共通の父であるPrincequilloがそれぞれの娘たちに対して遺伝的に好ましい影響を与えたと想像できます。

また、ビッグテンビーの父テンビーはPrincequilloを4×5で持ちます。

モガミヒメも自身の世代ではプールしているものの、2代母モガミポイントがPrincequillo4×4を持っています。

結果として、その両親から生まれたビッグテンビーは、Princequillo5*6×6*6のラインブリードを持つことになり、彼女にとって非常に重要なクロスになったと推察します。

一方のNasrullahにしても、テンビー内KalamounがNasrullah=Rivazの全きょうだいクロスを有していて、モガミヒメの母父カコイーシーズはNasrullahを息子と娘を経たクロスとして持ちます。

つまり、ビッグテンビーはNasrullah6*7*×5*6*6のラインブリードを持っていることになり、このクロスも大きな遺伝効果が期待できます。

そして、PrincequilloとNasrullahのラインをより確実に発現させるためにも、Mill Reefとボールドラッドによる相似クロスがビッグテンビーにとって非常に重要なポイントになったと考えます。


このような母に対して、息子のローレルゲレイロはどのような血統パターンを持つのか。

キングヘイロー×モガミヒメ牝系①』でも指摘しましたが、キングヘイロー産駒の中央勝ち馬には、以下の血統的特徴があります。

①産駒自身がNorthern Dancerクロスを持つ。

②産駒の母がNasrullahの血脈を持つ。

③産駒の母がNearco/Prince Roseのニックスから成る血脈を持つ。

以上の3つのうちのいずれか、もしくは複数に該当する血統パターンに属することが多いです。

母ビッグテンビーは、自身の持つNijinsky3×4を経てNorthern Dancerクロスを持ちます。

また、Nasrullahの血脈を豊富に持っている点はすでに指摘しました。

さらに彼女は、Nearco/Prince Roseのニックスから成る血脈としてMill Reefやボールドラッドを持ち、さらにはForeseerやKalamounもこれに該当します。

つまり、モガミヒメ同様、ビッグテンビーもキングヘイローと血統的相性が良い繁殖牝馬だと思われます。

この配合で生まれたローレルゲレイロは、『キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合~ゼフィランサス編~』で指摘した相性のほかに、ダンシングブレーヴ≒Caerleon≒モガミポイントという見方もできると思います。

これら3つの血脈は、Northern Dancer系の父×Nearco/Prince Roseのニックスから成る血脈を持つ母という組み合わせです。

また、Tom Fool≒Flaming Pageを持つモガミヒメや娘のビッグテンビーにとって、Tom Fool5×5を持つキングヘイローはクロスの継続という観点からも好ましい種牡馬だと言えます。

最後に、ローレルゲレイロが持つDrone≒Halo≒Nijinsky≒Careless Notionの組み合わせについて指摘おきます。





2つの血統表に跨いで色分けしてみましたが、上記のように4つの血脈はNearoやPharamond、さらにはBull Dog=Sir GallahadやMahmoudを持つ点で共通しています。

このように、ローレルゲレイロの配合を考える際には、父母それぞれの血統傾向や多くの相似クロスを用いて配合しました。

馬体面ではそれほど大柄に出ない配合ではありますが、競走能力の遺伝という点では期待できる配合だと思っています。


次回の『キングヘイロー×モガミヒメ牝系』は、キングヘイロー×ラヴァーズレーンの配合として、現役馬のスルターナを取り上げる予定です。


【関連記事】
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ハーランズワンダーの応援に行ってきました

2017年05月03日 | 日記
今日は、元ターファイトクラブ提供馬のハーランズワンダーがホッカイドウ競馬の第7R(ダ1200)に出走するので、現地まで応援に行ってきました。

中央在籍、またターファイトクラブ所属の当時は出資会員様たちにご迷惑をお掛けする結果となりましたが、ホッカイドウ競馬に転属してからは前走まで4戦3勝と好調。

今日もその成績を受けて、1番人気に支持されていました。



レースでは、2~3番手追走しながら、最後の直線では力強く抜け出します。



最後は2馬身差をつけて快勝。

中央抹消の頃は馬体の線も細く、昨年のホッカイドウ競馬のレース時でも、もう少し馬体重が欲しい印象でした。

ただ、年が明けて4歳になってからは体つきにも幅が出て、以前よりレース内容も安定してきた様子。

まだまだ下のクラスですが、着実に階段を上がっているので、これからも期待したいところです。