(有)村田牧場通信

(有)村田牧場から情報を発信するブログ

サマーセール上場馬4頭を購買いただきました

2018年08月31日 | セール上場馬
先週開催されたサマーセール1歳市場において、当場から4頭を上場しました。

結果、№614メリオールの2017(牝、父カレンブラックヒル)はFAVOUR STAR LIMITED様にご購買いただきました。

№641リキサンキャロルの2017(牡、父ベーカバド)は柏木務様にご購買いただきました。

№709エルトベーレの2017(牡、父トゥザワールド)は鈴木美江子様にご購買いただきました。

№848ダンシングハートの2017(牡、父クロフネ)は㈱VICTORY様にご購買いただきました。

ご購買いただきました馬主様、誠にありがとうございました。

売却成立した上場馬のなかには預託予定の厩舎が決まっている馬もいるようで、何頭かはJRAで出走することになりそうです。


さて、今年最後の1歳市場であるオータムセールには牝馬2頭を上場する予定です。

今までのセール上場馬と同様に、このブログで上場予定馬の情報を紹介させていただく予定ですので、是非ご注目ください。


【サマーセール】№848ダンシングハートの2017(牡 父クロフネ)

2018年08月16日 | セール上場馬
今年のサマーセール上場予定馬として、最後に紹介させていただくのが№848ダンシングハートの2017です。

本馬は自家牧場にてセリ馴致を実施中です。

8月7日付(セール用に事前提出した際)の測尺は、以下のとおりです。

【体高】153cm 【胸囲】176cm 【管囲】20.5cm

なお、本馬の牝系解説文についてはこちらをご参照ください。











本馬には、配合段階でモデルにした馬がいました。

それが、当場生産馬で現在OP馬のラインルーフです。

前走のOP名鉄杯では2着馬に8馬身差をつけて快勝してくれたラインルーフですが、次走はG3シリウスSの出走も視野に入れているとのこと。

そのラインルートと本馬は、血統構成が近い関係にあります。





いずれも父がフレンチデピュティ系で、母父がサンデーサイレンス系です。

さらに、どちらも2代母がアイレスバリーヒルなので、両馬はいとこの関係にあります。

ラインルーフに高い能力を感じたので、彼をモデルに近親のダンシングハートにクロフネを配合して、本馬が生まれました。

フレンチデピュティやクロフネの産駒のなかには繋の硬い馬が生まれることがありますが、本馬に関してはそういう面がありません。

硬くもなければ柔らかすぎもしない程良い角度の繋を持つ本馬ですが、これには母父サンデーサイレンスが伝える柔らかい繋が関係しているかもしれません。

本馬は全体に柔らか味を備えた馬体である一方で、まだ成長途上という印象の体つきをしているので、この馬に関しては自家牧場で昼夜放牧をしながらセリ馴致をしています。

この牝系は先にしっかりした骨格が備わって、その後に筋肉が付いてくるという成長の仕方をするところがあり、その意味では本馬はこの牝系出身らしい馬だと言えます。

実際、本馬は生まれた当初から優れた骨格の持ち主でした。


本馬の2代母であるアイレスバリーヒルは、当場が米国まで行ってプライベートで購買した馬ですが、何といっても名牝Sex Appealの血を引くという点に惹かれて購買した繁殖牝馬でした。

そのSex Appealに世界的名種牡馬Northern Dancerが配合されて、さらに超良血のWoodmanが配合されて生まれたのが彼女だったので、当場としても大きな期待を寄せていました。

実際、良血の繁殖牝馬らしく複数頭の中央勝ち馬を出してくれましたが、ただ当場の期待通りとまでは言えない繁殖成績で終わってしまいました。

アイレスバリーヒルの父であるWoodmanの血を引く馬のなかには、高い能力を持っているものの気性面の難しさを出す馬がいますが、アイレスバリーヒルの産駒にもそういう面があったのかもしれません。

この点を解消するために、アイレスバリーヒルの血を引く繁殖牝馬には、気性が勝ち気で競走成績や種牡馬成績が優れている種牡馬を配合するように心掛けてきました。

例えば、アイレスバリーヒルにスペシャルウィーク(G1を4勝、種牡馬としてもG1馬輩出)を配合し、そこに勝ち気に気性の産駒を出すフレンチデピュティを配合した結果、OP馬のラインルーフが生まれました。

本馬の場合でも、アイレスバリーヒルに稀代の名種牡馬サンデーサイレンスを配合して、そこに安定した気性を伝えて芝・ダート両方で活躍馬を送り出すクロフネを配合することで、本馬が生まれたわけです。

クロフネ×サンデー牝馬という成功パターンも持つ馬なので、血統通りに安定した活躍をしてほしいと願っています。


これで、今年のサマーセール上場予定馬の紹介は最後になります。

8月22日の上場日には、ぜひ当場生産馬をご注目ください。




【サマーセール】№709エルトベーレの2017(牡 父トゥザワールド)

2018年08月15日 | セール上場馬
サマーセール上場予定馬の3頭目として紹介させていただくのが、エルトベーレの2017です。

本馬は、約2か月前からセリ馴致をお願いするためにエンパワーファームに預託に出しています。











8月7日付(セール用に事前提出した際)の測尺は、以下のとおりです。

【体高】155cm 【胸囲】178cm 【管囲】20.5cm

なお、本馬の牝系解説文はこちらをご参照ください。

トゥザワールドにとってはこの世代が初年度産駒ですが、平均して体高があって骨格も含めて立派な馬体で父の特長を受け継いだ産駒が多い印象を受けます。

本馬もトゥザワールド産駒らしい立派な馬体をしていますが、特にトモなどはキングカメハメハ系らしい力強い張りのある筋肉をしています。

気性はこの兄弟らしい勝ち気な気性をしていて、セリ馴致の預託に出すまで過ごしていた当場の放牧地では本馬がボス格でした。


父トゥザワールドの血統はキングカメハメハ×サンデーサイレンス牝馬という現代日本の王道とも言うべき配合で、この配合からは様々なタイプの産駒が生まれています。

Nureyev5×3を持つトゥザワールドですが、欧州を代表する血脈であるNureyevに関しては、クロスさせると持続するスピードを伝える傾向にあるのではないかと個人的に考えていました。

例えば、今年のオークス馬アーモンドアイはNureyevクロスを持つ馬ですが、彼女は直線の長い東京競馬場で見事にG1を勝っていて、Nureyevの血がうまく働いたのかなと感じています。

ところがトゥザワールドに関しては、彼の現役時のレース振りを見る限り、持続するスピードというよりはパワーや機動力に秀でた馬という印象です。

実際、Nureyevクロス持ちながら、東京競馬場でのG1ダービーでは5着でした。

一方で、小回りで急坂の中山競馬場ではG2弥生賞を勝ちG1皐月賞で2着して、さらにG1有馬記念でも2着に好走しています。

パワーや機動力に優れているというのは米血脈によく見られる特長ですが、その意味でトゥザワールドの競走能力はNureyevクロス以外の米血脈のようなラインも影響している印象を受けます。

エルトベーレの2017において、Nureyevを継続クロスさせずに米血脈のMr.Prospectorをクロスさせる配合にしたのは、そのような理由もあってのことでした。


母のエルトベーレは米国からの輸入馬で、当場の所有馬として中央で出走しましたが、芝とダートの短距離で入着したものの勝ち星を挙げることはできませんでした。

彼女の血統は、当場生産馬で種牡馬入りしたG1馬ローレルゲレイロに合うと思っていたので、繁殖入り後は3年連続してローレルゲレイロを配合(2年目は不受胎)しました。

初年度産駒から中央の新馬戦勝ちの馬が出るなどしましたが、その後が続かなかったために異なる血統・馬体をしているトゥザワールドを配合した結果、本馬が生まれてくれました。

エルトベーレの2017の代でMr.Prospector4×5*4のクロスができることは前述しましたが、それ以外にHail to Reason5×5もあります。

そして、Mr.Prospectorの母Gold DiggerとHail to Reasonの血は、血統的に相性が良さそうな関係にあります。





まず、それぞれの父祖であるNasrullahとRoyal Chargerが近親関係にあります。

そして、Gold DiggerとHail to Reasonそれぞれの母系はBull Dog=Sir GallahadとBlue Larkspurの血を持つ点で共通していて、Miss Dogwood(Mr.Prospectorの3代母)≒Nothirdchance(Hail to Reasonの母)という相似性も見えてきます。

これらの血はすべて米血脈に分類されるべきものですが、このような血を強く持つ馬は、しばしば力強いスピードに秀でた馬に成長する傾向にあります。

エルトベーレの2017も、父同様に力強いスピードで芝路線で活躍するか、あるいは米血脈を強く持つ馬らしくダート路線で頭角を現す可能性もあると考えています。


次回は、サマーセール上場予定馬の最後の紹介として№848ダンシングハートの2017を取り上げます。






【サマーセール】№641リキサンキャロルの2017(牡 父ベーカバド)

2018年08月14日 | セール上場馬
今回は、サマーセール2日目(8月22日)に上場予定のリキサンキャロルの2017を紹介させていただきます。

前回のメリオールの2017同様、本馬も日高軽種馬共同育成公社にセリ馴致をお願いしています。











本馬の8月7日付(セールに事前提出した際)の測尺は、以下のとおりです。

【体高】154cm 【胸囲】179cm 【管囲】20.5cm

また、本馬の牝系解説文に関してはこちらをご参照ください。

個人的には好馬体の持ち主だと感じていて、首差しや脚元の角度など、購買者の方々が気にされる点についても良いものを持っていると思います。

サマーセールに申し込んだ後に視察に来て下さったお客様もいらっしゃいますが、見栄えのする馬体を褒めていただきました。

№614メリオールの2017もそうですが、この牝系には悍性の強さを感じさせるところがあって、本馬も時折そういう面を見せることがあります。

一方で、当場でお客様に見てもらうときなどは、どっしりとした牡馬らしい面を見せていました。

あとは、セール当日に向けて育成公社さんに仕上げてもらうだけという状況です。


父のベーカバドは初年度産駒が現5歳を迎える種牡馬ですが、その世代からタイセイエクレールやエネスクといった準OP勝ち馬を出していて、あとは重賞やOP勝ち馬が出てくるを待つだけというレベルにあります。

ベーカバドはGreen Desert系種牡馬ですが、同系種牡馬のなかには欧州で種牡馬として成功しているInvincible SpiritやOasis Dreamがいて、彼らとは血統構成が似ているところがあります。

例えば、ベーカバドとInvincible Spiritとの比較では、いずれもGreen Desert系×Kris牝馬の組み合わせです。

また、ベーカバドとOasis Dreamの血統においては、両者はGreen Desert系×Mill Reefを持つ牝馬という点で共通しています。

そして、Invincible Spiritの代表産駒には欧州年度代表馬のKingmanがいますが、Kingmanの母系にはダンシングブレーヴの血が入っていて、この点はOasis Dreamと同じです。

これらの血統傾向を総合的に判断した結果、私はGreen Desert系種牡馬のベーカバドにはダンシングブレーヴの血を持つ牝馬が合うのではないかと考えました。

それが、ベーカバドにリキサンキャロル(ダンシングブレーヴ持ち)を配合した理由です。

実際、ベーカバドの代表産駒の一頭であるエネスク(準OP勝ち、JpnⅢ北海道2歳優駿3着)は、母父がダンシングブレーヴという血統背景を持っています。

ベーカバドを含めて、なぜGreen Desert系はダンシングブレーヴの血と相性が良いのかという疑問が湧きますが、血統的観点からはGreen Desertとダンシングブレーヴの血が相似関係にあることが挙げられます。





いずれもNorthern Dancer系×Sir Gaylord系という組み合わせなのですが、実際にはそれぞれの母父であるSir IvorとDrone自体が血統的に相似関係にあります。





このような血統背景から、Green Desert系がダンシングブレーヴの血と相性が良いのではないかと推測してベーカバドとリキサンキャロルを配合し、結果として生まれたのが本馬です。

ベーカバドの産駒は芝でもダートでも活躍する傾向にあり、産駒によってはタイセイエクレールのように両方で勝ち鞍のある馬もいます。

ベーカバド自身は、日本よりもパワーが必要な欧州の芝路線で活躍した種牡馬ということもあり、産駒の出来によって芝・ダートどちらにも向く可能性があるのでしょう。

リキサンキャロルの2017も母は中央の芝中距離で勝ち鞍がありますが、彼自身はちょうど良い張りのある筋肉が付いていて、馬場適性に関してはどちらの可能性もありそうな雰囲気です。

その意味では、ベーカバド産駒らしい馬体の持ち主だと言えるでしょう。


次回は、№709エルトベーレの2017を紹介させていただく予定です。






【サマーセール】№614メリオールの2017(牝 父カレンブラックヒル)

2018年08月13日 | セール上場馬
8月20日のサマープレミアムセールにつづき、その翌日から開催されるサマーセール。

当場からは、8月22日(水)に4頭上場予定です。

今回は、№614メリオールの2017を紹介させていただきます。











本馬の牝系解説文については、こちらをご参照ください。

なお、8月7日付の本馬の測尺は以下のとおりです。

【体高】152cm 【胸囲】173cm 【管囲】19.0cm

本馬は日高軽種馬共同育成公社にセリ馴致をお願いしています。

決して大柄なタイプではありませんが、張りのある馬体をしていて、人間に甘えることのできる賢さとこの牝系らしい悍性の強い気性をしています。

父カレンブラックヒルは現役時代、デビューから4連勝でG1NHKマイルCを制した快速馬で、ダイワメジャー産駒らしい力強いスピードが特長的な馬でした。

彼にとって、この1歳世代が初年度産駒になりますが、産駒は総じて立派な馬体が多い印象です。

実際、今年のセレクト・セレクションセールには3頭上場されましたが、4200万円を筆頭にいずれも取引額が1000万円越えを果たしています。

受胎条件で100万円を切る種牡馬の産駒としては、かなりの高額だと言えるでしょう。

本馬もしっかりとした骨格を備えていて、バランスも良く見栄えのする牝馬です。

そういう産駒の特徴が、セールで評価されているのかもしれません。


血統面からカレンブラックヒルを考察するならば、ダイワメジャーの母スカーレットブーケとチャールストンハーバーの2代母の父Storm Catの相性を活かすことで、競走馬として成功したのではないでしょうか。





それぞれの父はNorthern DancerとChop Chopの血を持つ関係であり、母側にはCrimson Satanの血を持つ点で血統的な相似性があります。

このダイワメジャー×Storm Catを持つ牝馬という組み合わせからは、カレンブラックヒル以外にも、現役馬では重賞戦線で活躍しているロードヴァンクールなどが挙げられます。

このカレンブラックヒルの血統的特長を活かしたかったので、カレンブラックヒルの能力を本馬に受け継がせたい意図から、メリオールとの配合ではStorm Cat4×5のクロスをつくる配合にしました。

これにより、父の持つスカーレットブーケ≒Storm Catを継続強化するのが狙いです。


本馬の母メリオールは、一部のキングカメハメハ産駒が持つ脚元の難しさが出た牝馬で、そのため自己所有馬として競走させることにしましたが、結局1戦のみで引退させることにしました。

ただ、産駒のほうは半兄オールスマート(牡、父スマートファルコン)と本馬、そして当歳馬の牡馬(父フェノーメノ)の3頭が生まれていますが、いずれも母馬のような脚元の難しさはありません。

加えて本馬はしっかりとした骨格を備えているので、セリ馴致の預託に出すまで昼夜放牧をしていましたが、冬期の昼夜放牧も含めてここまで順調に育ってくれています。

メリオール自身は1戦のみの引退でしたが、脚元さえしっかりしていればスピードに秀でていただろうと思える、力強い筋肉を持つ牝馬です。

キングカメハメハの影響もあるでしょうが、メリオールの母メリュジーヌの遺伝も少なからずあるでしょう。

フレンチデピュティの血を引くメリュジーヌは中央3勝している牝馬で、牝馬らしからぬ四肢の筋肉が特長的な牝馬ですが、血統的にはフレンチデピュティ≒Storm Catを組み合わせることで力強いスピードの遺伝を狙った配合でした。





メリュジーヌ自身は父がフレンチデピュティで、母父がStorm Catの息子であるタバスコキャットです。

フレンチデピュティとStorm Catは、父系がいずれもNorthern Dancerに属します。

また、フレンチデピュティの母MitterandはPrincequillo系×Bold Ruler系の配合ですが、Storm Catの母父SecretariatもBold Ruler×Princequillo牝馬の配合なので、血統的に相似性が高い関係です。

結果として、メリュジーヌはダート短距離で3勝を挙げたわけですが、フレンチデピュティ≒Storm Catの影響もあって力強いスピードを発揮してくれました。


このような観点から、カレンブラックヒルと2代母メリュジーヌのスピードを引き出す意味でも、メリオールの2017の世代でStorm Catのクロスをつくる意味はあると考えます。


次回は、№641リキサンキャロルの2017を紹介させていただきます。